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第2部 第4章 地域からの地球環境保全

 

第1節 地球温暖化対策

第1 地球温暖化対策の動き

 

▼コラム 地球温暖化のしくみ

▼コラム 地球温暖化の影響

 

 地球温暖化防止は、全世界的な問題であることから、「気候変動に関する国際連合枠組条約」(平成6年3月発効)に基づき、国際的に取組が進められており、更には、平成9年12月に京都で開催された「気候変動に関する国際連合枠組条約第3回締約国会議(COP3)」において、「京都議定書」が採択された。
その主な内容は、<1>先進工業国については、温室効果ガスの排出量を2008年から2012年までの第1約束期間に1990年レベルから5%削減する(我が国は、6%削減)。<2>温室効果ガスの対象は、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFC(ハイドロフルオロカーボン)、PFC(パーフルオロカーボン)、SF6(六ふっ化硫黄)の6種類のガスとする。<3>柔軟性のある国際的仕組み(京都メカニズム)として「排出量取引」、「共同実施」、「クリーン開発メカニズム」等の措置を認める、等である。

 その後、政府としては、地球温暖化対策の推進を図るため、平成10年6月に「地球温暖化対策推進大網」の決定や、平成10年10月に「地球温暖化対策の推進に関する法律」を制定するとともに、平成10年6月に「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」の改正を行った。さらに、平成14年3月に「地球温暖化対策推進大綱」を改正するとともに、同6月には、「地球温暖化対策の推進に関する法律」の改正、省エネ法の改正等を行い、地球温暖化防止に向けて取組の強化が図られている。

 この「地球温暖化対策の推進に関する法律」では、地方自治体の責務として、

1.区域の自然的社会的条件に応じた温室効果ガス排出抑制等のための施策を推進すること。

2.区域の事業者又は住民による温室効果ガスの排出抑制活動を促進するため、施策に関する情報提供等に努めること。

3.自らの事務・事業に関し、温室効果ガス排出抑制等のための計画(実行計画)を策定するとともに、取組の状況を公表すること。

が規定されている。

 本県においても、地域から地球温暖化対策に積極的に貢献していくため、平成8年3月に策定した「兵庫県地球温暖化防止地域推進計画」(目標:一人当たりの二酸化炭素排出量を2000年度以降おおむね1990年度レベルで安定化を図る)を見直し、県民・事業者・行政の温室効果ガス排出量削減対策のマスタープランであり、それぞれの主体の具体的行動指針となる「新兵庫県地球温暖化防止推進計画」を平成12年7月に策定し、ステップアップ方式で対策に取り組むこととした。

 また、「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき平成12年4月に指定した「兵庫県地球温暖化防止活動推進センター」を拠点として、県民に対しきめ細かな普及啓発に取り組むボランティアである「兵庫県地球温暖化防止活動推進員」を平成12年8月に委嘱する等、地球温暖化防止実践活動の普及を図っている。

 さらに、県の事務・事業から排出される温室効果ガスの排出を抑制するため、平成13年2月に「兵庫県地球温暖化対策実行計画」(平成13年4月に「環境率先行動計画」に包含)を策定し、県自らも地球温暖化対策に取り組んでいるところである。

 

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コラム

▼地球温暖化のしくみ

大気中の微量に存在する二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロン等は、地表面から反射される赤外線を吸収する性質があり、大気の温度を上昇させる。この働きがちょうど温室に似ていることから、このような効果を持つ気体を温室効果ガスという。

温室効果は、大気に元来備わっているもので、これがないと地球の地表面温度は一18℃と推計されている。

しかし、人問活動の活発化にともなって温室効果ガスの濃度が増加することにより地球の平均気温が上昇してきており、これを地球温暖化と呼んでいる。

この地球温暖化に対する寄与が大きいのが二酸化炭素で、その寄与率64%となっている。

 

【温室効果ガスの概念】

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地表面から反射された赤外線エネルギーの一部は大気中の温室効果ガスに吸収され地表を適度な温度に保っている。人間活動により、大気中の温室効果ガスの濃度が増えると、宇宙に逃げるエネルギーが減り、地球が暖かくなる。

 

 

 

▼地球温暖化の影響

二酸化炭素がどのような速度で増えていくのかは、将来の石油、石炭などの燃料の使用量によって異なるが、平成13年4月のlPCC(気候変動に関する政府間パネル)第3次報告によると、温室効果ガス排出抑制策がほとんどとられなかったとすると、21世紀末には、1.4~5.8℃の平均気温上昇、約9~88cmの海水位の上昇、極端な高温等の気象変動の極端化が予測されている。
こうした温度上昇のため、海面水位上昇による土地の喪失、豪雨や干ばつなどの異常気象の増加、生態系への影響や砂漠化の進行、農業生産や水資源への影響、マラリアなど熱帯性の感染症発生数の増加など、私たちの生活にもさまざまな影響が出ると予測されている。

 

 

 

第2 「新兵庫県地球温暖化防止推進計画」の推進

 

1 計画の基本的方向

 

 本計画は、我が国の削減目標を踏まえつつ、県民・事業者・行政が、実施可能な最大限の努力を払うという姿勢のもと、本県における2010年度(平成22年度)の温室効果ガス総排出量を、1990年度(平成2年度)レベルから6%削減することを目標としており、県民・事業者・行政のそれぞれの役割に応じて取り組むべき地球温暖化防止活動の具体的な行動計画となるものである。

 

2 温室効果ガスの排出状況

 

 1999年度(平成11年度)の兵庫県における温室効果ガスの総排出量は、二酸化炭素に換算して約7,585万トンと推定され、「新兵庫県地球温暖化防止推進計画」の基準年度であ1990年度(平成2年度)の総排出量約7,303万トンと比べ、約3.9%の増加となっている。なお、1999年度(平成11年度)の全国の温室効果ガス総排出量は13億700万トンであり、兵庫県はその約5.8%を占めている。

 兵庫県内で排出された温室効果ガスの94.7%を占める二酸化炭素の排出量は、7,189万トンと推定され、1990年度(平成2年度)に比べ、約5.3%の増加となっている。
また、1999年度(平成11年度)の二酸化炭素排出量を県民一人あたりで見ると、13.0tであり、全国平均値9.7tを約34%上回っている。

 部門別に見ると、産業部門が66.5%、運輸交通部門が12.9%、民生(業務)が3.7%、民生(家庭)が9.0%を占めており、全国値と比較して産業部門からの排出比率が高いのが特徴となっている。

 

第2-4-1図 部門別二酸化炭素排出量と県民一人当たりの二酸化炭素排出量の推移

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第2-4-2図 1999年度(平成11年度)の兵庫県及び全国における部門別二酸化炭素排出量

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3 主体別の行動

 

 温室効果ガス排出量の削減目標を達成するため、県民・事業者・行政は、それぞれの役割を十分認識し積極的な行動を起こすとともに、パートナーシップのもと、相互の連携により温室効果ガス排出量の削減対策に取り組むことが必要である。

 したがって、県民・事業者・行政は、それぞれの主体がそれぞれの役割に応じてステップアップ方式により、自主的な温室効果ガス排出削減対策に取り組むものとする。

 

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県民の行動

  

県民の日常生活に起因する温室効果ガスの排出量が増大していることから、大量消費・大量廃棄型のライフスタイルを省エネ・省資源を基調とした環境にやさしいものに転換することにより、温室効果ガスの排出量削減を図る。

 

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事業者の行動

 

事業者は、事業活動に関して、温室効果ガスを排出するとともに、家庭等で利用する製品等を製造・販売する立場にあることから、事業活動から直接排出する温室効果ガスの排出削減の努力を行うとともに、事業活動によって製造・販売する製品を省エネ型のものにする等、温室効果ガス排出削減のための措置を講ずる。

 

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行政の行動

 

行政は、自然的・社会的条件に応じたきめ細かい温室効果ガス排出削減等のための施策を推進するとともに、自らの事務事業に関する温室効果ガス排出削減のための措置を講じる。また、温室効果ガス排出削減のための基盤整備等により、環境と調和したまちづくりを進めるほか、各種調査研究等を行い、計画の進捗状況を把握し公表する。

 

 

 

第3 地球温暖化防止活動の推進

 

 県民・事業者・行政のパートナーシップによる地球温暖化防止活動を促進するための拠点として「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき、平成12年4月に財団法人ひょうご環境創造協会を「兵庫県地球温暖化防止活動推進センター」に指定した。

 また、県民のライフスタイルを地球温暖化防止に配慮したものに変革していくため、きめ細かな普及啓発に取り組む「兵庫県地球温暖化防止活動推進員」や、推進員と連携し地域での実践活動を促進する「兵庫県地球温暖化防止活動推進協力員」を県民から公募のうえ委嘱し、その活動を支援している。推進員等は、地域の集会やイベント等に参加し、パンフレット等による普及啓発活動を行ったり、地域ぐるみで太陽光発電・バイオマスエネルギーの導入を促進する活動などに取り組んでいるほか、幼稚園児とその親、小中学生を対象にした「温暖化STOP親子教室」を開設し、子どもの頃からの地球温暖化防止に関する意識醸成を図る活動を行っている。

 

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兵庫県地球温暖化防止活動推進センターの機能

 

〈情報センター機能〉
・情報の収集・提供
・調査研究
〈活動支援機能〉
・兵庫県地球温暖化防止活動推進員・兵庫県地球温暖化防止活動推進協力員の活動支援
・県民、NGO等の活動に対し、助成・助言等の支援
・セミナー開催等の普及啓発活動
・パネル・パンフレット等啓発資材の作成・提供

 

 

 

第4 グリーンエネルギーの導入促進

 

 「新兵庫県地球温暖化防止推進計画」に基づく削減目標を達成するため、国の「長期エネルギー需給見通し」を踏まえて、省エネルギーや新エネルギーの導入促進を図ることを目的に、平成14年7月に「グリーンエネルギー推進プログラム」を策定した。

 当プログラムでは、一層の省ネルギー対策と新エネルギーの導入を県民・事業者とともに進めるために、省エネルギー及び新エネルギー対策のそれぞれについて対策の方向性と目標を示すとともに、行政としてグリーンエネルギーを進めていくために、「環境創生5%システム」による公共工事のグリーン化の促進や風況マップの作成による風力発電導入の促進の他、菜の花から食用油を造り、使用後の廃食用油を回収して、バイオディーゼルを製造する「あわじ菜の花エコプロジェクト」や、県民・事業者のボランタリーな基金により、県内各地のシンボリックな建物に太陽光発電施設等を設置するため、「兵庫県地球温暖化防止活動推進センター」に設けた「ひょうごグリーンエネルギー基金」等の先導的プロジェクトの推進を図ることとしている。

 また、グリーンエネルギーについて、県民・事業者に広く情報を提供し、普及啓発を図るため、県内10地域において、太陽光パネル等グリーンエネルギー関連機器の展示等を行う「グリーンエネルギーメッセ」を開催する他、国・県・市町・関連メーカー等で構成する「グリーンエネルギー導入促進会議」を設置し、市町等での計画的導入の促進などを行っている。

 さらに、中播磨及び淡路地域において、地域の特色を生かしたグリーンエネルギー導入等を検討する協議会が設置され、地域におけるグリーンエネルギーの導入促進が図られている。

 

第2-4-3図 ひょうごグリーンエネルギー基金の概念図

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第5 温暖化特定事業実施届出制度

 

 地球温暖化対策の一つとして、温室効果ガスの排出抑制を効果的に実施することが必要である事業を行おうとするときは、事前に排出抑制効果を評価し、温室効果ガスの排出抑制措置を積極的・自主的に講じる対策を届け出る制度を「環境の保全と創造に関する条例」で規定し、平成8年7月1日から施行した。

 また、平成12年9月に、対象事業の範囲等を拡大し、届出件数は24件(平成14年3月末現在)となっている。意識醸成を図る活動を行っている。

 

第2節 オゾン層の保護

 

▼コラム フロンとオゾン層の破壊

▼コラム オゾン層破壊による影響

 

 平成7年7月18日に制定された「環境の保全と創造に関する条例」においては、全国的にも初めてのフロン放出禁止規定を罰則規定とともに規定し、平成8年7月1日から施行している。
この他、フロンの回収・処理を推進するため、次の事業を実施した。

 

(1)融資制度の実施

 

 フロン回収装置の購入、脱フロン化のための空調機器の導入に対して、兵庫県地球環境保全 資金〔公害防止・環境保全施設等設置資金〕を適用し、導入、更新を促進している。

 

(2)フロン回収状況実態把握調査の実施

 

 フロンの回収・処理の実態把握のため、関係する事業所に対し、アンケート調査を実施した。

 

第1 特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律の施行

 

 平成13年6月22日に「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」が公布され、冷媒としてフロン類が充てんされている業務用冷蔵・冷凍機器やカーエアコン等を廃棄する際にフロン類の回収等が義務付けられ、オゾン層を破壊し、地球温暖化に深刻な影響をもたらすフロン類の大気中への排出が抑制されることとなった。

 第一種特定製品(業務用冷蔵冷凍庫、業務用エアコン)からフロン類を回収する事業者は平成13年12月21日から登録が開始され、3月末で207件の登録が完了している。

 第二種特定製品(カーエアコン)からフロン類を回収する事業者は平成14年4月1日から登録を開始する。

 また、フロン類の回収・引き取り・引き渡し等にかかる基準等の義務付けについては、第一種特定製品関係は平成14年4月1日から、第二種特定製品は平成14年10月1日から開始される。(第2-4-5図)

 

オゾン層保護に向けての国際的取組と国内関連法

 

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年 月内     容
昭和62年9月 成層圏オゾンが破壊され、地表に降り注ぐ有害紫外線が増加することにより、人の健康に影響するのではないかとの指摘から、フロン規制の国際的取組を進めるべく「モントリオール議定書」が採択された。
昭和63年5月 我が国でもこの議定書を実施に移すため、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(オゾン層保護法)が公布された。
平成4年11月 「第4回モントリオール議定書締約国会議」で、特定フロンの全廃時期を1996年までに早めること等の既存規制物質削減計画の前倒し(第2-4-4図)並びにHCFC,HBFC及び臭化メチルの新規規制物質追加等の規制強化等が採択された。
平成5年9月 上記の合意を受け、これに対する国内措置として「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律に基づく告示の一部改正」が公布され、特定フロン等の1995年末全廃が決定した。
平成6年6月 「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、HCFC等の新規規制物質が特定物質に追加され、既存規制物質と同様、製造数量の規制等が行われることとなった。
平成7年12月 ウィーン(オーストリア)において「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書第7回締約国会合」が開催され、HCFCの全廃時期が2030年から2020年に早められ、臭化メチルに係る全廃計画の設定等が合意された。
平成9年9月 モントリオール(カナダ)において開催された「第9回締約国会合」では、臭化メチルの全廃時期が先進国については2010年から2005年に早められ、開発途上国についても新たに2015年までに全廃することとなった。(第2-4-1表)。
平成13年4月 オゾン層保護及び地球温暖化防止を推進するためには、フロンの生産規制等だけでなく、既に生産された製品からの排出を抑制することも必要なことからに「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)が施行され、家庭用冷蔵庫及びルームエアコンに使用されているフロンについて、回収・処理が義務づけられた。
平成13年6月 「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」(フロン回収破壊法)が公布され,カーエアコン及び業務用冷凍機器等に使用されているフロンについても、平成13年12月以降、段階的に回収・処理が義務づけられた。

 

第2-4-4図 特定フロン等の削減スケジュール

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第2-4-1表 新規規制物質の削減スケジュール

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第2-4-5図 フロン回収破壊法の概略図

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第2 冷媒用特定フロンの回収実態調査結果

 

 平成13年度も引き続き、平成12年4月1日から平成13年3月31日までの冷媒用フロンの回収実態を把握するため、兵庫県フロン回収・処理推進協議会に委託して、自動車整備事業者等の関係事業者に対して調査を実施した。(第2-4-2表

 

1 冷媒用フロンの回収状況

 

ア.フロンの回収状況

 フロンを回収している割合を業界順に見ていくと、市町等、自動車ディーラー、カーエアコン関係(自動車ディーラーを除く)、業務用低温機器関係、自動車販売機関係、家電製品販売関係の順となる。

 

第2-4-2表 特定フロン回収状況

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イ.回収フロンの処理

 回収後のフロンの処理方法は、市町では100%破壊処理されているが、他の業界では再利用されている場合が多い。

 

第2-4-3表 特定フロン回収後の処理

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2 洗浄用フロン等の使用状況

 

 洗浄用フロンのうち、特定フロン、1,1,1-トリクロロエタン、四塩化炭素等については、平成7年度末で生産等が全廃されており、現在ではほとんど使われていない。

 

3 今後の対応

 

 冷媒用フロンの回収については、各業界団体で取り組まれているので、その進展状況等を把握する必要がある。

 また、代替フロンとして使用が拡大しているHCFC141b、HFC134a等や絶縁剤として使用されている六ふっ化硫黄については、温室効果ガスとしての観点からその対策が必要である。

 

 

 

第3 兵庫県フロン回収・処理推進協議会による取組

 

 兵庫県フロン回収・処理推進協議会では、県民・事業者・行政が一体となったフロン回収・処理を進めるため、次の事業を行っている。

 

《フロン回収・処理の普及啓発と支援》

 

(1)フロン回収・処理については広く消費者等の理解と協力を得るため、パンフレット等を作成・配布する。

 

(2)オゾン層保護対策推進月間及び県その他関係機関が実施する環境保全のための事業に積極的に協力する。

 

(3)国・県等行政機関及び関連業界の動向の把握及び連携強化に努め、回収・処理等に係る情報収集を行う。

 

(4)その他フロンにかかる技術的動向等最新の情報を収集し、研修会、講習会を開催する。

 

(5)フロンの回収・処理状況等実態把握のための調査及び研究を実施する。

 

《フロン回収・処理のための事業》

 

 会員が回収したフロンを専門業者に委託して収集・保管し、破壊プラントヘの搬送を行う回収フロン処理システムを平成8年度から実施しており、その処理依頼実績は平成12年度が約20.7t、平成13年度が約13.6tであった。(平成14年12月末終了予定)

 

第2-4-4表 処理依頼実績

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《フロン回収装置等のリース事業等》

 

 平成8年8月より推進協議会会員事業者に対し、低料金による回収装置のリースを、平成9年4月よりボンベのリースを開始した。(平成14年12月末終了予定)

 

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コラム

 

▼フロンとオゾン層の破壊
冷媒、洗浄剤、発泡剤、エアゾール噴射剤等に使用される特定フロン(フロン11・フロン12、フロン113、フロン114、フロン115)や消火剤に使用される特定ハロン(ハロン1211、ハロン1301、ハロン2402)等が大気中に放出されると、対流圏内ではほとんど分解されず、徐々に成層圏に達し、強い太陽光により分解され、塩素が放出される。
この塩素が成層圏内のオゾンを連鎖的に破壊する。1985年イギリスのファーマン博士が1980年以降、南極の成層圏オゾンが毎年春先に著しく減少することを発見し、前後して日本、アメリカの研究者によりこの現象が確認され、これを「南極オゾンホール」と呼んでいる。

 

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南極のオゾンホール  2000年9月 気象庁報道発表資料から

 

 

▼オゾン層破壊による影響
太陽から降り注ぐ紫外線のうち、波長の短い紫外線(UV-B)は成層圏オゾンに吸収されるため、オゾンの減少は地表に到達する紫外線(UV-B)の増加をもたらすこととなる。紫外線(UV-B)の増加は生物に悪影響を及ぼすことから、人の皮膚がんや白内障の増加等の健康被害が心配される。
さらに、海洋生態系の基礎となる動植物プランクトンに壊滅的な打撃を与えるほか、穀物等農業生産の減少も懸念される。


 

第3節 酸性雨対策

 

第1 世界の動向

 

 酸性雨はSOx、NOx等の発生源から数千kmも離れた地域にも沈着する性質があり、国を越えた広域的な現象であることに一つの特徴がある。欧米諸国で は、酸性雨を防止するため、1979年「長距離越境大気汚染条約」を締結し、関係国がSOx、NOx等の酸性雨原因物質の削減を進めるとともに、共同で酸 性雨のモニタリングや影響の解明などに努めている。
 また、近年、開発途上国における目ざましい工業化の進展により、大気汚染物質の排出量は増加しており、地球サミットで採択された「アジェンダ21」では、開発途上国を含め、今後、酸性雨等広域的な環境問題への取組を強化すべきであるとしている。

 

 

 

第2 わが国における酸性雨の状況

 

▼コラム 酸性雨のしくみと被害

 

 わが国の酸牲雨問題は、欧米と異なり、人体への影響に端を発している。昭和48年~昭和51年の梅雨時期に、関東地方を中心に霧雨により目の痛みや皮膚の刺激を訴える被害者が3万人以上にのぼった。この現象は「湿性大気汚染」と命名され、この現象の解明のため、環境省では昭和50年~54年度の5年間、実態把握を中心とした調査を実施している。

 さらに、わが国でも欧米並みの酸性雨が観測されていることや生態系への影響に着目していく必要があることなどを背景に、昭和58年に検討会が設置され、昭和58年度~昭和62年度に第1次、昭和63年度~平成4年度に第2次、平成5年度~平成9年度に第3次、平成10年度~平成12年度に第4次調査が実施された。

 第4次酸性雨対策調査の取りまとめ結果の概要は次のとおりである。

 

(1)降水のpHは4.72~4.90(地点別年平均値の範囲)と、前回調査とほぼ同レベルであった。

 

(2)平成12年8月以降、三宅島雄山の火山活動により、関東地方をはじめとする各地で、環境基準を超える高濃度のSO2が観測された。

 

(3)土壌酸性化は生じていないと考えられた。また、樹木の衰退現象の多くはその原因の特定が可能であったが、一部の森林において、原因不明の樹木衰退が見られた。

 

(4)湖心表層のpHの範囲は5.54~7.87であり、期間中年平均値が特に高くなる傾向又は特に低くなる傾向を見せた湖沼はなかった。

 環境省では、平成15年度からは、より長期的な観点から策定した新たなモニタリング計画に基づくモニタリングの実施や、国内における酸性雨関連の調査研究の推進をするほか、東アジア地域における国際的な酸性雨対策の推進にも努めることとしている。

 

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コラム

▼酸性雨のしくみと被害

 酸性雨は、工場や自動車から出された硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)等の大気汚染物質が大気中で硫酸や硝酸などに変化し、これを取り込んで生じると考えられるpHの低い雨のことであるが、広義には、雨のほか霧や雪などの湿性沈着(wetdeposition)及び雨などに取り込まれずに粒子やガスの状態で降下する乾性沈着(drydeposition)の両者をあわせたものである。
 雨は空気中の炭酸ガスを含んでおり、通常でもpH5.6程度の酸性を示すが、炭酸ガス以外にも自然的に発生する酸性化物質があるため、現在ではpH5.0以下の値を酸性雨の目安とすることが多い。
 酸性雨については、(1)湖沼や河川等陸水が酸性化し、魚類等へ影響を与えること(2)土壌が酸性化し、森林等へ影響を与えること(3)酸性雨が直接樹木や文化財等に沈着することによりこれらの衰退や崩壊を助長すること、などの広範な影響が懸念されているが、欧米においては、既に酸性雨によると考えられる湖沼の酸性化や森林の衰退等が報告されている。

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第3 本県における酸性雨の状況

 

 本県では、阪神、播磨地域の汚染の直接的影響があると考えられる神戸、汚染物質の移流による影響があると考えられる柏原、東アジア地域の影響があると考えられる豊岡の3地点において酸性雨自動測定機による測定を行っている。

 平成13年度の降水量は、例年並みで、県内の3地点における雨水のpHの年平均値は神戸4.4、豊岡4.8、柏原4.5であった。pH値の経年変化をみると、平成8年度は例年に比べ低かったものの、平成9年度からほぼ例年並みとなり、多少の変動はあるものの、平成2年度以降、各地点とも、ほぼ横ばいの状況にある。

 県では、今後も県内における酸性雨の監視に努めるとともに、酸性雨の原因物質といわれている硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量を抑制するため、「大気汚染防止法」及び平成5年11月に制定した「阪神地域窒素酸化物総量削減基本方針」に基づく対策を推進し、県内主要工場と締結している環境保全(公害防止)協定に基づき、排煙脱硫・脱硝装置の導入、低NOxバーナーの導入、燃焼管理方法の改善、燃料の良質化等をさらに強力に指導していくこととしている。

 

 

 

第4 本県における酸性霧の状況

 

 霧は雨に比べ粒径が小さいために大気中での滞留時間長く、雨・霧の酸性化原因物質である硫黄酸化物、窒素酸化物等をより多く取り込むことから、雨水より強い酸性を示し、森林等の生態系に与える影響が大きいと考えられている。

 そのため、酸性霧の実態を把握することを目的に、六甲山自然保護センターに酸性霧自動捕集装置を設置し、酸性霧の発生状況等を監視した。

 平成13年度におけるpHの年平均値は3.89であり、ほぼ例年並みであった。

 

第2-4-6図 酸性雨・霧の測定地点

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第2-4-7図 酸性雨自動測定機によるpH監視測定結果

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第2-4-5表 酸性雨自動測定機による測定結果

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第2-4-8図 酸性霧自動捕集装置によるpH監視測定結果

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