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第2部 第1章 第2節 自動車公害

 

第2節 自動車公害

 

第1 大気汚染

 

1 二酸化窒素濃度の推移(資料編第4-18表 経年変化(2))

 

 平成13年度の全測定局(28局)の二酸化窒素濃度年平均値の単純平均は0.030ppmであり、近年はほぼ横ばいの状況にある。

 また、環境基準を達成していない局は、平成8年度の28局中15局以降減少し、平成13年度は28局中4局である。(第2-1-13図)

資料編第4-18表 年間測定値(1))

 

第2-1-12図 自動車排出ガスによる大気汚染の推移

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第2-1-13図 二酸化窒素の環境基準達成状況の推移

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2 阪神臨海部の自動車排出ガス(二酸化窒素)の現況

 

 阪神臨海部の主要国道においては、県及び政令市により自動車排出ガス測定局が8局設置さ
れている。

 これらの局の二酸化窒素濃度測定結果及び環境基準の達成状況は第2-1-14図のとおりである。

 国道43号沿道の3局で環境基準未達成である。

 

第2-1-14図 自動車排出ガス(二酸化窒素)による大気汚染の現状(阪神臨海部)

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3 浮遊粒子状物質濃度の推移(資料編第4-18表 経年変化(4))

 

 平成13年度の全測定局(18局)の浮遊粒子状物質の年平均値の単純平均は0.037mg/m3であり、また、平成元年度以降、継続して測定している局(7局)の年平均値の単純平均は0.040mg/m3であり、減少傾向にある。

 環境基準の長期的評価では、18局中8局で環境基準を達成している。(平成12年度は17局中14局で達成)。

 なお、環境基準未達成局10局の内訳をみると、日平均値の年間2%除外値が環境基準値(日平均値が0.10mg/m3)を超過した局が2局、日平均値が2日以上連続で環境基準値(0.10mg/m3)を超過した局が8局となっている。

 一方、短期的評価では、すべての局で日平均値が0.10mg/m3を超えた日があり、環境基準は達成されていない。(資料編第4-18表 年間測定値(3))

 平成13年度は、黄砂の影響が著しい日及び著しい逆転層が出現した日があるなど気象の影響により環境基準を達成した測定局が減少した。

 

第2-1-15図 浮遊粒子状物質の環境基準の達成状況(長期的評価)

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4 一酸化炭素濃度の推移(資料編第4-18表 経年変化(3))

 

 平成13年度の全測定局(24局)の一酸化炭素濃度の年平均値の単純平均は0.7ppmであり、昭和53年度以降減少傾向にある。

 また、全測定局で環境基準を達成している。

 

5 自動車排出ガス対策

 

 平成5年11月に、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(以下「自動車NOx法」という。)に基づき策定した「兵庫県自動車排出窒素酸化物総量削減計画」(第2-1-17図)等により、各種施策を行ってきた。

 二酸化窒素に係る環境基準が達成されておらず、また、近年、ディーゼル車から排出される粒子状物質による人の健康に対する影響の懸念があることから、平成13年6月に自動車NOx法が、「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(以下「自動車NOx・PM法」という。)に改正された。この改正法に基づき今後新たな「兵庫県自動車排出窒素酸化物及び粒子状物質総量削減計画」を策定し、自動車排出ガス対策を推進する。

 また、平成7年7月に制定した「環境の保全と創造に関する条例」では、自動車公害防止対策の計画的な実施、事業者による自主的な自動車排出窒素酸化物の排出抑制、自動車停止時の原動機の停止等を規定しており、これらの施策を総合的に推進している。

 

(1)自動車単体規制

 

 自動車排出ガスによる大気汚染を防止するため、自動車から排出される一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物及び粒子状物質等について、大気汚染防止法及び道路運送車両法に基づく規制が行われている。

 規制の経緯は以下のとおりである。

 中央環境審議会により「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」の答申が平成元年12月(第1次答申)、平成8年10月(中間答申)、平成9年11月(第2次答申)、平成10年12月(第3次答申)、平成12年12月(第4次答申)及び平成14年4月(第5次答申)になされた。これらの答申に基づく規制が、順次強化・実施されている。

 第1次答申

(短期目標)

・ガソリン・LPG重量車の平成4年規制

・ディーゼル中・重量車の平成5~6年 規制(長期規制)

・ガソリン・LPG中・重量車の平成6~7 年規制

・ディーゼル車の平成9~11年規制

 中間答申

・二輪車に対する平成10~11年規制

・ガソリン・LPG軽貨物・中・重量車の平成10年規制

 第2次答申

(新短期目標)

・ガソリン・LPG車の平成12~14年規制

(新長期規制)

・ガソリン・LPG車の平成17年規制(詳細は 別途答申)

 第3次答申

(新短期目標)

・ディーゼル車の平成14~16年規制

(新長期規制)

・ディーゼル車の平成19年規制

 第4次答申

・ディーゼル車の新長期目標を2年前 倒し

 第5次答申

・新長期目標の数値を設定

 

第2-1-16図 ディーゼル自動車規制値の推移

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第2-1-17図 自動車公害対策の体系

《兵庫県自動車排出窒素酸化物総量削減計画の概要》

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(2)車種規制の実施

 

 窒素酸化物等総量の少ない車種への早期転換を促進するため、自動車NOx・PM法に基づき、窒素酸化物対策地域及び粒子状物質対策地域(神戸市等11市2町)において、車種規制が行われることとなった。第2-1-3表で示す窒素酸化物排出基準及び粒子状物質排出基準が定められ、窒素酸化物排出基準等に適合しない自動車の対策地域内での登録ができなくなる。新車については、平成14年10月1日から、使用過程車については平成15年10月1日から適用される。

 

第2-1-3表 窒素酸化物排出基準及び粒子状物質排出基準

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(3)低公害車の普及促進

 これまで、自動車排出窒素酸化物総量削減計画に基づき、窒素酸化物等の排出量の少ない低公害車の普及を進めてきた。
 平成13年3月末現在の県下における普及状況は第2-1-4表のとおり。

 公用車への低公害車等の導入

 兵庫県では、平成元年度にメタノール自動車を1台導入して以後、公用車の低公害車への代替を進め、平成13年度末には、天然ガス自動車39台、メタノール自動車1台及びハイブリッド自動車31台の計71台を使用している。

 民間への普及促進

 低公害車の民間への普及促進を図るため、市町等と協調し、導入事業者に対する助成を行っている。
 また、県や特定地域の市、国の関係機関及び事業者等から成る「兵庫県低公害車普及促進協議会」を設置し、低公害車の普及方策の検討などを行っている。

 

(4)京阪神6府県市指定低排出ガス車(「LEV-6」)の普及促進

 

 一般に市販されているガソリン車、ディーゼル車及びLPG車のなかにも窒素酸化物等の排出量が少ない型式の自動車が販売されていることから、平成12年8月に京都府・大阪府・兵庫県・京都市・大阪市・神戸市からなる「京阪神六府県市自動車排出ガス対策協議会」を設置し、窒素酸化物等の排出量が少ない車を「低排出ガス車(LEV-6)」として指定し、低公害車と併せて普及を促進している。

 

(5)最新規制適合車等購入資金の融資(地球環境保全資金融資制度)

 

 中小企業者等が、現に使用しているディーセル車を窒素酸化物排出量等の少ない最新規制適合車に買い替える場合やハイブリッド自動車や天然ガス自動車等の低公害車を購入する場合について、購入資金を低利に融資する制度を設けている。

 平成13年度には、最新規制適合車32台に対して205,204干円の融資を行った。

 また、資金融資利用者に対する利子補給制度も設けている。

 

第2-1-4表 低公害車の普及状況

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(6)自動車走行量の抑制

 

 兵庫県内の自動車保有台数はおおむね増加してきており(第2-1-18図)、自動車単体の規制強化が、自動車交通量の増大で相殺されていることから、自動車走行量抑制のための諸対策を総合的に進めて行くことが必要である。

 県では、適正運転の実施の徹底を図るため、平成5年度からエコドライビング運動を提唱しており、運動の一環として、パンフレット等の普及啓発資材の配布などによる啓発活動を展開している。

 一方、上述のような人流対策に加え、物資輸送の効率を高めることによって貨物自動車走行量の抑制を図る物流対策も重要な対策であり、共同輸配送等による配送効率の改善、物流施設の整備等による輸送ルートの適正化、共同一貫輸送等の輸送手段の転換など物資輸送の合理化対策を積極的に進める必要がある。

 

第2-1-18図 自動車保有台数の推移

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(7)交通流円滑化、分散化

 

 自動車交通に起因する大気汚染、騒音、振動の低減を図るためには、道路機能や地域の特性に応じた安全で円滑な交通流を形成することが重要である。

 このため、公安委員会では、最高速度、駐(停)車禁止、バス専用・優先レーン等の都市総合交通規制を推進するとともに、都市部を中心とした交通管制システムの拡大整備、主要幹線道路を重点とした信号機の路線自動感応系統化、プログラム多段系統化、全・半感応化等の高度化を計画的に推進して、交通流の円滑化を図っている。

 また、円滑な交通流を阻害する違法駐車や騒音、振動を拡大する過積載車両に対する指導取り締まりに努め、平成13年中は、駐停車違反95,081件、積載違反1,782件の取り締まりを行って駐車秩序の確立と過積載の防止に努めた。

 さらに、交通流の分散を図るため、バイパス道路の建設を進めるとともに、交通流の円滑化が窒素酸化物等排出量の減少に寄与することから、右折レーンの設置、立体交差化等を推進している。

 

第2 騒音・振動

 

1 騒音の環境基準の達成状況(資料編第4-20表

 

 平成13年度における県内の主要な道路沿道の騒音の測定結果は、238測定地点のうち、50%の測定地点では、全時間帯(昼、夜)について環境基準を達成している。

 しかし、芦屋市春日町等約36%の地点では、全時間帯(昼、夜)について環境基準を超過し、柏原町柏原等約14%の地点では一部の時間帯で同基準を超過している。

 なお、環境基準の達成状況は近年横ばいで推移している。

 

2. 阪神臨海部における自動車騒音の現況

 

 県及び市による測定結果は、第2-1-19図のとおりである。

 阪神臨海部の主要幹線道路沿道の約半数の地点で環境基準未達成である。

 

3 道路周辺における騒音・振動対策

 

(1)騒音規制(自動車単体対策)

 

 自動車からの騒音規制は、「騒音規制法」に基づく許容限度の設定及び「道路運送車両法」に基づく保安基準の設定により行われている。

 新車に対しては、自動車の種別ごとに昭和46年から、加速走行騒音、定常走行騒音及び排気騒音の規制が開始され、加速走行騒音は、その後逐次規制が強化されている。二輪車に対しては、昭和61年6月から、近接排気騒音の規制が開始され、四輪車のうち、乗用車に対しては、昭和63年6月から、その他の四輪車に対しては、平成元年6月から、近接排気騒音の規制が実施されている。

 また、平成4年11月及び平成7年2月には、中央環境審議会から「今後の自動車騒音低減対策のあり方について(自動車単体対策関係)」が答申された。

 これにより、6年~10年以内に定常走行騒音は昭和46年規制に比べ1.0~6.1dB、近接排気騒音は3~11dBの低減を行うなどとされており、本答申を踏まえ、平成10年から平成13年にかけて規制が強化された。

 環境基準達成になお長期間を要する区間については、21世紀初頭までに道路に面して立地する住宅地等における騒音を夜間におおむね要請限度以下に抑えることなどを当面の目標に掲げ、今後、自動車騒音の低減のための施策展開を図ることとしている。

 さらに、平成7年12月1目には警察庁、環境庁、通産省、運輸省、建設省5省庁の連名により、「道路交通騒音の深刻な地域における対策の実施方針について」が各都道府県知事、政令市長あて通知された。

 最高裁判決で司法判断が下された国道43号以外にも、各地に道路交通騒音の深刻な地域が存在することから、この通知に基づき、国及び自治体等が一致協力して地域に応じた取り組みを進めていくこととしている。

 

第2-1-5表 自動車騒音規制の推移

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第3 国道43号等幹線道路対策

 

1 国道43号対策

 

(1)環境の現況

 

ア 大気汚染物質

 国道43号沿道の大気汚染の状況は、平成13年度において、5局中3局で二酸化窒素(NO2)及び浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準を達成しておらず、依然として厳しい状況にある。

イ 騒音

 国道43号沿道の夜間の騒音は、道路構造対策の概成により低減され、一部の地点では環境基準を達成している(第2-1-6表)。

 

(2)国道43号・阪神高速道路神戸線環境対策連絡会議での取組

 

 平成7年7月、国道43号・阪神高速道路訴訟において、国等に対する損害賠償請求の一部を認容する最高裁判決が下された。このため、国の地方機関、県、県警本部、関係市及び阪神高速道路公団で構成する「国道43号・阪神高速神戸線環境対策連絡会議」が、平成7年8月に設置され、道路構造対策をはじめ、交通流対策や沿道対策の総合的な環境対策について検討が行われ、各種対策が講じられている。

○道路構造対策(平成10年4月概成)

・阪神高速道路 低騒音舗装の敷設、高遮音壁・高架裏面吸音板の設置等

・国道43号  直進片側3車線化、低騒音舗装の敷設、遮音壁の設置等

○交通流対策(平成10年4月から実施)

 ・夜間の大型車等の車両通行帯規制等

○沿道対策(現在実施中)

・広域防災帯の整備、沿道住民によるまちづくりへの支援等

 

第2-1-19図 阪神臨海部における自動車騒音の現況

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第2-1-6表 国道43号の騒音レベルの推移(夜間)

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(3)関係5省庁による「当面の取組」等

 

 平成12年1月には尼崎公害訴訟の一審判決で浮遊粒子状物質による沿道住民の健康被害が認められ、大気環境改善のための新たな取組が必要となったことから、同年6月、関係5省庁において、「当面の取組」(阪神高速湾岸線へ交通を転換するための道路整備、環境ロードプライシング検討、事業者への協力要請等)が取りまとめられた。

 なお、平成12年12月には、「当面の取組」の内容を含めた尼崎公害訴訟の和解が成立した。

 

2 その他の幹線道路の環境対策

 

 幹線道路における騒音の環境基準達成状況については第2-1-7表のとおりである。

 国道43号以外の地域においても、地域に応じた取組を行う必要があることから、国・市町・関係機関と連携しながら、低騒音舗装等の道路構造対策、バイパス整備による交通流の分散化、緩衝緑地確保等の沿道対策や交通取締りの強化等を順次進めている。

 

第2-1-7表 県下の主要な道路の騒音の環境基準達成状況

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