選定・評価の考え方 HRDB2003
選定・評価の考え方は、動植物、植物群落、地形・地質及び自然景観の4分野それぞれについて以下に示す。
□動植物
各分類群ごとの選定理由は、下の①~④のとおり設定した。脊椎動物及び無脊椎動物については、文献や有識者からの聞き取りなどにより、生息分布情報を整理した結果をもとに、各委員が重要と思われる種をリストアップし、これに対して検討を加え選定・評価を行った。既存情報が極めて少ない分類群については、必要に応じて補足的な現地調査を行った。植物のうち維管束植物については、シダ植物以上の高等植物を対象に標本をもとに検討を行い、選定・評価を行った。蘚苔類及び淡水産藻類については、既存の知見や補足的な現地調査をもとに、特筆すべきものを選定し評価を行った。
① 鳥類 |
○ 人為性
(人為により大きな影響を受けている。) |
個体数激減 |
生息環境、繁殖環境の激変により、個体数が近年激減している。 |
分布域激減 |
生息環境、繁殖環境の激変により、その分布域が近年激減している。 |
餌の減少 |
近年、餌となる野生動植物が著しく減少している。 |
○ 生態の特殊性
(生息基盤の脆弱性)
|
特殊生息環境 |
わずかの面積しかない環境又は開発による影響を受けやすい環境など、休息・採餌環境として特殊な環境を必要とする。 |
特殊繁殖環境 |
特殊な営巣場所、繁殖期間中の限定された採餌環境など、特殊な繁殖環境を必要とする。 |
餌の特殊性 |
特定の動物など、餌の種類が限られている。 |
○ 学術性(希少性) |
局地的繁殖 |
繁殖地が極限している。 |
希少 |
本来、個体数が極めて少ない。 |
② 昆虫類 |
○ 人為性
(人為により大きな影響を受けている。) |
個体数激減 |
個体数が近年激減している。 |
生息環境激変 |
生息環境が激変、失われている。 |
○ 生息環境の特殊性
(生息基盤の脆弱性) |
特殊生息環境 |
わずかの面積しかない環境又
は開発による影響を受けやすい環境など、特殊な生息環境を必要とする。 |
○ 学術性 |
分布が極限 |
分布域が極限されている。 |
分布の限界 |
南限、北限など生息地が分布の限界になっている。 |
希少 |
個体数が極めて少ない。 |
③ 動物(鳥類・昆虫を除く) |
○ 人為性
(人為により大きな影響を受けている。) |
個体数激減 |
生息環境の激変により、個体数が近年激減している。 |
分布域に影響 |
生息環境の激変により、その分布に多大な影響を受けている。 |
営利目的捕獲 |
個体数が極めて少なく、営利目的など、愛好者の捕獲、採取の危険にさらされている。 |
○ 生息環境の特殊性
(生息基盤の脆弱性) |
特殊生息環境 |
わずかの面積しかない環境又は開発による影響を受けやすい環境など、特殊な生息環境を必要とする。 |
地域的孤立 |
県内の特定地区に孤立して生息しており、環境の変化が種の生存に直接影響する。 |
○ 学術性 |
分布が極限 |
分布域が極限されている。 |
分布の限界 |
南限、北限など生息地が分布の限界になっている。 |
希少 |
個体数が極めて少ない。 |
④ 植 物 |
〇(人為により大きな影響を受けている。) |
生育環境破壊 |
開発などによる生育環境の破壊の進行により著しく減少している。 |
観賞用など採取 |
観賞用などの目的で採取されることにより著しく減少している。 |
○ 環境・生態の特殊性(生育基盤の脆弱性) |
特殊な生育環境 |
湿地、海浜、湧水中、汽水中、特殊岩地帯などのわずかの面積しかない環境又は開発による影響を受けやすい環境にのみ生育する。 |
特異な生態 |
寄生、腐生などの特異な生態のため、環境の変化による影響を受けやすい。 |
○ 学術性 |
特殊な分布 |
隔離分布あるいは自生地が極限されるなど、特定の地域(場所)にしか見られない。 |
分布の限界 |
南限、北限など自生地が分布の限界になっている。 |
希少 |
個体数が極めて少ない。 |
□ 植物群落
次の10の評価項目について評価(5点満点)を行い、合計点数(50点満点)が30点以上になるものを貴重な植物群落として選定した。
○ 希少さ・繊細さ |
・分布の広がり |
・分布の位置(分布域の中での位置) |
・人為攪乱の影響度 |
・再現性 |
・放置した場合の将来予測 |
○ 自然の豊かさ |
・空間的安定性 |
・種多様性 |
・貴重な植物の包含性 |
・自然度 |
・風土・景観性 |
また、植物群落のうち、植生のタイプが異なるが、距離が近接し、保全を図るためには地域一体の生態系として捉えた方が適切な複数の単一群落については、それらを一つにまとめ「群落複合」として選定・評価を行った。 |
□ 地形・地質
地形、地質の分類は別に示すとおりであるが、これらに分類される地形、地質の中で次の理由に該当するものを貴重なものとした。
○ 自然や土地の成り立ちを示す典型的なもの |
○ わが国で初めて記載、説明されたもの |
○ 学術的に貴重なもの(希少なもの、分布が限定されているものなど) |
○ 自然環境と人間生活との関わりを密接に示すもの |
○ 形状、分布がユニークなもの |
□ 自然景観
視覚的な美しさと緑や自然の質(生態系)との包合概念としてとらえて、景観資源的価値と自然的価値の両面から評価されるものを貴重な自然景観として選定した。