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第2部 第3章 優れた環境を公平に享受できるしくみづくり

 

第1節 国際協力の推進

第1 友好交流先との環境交流事業

 

1 中国広東省との環境保全技術交流の推進

 

 中国広東省との友好提携10周年(平成4年)を契機に、環境保全分野における技術交流として、平成5年度から技術交流団の派遣及び研修団の受け入れを行っている。また、平成8年度からは、酸性雨の測定技術に関する交流、平成13年度からは、水質の測定技術に関する交流を推進するほか、平成14年度からは、環境の環視・測定及び環境情報の収集・提供に係る技術交流を行うとともに、政策形成を含めた環境交流へと、総合的な交流分野への転換を図っている。

 

2 ブラジルパラナ州との環境協力の推進

 

 「兵庫県・パラナ州友好提携30周年記念共同声明(平成12年)」を契機に両県州で地球環境の保全に係る技術・情報の交流を進めていくこととし、平成14年度に、本県の持つ知識や技術力を提供して環境協力を進めるための現地調査をパラナ州で行った。
 平成15年度は、パラナ州において、「沿岸域の環境保全国際シンポジウム」をパラナ州政府との共催のもと開催したほか、今後の環境技術における協力についての協議を行い、沿岸域における環境保全について、(財)ひょうご環境創造協会等を中心に具体的な技術協力を行うこととした。

 

 

 

第2 国際環境研究機関等への支援

 

1 (財)国際エメックスセンターの活動支援

 

 閉鎖性海域の環境保全・創造及び多様な自然と人間が共生する持続的発展が可能な社会の構築に寄与することを目的として、閉鎖性海域に関する情報の収集・発信や調査研究、開発途上国への技術移転等に取り組んでいる財団法人国際エメックスセンターの活動を支援している。

 平成15年度は、閉鎖性海域の環境保全に係る調査研究業務の他、「第6回世界閉鎖性海域環境保全会議」がタイ・バンコク市で開催されたため、現地への参加などを通じた支援を行った。

 

 ① テーマ:自然と人々との持続可能で友好的な共生を図るための

        包括的な責任のある沿岸保全

 ② 期 間:2003年11月18日(火)~21日(金)

        4日間

 ③ 場 所:タイ・バンコク市

 ④ 主 催:EMECS2003国際組織委員会

 

2 アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)センターの活動支援

 

 アジア太平洋地域の地球環境に関する国際共同研究の促進を目的に政府間ネットワークとして組織されたAPNの活動強化のため、事務局機能を担うAPNセンターの活動を支援している。

 また、同センターの活動を地域での地球環境保全への取組に役立てるため、国際シンポジウムの開催及び研究・調査を委託して実施している。

 

3 (財)地球環境戦略研究機関・関西研究センターの活動支援

 

 アジア太平洋地域の持続可能な開発の実現に向けた政策手法の開発や環境づくりのための政策的・実践的研究に寄与することを目的に、「産業と環境」を研究活動のメーンテーマとする財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)関西研究センターの活動を支援している。

 同センターは、平成13~15年度は、関西の研究機関、企業等と協力した研究体制の構築を図るとともに、「企業と環境」を研究テーマに、環境会計など環境経営の具体的手法について調査研究を行っている。

 

4 閉鎖性海域に関する技術研修

 

 わが国では、開発途上国からの研修員を受け入れ、これら諸国の社会的・経済的発展に役立つことを目的として、専門的知識及び技術の研修を行っている。

 県でも閉鎖性海域の環境管理を国際協力のもとに進めていくため、国際協力機構(JICA)の委託を受けている(財)国際エメックスセンターと協力して、「閉鎖性海域の水環境管理技術コース」研修を実施している。

 平成15年度は、6力国6名の開発途上国の閉鎖性海域及びその沿岸の環境管理を行う中堅行政担当官・技術者に対して、環境管理計画の策定、規制の手法、排水処理等の技術について指導することにより、開発途上国の閉鎖性海域の環境保全対策の推進に役立つことをめざし、環境問題一般、水質、廃棄物に係る基礎理論などの講義、処理技術、分析技術等の実習及び現地見学を実施した。

 

5 東アジア酸性雨モニタリングネットワーク研修

 

 酸性雨は、大気汚染物質の長距離移動により国境を越えて影響を及ぼす地球環境問題の一つであり、環境省が、参加を呼びかけ、提唱していた「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」が平成13年1月から本格稼働している。

 また、(財)ひょうご環境創造協会では、国際協力機構(JICA)の委託を受け、平成9年度より「酸性雨のモニタリングと対策技術研修」を、平成13年度より「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク研修」を実施している。

 本県は、これに協力し、これまでに蓄積した酸性雨のモニタリングや対策技術を、東アジア地域を中心とした諸国の中央政府や地方政府の中堅技術者に移転することを通し、国際環境協力を進めるため、技術研修を県立健康環境科学研究センターで実施した。

 平成14年度は、8カ国9名の研修員に対し、酸性雨のモニタリング技術、酸性雨による生態系等への影響、硫黄酸化物や窒素酸化物の排出抑制技術、大気汚染物質の長距離移動などについて、講義、実習、見学等による研修を行った。

 

第2-3-1表 研修参加国及び研修期間

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参加国名研修期間
カンボジア、インドネシア、ラオス、
マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、
ヴェトナム
10月28日~12月13日

 

6 環境負荷物質分析技術に関する研修

 

 ダイオキシン、残留農薬など環境負荷化学物質による土壌・水質・農産物の汚染は先進国と発展途上国における共通の問題であり、環境や農産物の安全性を確保するために、環境負荷化学物質のリスク評価及びモニタリング技術を整備することは緊急を要する重要課題である。

 本研修は、開発途上国の中堅技術者が、環境負荷化学物質の人及び環境に対する安全性を評価する技術の理解を深め、それらのモニタリング技術について知識並びに技術を習得し、環境及び農作物のモニタリング技術の整備に資することを目的として、国際協力機構(JICA)が平成11年より実施しており、県においても同機構の委託を受け、技術研修を県立健康環境科学研究センターにおいて実施している。

 平成15年度は8カ国8名の研修員に対し、環境負荷化学物質の分析、モニタリング、環境における残留農薬の分析、工業排水や河川水、産業廃棄物中の重金属分析などについて、講義、実習等による研修を行なった。

 

7 北東アジア地域自治体連合における環境協力の推進

 

 北東アジア地域自治体連合は、北東アジア地域の自治体が、互恵・平等の精神に基づき、すべての自治体の交流協力ネットワークを形成することにより、相互理解に即した信頼関係を構築し、北東アジア地域の全体的な発展を目指し、同時に世界平和に寄与することを目的として、平成8年9月12日に設立され、平成10年には、経済・通商、文化交流・環境・防災・一般交流の5つの分科委員会が発足した

 平成15年度には、北東アジア地域自治体連合環境分科委員会の国内8府県と韓国、中国、ロシア、モンゴルの地方自治体が参加して、「2003北東アジア地域国際環境シンポジウム」がロシア・ハバロフスク市で開催された。このシンポジウムは、北東アジア地域の自治体行政担当者が会し、地方レベルの環境保全対策や国際環境協力に関するノウハウや技術等の情報を交換し、総合的な連携協力の推進を図ることを目的としており、県も職員を派遣した。
て、(財)ひょうご環境創造協会等を中心に具体的な技術協力を行うこととした。

 

 

 

第3 ひょうご国際環境支援ネットワークの形成

 

 本県に立地する研究機関や企業が持つ環境保全技術やノウハウを活用して、アジア太平洋地域を初めとする開発途上国の環境保全に協力するため、環境関係の研究機関と県内企業等で構成する「ひょうご国際環境支援ネットワーク」を形成し、環境保全優良事例等の情報提供を行うとともに、友好州省等からの照会、相談に、迅速、的確に対応していく。

 

 

 

第4 ひょうご型CDM(クリーン開発メカニズム)事業の推進

 

 県内企業・団体等へ地球温暖化防止に資する国際協力への参加を促す手法やCDM事業の可能性について検討を行っている。

 また、モンゴルの森林再生を支援するため、モンゴルへ専門家等を派遣し、現地視察を行い森林火災の実態や原因、植林の実態を把握するとともに、モンゴル国における森林再生や民間ベースの取り組みの促進等について、技術面、国際協力面から意見交換を行うことを目的として開催される森林再生管理に関する国際フォーラムへの参加、協力を行った。

 なお、平成15年度は、(財)ひょうご環境創造協会と県とが協力して事業を実施し、平成13年度からの事業実施により得られた情報や検討結果をもとに、ひょうご型CDM事業の可能性等を手引き書としてとりまとめることとしている。

 

第2節 環境影響評価の推進

第1 環境影響評価制度

 

 環境影響評価(環境アセスメント)制度とは、道路やダム建設その他の開発整備事業を行う者が、事業の実施前に、あらかじめ、環境への影響について、自ら調査、予測及び評価を行い、事業計画の内容や環境保全対策を検討することにより、事業を環境負荷の少ないより望ましいものとしていくための一連の手続きである。
 県では、事業者が行う環境影響評価について、住民、市町等関係行政機関及び学識者等の意見を十分聴き、公正かつ客観的な審査を行うことにより、対象となった事業について、環境の保全と創造に関し適切な配慮がなされるよう厳正に制度の運用を図っている。

 

 

 

第2 環境影響評価制度の実施

 

 本県では、平成9年3月に、「環境影響評価に関する条例」を制定し、平成10年1月から施行している。また、国においても、平成9年6月に「環境影響評価法」が制定され、平成11年6月から施行されている。

 大規模な開発整備事業は、法又は条例(法の対象となるものは、法が優先的に適用)により手続が行われている。

 境の保全と創造に関し適切な配慮がなされるよう厳正に制度の運用を図っている。

 

 

 

第3 環境影響評価に関する条例の概要

 

1 計画の熟度に応じた2段階の審査手続

 

 開発整備事業の計画熟度の進展に応じ、まず、「環境影響評価概要書」により調査・予測・評価の項目・手法の絞り込みを行い、次に「環境影響評価準備書」により調査・予測・評価した結果及び当該評価に基づく環境保全措置を検討することにより、事業を環境保全上より適切なものに誘導することとしている。

 

2 住民の参画

 

 「環境影響評価概要書」や「環境影響評価準備書」を縦覧に供することにより、住民から広く意見を聴き、様々な情報を収集することにより審査に反映することとしている。また、準備書の段階では、事業者が開催する説明会だけではなく、審査事務局においても公聴会を開催することにより、より公正な手続とするとともに、住民のこれら手続への参画の機会を充実させている。

 なお、縦覧の案内や図書の要約は、審査事務局のホームページ(アドレスhttp://www.kankyo.pref.hyogo.lg.jp/eia/)で公開している。

 

3 専門家の関与

 

 審査意見の形成に当たり、自然科学及び社会科学の各分野の学識経験者で構成する環境影響評価審査会を設け、様々な専門的見地からの意見を聴くこととしている。

 

4 審査内容の質的変化

 

 従来の環境影響評価では、大気や水質等について環境基準が達成されるかどうか等の審査が主であったが、近年では、生物多様性や生態系等の自然環境分野の影響についての審査も重視するとともに、環境への負荷を低減するために事業者がいかに努力しているかという観点からも審査を行い、環境保全上よりよい事業への誘導を図ることとしている。

 

5 事後監視調査

 

 環境影響評価は、事前の審査手続のみで完了することなく、工事中及び施設の供用開始後の環境影響評価の検証として環境の監視を義務づけている。

 

 

 

第4 環境影響評価の今後の展開

<コラム>・環境影響評価概要書

・環境影響評価準備書

・環境影響評価書

 

 事業の基本的な枠組みがほぼ固まった段階で実施される現行の環境影響評価に対して、個別の事業計画が策定される以前のより早期、より上位の施策・計画の構想立案段階から十分な環境配慮を行うため、様々な環境保全対策を検討し、その結果を施策・計画に組み入れるための仕組みである戦略的環境アセスメントの導入について検討を進めている。

 

<環境影響評価の実施状況>

 平成14年度に条例等に基づき審査を行った事業は、以下のとおりである。

 

第2-3-2表 環境影響評価の実施状況

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事 業 名事業の種別区 分備 考
あわじ石の寝屋緑地 レクリエーション
施設の建設
準備書 条例対象
北近畿豊岡自動車道
(豊岡南~八鹿)
自動車専用道路
の建設
方法書 法対象

 

第2-3-1図 環境影響評価に関する条例に基づく

環境影響評価手続きフロー図

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第2-3-2図 これまで環境影響評価を行った主な事業

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コラム

▼環境影響評価概要書(環境影響評価法では「環境影響評価方法書」という)

 調査、予測、評価の実施の前段階で作成する図書であり、事業計画の概要のほか、環境影響評価の対象となる地域の範囲や予測評価すべき項目、手法等環境影響評価の実施計画を記載したもの。

 

 

▼環境影響評価概要書

 環境影響について、調査、予測、評価の結果を記載した図書のこと。

 

 

▼環境影響評価概要書

 環境影響評価準備書について述べられた意見等を踏まえ、環境影響評価準備書の記載事項について再検討し、述べられた意見とそれに対する事業者の考えや対策を追加して記載した図書のこと。

 

第3節 公害紛争の処理

第1 公害審査会

 

 「公害紛争処理法」に基づき、公害紛争の迅速かつ適正な解決を図るため、国においては公害等調整委員会、都道府県においては公害審査会が設置され、あっせん、調停及び仲裁手続きにより、公害の紛争を処理している。
 兵庫県では、昭和45年11月の「公害紛争処理法」の施行とあわせて、「附属機関設置条例」に基づき、公害審査会を設置し、現在、弁護士、大学教授など学識経験者12名の委員が紛争当事者からの申請により、あっせん委員(1~3名)、調停委員会(3名)、仲裁委員会(3名)を構成し、紛争の解決に当たっている。
 平成14年度は、平成9年に申請のあった事件について、引き続き調停を行った。(第2-3-3表)。

 

第2-3-3表 公害審査会で取り扱った調停事件
(平成15年3月31日現在)

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事件の表示受付年月日調停期日等
開催回数
(累計)
処理状況
平成9年(調)第1号及び平成11年(調)第1号
神戸市須磨区西須磨地域都市計画道路中央幹線等自動車公害防止対策等請求事件
平成9年
12月19日

平成11年
7月28日
  調停期日
     15回
係属中

 

 

 

第2 公害苦情の現況

 

 1 県及び市町が新規に受理した公害苦情件数は、平成14年度は3,676件で、平成13年度に比べて92件(前年度比-2.4%)減少している。(第2-3-3図)

 

第2-3-3図 公害苦情件数の推移

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2 典型7公害(大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、悪臭、土壌汚染及び地盤沈下)の苦情件数は、平成14年度は2,702件(全苦情の73.5%)で、平成13年度に比べて182件減少している。

 また、典型7公害以外の苦情(不法投棄、害虫等の発生、動物死骸の放置等)の件数は、平成14年度は974件(全苦情の26.5%)で、平成13年度に比べて90件増加している。

 

[種類別](資料編第7-1表

 大気汚染が1,101件(全苦情の30.0%)と最も多いが、平成13年度に比べて174件(前年度比13.6%)減少している。次いで騒音が664件(全苦情の18.1%)、水質汚濁424件(同11.5%)、悪臭400件(同10.9%)の順となっている。

 

[市町別](資料編第7-3表

 神戸市の563件(全苦情の15.3%)が一番多く、次いで尼崎市の378件(同10.3%)、姫路市318件(同8.7%)の順となっており、県下22市の合計は、2,836件で全体の77.1%を占めている。

 

[発生源別](資料編第7-2表

 建設業が836件(全苦情の22.7%)、製造事業所442件(同12.0%)、家庭生活308件(同8.4%)の順となっている。

 また、典型7公害のうち、苦情件数の多い大気汚染及び騒音についてみると、大気汚染では、建設業が365件、製造事業所159件の順になっており、騒音では、建設業が243件、卸売・小売業、飲食店119件の順となっている。

 

 

 

第3 公害健康被害の救済対策

 

 公害の影響による健康被害者の迅速かつ公正な保護を図るため、「公害健康被害補償法」が昭和49年から施行され、神戸市臨海地域、尼崎市東部・南部地域が地域指定を受けて、両市において公害病患者の認定、認定患者に対する補償給付(療養の給付、療養費、障害補償費、遺族補償費、遺族補償一時金、児童補償手当、療養手当及び葬祭料)及び保健福祉事業を実施し、公害被害者の救済を図ってきた。

 昭和63年3月には、大気汚染の態様の変化を踏まえて、改正法(「公害健康被害の補償等に関する法律」)が施行されるに伴い地域指定が全面解除された。

 また、この改正法では、既に認定された患者(認定患者の状況については資料編第7-4表のとおり)の救済については、引き続き継続されるとともに、健康被害の予防に重点をおいた施策(環境保健事業及び環境改善事業)が展開されることとなった。

 兵庫県では、旧第一種地域である神戸市及び尼崎市に西宮市及び芦屋市を加え、これら4市において、法改正後に実施されることとなった健康被害予防事業が広域的に実施できることとなり、公害健康被害補償予防協会(改正法に基づき設置された特殊法人)の助成事業として、平成12年度に策定した大気環境改善のための事業計画に基づき、低公害車普及事業等を実施している。

 

 

 

第4 環境事犯の取り締まり

 

 環境の保全と創造に関する行政施策の一翼を担う視点に立って、「兵庫C(Clean=きれいな)&C(Create=創造する)活動」の推進を業務重点に設定し、産業廃棄物の不法投棄等環境汚染をめぐる悪質事犯に重点を指向した取り締まりを強力に実施した。

 平成14年中における環境事犯の検挙状況は、第2-3-4表のとおりである。

 

第2-3-4表 環境関係事犯の検挙状況

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法 令 名件 数
河川法
水質汚濁防止法
瀬戸内海環境保全特別措置法
廃棄物の処理及び清掃に関する法律 131
種の保存法
112