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第3部 第1章 第1節 大気環境の保全

 

第1節 大気環境の保全

第1 大気汚染の常時監視

 

1 大気汚染常時監視測定局の設置状況

 

 県下の大気汚染を常時監視し把握するため、県及び政令市(神戸市、姫路市、尼崎市、西宮市、明石市及び加古川市)では、それぞれ大気汚染常時監視局を設置し、大気汚染状況の常時測定を行っている。
  平成15年3月31日現在の測定局数は89局〔一般環境大気測定局59局(県設置16局、政令市設置42局、国設1局)、自動車排出ガス測定局30局(県設置8局、政令市設置21局(車道局含む)、国設1局)〕である。
  また、その他の市町でも、必要に応じて測定局を設置し、常時監視を行っている。(一般環境大気測定局17局、自動車排出ガス測定局1局)

 

2 測定局及び測定項目の整備

 

 県においては、県域の大気汚染状況の変化に対応した測定局及び測定項目の整備・再配置を行い、適切かつ効率的な常時監視を行っている。(資料編第4-1表第4-17表参照)

 

3 常時監視とデータの情報提供

 

 平成14年度において、大気汚染常時監視システムにより、毎時測定データを収集している県下の測定局は89局である。環境情報センターにおいては、これらのデータに基づき、大気汚染状況を常時監視するとともに、光化学オキシダント緊急時等の発令を行った。
 また、緊急発令状況や毎時測定データ(速報値)をインターネットや携帯電話を利用して、県民にリアルタイムに情報発信している。

 

4 モニタリングボックスと移動観測車

 

 測定局の谷間となる地域や開発整備事業等環境変化が予想される地域で、現況の把握が必要な地域について、モニタリングボックス及び移動観測車(一般環境大気用及び自動車排出ガス用各1台)計4台により、機動的な監視・測定を行っている。

 

第3-1-1表 一般環境大気

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 モニタリングボックス移動観測車(「大気くん」)
測定地点 芦屋市陽光町4番1 32地点
測定期間 平成14年4月~
平成15年3月
各地点ごとに9日
測定項目 二酸化硫黄、一酸化窒素、二酸化窒素、浮遊粒子状物質、光化学オキシダント、風向、風速 二酸化硫黄、一酸化窒素、二酸化窒素、浮遊粒子状物質、光化学オキシダント、メタン系炭化水素、非メタン炭化水素、風向、風速、日射量、紫外線量
測定結果 資料編第4-14表のとおり 資料編第4-13表のとおり

 

第3-1-2表 自動車排出ガス用

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 モニタリングボックス移動観測車(「2号車」)
測定地点 川西市鴬台1丁目 30地点
測定期間

平成14年5月~
平成15年3月

各地点ごとに1週間程度
測定項目 一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化炭素、風向、風速、騒音 二酸化硫黄、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化炭素、浮遊粒子状物質、風向、風速、騒音、振動、交通量
測定結果 資料編第4-18表のとおり 資料編第4-19表のとおり
 

第2 一般環境大気

 

<コラム>騒音問題とは?

<コラム>かおり風景100選

 

1 二酸化硫黄

 

 二酸化硫黄などの硫黄酸化物は、主として石油・石炭などの化石燃料中の硫黄分がその燃焼過程で酸化されることにより生成される大気汚染物質であり、昭和40年代は、多量の硫黄酸化物が大気中に排出され、スモッグの原因となり、公害の主役であった。しかし、使用燃料の低硫黄化、排煙脱硫装置の設置等の対策により、汚染状況は大幅に改善されている。

 

(1)二酸化硫黄濃度の推移(資料編第4-5表

 平成14年度の全測定局(58局)の二酸化硫黄濃度年平均値の単純平均は0.004ppmであり、全測定局で環境基準を達成している(平成13年度は三宅島噴火の影響により短期的評価で57局中13局が未達成)。

 また、昭和48年度以降継続して測定している局(33局)の年平均値の単純平均は0.004ppmであり、経年変化をみると、近年低濃度で推移している。(第3-1-1図)

 

(2)二酸化硫黄対策

 「大気汚染防止法」に基づく排出規制、阪神・播磨地域(l1市3町)の工場・事業場に対する総量規制、燃料使用基準の適用及び県下主要工場と締結している環境保全(公害防止)協定により、良質燃料の使用、排煙脱硫装置の設置などを指導し、硫黄酸化物の排出量削減に努めてきた。この結果、硫黄酸化物による大気汚染の顕著な改善効果が得られ、すべての一般環境大気測定局で環境基準をはるかに下回る濃度にまで改善された。

 しかしながら、最近では廃棄物の燃料化、未利用エネルギーの利用等、エネルギー源の多様化により、発生源の形態が変化しつつあり、今後ともきめ細かな工場・事業場指導等を行っていく。また、気象条件によっては、局地的短期的な高濃度汚染が生じることもあり、的確な監視を引き続き行っていく。

 

第3-1-1図 一般環境大気汚染の推移

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2 窒素酸化物(二酸化窒素)

 

 窒素酸化物とは、燃焼により燃料中の窒素分及び空気中の窒素が酸素と結合して発生する物質である一酸化窒素及び二酸化窒素の総称である。

 発生時には、一酸化窒素が大部分を占めているが、これが大気中で酸化されて二酸化窒素に変化する。

 窒素酸化物の主な発生源としては、工場・事業場、自動車、船舶、ビルや家庭の暖房機器があげられるが、近年、都市部においては、自動車からの排出が大きな割合を占めている。

 窒素酸化物のうち、環境基準が定められているのは二酸化窒素であり、人への健康影響のみでなく、光化学オキシダントや酸性雨の原因物質の一つとされている。

 

(1)二酸化窒素濃度の測定結果と推移(資料編第4-2表

 平成14年度の全測定局(58局)の二酸化窒素濃度年平均値の単純平均は0.018ppmであり、全測定局(平成13年度は59局)で環境基準を達成している。

 また、昭和53年度以降継続して測定している局(36局)の年平均値の単純平均は0.019ppmであり、経年変化をみると、平成9年以降減少傾向にある。なお、平成14年度は浜甲子園局が有効測定時間(6000時間)に満たなかったため、評価対象外としている。(第3-1-1図)(二酸化窒素の経年変化 資料編第4-3表

 

(2)窒素酸化物対策

 窒素酸化物の発生源は工場・事業場、自動車、船舶など多岐にわたっており、汚染メカニズムも複雑であるため、環境基準を維持達成するためには、発生源別、地域的に効果的な対策を講じることが必要である。

 

ア固定発生源対策

 窒素酸化物対策のうち、固定発生源対策としては、「大気汚染防止法」に基づく濃度規制(ばい煙発生施設の種類・規模別に定められた排出口における濃度規制)及び環境保全(公害防止)協定に基づく排出量抑制指導による低NOxバーナーの導入、燃焼管理方法の改善、燃料の良質化などを強力に推進している。

 

イ神戸・阪神地域における窒素酸化物対策

 神戸・阪神間において、二酸化窒素が高濃度で推移していたことから、平成5年11月30日に「兵庫県自動車排出窒素酸化物総量削減計画」を策定するとともに、自動車をはじめ工場・事業場、家庭等群小煙源等を含む総合対策指針である「阪神地域窒素酸化物総量削減基本方針」を定め、対策を行ってきた。

 

第3-1-2図 二酸化窒素の環境基準達成状況の推移

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3 浮遊粒子状物質

 

 浮遊粒子状物質とは、物の燃焼などに伴って発生するばいじん、鉱石などの粉砕や自動車の走行に伴って飛散する粉じんなど、大気中に浮遊する粒径10μm(1μmは1000分の1mm)以下の粒子状物質をいう。これらの微粒子は、気道から肺に侵入・沈着し、呼吸器に影響を及ぼすことが知られている。

 浮遊粒子状物質は、その生成過程からみた場合、粒子として大気中に放出される一次粒子とガス状物質が大気中に化学的に変化して生成される二次生成粒子とに分類される。また、発生源としては、人為発生源(工場・事業場、自動車等)と自然発生源(土壌粒子、海塩粒子等)とに分類され、粒子の性状(粒径、成分等)が異なる。

 

(1)浮遊粒子状物質濃度の測定結果と推移(資料編第 4-7表

 平成14年度の全測定局(59局)の浮遊粒子状物質(粒径10ミクロン以下のもの)の年平均値の単純平均は0.027mg/m3である。

 環境基準の長期的評価では、日平均値の年間2%除外値については、全測定局で環境基準値(0.10mg/m3)を達成しているが、日平均値が2日連続で環境基準値(0.10mg/m3)を超過した局が59局中24局となっている。なお、この日は黄砂が観測されている。

 一方、短期的評価では、全測定局で環境基準を超過している。

 また、昭和51年度以降継続して測定している局(33局)の年平均値の単純平均は0.028mg/m3であり、経年変化をみると、平成元年度以降減少傾向にある。(第3-1-1図)(浮游粒子状物質の経年変化 資料編第4-8表))

 

(2)浮遊粒子状物質対策

 ばいじんについては、「大気汚染防止法」に基づき、ばい煙発生施設の種類及び規模ごとに排出基準が定められている。県では、「大気汚染防止法」に基づく排出基準の順守を徹底するほか、環境保全(公害防止)協定による指導などにより、良質燃料の使用及び集じん機の設置など、ばいじん排出量の低減指導に努めている。

 粉じんのうち一般粉じんについては、「大気汚染防止法」に基づき、一般粉じん発生施設に係る構造、使用及び管理に関する基準を順守させるほか、「環境の保全と創造に関する条例」により、規制対象施設の拡大、許可制度の導入並びに敷地境界及び地上到達点における濃度規制を行っており、これらを的確に運用することにより、一般粉じんの発生の低減に努めている。

 

第3-1-3図 浮遊粒子状物質の環境基準達成状況(長期的評価)の推移

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4 光化学オキシダント

 

 光化学オキシダントとは、大気中の窒素酸化物、炭化水素等の物質が太陽光線中の紫外線により光化学反応を起こし二次的に生成される酸化性物質の総称であり、オゾン、PAN(パーオキシアセチルナイトレート)等の物質が含まれる。

 

(1)光化学オキシダントの測定結果と推移(資料編第4-9表)

 平成14年度は前年度と同様、全局で環境基準を達成していない。

 一般局(53局)の昼間(6時~20時)の1時間値の年平均値は最も高いのが尼崎市北部と神戸市北の0.039ppmであり、全局平均は0.029ppmである。経年変化をみると、平成5年度以降の10年間では0.024ppmから0.031ppmの間で推移している。(光化学オキシダントの経年変化 資料編第4-10表)

 また、昼間の1時間値の最高値は加古川市尾上の0.164ppmである。昼間の濃度が0.06ppmを超えた日数の平均(測定局ごとの超過日数の合計を測定局数で割ったもの)は68日であり、前年度と比較して2日減少した。

 

(2)光化学スモッグ広報等の発令状況(資料編第4-12表)

 光化学オキシダントは、紫外線が強くなる夏期に高濃度となりやすいことから県では毎年5月から10月を特別監視期間とし、オキシダント濃度が上昇した場合には光化学スモッグ予報又は注意報等を発令することにより、被害の未然防止に努めている。

 光化学スモッグ広報等の発令は、平成14年度は予報14回、注意報8回であり、平成13年度(予報0回、注意報5回)に比べて増加した。

 また、平成14年度は平成11年以来3年ぶりに神戸市西区と姫路市において、光化学スモッグによるものと思われる被害が発生したが、いずれも軽症であった。(被害者:神戸市31人、姫路市7人計38人)

 

(3)光化学オキシダント対策

 光化学スモッグによる大気汚染に対処するため、被害の発生防止と被害発生時における被害者の救済を目的として、次のとおり対策を実施している。

 

ア光化学スモッグ常時監視体制の強化

 光化学スモッグ多発期間中(5月1日~10月31日)は、土曜、日曜、祝日を含めた特別監視体制により、光化学スモッグ(オキシダント)の監視を強化する。

 

イ光化学スモッグ緊急時の広報等の発令及び通報(第3-1-6図)

 

ウ光化学スモッグ広報等の発令時の対策

(ア)一般県民に対する周知について、報道機関へ協力依頼

(イ)関係機関(警察本部他関係部局)への通報及び事態の周知

(ウ)主要工場(県下約300工場)に対する窒素酸化物排出量の削減要請

   及び有機溶剤等炭化水素類の使用を可能な限り抑制することの要請

(エ)広報等発令地域への車両の乗り入れ自粛の呼びかけ

 

エ健康被害発生時の救急医療体制を県医師会へ協力要請

 

オ神戸海洋気象台との気象情報交換の緊密化

 

第3-1-4図 昼間の光化学オキシダント濃度が

0.06ppmを超えた日数の平均の推移

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第3-1-5図 光化学スモッグ広報等発令回数

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第3-1-6図 光化学スモッグ広報等連絡系統図

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5 有害大気汚染物質

 

 低濃度であっても長期的曝露によって健康影響が懸念される有害大気汚染物質について、健康影響の未然防止を図るため、大気汚染防止法が改正され、平成9年4月から施行され、同法第18条の23及び第22条の規定に基づき、一般環境について5地点、固定発生源周辺について2地点、道路沿道1地点での測定を行った。

 

(1)測定物質

 優先取組物質として位置づけられた22物質のうち、既に測定方法の確立されている次の19物質について測定した。

①アクリロニトリル②アセトアルデヒド③塩化ビニルモノマー④クロロホルム⑤1,2-ジクロロエタン⑥ジクロロメタン⑦テトラクロロエチレン⑧トリクロロエチレン⑨ベンゼン⑩ホルムアルデヒド⑪1,3-ブタジエン⑫酸化エチレン⑬ニッケル化合物⑭ヒ素及びその化合物⑮マンガン及びその化合物⑯クロム及びその化合物⑰ベリリウム及びその化合物⑱ベンゾ[a]ピレン⑲水銀及

その化合物

 なお、固定発生源周辺、道路沿道については、上記のうち排出が予想される物質とした。

 

(2)測定期間、頻度

 毎月1回測定を実施した。

 

(3)結果

 結果を資料編第4-15表に示す。

 このうち4種類の物質について環境基準が定められており、それらを年平均値で評価すると、ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンのいずれもすべての地点で環境基準を達成している。

 平成15年7月31日に中央環境審議会より今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第7次答申)が示され、環境目標値の一つとして、環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るため、優先取組物質のうちアクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、水銀、ニッケル化合物の4物質についての指針となる数値が設定された。

 この指針値は、大気モニタリング調査結果の評価にあたっての指標や事業者による排出抑制努力の指標として定められたものである。

 

(指針値)

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アクリロニトリル 年平均値 2μg/m3 以下
塩化ビニルモノマー 年平均値 10μg/m3 以下
水銀 年平均値 0.04μgHg/m3 以下
ニッケル化合物 年平均値 0.025μgNi/m3 以下

 

(4)有害大気汚染物質対策

 数多くの化学物質が開発され、いろいろな分野に利用されており、大気中からも低濃度ではあるが種々の物質が検出されている。

 それらの中には、長期間の暴露による健康への影響が懸念されるものもあるため、健康影響の未然防止の観点に立って着実に対策を実施していくことが必要となっている。

 こうした状況にかんがみ、有害大気汚染物質のうち、特に健康に影響を及ぼすおそれ(健康リスク)が高いと評価されたベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについては、「大気汚染防止法」に基づき、指定物質に指定され、指定物質排出施設及び指定物質抑制基準が設定されている。

 県では、これらの物質を使用する工場・事業場に対し、排出抑制指導を行っている。

 

6 金属物質等

 

 県下における金属物質の現況を把握するため、大気中金属物質を県下9地点で測定し、県南部地域における金属物質による大気汚染の状況を監視した。(資料編第4-16表

 

(1)測定物質

 ①鉄②マンガン③亜鉛④鉛⑤カドミウム⑥ニッケル⑦全浮遊粉じん

 

(2)測定地点

 伊丹市役所、加古川市役所、赤穂市役所、高砂市役所、宝塚市老人福祉センター、芦屋市朝日ケ丘小学校、相生市役所、龍野市役所、稲美町役場

 

(3)測定結果

 全浮遊粉じんに含まれる金属物質濃度の経年変化を阪神地域、播磨地域に分類して第3-1-7図に示す。

 全浮遊粉じんについては、長期的な濃度推移の傾向をみると、昭和58年度以降横ばいもしくは漸減傾向を示している。前年度と比較すると、赤穂市及び伊丹市では横ばい状態、その他7地点では減少に転じた。

 各金属成分についての、長期的な濃度推移の傾向をみると、昭和58年度以降横ばいもしくは漸減傾向を示している。また、前年度と比較すると、マンガンは5地点、鉄は3地点、ニッケル、鉛及びカドミウムは1地点において前年度より濃度が増加したものの、その他は横ばいもしくは減少傾向を示した。

 こうしたことから、今後も地域的な大気汚染物質の負荷量及び景気変動に伴う経済活動の変化を注視し、継続的な監視が必要である。

 

(4)金属物質等有害物質対策

 有害物質については、「大気汚染防止法」に基づき、ばい煙発生施設の種類ごとにカドミウムなど4物質について規制基準が定められている。

 また、28物質の特定物質については、事故時の応急措置及び速やかな復旧義務が事業者に対し課せられている。

 県においては、これら「大気汚染防止法」に基づく規制基準の順守を徹底するとともに、「環境の保全と創造に関する条例」において、有害物質に係る特定施設として溶剤洗浄施設等に届け出義務を課し、クロム化合物、シアン化合物、トリクロロエチレンなど29項目の有害物質について、地上到達地点濃度、敷地境界線上濃度の規制を工場等に対して行い、排出抑制の指導を行っている。

 また、県下南部9地点における大気中金属物質(7項目)の監視を引き続き実施し、大気中の金属物質による大気汚染の実態把握に努めている。

 

第3-1-7図 各金属成分濃度の経年変化

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7 アスベスト

 

 過去、アスベスト問題は、主にアスベスト製品製造工場等での労働環境問題としてとらえられ、高濃度暴露による石綿肺、肺がん、悪性中皮腫などの健康被害を防止する目的で労働安全衛生の面から種々の対策が講じられてきた。

 しかし、一般環境中にもアスベストの存在が確認され、各種発生源に対する排出抑制対策が必要であることから、一般環境及びアスベスト製品製造工場の監視調査を実施している。

 なお、一般環境等のモニタリングをアスベスト製品製造工場散在地域、商業地域及び住宅地域において実施してきた結果は第3-1-3表のとおりである。

 平成14年度調査では、各地域ともほぼ同じような値を示し、特に高い値はみられなかった。また、経年的には低下傾向がみられる。

 

第3-1-3表 兵庫県のアスベスト一般環境等モニタリング結果

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8 騒音・振動

 

(1) 14年度の騒音苦情

 騒音は、住民にとって最も身近な公害である。そのため、平成14年度の苦情件数は664件と多く、全公害苦情件数の18%を占めている。

 発生源別の苦情件数の経年変化は第3-1-8図のとおりである。主な苦情の発生源は、建築・土木工事、商店・飲食店、製造事業所であり、これらの業種で全体の約67%を占めている。

 騒音苦情が最も多い建築・土木工事では、建設機械の構造や作業の性質上、防音対策が困難な場合が多く、また、工事現場に出入りする車両による迷惑感も苦情の原因となっている。

 騒音苦情の第2位は商店・飲食店であり、その中ではカラオケ騒音が約40%を占めている。

 騒音苦情の第3位は製造事業所であり、鉄鋼・非鉄金属・金属製品製造業が主な原因となっている。

 

第3-1-8図 騒音苦情件数の推移

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(2) 工場・事業場及び建設作業の騒音規制

 「騒音規制法」及び「環境の保全と創造に関する条例」に基づき、工場・事業場及び建設作業から発生する騒音を規制する地域として、県下全市町の全域を指定している。

 工場・事業場から発生する騒音については、騒音発生源となる圧延機械などの施設を届け出の対象とし、地域ごと、時間帯ごとの区分に応じた音の大きさで規制を行っている。

 建設作業の騒音については、くい打ち機を使用する作業などを届け出の対象とし、作業時間などの規制を行っている。

 商店・飲食店から発生する騒音については、「環境の保全と創造に関する条例」によって音の大きさによる規制に加えて、飲食店の深夜における営業の制限、また、カラオケ騒音に対しては、音の大きさによる規制とともに、県下22市29町において深夜における音響機器の使用の制限を行っている。

 なお、法律に基づく規制対象施設等の届け出数は資料編第3-2表のとおりである。

 

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コラム

▼騒音問題とは?
 私たちのまわりでは、いくつもの音が発生しています。「今日は、音を聞かなかった」という日は、まず、ないでしょう。多くの音の中で、どのような音が騒音とされるのでしょうか。
  1. 騒音は音である。(物理的に音が発生しなければ、騒音問題とならない。)
  2. 騒音は人が音を知覚する結果として起こる。(聞く人がいなければ、騒音問題とならない。)
  3. 騒音は人と人、人と社会にかかわる現象である。(物理的に同じ音であっても、受け取る側の
  心理状態、社会的立場などによっては、騒音問題となりうる。)
  上記の3つの条件に当てはまるものが、騒音問題である。この3つの条件に当てはまる騒音が発生し、苦情が寄せられた件数は、工場・事業所や建設現場からのものが多いが、近年では、生活環境騒音に対しての苦情が増えつつある。
  生活環境騒音とは、テレビ、ステレオなどの音響機器や、エアコン、洗濯機などの家庭用機器、その他、家庭生活に伴って発生する騒音である。したがって、誰もが加害者にも被害者にもなりうるのです。その半面、一人一人のちょっとした工夫や気配りによって、未然に問題をさけることもできるのです。

 

生活環境騒音の防止のために
○ 家庭用機器は低騒音型の機種を選びましょう。
○ 機器の取り付け位置や向きに気を付けましょう。
○ 夜遅く音を出すのはやめましょう
○ 大きな音を出したり、何度も音を出したりするときは隣近所に声をかけましょう
○ 日頃から、近所の人たちと気軽に話せたり、注意しあえたりするのが理想です
 

(3) 14年度の振動苦情

 振動は、騒音同様身近な公害である。

 平成14年度は105件で全公害苦情件数の約3%を占めている。発生源別の苦情件数の経年変化は第3-1-9図のとおりである。建築・土木工事に関する苦情件数が多く、振動苦情の約74%を占めている。

 

第3-1-9図 振動苦情件数の推移

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(4) 振動対策

 「振動規制法」及び「環境の保全と創造に関する条例」に基づき、工場・事業場及び建設作業から発生する振動を規制する地域として、県下全市町の全域を指定している。

 工場・事業場から発生する振動については、振動発生源となる金属加工機械などの施設を届け出の対象とし、地域ごと、時間帯ごとに振動の大きさで規制を行っている。

 建設作業の振動については、くい打ち機を使用する作業などを届け出の対象とし、作業時間などの規制を行っている。

 なお、法律に基づく規制対象施設等の届け出数は、資料編第3-2表のとおりである。

 

(5) 市町騒音・振動担当職員の研修及び技術支援

 工場・事業場及び建設作業から発生する騒音及び振動について、法律、条例に基づく、届け出の審査及び立ち入り検査などは、各市町の事務となっているので、県では法律、条例の円滑な施行をるため、市町担当職員を対象に関係法令、測定及び防止技術の研修を行うとともに、騒音及び振動が問題となっている事業所の防止対策について、市町への技術的な支援を行っている。

 

9 悪臭

 

(1) 14年度の悪臭苦情

 悪臭は、日常生活において比較的感知されやすく、主として不快感などの感覚的影響が中心となっている。悪臭物質は、一般的に低い濃度でも不快感を与えることや、多種類の臭気物質の混合体として大気中に拡散することが多く、苦情の解決を一層困難にしている。

 平成14年度の苦情件数は400件で、全苦情件数の約11%を占めている。発生源別の苦情件数の経年変化は第3-1-10図のとおりである。

 製造事業所への苦情件数が全体の約25%を占めており、その中でも食料品製造業、化学工業への苦情が多い。サービス業、畜産業、商店・飲食店、さらには、家庭生活から発生する悪臭への苦情も多い。

 

(2) 悪臭対策

 工場・事業場から発生する悪臭については、「悪臭防止法」に基づき、県下全域を規制地域として指定している。

 悪臭防止法に基づき、悪臭の原因となる物質について、敷地境界での濃度規制(22物質)、煙突その他の気体排出口での排出量規制(13物質)及び排出水中の濃度規制(4物質)を行っている。

 「環境の保全と創造に関する条例」では、周辺の多数住民に不快感を与えないことを目途として規制を行っている。

 悪臭の防止にあたっては、騒音・振動と同様に市町が規制の権限を有しているので、県は市町担当職員を対象に法令・悪臭物質の測定及び防止技術の研修を行っている。

 

第3-1-10図 悪臭苦情件数の推移

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コラム

▼かおり風景100選

 身近にあるよいかおりを再発見して、その源となる自然や文化ーかおり環境ーを保全・創出しようとする地域のとり組みを支援することを目的に、環境省は平成13年度に「かおり風景100選」を認定しました。600を超える応募の中から特に優れたもの100地点が選ばれました。県内の「かおり風景100選」は次のとおりです。

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所在地かおり風景100選かおりの源季節内 容
神戸市
西宮市
灘五郷の酒づくり灘の酒秋から冬阪神間約12㎞の範囲に酒造メーカーが集合しており、仕込み期には新種のかおりが漂っています。
寛永年間に西宮で醸造が始まり、酒文化の歴史を後世に伝えるための資料館・記念館等を開設しています。
宍粟郡
山崎町
山崎大歳神社の
千年藤
4月下旬 ~
5月上旬
西暦960年に植えられたとされる千年藤は境内をすっぽりと覆うほどです。
花期には周囲に甘い香りを漂わせ、5月上旬には藤まつりも開かれます。
津名郡
一宮町
一宮町の線香づくり線香一年中嘉永年間から続く線香づくりは、全国の約70%のシェァを占めています。
町内には線香事業者が16社、下請け業者が多数並び、お香のかおりが生活のかおりとして漂っています。

 

 このほかにも県内にはたくさんの素晴らしいかおり風景があります。皆さんもご自分のかおり風景を見つけてみてはいかがでしょうか。

 

10 工場・事業場対策

 

(1) ばい煙発生施設等の届出

 大気汚染防止法に基づき、硫黄酸化物等を排出するばい煙発生施設等の設置等の届出及び粉じん発生施設の届出審査を行うとともに、ばい煙及び粉じん発生の低減の指導を行っている。

 ばい煙発生施設の届出総数は、平成14年度末で8,928施設(第3-1-11図)、一般粉じん発生施設の届出総数は、4,789施設となっている。(資料編第3-1表①、②、③参照)

 

(2) 工場・事業場の立入検査等

 大気汚染防止法に基づき、工場等の立入検査を実施し、ばい煙濃度の測定、燃料の分析等を行い、規制基準の遵守状況等を監視し、規制基準に適合しない場合は改善を指示するなど必要
な措置をとっている(第3-1-4表)。

 

第3-1-4表 工場・事業場への立入検査等(平成14年度)

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区   分届出工場・事業場数立入
検査
件数
行 政 措 置
改善
命令
改善
勧告
改善
指示
ばい煙発生施 設 関 係 3,375 279 0 0 0
一般粉じん発生施設関係 381 72 0 0 0
特定粉じん発生施設関係 8 4 0 0 0

 

第3-1-11図 ばい煙発生施設数推移

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第3 自動車公害

 

1 大気汚染

 

(1)二酸化窒素濃度の推移 (資料編第4-18表 経年変化(2))

 平成14年度の全測定局(28局)における二酸化窒素濃度年平均値の単純平均は、0.029ppmである。

 また、平成元年度以降継続して測定している局(20局)の年平均値の単純平均は、0.030ppmであり、近年はほぼ横ばいの状況にある。環境基準を達成していない局は、平成8年度の28局中15局以降減少し、平成14年度については、28局中4局である。(第3-1-13図)(資料編第4-18表 年間測定値(1))

 

第3-1-12図 自動車排出ガスによる大気汚染の推移

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第3-1-13図 二酸化窒素の環境基準達成状況の推移

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(2)阪神臨海部における自動車排出ガス(二酸化窒素)の現況

 阪神臨海部の主要国道においては、県及び政令市により自動車排出ガス測定局が8局設置されている。

 これらの測定局の二酸化窒素濃度の測定結果及びその環境基準の達成状況は、第3-1-14図のとおりである。

 国道43号沿道においては、2局で環境基準が達成されていない。

 

第3-1-14図 自動車排出ガス(二酸化窒素)による大気汚染の現況(阪神臨海部)

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(3)浮遊粒子状物質濃度の推移(資料編第4-18表 経年変化(4))

 平成14年度の全測定局(19局)の浮遊粒子状物質の年平均値の単純平均は、0.036mg/m3である。また、平成元年度以降継続して測定している局(7局)の年平均値の単純平均は、0.036mg/m3であり、減少傾向にある。

 長期的評価における環境基準は、日平均値の年間2%除外値については、19局中17局で環境基準を達成している(平成13年度は18局中16局で達成)。また、平成14年度においては、黄砂の影響が著しい日及び著しい逆転層が出現した日があるなど気象の影響により日平均値が2日連続で環境基準を超過した局が12局となっている。

 一方、短期的評価では、全測定局において、環境基準を超過している。

 

第3-1-15図 浮遊粒子状物質の環境基準の達成状況(長期的評価)

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(4)一酸化炭素濃度の推移(資料編第4-18表 年間測定値(2))

 平成14年度の全測定局(25局)の一酸化炭素濃度年平均値の単純平均は、0.7ppmであり、昭和53年度以降減少傾向にある。

 また、全測定局において、環境基準を達成している。

 

(5)自動車排出ガス対策

 平成5年11月に、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」に基づき策定した「兵庫県自動車排出窒素酸化物総量削減計画」により、各種施策を行ってきた。

 しかしながら依然として、二酸化窒素に係る環境基準が達成されていない地点が存在すること及び近年ディーゼル車から排出される粒子状物質による人の健康に対する影響が懸念されていることから、平成13年6月に自動車NOx法が「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(以下「自動車NOx・PM法」という)に改正された。この自動車NOx・PM法に基づき平成15年8月に策定した新たな「自動車NOx・PM総量削減計画」により一層の自動車排出ガス対策を推進する。

 また、「環境の保全と創造に関する条例」に基づき、自動車停止時の原動機の停止や、事業者による自主的な自動車排出窒素酸化物の排出抑制等の自動車排出ガス対策を推進しており、さらに、平成15年10月には同条例を改正し、ディーゼル自動車の運行規制を、平成16年10月から開始することとした。

 

ア 自動車単体対策の推進

 大気汚染防止法の規定に基づき、自動車排出ガスによる大気汚染を防止するため、自動車から排出される一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物及び粒子状物質等についての規制が行われている。

 規制の経緯は以下のとおりである。

 中央環境審議会により「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」の答申が、平成元年12月(1次答申)、平成8年10月(中間答申)、平成9年11月(2次答申)、平成10年12月(3次答申)、平成12年12月(4次答申)及び、平成14年4月(5次答申)になされた。これらの答申に基づき、大気汚染防止法に基づく許容限度が定められ順次規制が実施されている。

 県では、最新規制適合車への転換を促進するため、中小企業者が、現に使用しているディーゼル車を窒素酸化物等排出量の少ない最新規制適合車に買い換える場合等に、購入資金を低利に融資する制度を設けている。

 平成14年度には、最新規制適合車36台に対して、336,789干円の融資あっせんを行った。

 また、資金融資利用者に対する利子補給制度も設けている。

 

(ア)1次答申

(短期目標)

・ガソリン・LPG重量車の平成4年規制

・ディーゼル中・重量車の平成5~6年規制

(長期規制)

・ガソリン・LPG中・重量車の平成6~7年規制

・ディーゼル車の平成9~11年規制

(イ)中間答申

・二輪車に対する平成10~11年規制

・ガソリン・LPG軽貨物・中・重量車の平成10年規制

(ウ)2次答申

(新短期目標)

・ガソリン・LPG車の平成12~14年規制

(新長期規制)

・ガソリン・LPG車の平成17年規制(詳細は別途答申)

(エ)3次答申

(新短期目標)

・ディーゼル車の平成14~16年規制

(新長期規制)

・ディーゼル車の平成19年規制

(オ)4次答申

・ディーゼル車の新長期目標を2年前倒し

(カ)5次答申

・新長期目標の数値を設定

 

第3-1-16図 ディーゼル自動車排出ガス規制値の推移

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第3-1-17図 自動車公害対策の体系

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イ 車種規制の実施等

 国は、自動車排出窒素酸化物及び自動車排出粒子状物質の排出量の少ない車種への早期転換を促進するため、自動車NOx・PM法に基づき、窒素酸化物対策地域及び粒子状物質対策地域(神戸市等11市2町)において、窒素酸化物排出基準及び粒子状物質排出基準を満たさない自動車は登録できなくなるという車種規制を行っている(第3-1-5表)。この規制は、新車については平成14年10月1日から、使用過程車については平成15年10月1日から順次適用されている。

 また、車種規制は、法対策地域内の登録車を対象としており、対策地域外からの流入車対策とならないことから、環境基準の達成をより確実なものとするため、「環境の保全と創造に関する条例」を改正し、運行規制を実施することとした。運行規制は、自動車NOx・PM法の排出基準に適合しない車両総重量8トン以上の自動車(バスは定員30人以上)を対象車両とし、阪神東南部地域(神戸市灘区、東灘区、尼崎市、西宮市(北部を除く)、芦屋市、伊丹市)を対象地域として、平成16年10月から順次適用される。

 

第3-1-5表 自動車NOx・PM法車種規制の窒素酸化物

排出基準及び粒子状物質排出基準

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(注)中央環境審議会第4次答申(平成12年)において、新長期規制(平成17年から実施予定)については、新短期規制の2分の1程度より更に低減した規制値とすることが適当であるとされていることを踏まえ、新短期規制(平成14年から実施)の2分の1の値としている。

 

ウ 低公害車の普及促進

 平成14年3月末現在の県下における低公害車の普及状況は、第3-1-6表のとおりである。

(ア)公用車への低公害車の率先導入

 兵庫県では、平成元年度にメタノール自動車を1台導入して以後、公用車の低公害車への代替を進め、平成14年度末には、天然ガス自動車45台、メタノール自動車1台及びハイブリッド自動車36台の計82台を使用している。

(イ)民間への普及促進

 低公害車の民間への普及促進を図るため、国及び市と協調し、導入事業者に対する助成を行っている。

 また、県、市、国の関係機関及び事業者等からなる「兵庫県低公害車普及促進協議会」を設置し、低公害車の普及方策の検討などを行っている。

(ウ)京阪神6府県市指定低排出ガス車(「LEV-6」)の普及促進

 一般に市販されているガソリン車、ディーゼル車及びLPG車のなかにも窒素酸化物等の排出量が少ない型式の自動車が存在することから、平成12年8月に京都府・大阪府・兵庫県・京都市・大阪市・神戸市からなる「京阪神六府県市自動車排出ガス対策協議会」を設置し、窒素酸化物等の排出量が少ない車を「低排出ガス車」として指定し、低公害車と併せて普及を促進している。

 

第3-1-6表 低公害車の普及状況(平成14年度末)

横スクロール

車 区 分公共団体民間
電気自動車 17 58 75
メタノール自動車 1 1

2

天然ガス自動車 146 700 846
ハイブリッド自動車 97 3,560 3,657
低燃費かつ低排出ガス車 236 174,702 174,938
497 179,021 179,518

 (注)低燃費かつ低排出ガス車については軽自動車を除く。

 

エ 交通需要の調整・低減

 兵庫県下の自動車保有台数は、近年減少傾向を示しているものの増加しており(第3-1-18図)、沿道環境の改善に向けた公共交通機関の利便性の向上等、自動車走行量抑制のための対策を総合的に進めている。

 また、物資輸送の効率を高めることによって貨物自動車の走行量抑制を図る物流対策も重要な対策であり、共同輸配送等による配送効率の改善、物流施設の整備等による輸送ルートの適正化、協同一貫輸送等の輸送手段の転換など物資輸送の合理化対策を促進している。

 

第3-1-18図 自動車保有台数

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オ 交通流対策の推進

 自動車交通に起因する大気汚染、騒音、振動の低減を図るためには、道路機能や地域の特性に応じた安全で円滑な交通流を形成することが重要である。

 このため、公安委員会では、最高速度、駐(停)車禁止、バス専用・優先レーン等の都市総合交通規制を推進するとともに、都市部を中心とした交通管制システムの整備、主要幹線道路を重点とした信号機の系統化等を推進し、交通流の円滑化を図っている。

 さらに、交通流の分散を図るため、バイパス道路の建設を進めるとともに、交通流の円滑化が窒素酸化物排出量の減少に寄与することから、右折レーンの設置、立体交差化等を推進している。

 

2 騒音・振動

 

(1)騒音の環境基準の達成状況(資料編第4-20表

 平成14年度における県下の主要な道路沿道の騒音の測定結果は、261測定地点のうち、約48%の測定地点では、全時間帯(昼、夜)について環境基準を達成している。

 しかし、約38%の地点では、全時間帯(昼、夜)について環境基準を超過し、約14%の地点では一部の時間帯で同基準を超過している。

 なお、環境基準の達成状況は近年横ばいで推移している。

 

(2)阪神臨海部における自動車騒音の現況

 県及び市による測定結果は、第3-1-19図のとおりである。

 阪神臨海部の主要幹線道路沿道の約58%の地点で環境基準未達成である。

 

(3)振動の状況

 平成14年度における県下の主要な道路沿道の振動の測定結果は、30測定地点すべてにおいて、全時間帯(昼・夜)で要請限度を下回っている。

 

(4)道路交通騒音対策

 道路交通騒音対策には、主に以下のような対策がある。

ア 発生源対策

 自動車構造の改善により自動車単体から発生する騒音を減らす対策である。自動車単体からの騒音規制は、「騒音規制法」に基づく許容限度の設定及び「道路運送車両法」に基づく保安基準の設定により行われている。

イ 交通流対策

 道路交通の円滑化を行い、騒音を低減させる対策であり、交通管制システムの高度化、交通規制、取締り、バイパスの整備等を実施する。

 兵庫県では、国道43号において、大型車の中央寄り車線規制を実施している。

ウ 道路構造対策

 道路構造を改変し、対策を行う。

 低騒音舗装は、元々は空隙の多い素材を表層に舗装し、雨天時の排水性を高める目的で導入された。しかし、空隙に音が吸収されることから、騒音対策としても有効である。

 遮音壁設置は、沿道から乗り入れのない高速道路等において特に有効な対策である。

 環境施設帯の設置とは、車道と沿道の間に数mの緩衝空間を確保し、騒音の低減を図る対策である。

エ 沿道対策

 沿道対策とは、沿道の土地利用を適正化し、騒音対策を行うことである。

 沿道土地に住宅以外の建物の誘致、既存住宅の防音工事等を行い、生活環境への影響を最小限に抑える対策である。 

 環境基準達成になお長期間を要する区間については、21世紀初頭までに道路に面して立地する住宅地等における騒音を夜間におおむね要請限度以下に抑えることなどを当面の目標に掲げ、今後、自動車騒音の低減のための施策展開を図ることとしている。

 さらに、平成7年12月1目には当時の警察庁、環境庁、通産省、運輸省、建設省5省庁の連名により、「道路交通騒音の深刻な地域における対策の実施方針について」が各都道府県知事、政令市長あて通知された。

 最高裁判決で司法判断が下された国道43号以外にも、各地に道路交通騒音の深刻な地域が存在することから、この通知に基づき、国及び自治体等が一致協力して地域に応じた取り組みを進めていくこととしている。

 

第3-1-7表 自動車騒音規制の推移

(単位:db)        

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3 国道43号等幹線道路対策

 

(1)国道43号対策

ア環境の現況

(ア)大気汚染物質

 国道43号沿道の大気汚染の状況は、平成14年度において、8局中7局で二酸化窒素(NO2)及び浮遊粒子状物質(SPM)(長期的評価による)の環境基準を達成しておらず、依然として厳しい状況にある。

(イ)騒音

 国道43号沿道の夜間の騒音は、道路構造対策、交通流対策等により低減され、一部の地点では環境基準を達成している(第3-1-8表)。

 

イ国道43号・阪神高速神戸線環境対策連絡会議での取組

 平成7年7月、国道43号・阪神高速道路訴訟において、国等に対する損害賠償請求の一部を認容する最高裁判決が下された。このため、国の地方機関、県、県警本部、関係市及び阪神高速道路公団で構成する「国道43号・阪神高速神戸線環境対策連絡会議」が、平成7年8月に設置され、道路構造対策をはじめ、交通流対策や沿道対策の総合的な環境対策について検討が行われ、各種対策が講じられている。

 

○ 道路構造対策(平成10年4月概成)

・阪神高速道路 低騒音舗装の敷設、高遮音壁・高架裏面吸音板の設置等

・国道43号  直進片側3車線化、低騒音舗装の敷設、遮音壁の設置等

 

○ 交通流対策(平成10年4月から実施)

・夜間の大型車等の車両通行帯規制等

 

○ 沿道対策(現在実施中)

・広域防災帯の整備、沿道住民によるまちづくりへの支援等

 

第3-1-19図 阪神臨海部における自動車騒音の現況

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第3-1-8表 国道43号の騒音レベルの推移(夜間)

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ウ 関係5省庁による「当面の取組」等

 平成12年1月には尼崎公害訴訟の一審判決で沿道住民の浮遊粒子状物質による健康被害が認められ、大気環境改善のための新たな取組が必要となったことから、同年6月、関係5省庁において、「当面の取組」(阪神高速湾岸線へ交通を転換するための道路整備、環境ロードプライシング検討、事業者への協力要請等)が取りまとめられ、同年12月に和解が成立した。

 なお、平成14年10月には、同和解内容の履行をめぐり、同訴訟の原告団から、公害等調整委員会に対するあっせん申請が行われ、平成15年6月にあっせんが成立した。

 

(2)その他の幹線道路の環境対策

 主要な道路における騒音の環境基準達成状況については表3-1-9のとおりである。

 国道43号以外の地域においても、地域に応じた取組を行う必要があることから、国・市町・関係機関と連携しながら、低騒音舗装等の道路構造対策、バイパス整備による交通流の分散化、緩衝緑地確保等の沿道対策や交通取締りの強化等を順次進めている。

 

第3-1-9表 県下の主要な道路の騒音の

環境基準達成状況(平成14年度)

 

横スクロール

 時 間 別 達 成 状 況
昼間のみ達成夜間のみ達成昼夜間ともに達成昼夜間ともに未達成
地点数
(%)
27
(10)
10
(4)
124
(48)

100
(38)

注)県及び市町が測定した主要な道路の261地点の騒音測定結果による。

 

第4 航空機公害

 

1 大阪国際空港

 

(1)概要

 大阪国際空港は、国土交通省が設置し管理する第1種空港で、兵庫県と大阪府の境に位置し、面積は317ha(うち兵庫県側205ha)、滑走路は1,828mと3,000mの2本を有している。

 平成14年における航空機の発着回数は、104,818回(1日平均287回)である。

 

(2)航空機騒音の状況

 航空機の発着などによって生じる公害は、騒音、振動、電波障害、大気汚染などであるが、環境基準との対比で特に問題となっているのは、航空機による騒音である。

 平成14年度は、前年度と同様に、固定測定局12局中8局で環境基準を達成している。

 大阪国際空港周辺の航空機騒音は、関西国際空港の開港により、騒音の高い国際線の移転及び飛行機便数の減少等で大きく改善されたが、その後は横ばいで推移している。(未達成測定地点は川西市久代小学校など4地点)。(第3-1-21図)

 また、この騒音の状況を踏まえて、国土交通省は「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」に基づく騒音指定区域を改定し、平成12年4月から施行した。第1種区域(75WECPNL以上の区域)は、兵庫県側で約60%縮小され、約840haとなっている。(資料編第4-22表)

 

第3-1-20図 航空機騒音常時測定地点と飛行経路

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第3-1-21図 大阪国際空港周辺経年変化グラフ

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2 関西国際空港

 

(1)概要

 平成6年9月に開港した関西国際空港は、大阪湾南東部の泉州沖にある。平成14年の発着回数は、111,196回(1日平均305回)である。

 関西国際空港に発着する航空機の航路の一部は、淡路島の上空を通過している。(第3-1-22図)

 

第3-1-22図 航空機騒音測定地点と飛行経路

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(2)航空機騒音の状況

 県が淡路島で行った航空機騒昔調査結果は資料編第4-23表のとおりである。航空機騒音の環境基準の70WECPNL(地域類型Ⅰ)と比較して15WECPNL以上低くなっている。

 

(3)航空機公害対策

 大阪国際空港の騒音対策は、第3-1-23図のとおり、発生源対策、空港構造の改良及び空港周辺対策に大別される。

 

第3-1-23図 航空機騒音対策の体系

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ディレイドフラップ

 

 

3 発生源対策

 

(1)低騒音機材の導入

 昭和52年より航空機の騒音基準に適合した低騒音大型機が順次導入され、現在では、B-727型及びDC-8型の高騒音機は定期路線から退役し、すべてが低騒音機材の運航となっている。

 さらに、大阪国際空港では、関西国際空港開港後、騒音基準が強化された新基準に適合した航空機のみの運航となっている。

 

(2)発着規制

 定期便ジェット機の発着回数は、昭和52年10月から年末・年始及び盆の時期を除き、1日あたり200便内で運航されている。昭和63年11月よりYS-11型機の老朽化に対応するため、暫定措置として代替ジェット機発着回数枠が2回にわたり設定され、平成5年には代替ジェット機が100便で運航されていたが、関西国際空港の開港により、代替ジェット機枠は撤廃された。

 関西国際空港開港後、定期便のYS-11型機は減少したが、同型機の低騒音ジェット機への代替をさらに進めるため、運輸省は、地元の意向を受け、平成10年3月、定期便ジェット機1日200便の枠外で、YS-11型機の代替等を含み1日50便程度の低騒音ジェット機を導入する計画を示し、平成10年7月から順次運航されている。

 さらに、平成14年4月からは、プロペラ枠を使用してリージョナルジェット機(小型ジェット機)が運航されている。

 また、発着時間規制を行っており、発着は緊急時などを除き午前7時から午後10時までに限られており、さらに、午後9時以降は定期便の設定は行わないこととしている。

 

(3)運航方法の改善

 騒音軽減運航方法として、離陸時の急上昇方式、着陸時のディレイドフラップ進入方式、優先飛行経路の指定なとが採用され、空港周辺への騒音低減が図られている。

 風向きなどにより通常(大阪市から川西市方向への発着)と逆方向の発着(いわゆる「逆発着」という。平成13年全発着回数の2.5%)を行うことがある。その場合、視認進入を行うことから、民家防音工事等の対策を実施している区域外に騒音の高い地域が生じている。このため、運輸省は、新AGL(進入路指示灯)を平成11年2月から暫定運用し、飛行コースの改善に努め、このような区域外への騒音影響の低減を進めている。

 

4 空港周辺対策

 

 ジェット機の就航に伴う航空機騒音問題の発生に対処するため、昭和42年に「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」(以下「航空機騒音防止法」という)が制定されたが、航空輸送需要の急激な増大を背景に騒音問題が深刻化したため、昭和49年に「航空機騒音防止法」の改正が行われた。

 空港周辺地域におけるこれまでの学校、病院などの公共施設に対する防音工事の補助、移転補償などの対策に加え、個人の住宅に対する防音工事の助成、緩衝緑地の造成、空港周辺整備計画の策定とこれを実現するための空港周辺整備機構の設立などの制度が導入され、対策は大幅に拡充されることとなった。

 

(1)大阪国際空港周辺整備計画

 「大阪国際空港周辺整備計画」は、昭和49年に兵庫県知事及び大阪府知事により策定されており、この計画を基礎としつつ、国、地元地方公共団体などは、昭和52年以来周辺地域における望ましい土地利用の方向付け及び特に緊急に整備を要する騒音等激甚地区の地区整備計画の検討を進めてきた。

 また、同地域においては、移転補償の進ちょくに伴い、移転跡地が市街地に散在することとなる一方で新たな建物が同地域に立地するなど周辺整備を進めるうえで深刻な問題が生じてきたことから、騒音対策事業のみならず多くの都市整備事業の要請が生じてきた。昭和56年には、このような認識に基づいて、「大阪国際空港周辺の騒音等激甚地区における地区整備の基本的な方向(大綱)」が示された。

 一方、低騒音の航空機材の導入などによる発生源対策の進展から、昭和62年1月5日に騒音指定区域(第2種及び第3種区域)の改定が告示され(平成元年3月31目施行)、これにより、第2種区域外に存することとなった移転跡地の有効活用が可能となった。

 これらの新たな状況のもと、昭和63年度に伊丹市域及び川西市域地区整備計画案を国、市などと共同でとりまとめ、地元意向を聴きながら、個別事業の実施を進めている。

 さらに、平成4年度から、川西市内の小規模な移転跡地が蚕食状に在する地区について、生活環境の改善や地域の活性化を図る地区整備の検討を国、市等とともに行っている。

 

(2)空港周辺整備機構の設置

 空港周辺地域における航空機の騒音による障害の防止及び軽減を図り、生活環境の改善に資するため、国、兵庫県及び大阪府の共同出資により、昭和49年4月に大阪国際空港周辺整備機構が設立された。

 その後、昭和60年9月に福岡空港周辺整備機構と統合され、新たに空港周辺整備機構が設立された。

 空港周辺整備機構は、再開発整備事業、代替地造成事業、共同住宅建設事業をはじめ、移転補償、緑地造成事業並びに民家防音事業を行っている。

 なお、平成15年10月1日に、独立行政法人へと移行したが、共同住宅建設事業を除く各事業については、引き続き実施している。

 

(3)住居等移転対策および営業者対策

 騒音指定区域の第2種区域内における国の移転補償事業を促進するため、住居等を移転する者が移転資金を金融機関から借り入れた場合に県が移転者に対して利子補給を行っている。

 また、移転補償事業の進ちょくにより、顧客の減少など営業環境が変化し、経営に支障が生じている小売業又はサービス業を営む小規模企業者に対し、県が経営の安定に必要な資金のあっせん融資、融資に伴う信用保証料の助成及び利子補給を行っている。

 

(4)周辺環境基盤施設整備事業

 騒音指定区域の第2種区域内において、住環境の改善などを目的とし、地方公共団体が国土交通省の補助を受け、移転跡地の利用などにより、公園、緑道、細街路及び防火水槽などの整備を周辺環境基盤施設整備事業として行っている。

 

(5)県立西猪名公園の設置

 空港周辺における環境整備の一環として、緑地の確保と当該地域の生活環境を向上させるため、移転跡地を活用して県立西猪名公園を設置した。

所 在 地:伊丹市北伊丹8丁目及び川西市久代6丁目

面   積:6.0ha

開園年月目:昭和57年4月8日

施設:テニスコート、球技場、ウォーターランド等

 

(6)大阪国際空港周辺緑地

 空港と周辺地域との間に緩衝緑地を確保し、空港と周辺地域との調和を図り生活環境を改善するとともに、地域の憩いの場として積極的な利用を図るために大阪国際空港周辺緑地整備事業を実施している。

所  在  地:伊丹市森本及び岩屋地区における空港に隣接する

         おおむね第3種区域

面     積:約8.6ha

都市計画緑地:平成5年9月6日

事業承認・認可 (建設省告示第1801号)

施  行  者:国土交通大臣、兵庫県及び伊丹市

 

第5 新幹線公害

 

1 騒音等の現況(資料編第4-24表

 

 平成14年度に県が実施した新幹線鉄道沿線の14地点の騒音の調査結果を見ると、近接軌道中心から25mの地点における新幹線鉄道騒音の環境基準達成状況は、Ⅰ類型では12地点中6地点、Ⅱ類型は、2地点すべて達成していた。

 暫定目標(75dB)は、14地点すべて達成している。

 なお、環境基準の達成状況は、昨年度より改善され、達成地点はⅠ類型で2地点増加している。

 騒音測定と同時に行った振動調査では、近接軌道中心から12.5mの地点において指針値(70dB)を超えた地点はなかった。

 なお、新幹線鉄道沿線市町においても、県と同様に、新幹線騒音・振動測定を実施している。

 

第3-1-10表 新幹線鉄道騒音調査結果(平成14年度) 

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2 防音対策等

 

 JR西日本により、新幹線車両の低騒音化対策、バラストマットの敷設等の軌道対策及び防音壁の設置が行われている。

 山陽新幹線沿線の公害対策を今後とも円滑に進めるためには、県と市町との緊密な連携が必要であることから、平成8年9月に県と関係14市町で「新幹線鉄道公害対策連絡会」を組織したが、今後ともこの連絡会が中心となって、騒音・振動対策の着実な実施についてJR西日本や国に対して要請していく。