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第2部 第6章 担い手の育成とパートナーシップの形成

 

第1節 環境学習・教育の推進

 

 県民や事業者が、それぞれの役割に応じ、自発的・積極的に環境の保全と創造に取り組むとともに、互いに協力と連携のもとに環境に適合した社会を形成することを促進するため、県では、環境に関する学習や教育の振興、環境に関する情報の提供や普及啓発に取り組んでいる。

平成10年度には市町が体系的・総合的な環境教育に取り組む際の指針となる環境教育プログラム(手引き書)を作成・配布し、平成14年度は実際に家庭・学校・地域等で環境学習に取り組めるよう「環境学習プログラム」を作成することとしている。

 また、平成11年度より「エコツーリズムバス運行支援事業」、「こども環境通信員」、「こども環境会議」を実施するなど、全県的な環境教育の推進を図っている。

 

第2-6-1表 主な環境学習・教育事業

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第2節 環境情報の収集・提供

 

第1 環境情報総合システム

 

1 目的

 

 環境行政を効果的かつ効率的に推進するために、関係する各部局、機関等で環境関連情報を共有し、必要な情報を迅速・的確に入手し、活用できるようにすることが必要不可欠である。
また、社会の構成員すべての参画と協働による環境問題への取り組みを推進するためには、正確かつ適切な情報提供を行い、それぞれの立場で環境問題への理解を深めることが求められる。

 このため、平成5年度から平成8年度にかけて、「環境情報総合システム」を整備し、関係各部局・機関のネットワークを構築して、情報の総合的・体系的な収集・管理を推進するとともに、インターネット、CD-ROM等、マルチメディアを利用して県民に情報提供を行うしくみを構築した。

 さらに、平成10年度以降は、各サブシステムの更新を行い、最新の情報通信技術を導入して、一層の効率化・高度化を推進するとともに、提供する情報の質の向上を図っている。

 

2 環境情報総合システムの構成

 

環境情報総合システムは、次の5つのサブシステムで構成されている。

 

ア 大気汚染常時監視システム

県下各地に設置した測定局から、大気汚染等に関する測定データを自動的に収集・管理し、光化学スモッグの監視等に活用している。

 

イ 大気管理システム

大気汚染に関する届出情報、発生源情報等のデータ管理を行う。

 

ウ 水質管理システム

水質汚濁に関する届出情報、発生源情報等のデータ管理を行う。

 

工 環境情報管理システム

関係各部局・関係機関等から、環境関連情報を収集整備し、インターネット等を利用して、一般県民に情報提供を行う。

 

オ 廃棄物管理システム

廃棄物に関する届出情報、発生源情報等のデータ管理を行う。

 

第2-6-1図 ネットワーク図

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第2 大気汚染状況の常時監視

 

1 大気汚染常時監視測定局の設置状況

 

 県下の大気汚染を常時監視し把握するため、県及び政令市(神戸市、姫路市、尼崎市、西宮市、明石市及び加古川市)では、それぞれ大気汚染常時監視局を設置し、大気汚染状況の常時測定を行っている。また、その他の市町では、必要に応じて測定局を設置し、常時監視を行っている。平成14年3月31日現在の測定局数は106局〔一般環境大気測定局75局(県設置16局、政令市設置42局、その他の市町設置16局、国設1局)、自動車排出ガス測定局30局(県設置8局、政令市設置21局(車道局含)、その他市町設置1局)〕である。

 

第2-6-2図 大気汚染常時監視網

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2 測定局及び測定項目の整備

 

 県においては、県域の大気汚染状況の変化に対応した測定局及び測定項目の整備・再配置を行い、適切かつ効率的な常時監視を行っている。(資料編第4-1表第4-16表参照)

 

3 常時監視とデータの情報提供

 

 平成13年度において大気汚染常時監視システムにより、毎時測定データを収集している県下の測定局は82局である。環境情報センターにおいては、これらのデータに基づき、大気汚染状況を常時監視するとともに、光化学オキシダント緊急時等の発令を行った。
また、緊急発令状況や毎時測定データ(速報値)をインターネットや携帯電話を利用して、県民にリアルタイムに情報発信している。

 

第2-6-2表 ホームページアドレス

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第2-6-3図 兵庫県環境局ホームページ

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4 大阪府とのデータの交換

 

 県では、広域的な大気汚染状況を常時監視するため、大阪府との間で「阪神広域大気汚染緊急時対策実施要綱」に基づいて、データ交換装置により、測定データを毎時交換している。

 

5 移動観測車とモニタリングボックス

 

 測定局の谷間となる地域や開発整備事業等環境変化が予想される地域で、現況の把握が必要な地域について、モニタリングボックス及び移動観測車(一般環境大気用及び自動車排出ガス用各1台、計4台)により、機動的な監視・測定を行っている。

 

第2-6-3表 一般環境大気用

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第2-6-4表 自動車排出ガス用

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6 水質自動観測所による監視・測定

 

県は、河川水質の自動監視・測定を行うため、水質自動監視所を加古川(滝野町上滝野柳原)及び千種川(赤穂市高雄)に設置している。

 

第3節 協力・連携による取組の推進

 

第1 団体などによる環境保全活動の取組

 

▼コラム 水生生物調査指導者養成講習会の様子

 

1 環境月間の実施

 

 1972年(昭和47年)6月5日から2週間、ストックホルムで国連人間環境会議が開催され、人類とその子孫のため人間環境の保全と改善を世界共通の努力目標として、その実現の意思を表明するため、「人間環境宣言」が採択された。

 この会議において、日本代表は、会議の開催を記念して毎年6月5日からの1週間を「世界環境週間」とすることを提唱し、国連ではこれを受けて「世界環境デー(6月5日)」を定めた。以来、世界各国で、この日に環境保全の重要性を認識し、行動の契機とするため諸行事が行われている。

 わが国では、昭和48年度から、この日を初日として「環境週間」を設けた。平成3年度からは、従来の週間の幅を拡大して「環境月間(6月)」を設定し、これまで以上に環境問題に対する国民の責務と自覚を促すとともに、将来に向かってよりよい環境を創出するための努力と決意を新たにする契機とするため、各種催し等が全国的に実施されている。

 さらに、平成5年11月に「環境基本法」が制定され、その中で6月5日を「環境の日」とし、環境の保全に関する関心と理解を深め、環境の保全に関する活動を行う意欲を高めるため、国及び地方公共団体は、その趣旨にふさわしい事業を実施するように努めることとされた。

 なお、県では、平成14年度の環境月間において、環境保全思想の普及と啓発のため、市町、県民、事業者等の協力を得て、「人と自然との共生」をテーマに環境月間の集い(地球と共生・ひょうごの集い2002)をはじめ、公害発生源の総点検違動、公害監視施設などの一般公開、海・川・道路等をきれいにする運動などの各種行事を展開した(第2-6-5表)。

 

2 ひょうごエコフェスティバル2002の開催

 

 地域の環境づくりや地球環境の保全についての理解と関心を深め、実践活動への参加の契機とするため、幅広い県民が興味を持って参加できるイベントを開催した。

開催日:平成14年10月12目(土)・13日(日)

場 所:阪急西宮スタジアム

内 容:自然環境、リサイクル等をテーマとしたNGO、企業、行政等による環境体験コーナー・展示、グリーンエネルキーメッセ

 

3 水質保全活動

 

(1)河川の水質汚濁防止協議会

 

 県下の主要な河川においては、流域の環境保全のため、関係行政機関や各種団体などで水質汚濁防止協議会を構成している。

 協議会では、水質事故等緊急時の連絡体制の整備を図っているほか、水質保全や河川愛護の普及啓発のため、一般の方にも参加を呼びかけて河川の清掃や流域のパパトロール、水生生物調査等の活動を行っている。

 なお、水質汚濁防止協議会の概要は、第2-6-6表のとおりである。

 

(2)水生生物調査

 

 川の中にはさまざまな生き物が生息しており、特に川底に住んでいる生き物は、その場所の川の環境を反映している。

 水生生物調査は、指導者のもとで、小中学生や一般の方々のだれもが30種類の指標生物を調べることにより、比較的簡単に水質の状況を判定することができる。
 県下でも、地域の身近な環境観察、環境教育の一環として、小中学生や一般県民の方々を中心に広く調査が実施されており、一部の行政機関においても調査を実施している。

 また、県では、水生生物調査に関する指導者の養成を目的として、小中学校の教員の方などを対象に水生生物調査指導講習会を実施しているとともに、調査の結果について集計している。

 平成13年度に調査結果報告のあった団体は54団体(述べ2173名)であり、調査地点数については第2-6-7表の通りである。

 

(3)河川環境保全活動の推進

 

 古くから河川は、洪水等を安全に流下させ、水害から生命財産を守ることのほかに、地域への水の供給源として私たちの暮らしを支えてきた。近年は、こうした河川の治水、利水機能に加え、都市化の進展に伴い、残された貴重な自然とのふれあいの一つとしての役割が注目されている。

 水と緑のオープンスペースである河川を美しく維持し守っていくために、県民一人ひとりが川を愛する心を持ち、積極的な河川愛護活動への参加を図る「ふるさと桜づつみ回廊」
などの河川環境の整備を行うとともに、毎年7月の「河川愛護月間」を中心に河川愛護思想の普及及び河川愛護活動への支援を図っている。

 平成14年度の概要は、次のとおりである。

 

1.河川愛護思想の普及

県内各小学校への「川の本」配布並びに関係各所へのポスター掲示及びちらし配布を行った。

 

2.河川愛護活動への支援

地元自治会等の河川愛護活動団体に対し、軍手、ゴミ袋等を配布した。

 

3.アドプトプログラムの実施

平成13年度より河川の一定区間を、活動団体と河川管理者で「養子縁組」し、活動団体で清掃美化、草刈、植栽等の活動を行ってもらう、アドプトプログラムを実施している。

平成14年度は7河川で実施する。

 

4 大気保全活動

 

(1)スターウォッチング・ネットワーク(星空継続観察)

 

 星の光は、大気を通過する間に弱められるが、特に大気中のほこりや水滴などは星の光を屈折させたり散乱させたりするので、星の見え方と大気の状態とは深い関係がある。

 昭和63年度から、環境庁の呼びかけで、全国で同時に星空を観察することによって、その地域の状況を把握してもらうとともに、大気環境保全に対する関心を深めてもらうことを目的として、一般の住民に年2回(夏、冬)観察目標を設定し(夏:夏の大三角形、冬:すばる星団)、星空を継続的に観察してもらう「スターウォッチング・ネットワーク(星空継続観察)」を実施している。

 

(2)光化学スモッグによるアサガオの被害観察

 

 植物は、大気汚染による環境の変化に極めて鋭敏であるため、大気汚染の優れた指標となる。特にアサガオは光化学オキシダントに対して敏感な植物の一つであり、光化学スモッグによる被害がアサガオの葉の表面に現れるという特性を利用して、汚染に対するものさし(指標生物)として活用することができる。

 平成4年度からアサガオの葉に現れる被害を観察することにより、光化学スモッグをはじめする大気の汚染状況及びその改善についての理解の促進を図ることを目的として「生物による大気汚染の観察実践活動事業」を県下の小中学校を対象に募集し実施した。

 その結果、平成13年度は光化学スモッグ広報等発令区域内の学校を中心に小学校56校、中学校15校の合計71校(他に自治体等での参加が3団体)の参加があり、これらの学校等で7月の上旬と中旬の2回にわたって、一斉にアサガオの葉に生する被害の程度を観察したところ、光化学スモッグによるアサガオヘの被害が観察地点のほほ全域で確認された。

 

(3)兵庫県大気環境保全連絡協議会

 

 地球の温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨等による地球規模の環境問題、窒素酸化物等による地域の大気環境問題の解決に資するため、県民・事業者・行政が一体となり、相互に協力し行動するとともに、大気環境保全に関する思想の普及及び意識の高揚を図ることを目的として、住民団体、工場・事業場、運輸関係、市町及び県等を会員として、平成4年6月に設立された。
地域別研修会の開催、情報誌「あおぞら」の発行、アイドリング・ストップ運動の推進、環境保全に関する惰報資料の提供、環境教育用のビデオの貸し出し、県・市町及び関係団体事業に対する協力支援等の活動を展開している。

 

5 自動車公害防止活動

 

(1)エコドライビング運動、アイドリング・ストップ運動

 

 窒素酸化物等による大気汚染は、自動車の保有台数の増加、ディーゼル化及び大型化等により、改善の傾向が見られていない。

 このため、平成5年11月に策定した「兵庫県自動車排出窒素酸化物総量削減計画」の中で、環境に配慮した自動車の利用についての具体的な行動を「エコドライビング運動」と名付け、県民・事業者・行政が連携し、一体的な実践に取り組んでいる。また、その運動の中でも、特に駐停車時における不必要なアイドリング(エンジンのかけっぱなし)については、平成7年7月に制定した「環境の保全と創造に関する条例」の中で、全国に先駆けて禁止規定・罰則規定が盛り込まれたのを契機として、広く県民・事業者の意識啓発を推進するため、「アイドリング・ストップ運動」として展開している。なお、アイドリング・ストップ運動は、兵庫県大気環境保全連絡協議会内に設置した、兵庫県アイドリング・ストップ運動推進本部を運動の母体として、運転免許試験場、免許更新センターや県内全自動車運転教習所等に啓発資料を配布するなど、さまざまな啓発活動により県民の意識改革を促すこととしている。

 

(2)自動車公害防止月間等キャンペーン活動

 

 平成13年度は、自動車公害防止月間(6月及びll~1月)において、関係機関の相互連携のもとに環境一斉調査、ノーマイカーデーやアイドリング・ストップ運動の普及PR等の事業を実施した。

 また、平成13年10月に西宮市及び姫路市において低公害車の展示及び普及啓発資材の配布等を中心としたフェアを開催した。

 

6 自然環境保全活動

 

(1)自然観察指導者研修会等の開催

 

 自然観察会の指導や運営に携わる指導者の養成と資質向上、交流を目的に、(社)兵庫県自然保護協会と共催で研修会を開催しており、さらに、自然保護活動のリーダーとの情報交換・交流を目的に研修会を開催する。

 

(2)情報誌「自然とともに」の発行(年4回)

 

 自然保護に関する行政の情報を提供するとともに、自然保護団体、研究者、指導者の情報等の相互交流を図るため、自然環境に関する情報誌「自然とともに」を発行している。

 

(3)ナチュラルウオッチャー制度の実施

 

 県民の自然観察活動を促進するとともに、自然環境の保全を県民参加のもとに推進するため、県民から募集・登録を募るナチュラルウオッチャー制度を、(財)ひょうご環境創造協会の協力を得て実施する。

 

(4)「県花のじぎくの里」づくり

 

 ノジギクは、兵庫県の瀬戸内海沿岸がその分布の東北限といわれており、昭和29年にNHKが郷土の花を募ったとき、兵庫県の花として選ばれて以来、広く県民に親しまれてきている。
姫路市南部の大塩、的形地区を中心に播磨地域臨海部に広く自生していたが、工場や住宅地の造成によってその姿を消しつつある。

そこで、ノジギクを守り育てるため、自生地である瀬戸内海沿岸地域を対象に、昭和62年度から苗の配布、県民による植栽の実施など「のじぎくの里」づくりを推進している。

 

7 環境にやさしい買物運動等

 

 地球的規模での環境問題の解決が叫ばれる中、平成3年度から、婦人会や消費者団体が中心となって環境にやさしいライフスタイルの創造をめざして自発的な実践活動として実施されている「環境にやさしい買物運動」等の一層の定着と発展を支援している。

 

(1)「環境にやさしい買物運動」

 

 兵庫県連合婦人会、兵庫県消費者団体連絡協議会、神戸市消費者協会の3団体を中心として環境にやさしい商品の評価等を行うため、有識者、業界団体の参画を得て、「環境にやさしい商品評価委員会」を設置し、この委員会を中心に日常的に使用する商品について環境との共生の視点から評価し、公表して企業の社会的責任を促すとともに、自らも主体的な消費者として環境にやさしい商品を率先して購入している。

 また、環境にやさしい商品を製造、販売したり、積極的にリサイクルに取り組むなど、環境に配慮した事業活動を行っている事業者を省資源・省エネルギー月間(毎年2月)に開催する「兵庫県省資源・省エネルギー運動県民大会」で表彰している。

 

(2)家庭用品修理会実施事業

 

 限られた資源の中で、ものを大切に生かして使うという意識や態度を養い、環境にやさしいライフスタイルを創造していくため、兵庫県消費者団体連絡協議会に委託して県下6地域において、家庭用品を修理し再利用ができるように修理会を開催している。

 

 

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コラム

▼水生生物調査指導者養成講習会の様子

 

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第2 (財)ひょうご環境創造協会による取組

 

  県民・事業者・行政の参画のもとに環境適合型社会の実現に向けた事業の企画、実施等の運営を永続的に行うために、平成8年4月、県内中小企業の公害防止の ための検査・分析機関であった「兵庫県環境科学技術センター」(昭和47年設立)を発展的に改組し、「ひょうご環境創造協会」を設立した。県では、協会の 環境創造活動の運営財源となる環境創造基金の造成を支援するとともに、行政の一員として協会の運営に参画し、協力・連携による事業を積極的に推進してい る。

 また、県民・事業者・市町等の参画を図りながら、次の事業を展開しており、こうした事業活動のための拠点として「ひょうごエコプラザ」が平成9年8月に開設された。

 さらに、平成12年4月より「兵庫県地球温暖化防止活動推進センター」としての業務を担当し、県民の地球温暖化防止活動を支援している。

 協会の主な活動内容は次のとおりである。

 

(1)実践活動の連携・調整(コーディネート)事業

 ・県民、事業者及びそれらの団体、行政の連携・交流の推進

 ・連携、交流拠点の整備

 

(2)環境管理(環境配慮行動)の促進事業

 ・事業者の環境管理の促進

 ・県民のライフスタイルの見直しの促進

 ・環境アドバイザーの登録・派遣

 ・自主的な環境学習に対する支援

 ・環境の保全及び創造活動への助成

 

(3)情報の収集・提供事業

 ・環境の保全及び創造活動促進のための情報の提供

 ・事業者による環境管理情報等の公開の促進

 ・環境の保全及び創造活動促進のための調査研究

 

(4)環境調査・分析受託事業

 

第4節 事業者の自主的な取組の推進

 

第1 事業者の自発的な環境の管理

 

 持続的な発展が可能な社会・経済を構築していくためには、事業者が法令等による規制基準を順守することに止まらず、環境に配慮して行動するための自主的な管理を行い、事業活動による環境への負荷を可能な限り低減することが必要である。

 具体的には、環境管理のための計画の作成、環境管理のための責任者の設置、事業活動に伴う環境への負荷の分析・把握・評価、環境監査の実施や監査結果の検証などを実施することにより、環境への負荷の低減に努めていく必要がある。

 このため、講演・講習会を開催し、国際標準化機構(ISO)の国際環境規格や環境省が提唱する「環境活動評価プログラム」の普及を進めている。

 今年度は、12月12日に豊岡市民会館において環境管理セミナーを開催した。

 

 

 

第2 環境保全(公害防止)協定

 

 法令の規制を上回る自主的な環境保全対策を事業者に促すため、大規模な事業所が集中して立地している地域において、地元市町の要請に基づき、主要事業所と環境保全(公害防止)協定を締結している。

 協定の内容は、大気汚染対策、水質汚濁防止、騒音防止等に関する事項をはじめ、施設の設置や変更に際して事前協議、汚染物質の測定など多岐にわたっている。

 平成14年3月末現在、県が当事者となっている協定締結事業所数は第2-6-8表のとおりである。

 なお、これ以外にも、市町又は地域住民が同様の趣旨の協定又は覚書等を事業所と締結している。

 

 

 

第3 ひょうご環境ビジネスウィークの開催

 

 循環型社会の形成や地球温暖化問題への対応のために、産業分野において、自然エネルギーの導入等、直面する環境課題を新しいビジネスチャンスとしていく「環境の産業化」が進んでいる。また、グリーン購入の普及など、消費者をはじめ国民全体の環境意識の高まりから、企業の活動を環境の視点から見直す動きも本格化している。

 こうしたビジネストレンドを背景に、持続可能な社会を実現するための産業や企業のあり方を考える4つの環境ビジネス関連のイベントを「ひょうご環境ビジネスウィーク」として平成14年7月22日(月)から26日(金)まで、淡路島及び神戸市内で集中的に開催した。

 

<1> 国際連携兵庫会議・環境分科会

<2> 第2回日中韓環境産業円卓会議

<3> IGES関西研究センター「産業と環境」国際シンポジウム

<4> グリーン購入メッセ

 

第2-6-8表 環境保全(公害防止)協定の締結状況

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第5節 県の率先的な取組の推進

 

第1 環境率先行動計画

 

 県内の事業主体として大きな位置を占めている県では、県自らも環境負荷の低減との取組を計画的に推進すべく平成10年3月に「環境率先行動計画」(以下「ステップ1」という。)を策定し、環境負荷の低減等に率先して取り組んできた。

 ステップ1の計画期間が平成13年3月をもって終了したことから、その結果の検証を行うとともに、その間の「地球温暖化対策の推進に関する法律」「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」制定などの動きを踏まえ、新たに「環境率先行動計画(ひょうご・エコアクション・プログラム・.ステップ2)」(以下、「ステップ2」という。)を平成13年3月に策定した。ステップ2では、平成13年度から平成16年度までの4年間を計画期間とし、取組対象を学校等を含む県の全機関に拡大したうえで、新たな改善目標を設定している。

 

第2-6-9表 環境率先行動計画(ステップ2)の取組内容

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[事務の実施に当たっての環境配慮事項]

 

<1>温室効果ガス排出量の削減

・電気使用量の削減

・庁舎用燃料等の使用量の削減

・公用車燃料使用量の削減

・自然エネルギ一の導入

 

<2>廃棄物の減量化

・ごみ排出量の削減

・コピー用紙使用量(発注量)の削減

・リサイクルの向上

 

<3>水使用量の節減

 

<4>グリーン調達の推進

・公用車への低公害車等の導入

・環境配慮型製品の購入の促進

・再生紙使用の推進

・国際エネルギースターロゴ表示のあるOA機 器等(ワープロ、パソコン、プリンタ、コピー 機、ファクシミリ等)の導入

・県有施設における木材利用の推進

・グリーン配送の推進   

 

<5>汚染物質等の適正処理及び排出抑制

 

[環境率先行動計画(ステップ2)の進捗状況]

 

 ステップ2の改善目標の項目及び数値は第2-6-9表のとおりである。

 ステップ2の平成13年度における実績において、数値目標を掲げる7項目のうち温室効果ガス排出量削減、コピー用紙発注枚数削減、水使用量削減の3項目における進捗が悪いため、平成14年度から緊急対策として、職員の取組の徹底を改めて行ったほか、節水機器の設置や設備の省エネ化改修の検討などに着手している。

 

 

 

第2 県施設太陽光発電導入の推進

 

 「兵庫県地球温暖化対策実行計画(環境率先行動計画に包含。)」の取組の一環として、平成13年度、社総合庁舎、西播磨総合庁舎、人と防災未来センターの3施設に太陽光発電を導入した。

 

 

 

第3 ISO14001の取得

 

 環境率先行動計画のより確実な推進を図るとともに、県の活動が環境に配慮したシステムのもとに行われているとの客観的評価を得ることと併せ、県内企業への環境マネジメントシステムの普及や今後の支援策に生かすため、環境マネジメントシステムの国際規格であるIS014001の認証を率先して本庁舎(平成12年10月12目認証取得)、県立公害研究所(平成12年3月28目認証取得)、及び県立工業技術センター(平成12年8月28目認証取得)において取得した。現在その適正な運用を進めており、県の活動に伴う環境負荷の低減に役立てている。

 

 

 

第4 環境創生5%システムの推進

 

 環境率先行動を計画の取組を事業活動から拡大し、公共工事のグリーン化を進めるため、平成14年度から「環境創生5%システム」を推進している。

 このシステムは、県が発注する工事の工事費の5%以上を環境の保全と創造に資する措置に充てることにより、環境優先社会の実現を目指そうとするものである。

 

第6節 地球環境保全資金融資制度

 

 資金力、信用力などの弱い中小企業者が、公害防止等のための資金を確保することは容易ではないことから、県においては、昭和42年度に公害除去施設等設置資金融資制度及び同資金の利子補給制度を創設し、中小企業者に対する安定的な資金の供給を図っている。

 昭和61年度からは工場などの緑化事業、平成元年度からは最新規制適合車等購入に対する融資制度を追加している。平成11年度からは、省エネルギー又は環境調和型新エネルギー施設・設備の設置資金を対象に加えるとともに、名称を地球環境保全資金融資制度と改め、引き続き中小企業者が行う公害防止・環境保全対策に対して支援を続けている。

 平成14年度の県の融資及び利子補給制度の慨要は第2-6-11表のとおりである。

 また、第2-6-10表は過去5年間の融資実績である。

 

第2-6-10表 過去5年間の融資実績

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第2-6-11表 平成14年度地球環境保全資金融資制度の概要

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第7節 国際協力の推進

 

第1 友好交流先との環境交流事業

 

1 中国広東省との環境保全技術交流の推進

 

 中国広東省との友好提携10周年を契機に、環境保全分野における技術交流として、平成5年度から行政視察団の相互派遣及び研修生の受入れを行っている。また、平成8年度からは、酸性雨の測定技術に関する交流を推進しており、県立健康環境科学研究センターの研究員を派遣している。

 

2 ブラジルパラナ州との環境協力の推進

 

 「兵庫県・パラナ州友好提携30周年記念共同声明(H12.7.31)」を契機に両県州で地球環境の保全に係る技術・情報の交流を進めていくこととなった。

 具体的には、14年度、本県の持つ知識や技術力を提供して環境協力を進めるための現地調査をパラナ州で行った。

 

 

 

第2 国際環境研究機関等への支援

 

1(財)国際エメックスセンターの活動支援

 

 閉鎖性海域の環境保全・創造及び多様な自然と人間が共生する持続的発展が可能な社会の構築に寄与することを目的として、閉鎖性海域に関する情報の収集・発信や調査研究、開発途上国への技術移転等に取り組んでいる(財)国際エメックスセンターの活動を支援している。
平成13年度は、閉鎖性海域の環境保全に係る調査研究業務の他、「第5回世界閉鎖性海域環境保全会議」を神戸市淡路島で開催し、内外の高い評価を受けた。

 

2 アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)センターの活動支援

 

 アジア太平洋地域の地球環境に関する国際共同研究の促進を目的に政府間機関として設置されたAPNの活動強化のため、事務局機能を担うAPNセンターの運営を支援する。

 また、同センターの活動を地域での地球環境保全への取り組みに役立てるため、国際シンポジウムの開催及び研究・調査を委託して実施している。

 

3(財)地球環境戦略研究機関関西研究センター の活動支援

 

 「産業と環境」を研究活動のメインテーマとする、(財)地球環境戦略研究機関(IGES)関西研究センターの運営を支援するとともに、関西の研究機関、企業等と協力した研究体制の構築を図っていくことを目的としている。

 平成13年度~15年度は、「企業と環境」を研究対象に、環境会計など環境経営の具体的手法について調査研究を行い政策提言を行っている。

 

4 閉鎖性海域に関する技術研修

 

 わが国では、開発途上国からの研修員を受け入れ、これら諸国の社会的・経済的発展に役立つことを目的として、専門的知識及び技術の研修を行っている。

 県でも閉鎖性海域の環境管理を国際協力のもとに進めていくため、国際協力事業団(JICA)の委託を受けている国際エメックスセンターと協力して、「閉鎖性海域の水環境管理技術コース」研修を実施している。

 平成12年度は、第2-6-12表のとおり5力国5名の開発途上国の閉鎖性海域及びその沿岸の環境管理を行う中堅行政担当官・技術者に対して、環境管理計画の策定、規制の手法、排水処理等の技術について指導することにより、開発途上国の閉鎖性海域の環境保全対策の推進に役立つことをめざし、環境問題一般、水質、廃棄物に係る基礎理論などの講義、処理技術、分析技術等の実習及び現地見学を行った。

 

第2-6-12表 研修参加国名及び研修期間

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5 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク研修

 

 酸性雨は、大気汚染物質の長距離移動により国境を越えて影響を及ぼす地球環境問題のひとつであり、環境省が、東アジア各国に参加を呼びかけ、提唱していた「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」が平成13年1月から本格稼動している。

 また、(財)ひょうご環境創造協会では、国際協力事業団(JICA)の委託を受け、平成9年度より「酸性雨のモニタリングと対策技術研修」を平成13年度より「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク研修」を実施している。

 本県においては、これに協力し、これまでに蓄積した酸性雨のモニタリングや対策を、東アジア地域を中心とした諸国の中央政府や地方政府の中堅技術者に技術移転することを通し、国際環境協力を進めるため、技術研修を県立健康環境科学研究センターで実施した。

 平成13年度は、9カ国10名の研修員に対し、酸性雨のモニタリング技術、酸性雨による生態系等への影響、硫黄酸化物や窒素酸化物の排出抑制技術、大気汚染物質の長距離移動などについて、講義、実習、見学等による研修を行った。

 

第2-6-13表 研修参加国名及び研修期間

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6 環境負荷物質分析技術に関する研修

 

 ダイオキシン、残留農薬など環境負荷化学物質による土壌・水質・農産物の汚染は先進国と発展途上国における共通の問題であり、環境や農産物の安全性を確保するために、環境負荷化学物質のリスク評価及びモニタリング技術を整備することは緊急を要する重要課題である。

 本研修は、開発途上国の中堅技術者が、環境負荷化学物質の人、及び環境に対する安全性を評価する技術の理解を深め、それらのモニタリング技術について知識並びに技術を習得し、環境及び農作物のモニタリング技術の整備に資することを目的として、国際協力事業団(JICA)が平成11年より実施しており、県においても同事業団の委託を受け、技術研修を県立健康環境科学研究センターにおいて実施している。

 平成13年度は6カ国8名の研修員に対し、有害大気汚染物質のモニタリング技術、環境における農薬分析、工業排水や産業廃棄物中の重金属分析などについて、講義、実習等による研修を行った。

 

第2-6-14表 研修参加国名及び研修期間

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7 北東アジア地域自治体連合における環境協力の推進

 

 北東アジア地域自治体連合は、北東アジア地域の自治体が、互恵・平等の精神に基づき、すべての自治体の交流協力ネットワークを形成することにより、相互理解に即した信頼関係を構築し、北東アジア地域の全体的な発展を目指し、同時に世界平和に寄与することを目的として、平成8年9月12日に設立され、平成10年には、経済・通商、文化交流・環境・防災・一般交流の5つの分科委員会が発足した。

 平成14年度には、「日本海沿岸の海辺の埋没・漂着物調査」など個別プロジェクトの推進を図るほか、北東アシア地域自治体連合環境分科委員会の国内8府県が韓国、中国、ロシアの地方自治体と共同で、「北東アジア地域国際環境シンポジウム」が韓国忠清南道牙山市で開催される。このシンポジウムは、北東アジア地域の自治体行政担当者が会し、地方レベルの環境保全対策や国際環境協力に関するノウハウや技術等の情報を交換し、総合的な連携協力の推進を図ることを目的としており、県も職員を派遣する。

 

 

 

第3 ひょうご国際環境支援ネットワークの構築

 

 県立健康環境科学研究センターや本県に立地する企業が持つ環境保全技術やノウハウをアジア太平洋地域を初めとする開発途上国へ供与するため本県に集積する(財)国際エメックスセンター、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)センタ-、地球環境戦略研究機関(IGES)関西研究センター等の環境関係の国際研究機関と県内企業等で構成する「ひょうご国際環境支援ネットワーク」を構築する。

 

 

第4 ひょうご型CDM(クリーン開発メカニズム)事業の推進

 

 県内企業・団体等へ地球温暖化防止に資する国際協力への参加を促す手法やCDM事業の可能性について検討を行っている。

 また、モンゴルの森林再生を支援するため、モンゴルへ専門家等を派遣し、現地視察を行い森林火災の実態や原因、植林の実態等を把握するとともに、モンゴル国における森林再生や民間ベースの取組の促進等について、技術的な側面、国際協力としての側面から意見交換を行うことを目的として開催される森林再生管理に関する国際フォーラムへの参加、協力を行っている。

 

第8節 環境共生のための産業構造改革プロジェクト

 

"「花と緑」「木」に包まれた住空間の再生"を目指した自然とともに生きるライフスタイルを実現し、共生と循環の社会システム構築に向けての戦略的な産業構造改革のプロジェクトを推進している。

 

第1 ガーデンビレッジ構想

 

 園芸業、造園業を中心に、多くの周辺関連が加わった中で、情報や技術の連携による新しい分野、業態への転換等を促す「産業の総合化・融合化」と生産機能と密接なつながりを保ちつつ、卸機能、小売機能を含めた「新流通システムの構築」を進め、景観園芸産業の振興を図るとともに流通・研究開発・情報発信・交流等の機能を備える「景観園芸産業拠点」の具現化を目指している。

 

 

 

第2 ひょうごウッディビジネスパーク構想

 

 森林は生長過程でCO2を吸収し、木材としてCO2を長期間固定する「都市の森」(木造住宅等)を形成するとともに、その加工時の消費エネルギーが少なくてすむ、再生産可能な資源であることから、成熟しつつある県内人工林資源の生産地と大消費地が近接している条件を生かして、木とふれあう生活文化の創造、木製品化による新産業の創造、木材産業の高度化等をめざして、新たな木材供給システムの構築や木製品の研究開発・技術集積、普及啓発などの機能を持つ木材関連産業の拠点整備を進めている。

 

 

 

第3 森のゼロエミッション構想

 

 自然豊かな農山漁村地域における資源の有効活用と循環型社会づくりに向けた取組の指針として、「森のゼロエミッション構想」を推進している。取組の基本は、

<1> 地域内資源によるエネルギー自給を目指した「ローカルエネルギーの導入」

<2> 産業と生活をつなぐ循環系を創出するための「地域内物質循環系の再構築」

<3> 地域内資源による環境型産業の創出につながる「木質系素材・資材の多段的利用の促進」

<4> 新しい森林・生活文化の創造と情報発信するための「人と自然にやさしい生活文化の醸成」 とその実生活での実践と展示である。この構想に基づき、モデル町の宍粟郡一宮町や青垣町を中心に、環境学習講座の開催や、バイオマスエネルギーの利用促進するなど、様々な取組をとおし、環境にやさしい地域づくりを参画と協働のもと進めている。