◆ PCモードで表示 ◆

第2部 第5章 環境の保全と創造に関する施策の展開

 

第1節 環境の保全と創造に関する条例の施行

 

 都市・生活型公害や地球環境問題など、今日の環境問題に適切に対応するため、「環境の保全と創造に関する条例(環境条例)」を平成7年7月18日に制定し、平成8年7月1日から全面的に施行した。

 この条例は、県民、事業者、行政等社会の構成員すべての参画と協働のもと、自然と共生し持続的発展が可能な環境適合社会を形成することをめざして、環境政策の基本理念や施策の方向を明らかにするとともに、新たな実効ある施策を盛り込んだ県の環境政策の基本となるものであり、公害防止、自然環境の保全、ゆとりと潤いのある美しい環境の創造、地球環境の保全等、全166条から構成されている。

 

第2節 新兵庫県環境基本計画

 

第1 「兵庫環境基本計画」の改定

 環境の保全と創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、平成8年6月、環境条例の規定に基づき「兵庫県環境基本計画」を策定した。その後、本計画の上位規範となる「21世紀兵庫長期ビジョン」(平成13年2月)の策定や環境を巡る諸情勢の変化等を踏まえ、前計画を改定する必要が生じたことから、新たな「新兵庫県環境基本計画-共生と循環の環境優先社会をめざして-」を策定することとした。

 

 

 

第2 計画の概要

 

 新基本計画は、行政計画であると同時に、県民、事業者、NPO等の活動に係る基本指針であると位置付けており、「共生と循環の環境適合型社会」を基本目標とし、その達成に向け、「ひょうごエコライフスタイル」の創造、環境へのとりくみが盛り込まれた社会経済システムの構築など、4つの基本戦略を掲げ、総合的かつ計画的な取組をすすめることとしている。

 なお、計画の概要は表2-5-1図のとおりである。

 

第2-5-1図 参画と協働により推進する新兵庫県環境基本計画

2_5_1zs.gif

 

 

 

第3 計画の推進

 

 新基本計画の推進にあたっては、環境審議会等における助言・提言や県民からの意見を取組・施策に反映させるとともに、その進捗状況を分かりやすい形で公表し、その評価・点検を行う。

 

 

 

第3節 兵庫地域公害防止計画の推進

 

 公害防止計画は、「環境基本法」に基づき、現に公害が著しい地域等において、環境大臣の策定指示により知事が作成し、環境大臣により承認される計画である。

 県では、昭和47年度に兵庫県東部地域公害防止計画を策定して以来、阪神・播磨地方の臨海部の人口や産業が集積した地域を対象として公害防止計画を策定し、総合的かつ計画的な公害防止対策事業を展開してきた。

 平成14年度には、平成9年度から平成13年度までの計画期間が満了することとなるので、この計画期間中に環境が改善された太子町を対象地域から除
き、平成14年度から平成18年度までを計画期間とする新たな兵庫地域公害防止計画を策定する。

 この計画の対象となる地域の概要は、第2-5-1表及び第2-5-2図に示すとおり、面積は、県土の約17%であるが、人口は県全体の約76%、工業製品出荷額は約71%を占め、社会活動の面でも、経済活動の面でも大きな位置を占めている。
なお、公害防止計画に基づき、地方公共団体が実施する公共下水道や廃棄物処理施設の整備、河川や港湾のしゅんせつ等の公害防止対策事業については、「公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」に基づき、国庫補助(負担)金のかさ上げ、地方債の適債事業の拡大等、国の財政上の特別措置が講じられる。

 

第2-5-1表 兵庫地域公害防止計画(計画期間:平成14年度~18年度)の概要

2_5_1hs.gif 

 

第2-5-2図 兵庫地域公害防止計画(計画期間:平成14年度~平成18年度)の概要

2_5_2zs.gif

 

第4節 環境影響評価の推進

 

第1 環境影響評価制度

 

 環境影響評価(環境アセスメント)制度とは、道路やダム建設その他の開発整備事業を行う者が、事業の実施前に、あらかじめ、環境への影響について、自ら、調査、予測及び評価を行い、事業計画の内容や環境保全対策を検討することにより、事業を環境負荷の少ないより望ましいものとしていくための一連の手続きである。

 

 

 

第2 環境影響評価制度の実施

 

 本県では、平成9年3月に、「環境影響評価に関する条例」を制定し、平成10年1月から施行しており、国においても、平成9年6月に「環境影響評価法」が制定され、平成11年6月から施行されている。

 大規模な開発整備事業は、法又は条例(法の対象となるものは、法が優先的に適用)により手続が行われている。

 県では、事業者が行う環境影響評価について、住民、市町等関係行政機関及び学識者等の意見を十分聴き、公正かつ客観的な審査を行うことにより、対象となった事業について、環境の保全と創造に関し適切な配慮がなされるよう厳正に制度の運用を図っている。

 

 

 

第3 環境影響評価に関する条例の概要

 

1 メリハリのついた調査・予測・評価

 

 開発整備事業の種類・規模や地域の環境の実情に即した環境影響評価を行うため、「環境影響評価概要書」の手続を設け、調査・予測・評価を行う項目を絞り込むことにより、効率的でメリハリのついた環境影響評価を行うこととしている。

 

2 住民の参画

 

 「環境影響評価概要書」や「環境影響評価準備書」を縦覧に供することにより、住民から広く意見を聴き、様々な情報を収集することにより審査に反映することとしている。また、準備書の段階では、事業者が開催する説明会だけではなく、審査事務局においても公聴会を開催することにより、より公正な手続とするとともに、住民のこれら手続への参画の機会を充実させている。

 なお、縦覧の案内や図書の要約は、審査事務局のホームページ(アドレスhttp://www.kankyo.pref.hyogo.lg.jp/eia/)で公開している。

 

3 専門家の関与

 

 審査意見の形成に当たり、自然科学及び社会科学の各分野の学識経験者で構成する環境影響評価審査会を設け、様々な専門的見地からの意見を聴くこととしている。

 

4 審査内容の質的変化

 

 従来の環境影響評価では、予測対象となった、大気や水質等環境要素の各項目ごとに、あらかじめ設定した環境保全目標が達成されるかどうか、即ち○×式の評価を中心にその結果が問われてきていたが、さらに近年では、環境影響評価の対象分野が拡大し、生物多様性や生態系への影響を重視するとともに、環境への負荷を低減するために事業者が如何に努力しているかという観点からも審査を行い、環境保全上よりよい事業への誘導を図ることとしている。

 

5 事後監視調査

 

 環境影響評価は、事前の審査手続のみで完了することなく、工事中及び施設の供用開始後の環境影響評価の検証として環境の監視を義務づけている。

 

 

 

第4 環境影響評価の今後の展開

 

▼コラム 環境影響評価概要書

▼コラム 環境影響評価準備書

▼コラム 環境影響評価書

 

 事業の基本的な枠組みがほぼ固まった段階で実施される現行の環境影響評価に対して、個別の事業計画が策定される以前のより早期、より上位の施策・計画の構想立案段階から十分な環境配慮を行うため、様々な環境保全対策を検討し、その結果を施策・計画に組み入れるための仕組みである戦略的環境アセスメントの導入について検討を進める。

<環境影響評価の実施状況>

平成13年度に条例等に基づき審査を行った事業は、以下のとおりである。

 

第2-5-2表 環境影響評価の実施状況(平成13年度)

2_5_2hs.gif

 

第2-5-3 環境影響評価に関する条例に基づく環境影響評価手続きフロー図

2_5_3zs.gif

 

第2-5-4図 これまで環境影響評価を行った主な事業

2_5_4zs.gif

 

横スクロール

コラム

 

▼環境影響評価概要書(環境影響評価法では「環境影響評価方法書」という。)
 調査、予測、評価の実施の前段階で作成する図書であり、事業計画の概要のほか、環境影響評価の対象となる地域の範囲や予測評価すべき項目、手法等環境影響評価の実施計画を記載したもの。

 

 

▼環境影響評価準備書

 環境影響について、調査、予測、評価の結果を記載した図書のこと。

 

 

▼環境影響評価書

 環境影響評価準備書について述べられた意見等を踏まえ、環境影響評価準備書の記載事項について再検討し、述べられた意見とそれに対する事業者の考えや対策を追加して記載した図書のこと。

 

第5節 公害紛争の処理

 

第1 公害審査会

 

 「公害紛争処理法」に基づき、公害紛争の迅速かつ適正な解決を図るため、国においては公害等調整委員会、都道府県においては公害審査会が設置され、あっせん、調停及び仲裁手続きにより、公害の紛争を処理している。

 兵庫県では、昭和45年11月の公害紛争処理法の施行にあわせて公害審査会を設置し、現在、弁護士、大学教授など学識経験者12名の委員が紛争当事者からの申請により、あっせん委員(1~3名)、調停委員会(3名)、仲裁委員会(3名)を構成し、紛争の解決に当たっている。

平成13年度は、平成9年に申請のあった事件について、引き続き調停を行った。(第2-5-3表)。

 

第2-5-3表 公害審査会で取り扱った調停事件(平成14年3月31日現在)

2_5_3hs.gif

 

 

 

第2 公害苦情の現況

 

1 県及び市町が新規に受理した公害苦情件数は、平成13年度は3,768件で、平成12年度に比べて165件(前年度比4.6%)増加している。(第2-5-5図

 

第2-5-5図 公害苦情件数の推移

2_5_5zs.gif

 

2 典型7公害(大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、悪臭、土壌汚染及び地盤沈下)の苦情件数は、平成13年度は2,884件(全苦情の76.5%)で、平成12年度に比べて28件減少している。

 また、典型7公害以外の苦情(不法投棄、害虫等の発生、動物死骸の放置等)の件数は、平成13年度は884件(全苦情の23.5%)で、平成12年度に比べて193件増加している。

[種類別](資料編第7-1表

 大気汚染が1,275件(全苦情の33.8%)と最も多く、平成12年度に比べて57件(前年度比4.7%)増加している。次いで騒音が638件(全苦情の16.9%)、悪臭455件(同12.1%)、水質汚濁408件(同10.8%)の順となっている。

[市町別](資料編第7-3表

 神戸市の608件(全苦情の16.7%)が一番多く、次いで尼崎市の405件(同11.2%)、姫路市380件(同10.5%)の順となっており、県下22市の合計は、2,936件で全体の77.9%を占めている。

[発生源別](資料編第7-2表

 建設業が900件(全苦情の23.9%)、製造事業所516件(同13.7%)、サ-ビス業319件(同8.5%)の順となっている。

 また、典型7公害のうち、苦情件数の多い大気汚染及び騒音についてみると、大気汚染では、建設業が444件、製造事業所185件の順になっており、騒音では、建設業が218件、製造事業所102件の順となっている。

 

 

 

第3 公害健康被害の救済対策

 

 公害の影響による健康被害者の迅速かつ公正な保護を図るため、「公害健康被害補償法」が昭和49年から施行され、神戸市臨海地域、尼崎市東部・南部地域が地域指定を受けて、両市において公害病患者の認定、認定患者に対する補償給付(療養の給付、療養費、障害補償費、遺族補償費、遺族補償一時金、児童補償手当、療養手当及び葬祭料)及び保健福祉事業を実施し、公害被害者の救済を図ってきた。

 昭和63年3月には、大気汚染の態様の変化を踏まえて、改正法(「公害健康被害の補償等に関する法律」)が施行されるに伴い地域指定が全面解除された。
また、この改正法では、既に認定された患者(認定患者の状況については資料編第7-4表のとおり)の救済については、引き続き継続されるとともに、健康被害の予防に重点をおいた施策(環境保健事業及び環境改善事業)が展開されることとなった。

 兵庫県では、旧第一種地域である神戸市及び尼崎市に西宮市及び芦屋市を加え、これら4市において、法改正後に実施されることとなった健康被害予防事業が広域的に実施できることとなり、公害健康被害補償予防協会(改正法に基づき設置された特殊法人)の助成事業として、平成12年度に策定した大気環境改善のための事業計画に基づき、低公害車普及事業等を実施している。

 

 

 

第4 環境事犯の取り締まり

 

 環境の保全と創造に関する行政施策の一翼を担う視点に立って、「兵庫C(Clean=きれいな)&C(Create=創造する)活動」の推進を業務重点に設定し、産業廃棄物の不法投棄等環境汚染をめぐる悪質事犯に重点を指向した取り締まりを強力に実施した。

 平成13年中における環境事犯の検挙状況は、第2-5-4表のとおりである。

 

第2-5-4表 環境関係事犯の検挙状況

2_5_4hs.gif