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兵庫県版レッドデータブック2003

※ 本ページは2003年改訂当時の内容を掲載しています。最新の種及びランクにつきましては、兵庫県版レッドリスト2010~2017をご覧ください。 

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kakitsubata.jpg レッドデータブックは、絶滅のおそれのある野生生物などをリストアップして、その現状をまとめた報告書である。世界的には、1966年に国際自然保護連合(IUCN)が、哺乳類と鳥類について世界的な規模で絶滅のおそれのある種をリストアップした報告書を公表し、以後改訂が続けられている。わが国においても1989年に(財)日本自然保護協会ほかが「わが国における保護上重要な植物種の現状」を、1991年に環境庁(現環境省)が「日本の絶滅のおそれのある野生生物」として、脊椎動物編および無脊椎動物編を公表した。
兵庫県では、1995年に他県にさきがけて、地域版レッドデータブックとして「兵庫の貴重な自然-兵庫県版レッドデータブック-」を公表した。これには野生動植物のほか、植物群落、地形、地質、自然景観をも選定評価の対象としている。

 

usuiro.jpg その後、環境省では植物版レッドデータブックの作成および動物版レッドデータブックの改訂作業が進められ、レッドリストについては、全分野での作業が完了している。レッドデータブックについては、現在「爬虫類・両生類」「植物(維管束植物)」「植物(維管束植物以外)」「哺乳類」「鳥類」「汽水・淡水魚類」が発行されているところである。
 兵庫県では、前回県版レッドデータブックを発行して8年が経過し、その後の新たな情報の蓄積や、前回作成時にあまり得られなかった生物分野の情報収集が進んできた。これらの情報に基づく選定・評価の見直しが必要となってきたため、今回「改訂・兵庫の貴重な自然-兵庫県版レッドデータブック-」を作成したものである。

 

 

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◎兵庫県版レッドデータブック2003の入手方法◎
財団法人ひょうご環境創造協会で販売中、1部3,000円(消費税込み、送料別380円)
〒654-0037 神戸市須磨区行平町3-1-31(TEL 078-735-2738)


選定・評価の対象
選定・評価の体制
選定・評価の考え方
貴重性評価の区分(カテゴリ)
選定・評価結果の概要
種リスト(県内分布を含む)
□2003年以降のリストの変更等(未改訂の分野)

 

選定・評価の対象 HRDB2003

 兵庫県下の貴重な自然として、野生動植物、植物群落、地形、地質、自然景観を対象に選定・評価を行った。対象とする野生動植物は、生物学的知見(分類、分布、生態など)が比較的蓄積されている分類群とした。今回の改訂では、旧兵庫県版レッドデータブックで選定対象とした分類群に、新たにクモ類、ウニ類、ナマコ類、甲殻類、星口類、ユムシ類、ゴカイ類、花虫類や蘚苔類が加わった。また、対象とする野生動植物の範囲は、原則として陸産、淡水産及び陸域と密接な関係を持つ海岸域の生物とし、純海産の野生生物は対象外とした。選定・評価の対象分野を以下に示す。

 

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対象分野
動物 脊椎動物 哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類
無脊椎動物

昆虫類、クモ類、貝類、その他無脊椎動物{ナメクジウオ類(原索動物門頭索動物亜門ナメクジウオ綱)、

ウニ類(棘皮動物門ウニ綱)、ナマコ類(棘皮動物門ナマコ綱)、コケムシ類(触手動物門コケムシ綱)、

甲殻類(節足動物門甲殻綱)、星口類(星口動物門)、ユムシ類(ユムシ動物門)、ゴカイ類(環形動物門ゴカイ綱)、

ウズムシ類(扁形動物門ウズムシ鋼)、花虫類(刺胞動物門花虫綱)}

  *( )内は文部省「学術用語集 動物学編(増訂版)」、昭和63年3月の分類名を表す。以下これらの分野は~類と記す。
植物 維管束植物 (シダ植物、種子植物)
蘚苔類
淡水産藻類 (藻類のうち淡水産の藍藻綱、紅藻綱、褐藻綱、緑藻綱、車軸藻綱)
植物群落
 
地形・地質・自然景観
 

選定・評価の体制 HRDB2003

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 改訂においては、各分野の専門家による「貴重な野生生物等選定委員会」を設置し、選定の考え方、貴重性評価の考え方などについて検討をいただいた。また、各分野における具体的な選定、貴重性評価、県内の分布状況などについては、全体を6つの分野に分け、県内の分布に詳しい専門家や地域の研究者による「貴重な野生生物等分野別専門委員会」などを設置し、具体的な選定・評価について検討いただいた。委員会では、主に旧兵庫県版レッドデータブック以降の収集文献や有識者の情報を集約したものを、選定評価検討資料とした。一部、既存情報が極めて少ない分野においては、補足的に現地調査を行い選定評価資料にまとめた。さらに、詳細に検討を行う必要が生じた場合には、それぞれの分野で専門的な知見をお持ちの専門家の方に検討に加わっていただいたり、個別に意見をいただき検討に反映させた。
 

選定・評価の考え方 HRDB2003

選定・評価の考え方は、動植物、植物群落、地形・地質及び自然景観の4分野それぞれについて以下に示す。

 

□動植物 

 各分類群ごとの選定理由は、下の①~④のとおり設定した。脊椎動物及び無脊椎動物については、文献や有識者からの聞き取りなどにより、生息分布情報を整理した結果をもとに、各委員が重要と思われる種をリストアップし、これに対して検討を加え選定・評価を行った。既存情報が極めて少ない分類群については、必要に応じて補足的な現地調査を行った。植物のうち維管束植物については、シダ植物以上の高等植物を対象に標本をもとに検討を行い、選定・評価を行った。蘚苔類及び淡水産藻類については、既存の知見や補足的な現地調査をもとに、特筆すべきものを選定し評価を行った。

 

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① 鳥類
○ 人為性
(人為により大きな影響を受けている。)
個体数激減 生息環境、繁殖環境の激変により、個体数が近年激減している。
分布域激減 生息環境、繁殖環境の激変により、その分布域が近年激減している。
餌の減少 近年、餌となる野生動植物が著しく減少している。
○ 生態の特殊性
(生息基盤の脆弱性)
 
特殊生息環境 わずかの面積しかない環境又は開発による影響を受けやすい環境など、休息・採餌環境として特殊な環境を必要とする。
特殊繁殖環境 特殊な営巣場所、繁殖期間中の限定された採餌環境など、特殊な繁殖環境を必要とする。
餌の特殊性 特定の動物など、餌の種類が限られている。
○ 学術性(希少性) 局地的繁殖 繁殖地が極限している。
希少 本来、個体数が極めて少ない。

 

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② 昆虫類
○ 人為性
(人為により大きな影響を受けている。)
個体数激減 個体数が近年激減している。
生息環境激変 生息環境が激変、失われている。
○ 生息環境の特殊性
(生息基盤の脆弱性)
特殊生息環境 わずかの面積しかない環境又
   
   
   
は開発による影響を受けやすい環境など、特殊な生息環境を必要とする。
○ 学術性 分布が極限 分布域が極限されている。
分布の限界 南限、北限など生息地が分布の限界になっている。
希少 個体数が極めて少ない。

 

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③ 動物(鳥類・昆虫を除く)
○ 人為性
(人為により大きな影響を受けている。)
個体数激減 生息環境の激変により、個体数が近年激減している。
分布域に影響 生息環境の激変により、その分布に多大な影響を受けている。
営利目的捕獲 個体数が極めて少なく、営利目的など、愛好者の捕獲、採取の危険にさらされている。
○ 生息環境の特殊性
(生息基盤の脆弱性)
特殊生息環境 わずかの面積しかない環境又は開発による影響を受けやすい環境など、特殊な生息環境を必要とする。
地域的孤立 県内の特定地区に孤立して生息しており、環境の変化が種の生存に直接影響する。
○ 学術性 分布が極限 分布域が極限されている。
分布の限界 南限、北限など生息地が分布の限界になっている。
希少 個体数が極めて少ない。

 

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④ 植 物
〇(人為により大きな影響を受けている。) 生育環境破壊 開発などによる生育環境の破壊の進行により著しく減少している。
観賞用など採取 観賞用などの目的で採取されることにより著しく減少している。
○ 環境・生態の特殊性(生育基盤の脆弱性) 特殊な生育環境 湿地、海浜、湧水中、汽水中、特殊岩地帯などのわずかの面積しかない環境又は開発による影響を受けやすい環境にのみ生育する。
特異な生態 寄生、腐生などの特異な生態のため、環境の変化による影響を受けやすい。
○ 学術性 特殊な分布 隔離分布あるいは自生地が極限されるなど、特定の地域(場所)にしか見られない。
分布の限界 南限、北限など自生地が分布の限界になっている。
希少 個体数が極めて少ない。

 

 

□ 植物群落

次の10の評価項目について評価(5点満点)を行い、合計点数(50点満点)が30点以上になるものを貴重な植物群落として選定した。

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○ 希少さ・繊細さ ・分布の広がり
・分布の位置(分布域の中での位置)
・人為攪乱の影響度
・再現性
・放置した場合の将来予測
○ 自然の豊かさ ・空間的安定性
・種多様性
・貴重な植物の包含性
・自然度
・風土・景観性
 また、植物群落のうち、植生のタイプが異なるが、距離が近接し、保全を図るためには地域一体の生態系として捉えた方が適切な複数の単一群落については、それらを一つにまとめ「群落複合」として選定・評価を行った。

 

 

□ 地形・地質

地形、地質の分類は別に示すとおりであるが、これらに分類される地形、地質の中で次の理由に該当するものを貴重なものとした。

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○ 自然や土地の成り立ちを示す典型的なもの
○ わが国で初めて記載、説明されたもの
○ 学術的に貴重なもの(希少なもの、分布が限定されているものなど)
○ 自然環境と人間生活との関わりを密接に示すもの
○ 形状、分布がユニークなもの

 

 

□ 自然景観

視覚的な美しさと緑や自然の質(生態系)との包合概念としてとらえて、景観資源的価値と自然的価値の両面から評価されるものを貴重な自然景観として選定した。
 

 

貴重性評価の区分 HRDB2003

 貴重性評価の区分は、動植物及び植物群落・地形・地質・自然景観の2分野それぞれについて以下に示す。

 

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(1) 動植物の種(亜種、変種を含む)
 環境省による改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物(以下、改訂・日本版レッドデータブック)のカテゴリー区分(定性的要件)に準じて、貴重性のランクを設定した。改訂・日本版レッドデータブックでは、「絶滅」というカテゴリーが設定されているが、兵庫県版では、厳密に絶滅と判断できなくても県内には生息・生育しなくなったと推定されるものも含めて「今見られない」というカテゴリーを設定した。また、改訂・日本版レッドデータブックにはないものとして、要注目種、地域限定貴重種、というカテゴリー区分を置いた。
カテゴリー
① 今見られない

兵庫県内での確認記録、標本があるなど、かつては生息・生育していたと考えられるが、現在は見られなくなり、

生息・生育の可能性がないと考えられる種。鳥類にあっては、過去には兵庫県内で毎年または通年見られたが、

現在は稀に迷鳥としてしか見られなくなった種については、この区分に含めることとした。

② Aランク 改訂・日本版レッドデータブックの絶滅危惧Ⅰ類に相当。
兵庫県内において絶滅の危機に瀕している種など、緊急の保全対策、厳重な保全対策の必要な種。
③ Bランク 改訂・日本版レッドデータブックの絶滅危惧Ⅱ類に相当。
兵庫県内において絶滅の危険が増大している種など、極力生息環境、自生地などの保全が必要な種。
④ Cランク 改訂・日本版レッドデータブックの準絶滅危惧に相当。
兵庫県内において存続基盤が脆弱な種。
⑤ 要注目種 最近減少の著しい種、優れた自然環境の指標となる種などの貴重種に準ずる種。
⑥ 地域限定貴重種

兵庫県全域で見ると貴重とはいえないが、兵庫県内の特定の地域においてはA、B、C、要注目の

いずれかのランクに該当する程度の貴重性を有する種。

⑦ 要調査種

改訂・日本版レッドデータブックの情報不足に相当。
本県での生息・生育の実態がほとんどわからないことなどにより、現在の知見では貴重性の評価ができないが、

今後の調査によっては貴重種となる可能性のある種。

 

 

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(2) 植物群落・地形・地質・自然景観
 兵庫県において貴重として選定されたものについて、その貴重性の程度を3段階にランクづけした。また、貴重とまではいえないがこれに準ずるものとして「要注目」というランクを置いた。
カテゴリー
① Aランク 規模的、質的にすぐれており貴重性の程度が最も高く、全国的価値に相当するもの。
② Bランク Aランクに準ずるもので、地方的価値、都道府県的価値に相当するもの。
③ Cランク Bランクに準ずるもので、市町村的価値に相当するもの。
④ 要注目 人間生活との関わりを密接に示すもの、地元の人に愛されているものなど、貴重なものに準ずるものとして保全に配慮すべきもの。
 なお、植物群落については、このランクづけを10の項目の点数評価で行ったが、ランク区分は合計点数(50点満点)に応じて次のように設定した。また、群落複合については、構成する各植物群落のうち最も高いランクをその群落複合のランクとした。
 
① Aランク 40点以上
② Bランク 35~39点
③ Cランク 30~34点
④ 要注目 29点以下であっても特に注目すべきもの
 

選定・評価結果の概要 HRDB2003

 今回選定を行ったもののランク別の数は、次の表に示すとおりである。

 

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〔動 物〕                                                                                                                                          (種類数)
区分\ランク   今見ら
れない

ランク

ランク

ランク
要注目

地域

限定

要調査 合 計
脊椎動物 哺乳類 0 2 2 1 2 0 1 8
鳥 類 7 9 41 34 6 0 0 97
爬虫類 0 2 0 2 3 0 1 8
両生類 0 2 6 7 1 0 0 16
魚 類 2 32 13 3 1 0 3 54
(小 計)   9 47 62 47 13 0 5 183
無脊椎動物 昆虫類 8 26 40 79 40 20 40 253
クモ類 0 6 5 6 5 0 11 33
貝 類 6 29 9 15 8 2 0 69
その他 0 10 18 20 0 1 3 52
(小 計)   14 71 72 120 53 23 54 407
合  計   23 118 134 167 66 23 59 590

 

 

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〔植 物〕                                                                                                                                    (種類数)
区分\ランク   今見ら
れない

ランク

ランク

ランク

地域

限定

要調査 合 計
維管束植物 シダ植物 0 44 22 18 2 7 93
種子植物 離弁花類 0 52 64 57 0 6 179
合弁花類 0 63 58 51 3 3 178
単子葉植物 0 83 56 60 0 13 212
(小 計) 0 198 178 168 3 22 569
(小 計) 0 242 200 186 5 29 662
蘚苔類 苔 類 0 21 10 13 0 0 44
蘚 類 0 19 18 25 0 0 62
(小 計) 0 40 28 38 0 0 106
淡水産藻類  5 3 2 3 0 4 17
合  計   5 285 230 227 5 33 785

 

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〔植物群落・地形・地質・自然景観〕                                                                                                   (箇所数)   

区分\ランク
ランク

ランク

ランク
要注目 合 計
植物群落 単一群落 43 110 198 32 383
群落複合 13 5 7 1 26
(小 計) 56 115 205 33 409
地 形 17 33 39 0 89
地 質 25 64 59 15 163
自然景観 9 76 122 0 207
合  計 107 288 425 48 868
 

種リスト HRDB2003

カテゴリ別種リスト、50音別種リスト及び県内分布(分類群別)種リストを次の表に示す。

 

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〔動 物〕                                                                       県内分布は分類群別種リストになっている
区 分  種類数 カテゴリ別 50音別 県内分布
脊椎動物 哺乳類 8 種リスト 種リスト 種リスト
鳥 類 97 種リスト 種リスト 種リスト
爬虫類 8 種リスト 種リスト 種リスト
両生類 16 種リスト 種リスト 種リスト
魚 類 54 種リスト 種リスト 種リスト
無脊椎動物 昆虫類 253 種リスト 種リスト 種リスト
クモ類 33 種リスト 種リスト 種リスト
貝 類 69 種リスト 種リスト 種リスト
その他 52 種リスト 種リスト 種リスト
合  計   590      

〔県内分布〕

○・・・1994年以降に確認されている地域

    △・・・1993年以前にしか確認されていない地域

 

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〔植 物〕                             ※県内分布は分類群別種リストになっている
区 分  種類数 カテゴリ別 50音別 県内分布
維管束植物 シダ植物 93 種リスト 種リスト 種リスト
種子植物 離弁花類 179 種リスト 種リスト 種リスト
合弁花類 178 種リスト 種リスト 種リスト
単子葉植物 212 種リスト 種リスト 種リスト
蘚苔類 苔 類 44 種リスト 種リスト 種リスト
蘚 類 62 種リスト 種リスト 種リスト
淡水産藻類  17 種リスト 種リスト 種リスト
合  計   785      

〔県内分布〕○・・・これまでに確認されている地域

 

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〔植物群落・地形・地質・自然景観〕    
区分\ランク 箇所数 カテゴリ別 50音別 県内分布
植物群落 単一群落 383 箇所リスト -- --
群落複合 26 箇所リスト -- --
地 形 89 箇所リスト -- --
地 質 163 箇所リスト -- --
自然景観 207 箇所リスト -- --
合  計 868