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改訂の概要
レッドリスト(鳥類)の改訂は今回で3回目となる。当初の1995年版における希少性評価は1940~94年の54年間の各種調査記録に加え、1982~86年度と1991~93年度に県内全域で行われた「ひょうご野鳥センサス」の解析結果を基にしている。このセンサスは、県全域を国土地理院の25,000分の1地形図で区分し、各地形図内に1ヵ所の調査地を選定し、県下76地区について月1回、年12回のラインセンサスと定点調査を行ったもので、記録された鳥類327種の分布状況と個体数及び生息環境の概要を知ることができる。
1995年版では、県下で繁殖する個体群と繁殖しない個体群に大別し、個体数、分布域、餌資源、生息環境の脆弱性、希少性等の評価基準により85種、続く2003年版では97種が選定された。1970年代以降の社会環境の著しい変化が鳥類の生息環境に重大な影響を及ぼした結果とされる。2013年版では153種に増えたが、これは繁殖しない個体群をさらに越冬個体群と通過個体群に分けて評価したこと、また、評価基準を追加・細分化したことで、要注目と要調査に該当する種が増えたことによる。
今回の改訂では2013年度版と同じ評価基準で、2024年末までに県内で記録が確認されている387種について、繁殖個体群、越冬個体群、通過個体群ごとに評価検討を行った。選定された種数は158種(絶滅1種、Aランク24種、Bランク59種、Cランク28種、要注目29種、要調査17種)で、2013年版からは5種増(ツクシガモ、カッコウ、ジョウビタキなど新規追加8種、クイナ、コアジサシ、ヤマセミ、コルリなどランク変更32種、アカガシラサギ、ヤマショウビンなど削除3種)となった。
前回の改訂時には人為的に導入された種による影響が懸念されていたが、今回の改訂では急増したシカによる影響がより深刻とされた。シカに下層植生を食害された森林では、ササ藪や低木の茂みに生息する種が少なくなるなどの影響がでている。この影響は、なかでも標高1,000m以上のブナ林などの下層植生や大木の根元、倒木の隙間、傾斜地や地上の窪みなどで営巣するコルリ、コマドリ、クロジに特に顕著で、営巣環境の多くが消滅し、繁殖個体群が絶滅の危機に瀕している。
野生復帰事業で、保護増殖の努力が続けられてきたコウノトリの野外生息状況は安定しているように見受けられる。一方、最近20年ぶりに繁殖に成功したイヌワシについては、県内には僅かな個体数しか生息しておらず、危機的状況にあることには変わりはない。
里山の雑木林などでは、1970年代から減少が続いていたアオゲラ、サンショウクイ、キビタキなど樹林性鳥類の生息状況が回復してきている。また、新たにセイタカシギ、ヤイロチョウ、ジョウビタキ、ニュウナイスズメの繁殖が確認されたが、いずれも極めて局地的で繁殖個体数も少ないため、今後の動向が注目される。
なお、2025年版における選定種の配列と学名及び国内外の分布は、日本鳥類目録改訂第8版(日本鳥学会,2024)及びIOC World Bird List ver.14.2を参照した。