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新兵庫県環境基本計画 詳細

 

第1部 計画の基本的事項

 

第1節 策定の趣旨

 

 20世紀は、世界各地で人口の増加、社会経済活動の拡大や高度化が進み、「大量生産・大量消費・大量廃棄」という言葉で言い表されるように、人類はその生存基盤である地球環境を消耗することと引き替えに、活動の規模と影響力を飛躍的に拡大し、物質的繁栄を築いてきました。
 しかしながら、このままでは人類社会が存続しえないことは決定的であり、21世紀は、人類社会の持続的発展に向けて、あらゆる主体が、環境の持つ価値を重視し、環境保全に向けたとりくみが内在化された時代を実現することが求められます。

 

 「環境の世紀」といわれる21世紀、私たちを取り巻く状況に様々な動きがみられます。例えば、地球温暖化防止対策の枠組みの構築、ダイオキシンなどの化学物質による健康影響への懸念の広がり、アメニティ高いすぐれた環境への志向など、地球レベルから身近なレベルに至るまで、私たちの日々の生活は、もはや環境への正しい認識と行動なくして営むことができなくなってきています。

 

 今日の環境問題は、通常の事業活動や日常生活に起因するものが多く、現在の社会の枠組みや人々の意識が変わらなければ解決できるものではありません。まず、豊かさに対する私たち一人ひとりの考え方を変え、生活行動や経済活動のあり方そのものを環境の保全と創造のしくみが組み込まれたものに変えていくことが必要です。すなわち、私たち一人ひとりが環境問題を自らの問題として認識し、様々な政策決定に主体的に「参画」していくとともに、優れた環境の保全と創造にともに取り組んでいく「協働」の考え方がますます重要になっています。

 

 また、私たちは先の阪神・淡路大震災を通じ、大自然の摂理に畏敬の念を持ち、自然とともに生きることの大切さを改めて痛感したところです。

 いまこそ、人間の営みは自然の一部であるという認識に立ち、これまでの考え方を見直し、人と自然が豊かに調和し、共生する社会をめざしていかなければなりません。

 

 21世紀初頭の兵庫づくりの指針である「21世紀兵庫長期ビジョン」に示された「環境優先社会」を実現していくためには、めざすべき兵庫の環境ビジョンを共有し、県民・NPO・事業者・行政等のあらゆる行動主体の「参画と協働」によるとりくみが不可欠です。

 「環境優先」の持続可能な地域づくりのモデルを兵庫県から発信していくため、平成8年6月に策定した「兵庫県環境基本計画」を、以上のような環境を巡る近年の動向を踏まえて全面的に見直し、「新兵庫県環境基本計画」(以下、「新環境基本計画」という。)を策定します。

 

第2節 策定の目的

 

 「新環境基本計画」の策定の目的は、次のとおりです。

 

①健全で恵み豊かな環境の保全と、ゆとりと潤いのある美しい環境の創造に関する県の各種施策を、より一層有機的な連携のもとに総合的かつ計画的に推進する。

 

②県民、事業者、行政などの各主体が、目標を共有し、それぞれの役割分担と応分の負担のもとに参画と協働を推進し、自発的かつ積極的に環境の保全と創造に取り組むよう方向づける。

 

第3節 計画の性格

 

 「新環境基本計画」は、県民、事業者、NPO・ボランティア団体・消費者団体・地域団体等環境の保全と創造に関する公益的活動を行う民間団体(以下、「民間団体」という。)、市町等様々な主体の意見を反映させながら作りあげた計画であり、様々な主体の「参画と協働」により推進されるべき計画です。

 

 また、「新環境基本計画」は、「21世紀兵庫長期ビジョン」に示されている「環境優先社会」の具体化を図る基本計画であり、教育、産業、社会基盤整備などの各分野における環境の保全と創造に関するとりくみと整合を図るための基本となる計画です。

 

 「新環境基本計画」の性格は、次のとおりです。

 

①兵庫県における環境の保全と創造に関するとりくみ・施策のめざす方向と長期的な目標を示した基本となる計画

②環境の保全と創造に関する施策を、中長期的な観点から総合的かつ計画的に実施するための県の行政計画

③市町の環境に関わる計画の策定や施策の実施において、尊重されるべき基本指針

④県民の生活や事業者の事業活動、あるいは民間団体の活動に際し、環境の保全と創造に関して尊重されるべき基本指針

 

(計画の位置付け図)

 

第4節 計画の期間

 

 「新環境基本計画」は、2030年頃を展望して策定しています。

 なお、第5部及び第6部に記載しているとりくみ・施策の方向は、原則として、21世紀初頭の概ね10年間(平成23年度まで)に展開していくものを取りあげています。

 また、本計画は、社会経済情勢や環境問題の変化などに適切に対応できるよう、必要に応じて見直しを行います。

 

第5節 計画の構成

 「新環境基本計画」は、次ページのような構成としています。

 

(計画の構成図)

 

第2部 兵庫県の環境に関する現状と課題

 第1節 環境を巡る概況

 

1 時代の潮流
 
○社会の成熟化
・日本経済は、高度成長から低成長の時代へと移行しており、人々が物の豊かさよりも心の豊かさを求める流れの中で、生きがいやライフスタイル*1、働き方や住まい方などに対する個人の価値観の多様化が進んできました。
・これまでの官主導・集権型から民自律・分権型社会への構造転換が求められており、公共的領域における行政と県民との協働のしくみづくりの検討が始まっているなど、県民をはじめとする各主体の責任に裏打ちされた自主性、自立性が重んじられる社会へ移行しつつあります。
・人々の自由時間の増大、参加意欲の向上などにより、地域づくりなどへの自発的な参加が増えています。また、国の権限が地方自治体に委譲される中、地方自治体が地域の経営に果たす責任と役割が増えています。
・阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、社会ニーズの中で、これまでの行政施策が及ばなかった部分を住民自らが行おうとする団体や組織が芽生え、活躍しています。
 
○少子高齢化と人口減少の進行
・出生数の減少と並行して高齢化が進んでおり、我が国は本格的な少子高齢社会へ移行します。
・少子高齢化の結果、日本はまもなく人口減少へ向かい、本県においても2010年頃をピークに減少局面へ移行し、この傾向は長期に続くと推計されています。
 
○情報化・IT(情報通信技術)革命の進展
・パソコンやインターネットの普及などにより、情報通信に関する技術革新が、驚くべきスピードで進んでいますが、この動きは単に生活の利便性を高めたり、経済発展の推進力になるだけではなく、生活やビジネスのあり方、さらには社会の制度やしくみまでを変えています。
 
○グローバル化の進展
・20世紀後半にはじまったグローバル化の動きは、経済や人の往来はもとより、情報伝達や文化活動など日常生活の様々な面に及んでいます。
・グローバル化の進展による国際的な大競争時代の中で、地球規模の市場拡大や制度や技術をめぐる世界標準の確立、規制緩和などが起こっています。
 
2 環境に関する国内外情勢
 
○都市・生活型公害への変化
・工業地帯での産業公害問題が改善へ向かう中で、最近では都市全体からの生活 排水や自動車の排出ガスなど、地域に広く分散する汚染源による環境負荷が都 市・生活型公害として浮上してきています。
 
○地球環境問題の深刻化
・二酸化炭素(炭酸ガス)等の温室効果ガス*2の濃度の上昇による地球の温暖化、フロンなどによるオゾン*3層の破壊や酸性雨*4など、地球規模での環境問題が深刻な様相を帯び、世界中でとりくみが進められていますが、まだ十分ではありません。
 
○循環型社会への移行
・人々が物の豊かさよりも心の豊かさを重視する傾向が強まる中で、大量生産・大量消費・大量廃棄を生み出す社会のあり方への疑問が広がるとともに、地球温暖化防止をはじめとする環境保全のためには、社会経済システム自体の変革が必要であるという考え方が強まっています。
 
○環境リスク*5の顕在化                 
・環境に影響を及ぼすおそれのある多数の化学物質が、恒常的に環境中に排出されていることによる人の健康や生態系への影響、ダイオキシンなど微量ではあるが長期的な暴露によって人の健康が脅かされるなどの環境リスクの高まりについて懸念が生じています。
・そうしたことを背景として、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)*6などに示されるように、人々が環境情報を知ることができるということが重視されるようになっています。
 
○生物多様性*7の危機
・生物多様性とは地球上の生物の多様さとその生息環境の多様さを示しますが、人間の活動に伴う環境変化の影響で生物多様性が損なわれ、多くの生物種や生態系が存在の危機に直面しています。
・これまで種の絶滅は自然のプロセス(過程)の中で絶えず起こってきたことですが、現在の動きは地球の歴史始まって以来のスピードであり、またその原因が人間の活動に起因するものとなっています。
・近年、「多様な生物が生息できる環境こそが実は人間にとっても安全な環境である」という理解が進んできています。そして生物多様性条約が1993年に発効するなど野生生物種や生態系を保全するための国際的なとりくみが展開されており、国内的にも「種の保存法」が制定されるなどとりくみが進んできています。
 
○環境効率*8の重視等
・環境負荷を低減させながら経済性を向上させる「環境効率」という考え方が世界的に重視されてきています。
・また、「拡大生産者責任*9」に表されるように、事業者の責任についても新たな考え方が示されています。
 
○持続可能な社会の形成に向けたとりくみの活発化
・持続可能な社会の形成に向けて、個人、民間団体、企業、行政のとりくみが広い範囲で活発化しています。そしてその中で、環境と社会と経済の面で、企業の社会的責任がより強く認識されてきています。

 

第2節 兵庫県の基本特性

 

1 自然特性
 
(1)日本のほぼ中央で、日本海と瀬戸内海・太平洋の両方に面しています
○本県は、本州の中にあって日本のほぼ中央に位置し、総面積は8,392km2(平成
 12年10月1日現在)、北は日本海、南は瀬戸内海に面する日本の縮図といわれる地理的特徴を持っています。
 
(2)日本海型、内陸型、瀬戸内海型の3つの気候があります
○本県の気候は、北の日本海型、山間部の内陸型、南の瀬戸内海型の3つに大別されます。
・但馬地域は、日本海に面し、冬季には降雪の多い日本海型気候であり、内陸部では盆地性の地形と円山川等からもたらされる湿った空気により霧の発生が多くなっています。
・丹波地域等の内陸部は、寒暖の差が大きい内陸型気候であり、盆地や川沿い等で霧が多く発生します。
・神戸・阪神地域、播磨地域、淡路地域は、瀬戸内海に面しており、温暖で日照時間が長く降水量が少ない瀬戸内海型気候となっています。
 
(3)地形はとても多様です
○中国山地と丹波山地がほぼ県の中央を東西に横切り、これによって県域は大きく南北に分けられています。
・中国山地は、複雑な地形を有し、起伏に富んでいます。県下最高峰の氷ノ山(1,510m)をはじめ、1,000m級の山々が連なり、東に行くに連れて低くなり丹波山地へ続いています。
・丹波山地は、標高が400~800mと低く、中央部には氷上盆地や篠山盆地が形成されており、北摂山地や六甲山地を経て淡路島へと続いています。
○大阪湾及び播磨灘に面した地域には、瀬戸内海に流れ込む諸河川による土砂の堆積と隆起運動との複合効果により、海岸平野として武庫平野や播磨平野が形成されています。
○日本海側は、沈降型の地殻運動の性格を強く反映して広い海岸平野の発達はなく、各河川沿いに細長い谷底平野が分布しているだけとなっています。
○河川は、1級河川が5水系、2級河川が93水系、合計98水系あります。これらは、地理的条件から大阪湾に流れる川、播磨灘に流れる川、日本海に流れる川に大別されます。
○丹波地域には、日本一標高の低い(96m)中央分水界があり、動植物の分布にも影響を与えています。
○海岸線は、瀬戸内海の穏やかな砂浜や都市部の人工護岸から日本海の荒々しい断崖海岸まで変化に富んでいます。
○降水量の少ない瀬戸内海沿岸地域には、農業用ため池が多く分布しています。
 
(4)多様な生物が生息・生育しています
○本県は、日本の中央に位置し、3つの気候区を結ぶ地形上の回廊(氷上回廊など)が存在し、日本海側と瀬戸内海側との生物相の交流がみられるなど、東西南北の動植物の接点となっています。
○こうした自然的条件に加え、ため池や里山など人の手により維持されてきた多様な環境もあるため、生物多様性が極めて高い地域です。特にため池、多数の河川等によって、水生生物の宝庫になっています。
○長い歴史の中で北摂の里山は池田炭(一庫炭)の生産の場として育成されてきた経緯があり、歴史性や生物多様性の観点から、また、木炭生産が現在も続いているなどの点から全国的に見ても高い評価を得ています。
○しかしながら、全県的に見れば各種産業の発達、宅地化の進展などによって自然植生はほとんど失われ、一方、これまで管理されてきた里山も放置され、その結果、地域全体の多様な植生が失われようとしており、自然植生の保全が必要となっています。
○猪名川、武庫川、加古川、円山川などの河川が都市の中を流れ、都市部において身近な緑を創り出していますが、水辺の緑をはじめとした都市部における公園や緑地などの緑をさらに増やすことが求められています。
○本県には温帯・冷温帯の種が中心に分布していますが、淡路地域では、島の地理的な位置や気候条件から、三熊山をはじめとする照葉樹林には暖地性の植物が、各地の自然海岸には海浜植物が多く見られ貴重な自然となっています。
 
2 社会特性
 
(1)多様な風土と豊かな歴史文化が育まれてきました
○本県は、古の摂津国と丹波国の一部、播磨国、但馬国、淡路国から構成され、明治の廃藩置県等により現在の県域が成立しました。これらの旧国は、風土の違いを背景に、それぞれ独自の文化を育んできました。
○また、明治維新期における日本の近代化を先導した歴史と進取の気風を有しているとともに、国際港神戸に象徴されるよう国際性にも富んでいます。
 
(2)県土は約7割が森林で、瀬戸内海沿いに市街地が集まっています
○本県における土地利用の形態は、森林が県土の67%と最も多く、次いで農地が10%、宅地が7%となっています。
○西日本国土軸*10上に位置する瀬戸内海に面した沿岸域に、各種の都市機能が集積し市街地が発達しています。近年は、中国自動車道沿道等内陸部の東西軸に沿って、各種都市機能の集積が進みつつあります。
 
(3)約555万の人口のうち約8割が瀬戸内海沿いに住んでいます
○本県の人口は、約555万人(平成12年10月1日現在、国勢調査)で、全国人口の
 4.4%(第8位)にあたります。このうち神戸・阪神地域に全人口の57%が、さらに東播磨・西播磨各地域の南部をあわせると県内人口の約8割が臨海部に集中しています。       
○人口密度は661.4人/k㎡で、これも全国第8位(全国平均340.4人/k㎡、平成
 12年10月1日現在)となっています。このうち、神戸・阪神地域(2644.4人/k㎡)が極めて高密で、次いで東播磨地域(965.5人/k㎡)が県平均を上回っています。
 
(4)多様な産業が展開されており、特に全国と比べて製造業が盛んな県です
○本県の産業は、第3次産業の占める割合が高く、産業別就業人口のうち65%(平成12年度国勢調査)を占めていますが、全国と比較すると第2次産業の割合が高く、特に製造業の割合が高くなっています。       
○第1次産業では、農林業は近畿の主要な生産地であり、水産業は瀬戸内海・日本海地域における拠点となっています。
○県内総生産額は約20兆円(平成11年度)で、全国第7位となっています。
 
(5)交流基盤が充実しています
○高速道路網や陸海空の広域交通基盤が整備され、西日本の交通の要衝となっています。また、県内においても、高速自動車国道等の供用延長は全国第1位であり、県内1時間高速交通圏の確立をめざし、整備が進められています。
○大都市と自然豊かな農山漁村、過密地域と過疎地域など様々な地域が共存する本県の特色から、ふるさと青年協力隊や走る県民教室など循環型の交流を基調とした交流・連携施策が積極的に展開されています。
○全国的に評価されている洗練された都市文化に支えられ、大学や美術館・博物館など多くの研究・教育機関が立地しており、水準の高い知的インフラが整っています。
 
(6)県民の自立的な生活創造活動が実践されています
○本県では、福祉やまちづくり、環境問題などの分野において、県民の自発的で自立的な活動である「県民運動」が10年以上前から展開されてきました。
○阪神・淡路大震災において大きな役割を果たしたボランティア活動の高まりを受けて、「県民ボランタリー活動の促進等に関する条例」が制定されるなど、こうした活動に対する支援の基盤づくりも進められています。
 
3 兵庫県の環境行政の歩み
                                       
【昭和30年代~50年代】
○公害・環境問題へ先進的に取り組みました
 兵庫県では、昭和30年代から40年代にかけて、高度経済成長とともに阪神や播磨等の瀬戸内海沿岸部の工業地帯を中心とした産業活動に伴う大気・水等の生活環境の汚染や開発に伴う自然環境の破壊といった公害問題が生じました。 これらの公害問題に対して、総合的な対策を実施するための早急な法整備が求められる中、兵庫県においては、国に先んじて公害防止条例(昭和40年)や自然環境保全条例(昭和46年)を制定し、問題解決に取り組んできました。
 国における公害対策基本法(昭和42年)や自然環境保全法(昭和47年)の制定後は、これらの法と条例の体系のもと、国や県・市町、県民、事業者が、独自にあるいは協力して、環境問題の解決に取り組み、各分野でのよりきめ細やかな規制等の対策を推進してきました。その中で「地域環境計画」(昭和52年)を策定し、環境容量という考えを取り込み、県土の環境管理などに取り組みました。
 
【昭和60年代~平成初頭】
○快適な環境創造に向けて施策を推進してきました
 その後、全県全土公園化の推進に関する条例(昭和60年)を制定するとともに、「地域環境計画(ひょうご快適環境プラン)」(平成2年)を策定し、快適な環境を創造するための政策を積極的に推進してきました。このように本県では、公害の防止、自然環境の保全、快適な環境の創造に取り組み、「さわやかな県土づくり」を進めてきました。
 
【平成7年~】
○環境問題への広がりへの体系的・総合的対応を行ってきました
 しかしながら、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式が定着するとともに、人口や社会経済活動の都市への集中が進んだことにより、従来の産業型公害に加え新たに自動車公害、生活排水、廃棄物の増大等の都市・生活型公害が問題となり、さらには、地球温暖化、酸性雨、オゾン層の破壊等の地球規模の環境問題が顕在化してきました。
 また、阪神・淡路大震災(平成7年1月)は、自然への畏敬の念を失ってはならないという戒めを与えるとともに、人と人との協力の大切さとそれがもたらす成果の大きさを示しました。
                     
 こうした中、兵庫県では「環境の保全と創造に関する条例」(平成7年)(以下、「環境条例」という。)を制定し、環境適合型社会の形成をめざし、社会の構成員すべての参画と協働を基調として、健全で恵み豊かな環境を保全し、ゆとりと潤いのある美しい環境を創造するための兵庫県の環境特性を踏まえた施策を、県民の総意として総合的かつ計画的に推進することとしました。
 
○兵庫県環境基本計画を着実に推進してきました
 そしてこの環境適合型社会の実現に向けた環境政策を推進するため、「兵庫県環境基本計画」(平成8年)を策定し、①社会の構成員すべての参画と協働の推進、②循環を基調とする地域環境への負荷の低減、③豊かで多様な自然環境の保全、④ゆとりと潤いのある美しい環境の創造、⑤地域からの地球環境保全の推進を目標に掲げ、施策を推進してきました。

【兵庫県環境基本計画に基づく施策実施例】

横スクロール

<社会の構成員すべての参画と協働の推進>
 ・(財)ひょうご環境創造協会の設立
 ・環境にやさしい買物運動の実施
 ・エコツーリズム*11バスの運行支援
 ・こども環境通信員登録制度及びこども環境会議の実施
 ・県としてのISO14001の認証取得
 ・環境影響評価*12に関する条例の施行
<循環を基調とする地域環境への負荷の低減>
 ・アイドリング・ストップ運動の展開
 ・兵庫県自動車公害防止計画の策定・推進
 ・資源循環利用促進計画の策定・推進
 ・第2期兵庫県分別収集促進計画の策定・推進
 ・兵庫県ダイオキシン類削減プログラムの策定・推進
<豊かで多様な自然環境の保全>
 ・兵庫県版レッドデータブックの改訂
 ・県立コウノトリの郷公園におけるコウノトリの保護・増殖
<ゆとりと潤いのある美しい環境の創造>
 ・緑の総量確保推進計画の推進
 ・流域水環境保全創造指針の策定・推進
<地域からの地球環境保全の推進>
 ・新兵庫県地球温暖化防止推進計画の策定
 ・フロンの排出規制
 ・アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)センターの開設
 ・地球環境戦略研究機関(IGES)関西研究センターの開設

 

 これらのとりくみの結果、各分野において環境の保全と創造に向けた施策の進展が図られました。しかしながら、環境問題を巡る状況は、地球環境問題の深刻化や新たな有害化学物質問題の顕在化など予想を上回る速度と広がりで困難さを増しており、これらの新たな課題に一層総合的に対応することが課題となっています。

4 県民(おとな・こども)・事業者の環境に関する意識

 平成12年度において、県民(おとな・こども)・事業者を対象に、「ひょうごの環境」についての意識調査を実施しました。
 本調査においては、地域の環境についての評価や環境に配慮したとりくみの状況、さらには参画と協働に向けての意識などの項目についてアンケート調査を行い、前回調査(平成7年度)の結果とも比較しながら分析を行いました。
 その主な結果は、次のとおりです。

○県民(おとな・こども)、事業者に共通して、環境を大切にすべきであるといった意識の高まりが見られ、日々の暮らしや事業活動の中で、ごみの分別やリサイクルなど環境に配慮したとりくみが着実に定着しつつあります。
○環境を大切にしたいと考えている県民(おとな・こども)、事業者の中には、そうした意識が実践につながりにくい現状も見受けられることから、そうした思いを行動につなげていくためのしくみづくりが今後の課題となっています。
○環境保全創造のための経済的負担のあり方、あるいは地域活動への参加などに対する考え方は多様であり、中でも、こどもはおとなに比べ、環境の保全創造より便利な生活を優先したいという傾向もうかがえることから、環境教育・学習の一層の充実や社会的システムの構築による実践の促進などが重要となっています。
○環境に関するこどものとりくみ・意識については、家族の影響が大きく、今後、おとな、特に親の行動により、こどものライフスタイルや意識も変化していくと思われることから、これまで以上に家庭における環境配慮の実践を進めていく必要があります。
○県民、事業者、民間団体や行政等の主体間の協力・連携については、進展はしているものの、まだ十分とは言えず、そのための社会システムの構築や直接的支援への要望も高くなっています。

 

第3節 兵庫県の環境の現状と課題

 

1 生活活動や経済活動が環境に大きな負荷を与えるものとなっています

○生活水準の向上、生活の利便性の追求に伴い定着した大量消費・大量廃棄型のライフスタイルや社会経済システムは、環境へ過大な負荷をかけるものとなっています。これまでの産業活動や人々のくらし方によって引き起こされた環境問題が深刻さを増し、いまや人類の生存さえも揺るがす重大な課題となっています。
○社会の構成員すべてが、日常生活や事業活動を通じて直接的・間接的に環境へ負荷を与えていることを認識し、「環境倫理(環境に配慮する行動規範)」を持つことが必要です。
○現状の枠組みの中での努力にとどまらず、生活行動や経済活動を環境の保全と創造が組み込まれた新たなものに変革することが求められています。
○生活行動においては、環境への負荷が大幅に少ない新たなスタイルについての社会的共通認識を確立し、それを実践していくことが求められています。

2 環境の保全と創造と健全な経済活動が併せて実現できるしくみが必要です

○本県は、人口が全国第8位と多く、また、瀬戸内海沿岸域に重化学工業などの割合が高い臨海工業地帯が形成されていることから、国内他地域に比べると資源・エネルギーを多く消費する社会経済構造となっています。
○経済活動においては、環境の保全と創造と健全な経済活動が併せて実現できるしくみを盛り込むとともに、環境への負荷の低減や環境の保全と創造に貢献する産業を育成していくことが必要です。
○県内の事業者においてはハイテク分野やIT(情報通信技術)分野への展開が見られるほか、臨海工業地帯などにおいて、使用済製品の再資源化など環境への負荷の低減に貢献する産業の立地や、重厚長大型産業からサービス産業への産業構造の変化などが進みつつあります。

3 様々な分野やレベルで、より多くの活動主体が求められています

○これまで受け継がれてきた豊かな知恵を発展・継承していくとともに、心の豊かさに結びつく心地よさを大切にして、環境の保全と創造に係るとりくみを楽しみながら実践していくことが望まれます。
○環境問題が多様化・複雑化し、多岐の分野にわたる環境の保全と創造が必要となっている今日、様々な分野やレベルで、より多くの活動主体(担い手)が必要となっています。
○廃棄物処理やリサイクルの問題などは、県民個々の生活や事業活動が直接起因し影響するものであることから、それぞれの地域の住民や事業者が、自ら考え、自ら行動していくことが強く求められます。
○緑や水辺などに代表される豊かな環境づくりについては、私たち自らが、暮らしとの関わりを持ちながら、より多様な姿で具体化していくことが必要になっています。
○事業者におけるISO14001の認証取得に見られるように、環境マネジメント(環境管理)システム*13の導入など国・自治体の枠を超えたグローバル・スタンダードでの自主的なとりくみが進められつつあります。

4 すべての活動主体の参画と協働をより強化することが必要です

○環境への負荷や環境の恵みの享受の程度に応じて社会の構成員すべてが労力的・精神的・財政的な負担を分担し、各々の責務を全うすることで、相互の協力・連携を深めることが必要です。また、そのための社会的しくみづくりや直接的支援なども必要です。
○本県は、阪神・淡路大震災の経験から、県民や事業者、行政などの主体間の協力・連携が様々な分野で進んでおり、また、環境に関する民間団体の数やこどもエコクラブ*14登録数が全国的に高い水準にあるなど、優れた発展可能性を有しています。
○これまでの環境の保全と創造のとりくみに関しては、行政による規制・誘導や公有地化・公的管理などにより、公害対策や自然保護などにおいて大きな成果をあげてきましたが、今後は、規制を前提としながらも各主体の自律性を高め、自主的な努力を促進する一方、透明性や公平性を確保するための新たな社会的枠組みをつくることが必要となっています。

5 環境面における20世紀の負の遺産が多く残っています

○化石燃料や鉱物資源等は限りある資源であり、大量生産・大量消費システムを続け、これを使い尽くしてしまえば、我々の生活が成り立たなくなります。これらの限りある資源は、世代間、地域間を越えた共通の財産として効率的に使用していかなければなりません。
○20世紀は、社会経済構造の急激な変化に伴い、人の手により環境が大きく改変された100年でしたが、物質的豊かさの追求の結果生じた環境の汚染や自然環境の破壊などの20世紀の負の遺産を将来世代へ残さないよう、その解消に早急に取り組むとともに、新たな質の高い環境を創造していくことが求められています。
○これまでの環境施策においては、環境を「保全」することに重点がおかれてきましたが、新たな環境を「創造」していくことについても、保全とともに、さらに推進していくことが必要です。
○明治初期には裸の山であった六甲山が、先人の努力により、現在では緑に覆われ、100年後の私たちが恩恵を受けている状況になっていることが示すように、優れた環境を次の世代へ残していくことは私たちの責務です。
○平成12年に開催された「淡路花博」は、失った自然を積極的に回復・復元した先導的なモデルとして、その可能性や今後の方向を全国に発信したものです。半年の開催期間に目標を大きく上回る約700万人もの人々の来場を得たことは、「自然環境の回復と創造」という理念が幅広い共感を得たことを表しています。
○ゆとりと潤いのある美しい環境は、私たちが努力して保全するか新たに創りださなければ決して手に入りません。新しい時代をめざし、意識を見直していくことが私たち全員に求められており、そのための施策を拡充していくことが必要となってい
ます。

6 自動車や生活排水などによる様々な都市・生活型公害が生じています

○本県は、人口一人あたりの二酸化炭素や廃棄物の発生量が全国的にみて多いなど、環境への負荷が大きい地域となっています。
○瀬戸内海沿岸域の都市部では自動車交通が大気環境へ大きな影響を及ぼしているほか、様々な都市・生活型公害が生じています。
○「環境基準」の達成状況は全体的には大幅に改善されていますが、「二酸化窒素」、「浮遊粒子状物質*15」、「光化学オキシダント*16」などの物質については、まだ達成していない所が残っており、これらへの対応が課題です。
○閉鎖性水域である瀬戸内海においては、富栄養化*17により水質汚濁の改善が進んでいません。
○最終処分場をはじめとする廃棄物処理施設の立地が困難となってきており、将来的に適正処理がなされない廃棄物が環境中にあふれ、我々の生活環境へ重大な影響を及ぼすことも予想されます。
○社会が持続的に発展していくためには、二酸化炭素排出量や廃棄物などの環境への負荷を現在の水準から大幅に減らすことが急務となっています。

7 里山やため池など豊かで多様な自然環境が失われつつあります

○本県は、地形・気候などの自然条件の特色から生物の多様性は非常に高い状況にあります。しかし近年は、その生物多様性の一翼を担ってきた里山やため池など人為的に維持されてきた環境が、管理の低下などにより荒廃が進みつつあります。
○藻場*18・干潟の減少により、海での生物の多様性や人と海とのふれあいの場が失われつつあります。
○こうした事態に対し、全県的な自然保全への理解と気運が高まり、様々な保全・回復への対応が検討、実施されつつありますが、さらに積極的な推進が必要です。
○本県の都市部における緑地等の自然空間の確保のために、河川や身近に残された鎮守の森の緑などが重要な役割を果たしていることから、これらを保全するとともに、今後も公園や緑地など新たな自然空間を創造していくことが必要です。
○兵庫の風土が育くんできた生物多様性やゆとりと潤いのある美しい環境などを保全・継承することが必要です。

8 地球環境問題には県民一人ひとりの行動が深く関わっています

○環境への負荷が大幅に増大し、その結果、地球温暖化やオゾン*19層の破壊、酸性雨、熱帯雨林の減少などの地球規模の環境問題が生じるなど、「環境の叫び」に耳を傾けない限り、人類の存続そのものが危うくなっています。
○地球環境問題には、事業活動だけでなく県民一人ひとりの行動が深く関わっていることから、地域レベルでのとりくみが一層重要なものとなっています。すべての県民が、地球環境の有限性を認識し、「地球環境市民」としての意識を持ちながら人類の持続可能な発展を支えていく必要があります。

 

[参考表:兵庫県の環境の現況の全国比較]

横スクロール

区分指 標順 位備 考
基礎事項 人口 全国8位 約555万人(H12年国勢調査)
人口密度 全国8位 約661人/k㎡ (H12年国勢調査)
県内総生産額 全国7位 約20兆円(H11年度)
森林面積 全国14位 562,881ha(H12年度)
総合的環境対策 環境基本条例の制定時期 全国14番目 出典:環境庁「地方公共団体の環境保全対策調査」
環境影響評価制度の制度化時期 全国6番目 出典:環境庁調べ
環境保全・創造活動 こどもエコクラブクラブ数 全国8位 145(H13年度末)
出典:こどもエコクラブ全国事務局資料
こどもエコクラブ会員登録数 全国8位 2,593名(H13年度末)
出典:こどもエコクラブ全国事務局資料
環境NGO数 全国10位 149団体
出典:環境事業団「H13年度環境NGO総覧」
ISO認証取得事業所数 全国7位 313事業所(平成14年2月末)
出典:(財)日本規格協会調べ
大気環境保全 二酸化窒素の環境基準の達成率 全国ワースト9位 83.3%(自動車排出ガス測定局ベース)
出典:環境庁「平成12年度大気汚染状況」
浮遊粒子状物質の環境基準の達成率 全国ワースト14位 93.8%(自動車排出ガス測定局ベース)
出典:環境庁「平成12年度大気汚染状況」
低公害車普及台数 全国6位 2,693台(H12年度末)
出典:(財)自動車検査登録協会自動車保有車両数
アイドリング規制 全国初 平成7年7月
出典:兵庫県調べ
水環境保全 生活排水処理率 全国3位 90%(H12年度末)
出典:農林水産・国土交通・環境3省調べ
瀬戸内海におけるCOD削減率 13府県中2位 52%(H11年度実績/S54年実績)
出典:環境省水質規制課調べ
廃棄物適正処理 1人1日あたりごみ発生量 全国ワースト3位 1,313g/人・日
出典:厚生省「日本の廃棄物処理H11年度版」
資源化施設設置数 全国3位 28施設
出典:厚生省「日本の廃棄物処理H11年度版」
再生資源利用促進基準策定時期 全国初 H7年7月
自然環境保全・創造 県版レッドデータブックの作成時期 全国初 神奈川県と同時
出典:(財)日本資源保護協会調べH10年9月
県立自然公園面積 全国4位 121,357ha(H11年度末)
出典:環境庁「自然公園の面積」
自然公園利用者数 全国9位 国立公園+国定公園+県立公園
出典:環境庁「自然公園等利用者数調2000」
地球環境保全 二酸化炭素排出量 (総排出量)全国3位 1,771万t-c(1990年度)
(1人当たり)全国9位 3.28t-c/人(1990年度)
出典:環境庁「地球温暖化防止に資する地域別の二酸化炭素排出量の把握手法調査研究報告書」
オゾン層保護対策全国ランク 全国1位 総評価45.0点(H10年度)
出典:「青森アップル会」のアンケート集計結果
条例によるフロン排出規制 全国初 平成7年7月「環境の保全と創造に関する条例」
住宅太陽光発電システム設置件数 全国3位 平成11年度までの住宅用太陽光発電システム設置数1,585件 出典:(財)新エネルギー財団補助実績
 

第3部 21世紀の兵庫がめざす環境の姿


第1節 目 標

 

 私たちは、“共生と循環の環境適合型社会”の実現をめざします。

 人と自然、人と社会、人と人との共生のきずなを強め、共生と循環の中で、地球的視野のもとに、人と環境が適正な調和を保つことにより、将来の世代や他の生物の生存を保障しつつ、持続的に発展することが可能な社会をめざします。

 そして、その際には、各主体が共に知恵と力を出し合い、支え合いながら、自らの権限と責任のもとに主体的に「参画」していくことが必要であり、その上で、各主体が対等なパートナーシップのもとに適切な役割分担をしながら、将来に向かって、共に汗を流しながら「協働」していくことが、何よりも重要です。

 

第2節 共生と循環の環境適合型社会の姿

 

1 環境の姿

 

① 心地よい陽の光・大気・水・土に包まれた健やかな環境

 

 存分に浴びることができる陽の光、どこでも胸一杯吸えるさわやかな大気、飲み水にすることもできる清らかな水、安心して食べられる農作物を育む豊潤な土壌、静かで心地よい音環境など、豊かな自然の恵みを享受できる健やかな環境を保全・創造し、健康で快適な環境に満ちた美しい地域環境の実現をめざします。

 

② 多様な生き物が共生する豊かな自然環境

 

 近年、動植物や土壌など自然を構成するものが、複雑な相互関係で互いに支え合って「生態系」として存在していることへの理解が広がっています。私たち人間もその一員であることを認識し、生物多様性を踏まえた自然生態系を大切にし、共生していくことが求められています。

 こうした中で、兵庫県の風土に根ざした多くの動植物と共に生きる豊かな自然環境の保全と回復をめざします。

 

③ 個性的な文化や景観に包まれた居住環境

 

 県下各地域において、これまでに形成・蓄積されてきた地域特性を活かすとともに、環境圏*20にも着目しながら、社会的ストック(蓄積)や歴史・文化・伝統などの地域性、花や緑、水辺などの四季ごとに変化する風土の豊かさが活かされた個性的な文化や景観に包まれた居住環境の創造をめざします。

 

2 社会の姿

 

① 地域間のみならず世代間の公平が確保されている社会

 

 各地域間・各主体間において、豊かな環境の恵みを公平に享受し、併せて適切な役割を分担するとともに、現世代で解決できないような著しい環境の破壊や負荷の排出を行わず、また、問題を将来世代に先送りしない社会をめざします。

 

② 環境の保全と創造のしくみが盛り込まれた経済社会

 

 環境への負荷を削減するとともに、環境に配慮した製品やサービスを提供するなど、自らの産業活動の中に環境の保全と創造のしくみを盛り込んだ事業者が活躍する産業経済が定着し、また、事業活動に伴って必要となる環境コストが経済活動の中に内在化された社会をめざします。

 

③ 環境に負荷を与えない知恵や手立てを定着・発展・伝承する社会

 

 家庭・学校・職場における日常的な実践や学習・教育などを通じて、環境を保全し創造する新しいライフスタイルやビジネススタイルを支える知恵や手立てを発展させ、誇りを持って後世の子や孫たちに伝えられる社会をめざします。

 

3 人々の姿

 

① 共生と循環を基調とした暮らしを営む人々

 

 人々が、不必要な消費をやめ、資源を大切に使い、環境への負荷を最小限に抑え、社会のあらゆる分野にわたって健全な循環の営みを構築し、環境に配慮した暮らしを営んでいる姿をめざします。

 

② より良い環境づくりに責任を持って取り組んでいる人々

 

 すべての主体が共通の目標を持ち、自らの責任のもと、参画し協働して、より良い環境づくりに率先して取り組んでいる姿をめざします。

 

③ 健康で文化的な生活を営んでいる人々

 

 豊かな環境の恵みの中で生きがいを持ち、健康で文化的な生活を営んでいる姿をめざします。

 

第4部 目標達成への基本戦略

 「共生と循環の環境適合型社会」を実現していくためには、兵庫県の環境の保全と創造に関する現状と課題を踏まえ、様々な問題の解決に向けて、すべての環境分野にわたって、あらゆる主体(県民、事業者、行政等)が、人的・物的・社会的資源の有限性にも留意しながら、多種多様なとりくみ・施策を、総合的に、そして計画的に推進していくことが重要です。

 このため、様々なとりくみ・施策の基盤となる事項を重点的に推進することとし、その考え方を「目標達成への基本戦略」と位置づけ、「基本戦略」に沿って、各種とりくみ・施策をパッケージして体系的に展開することにより、より効果的、効率的に、環境政策を推進していきます。

 

Ⅰ 「ひょうごエコ・ライフスタイル」の創造

(県民、事業者、行政が一体となって、5R生活など環境にやさしい「ひょうごエコ・ライフスタイル」づくりに取り組みます)

 

 生活水準の向上、生活の利便性の追求に伴い定着した大量消費・大量廃棄型のライフスタイルや社会経済システムは、環境へ過大な負荷をかけるものとなっています。これまでの産業活動や人々のくらし方によって引き起こされた環境問題が深刻さを増し、いまや人類の生存さえも揺るがす重大な課題となっています。

 そのため、現状の枠組みの中での努力にとどまらず、生活行動や経済活動を環境の保全と創造が組み込まれた新たなものに変革することが求められており、生活行動においては、環境への負荷が少ない新たなスタイルについての社会的共通認識を確立し、それを実践することが求められています。

 そして、この解決に向け、県民、事業者、行政などすべての主体が、様々な機会を捉え知識や経験を拡げ、より広く深く考えながら、環境の保全と創造に係るとりくみを楽しみながら実践していくことが必要となっています。

 

 このため、各主体が環境学習・教育を通して、環境に対する意識を高め、環境にやさしいライフスタイルを提案し、県民の共通認識として、新しい豊かさを持った、健康で文化的で環境に配慮した「ひょうごエコ・ライフスタイル」を創造していきます

 また、意識の変化を実践に結びつけ、県民等各主体の自発的、積極的なとりくみをより一層活発化していきます。

 

Ⅱ 環境へのとりくみが盛り込まれた社会経済システムの構築

(「環境に良いことをしても損をしない」さらに「環境に良いことをしたら儲かる」産業活動システムをつくります。)

 

 今日の環境問題は、私たちの生活様式や事業活動と深く結びついていることから、社会経済システム自体を変革しなければ、その根本的解決は不可能です。

 このような認識から、持続可能な社会の形成に向けて、生活者であると同時に生産者でもある私たちが、生活行動とともに経済活動を「環境の保全と創造」が盛り込まれた新たなものに変革することが求められています。

 そのためには、経済活動において、「環境の保全と創造」と「健全な経済活動」が併せて実現できるしくみを構築するとともに、環境への負荷の低減や環境の保全と創造に貢献する産業を育成していくことが必要です。

 

 このため、技術の向上や経済効率性の向上を通じて環境負荷を低減する「環境効率性」の考え方を定着させ、その流れを促進する経済的手法の導入やしくみづくり、新たなビジネスモデルの育成などを図ります。

 また、事業者のみならず県民、民間団体、行政等が、的確な知識を持って、生産者、消費者など様々な立場で「グリーン購入」などの経済活動に参加することを促進します。

 こうしたとりくみを通じて、経済活動への「環境の保全と創造」の考え方の盛り込みを進め、産業活動スタイルの大幅な転換を進めます。

 

Ⅲ 担い手の育成とパートナーシップの形成

(県民、事業者、行政が、環境問題について認識を深め、共有し、環境づくりの「担い手」として役割を果たすとともに、環境コミュニケーションを構築し、各主体間のパートナーシップを育成していきます。)

 

 環境問題の多くが、県民個々の生活や事業活動に直接起因し、影響を与えるものであることから、その解決に向けては、それぞれの地域の住民や事業者が、自ら考え、自ら行動していくことが強く求められています。

 また、環境問題が多様化・複雑化し、多岐の分野にわたる環境の保全と創造が必要となっている今日、様々な分野やレベルで、環境に関する多様な知恵を備えた数多くの人材や組織が必要であり、より多くの活動主体(担い手)が必要となっています。

 さらに、今日の環境問題を解決し、「共生と循環の環境適合型社会」を実現するため、県民と行政、事業者と行政、県民と事業者など様々なパートナーシップによりとりくみを推進していくことが重要となっています。そして、そのためには、県民、事業者、行政などすべての主体が、その役割と状況を互いに理解することが必要です。

 

 このため、生活や事業活動による環境への負荷の程度、将来の環境変化の予測、先進的な環境保全・創造のとりくみ等の様々な情報を体系的に整理し、積極的な情報提供に努めます。また、情報公開や環境コミュニケーション*21を進め、環境に関する事業やとりくみの透明性を高めます。このことにより、県民、民間団体、事業者、行政等の各主体が環境問題を正しく認識し、相互理解を深め、自らが環境の保全と創造の「担い手」として、多様な環境保全・創造活動を展開していけるよう支援します。

 また、これらの様々な活動の担い手が、実効ある活動を持続的に繰り広げるため、環境ファンド(基金)などの経済基盤の充実を図ります。

 さらに、「環境にやさしい買い物運動」など、県民主体で進められてきたこれまでのとりくみを踏まえながら、(財)ひょうご環境創造協会との連携・協力のもと、参画と協働の新たなしくみづくりを進めていくとともに、環境保全協定の締結等を通じて、企業とともに、地域における環境負荷低減に取り組みます。

 

Ⅳ 地域間、世代間の公平性の確保

(地域間、世代間において、優れた環境の恵みを公平に享受できるしくみをつくります)

 

 県内はもとより国内外のどの地域に住む人々も、また将来に生きる人々も、等しく快適な環境のもとで暮らすことができるように努めなければなりません。

 20世紀は、海辺が著しく埋め立てられ、森林では原生的な自然植生が減少するなど、人の手により環境が大きく改変された100年でした。また、利便性の追求から生み出された様々な化学物質が、河川・海域、土壌、地下水や大気の中に蓄積されました。

 現在生きている私たちには、物質的豊かさの追求の結果生じた環境の汚染や自然環境の破壊などの20世紀の負の遺産を、将来世代へ残さないよう、その解消に早急に取り組み、そして、将来に向けて負の遺産を新たに発生させないことが強く求められています。また、優れた自然やまちなみなどの環境資産を継承していくことが求められています。併せて、環境が悪化している地域について、積極的に保全創造のとりくみ・施策を展開する必要があります。

 

 このため、森林の荒廃や河川の汚濁、自然海岸の減少、また有害物質による土壌や地下水の汚染、難分解性有害物質の処理問題など、環境上の「負の遺産」の解消に努めるとともに、有害化学物質による汚染の未然防止など新たな分野をも含めて様々な実態に留意し、新たな発生を防止します。

 また、森林や農地、藻場、干潟、そして文化財や歴史的まちなみといった優れた環境資産を保全しつつ、次の世代に継承していくとともに、国際協力・支援の一層の推進を図ります。 

第5部 基本戦略推進のためのとりくみ・施策 

 

第1節 環境学習・教育の展開

 

□様々な場における学習システムの構築

 

【目 標】

 ひょうごエコ・ライフスタイルの創造に向けて、家庭や職場、学校等の様々な場で環境について学習できるシステムをつくります

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○地域、家庭で環境問題について語り合います。

○地域で環境について学習する様々な機会を用意し、また積極的に参加していきます。

 

 [事業者]

○従業員に対する教育・研修機会の拡充を行い、環境保全意識の向上を図ります。

○施設開放やイベントの開催などを通して地域の環境学習に協力していきます。

 

 [行政*22

○環境学習の全体を網羅した「環境学習プログラム」に基づき、様々な形で情報や学習の機会を提供していきます。

○生涯学習リーダーバンクや講師派遣団の活用を図るなどして、環境学習・教育に関する活動を実践する際のリーダー等の養成及び派遣を進めます。

○清掃センターや上下水道施設等の環境関連公共施設、工場・事業所を、環境学習のための施設としての活用が図られるようにします。

○県民を対象とした自然保護セミナー等の開催や、県内4年制大学による大学連携 「ひょうご講座」などに環境をテーマとした講座を開設する等、社会教育での環境学習を進めます。

○県立博物館の内容の充実を図り、生涯学習への支援や自然・環境シンクタンク(調査・研究・立案)事業を推進します。また、県内の大学等の豊富な環境に関する知恵や情報の活用について検討します。

 

○幼児教育を含め学校教育において、各教科、総合的な学習の時間、特別活動等の時間を活用して、発達段階に応じた体系的な環境教育を、家庭や地域社会との連携の中で展開していきます。

○小中高校生を対象に、県内の企業の協力を得て、工場見学や企業からの講師派遣リスト(名簿)を作成し、企業の環境保全のとりくみについて学習する機会を広げます。

○学習の場を教室から豊かな自然の中へ移し、様々な体験活動を通じて生命に対する畏敬の念など「生きる力」を育成する「自然学校*23」や「トライやる・ウィーク」等の体験型の学習など、地域社会との連携によるとりくみを進めます。また、自然観察指導者など地域の自然学習の指導者と学校をつなぐとりくみを進めます。

○農山漁村にある豊かな自然環境は環境学習の場であり、稲作体験や森林・林業教育などの農林水産業体験学習機会の充実を図ります。

○「水辺の楽校」プロジェクトなど河川を子どもたちの自然体験、環境教育の場として活用するとりくみを進めます。

○中学生・高校生など次世代を担う若者を海外の先進地等へ派遣し、環境に関する知識やとりくみを学ぶシステムを検討します。

○環境問題に関心のない人、薄い人にも、環境について知ってもらうシステムづくりを進めます。

 

○民間団体や事業者、地域の住民など多様な主体と連携をとり、お年寄りから子どもたちへ環境の大切さを伝えるといった環境に関する知恵が世代間・主体間で受け継がれていくしくみをつくります。

 

□実践に向けての学習・教育活動の展開

 

【目 標】

 すべての人が環境問題を考えるための知識や経験を持てるよう、学習・教育活動の充実を図ります

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○人間と環境との関係などについて進んで学ぶとともに、自らが修得した知識や体験を子どもたちに伝えます。

○地域の営みそのものが展示物であり、地域まるごと博物館とも言えるエコミュージアム*24づくりを県内各地で進め、自然遺産や文化遺産を通じた環境学習を促進します。

○河川の上下流や沿岸域など、環境との関わりを通じた地域間の交流を促進することにより、漁業者による森づくりなどに示される環境に関する知恵を地域間で受け継いでいきます。

 

 [事業者]

○事業活動における環境配慮の状況などを広報するとともに、工場、事務所等の開放を通して、県民の環境学習・教育活動の理解を促進します。

○従業員に対する環境学習・教育の機会を一層確保するとともに、多様なチャンネルを活用して学習・教育活動の充実を図ります。

 

 [行政]

○環境関連施設での学習や豊かな自然環境などにふれる体験型の環境学習の機会を提供するエコツーリズム*25を推進します。

○瀬戸内海など地域に関わりが深く、大きな特徴をもった自然を対象とするなど、地域に密着したテーマに基づく環境学習を推進します。

○子どもから大人まで「食」や農林水産業、環境について学び、理解を深めるとりくみを、学校や家庭、地域において推進し、「アグリライフ*26」の理解促進を図ります。

○家庭において、環境についての話し合いや学習が自然に進むよう、情報の提供などを行います。

 

第2節 環境に配慮した経済活動の推進

 

□「環境の保全と創造」の意識を持った生産・消費活動の展開

 

【目 標】

 「環境の保全と創造」の意識が内在した経済活動の展開をめざし、グリーン購入や環境マネジメント(環境管理)システムの導入、環境を重視した市場メカニズムの育成を進めます

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○エコマーク、グリーンマーク等環境ラベルのついた商品や、季節の野菜や果物、地場産の作物など、「環境にやさしい商品」を購入します。 

○「環境にやさしいことは家計にもやさしい」ことを理解し、リサイクル製品や環境への負荷の少ない商品を選ぶグリーン購入に取り組みます。

 

 [事業者]

○事業活動を展開することが、環境の保全と創造を併せて推進するようなしくみをつくります。

○事業所における環境マネジメント(環境管理)の徹底や研究開発を進め、環境負荷の少ない製品・サービスの提供など、事業活動の環境適合化を進めます。

○環境会計や環境報告書などの環境マネジメント(環境管理)システムの導入、環境パフォーマンスの公表を進めます。

○ライフサイクル・アセスメント*27の考え方を踏まえた製品の開発に努めます。

○消費者が環境に配慮した製品を選択しやすくするため、環境に配慮した商品の販売に努めるとともに、消費者が購入選択する際に役立つ情報提供を積極的に行います。

○リサイクル製品や環境への負荷の少ない商品を選択するグリーン購入に取り組みます。

 

 [行政]

○事業者に対して、環境調和型の製品・サービスの選択を通じて企業活動をより質の高いものに変革することについて理解を求めていきます。

○循環型社会を先導する民間プロジェクトやモデルとなるような事業者のとりくみを育成・支援していきます。

○事業者に対して、環境会計や環境報告書などの環境マネジメント(環境管理)システムの導入、環境パフォーマンスの公表について理解を求めていきます。

 

○先導的な海外のとりくみを学び、環境に配慮した産業の育成に向け、市場メカニズムを活かした事業の具体的展開方策を検討します。

○全国的・広域的に連動することが避けられない市場メカニズムの性質から、全国又は府県を超えた広域連携によるとりくみの可能性を追求していきます。

○環境に配慮した産業の育成に資する事業展開の可能性を広げるため、環境分野における様々な規制緩和や権限移譲、あるいは新制度の創設を進めるよう国に働きかけるとともに、県において可能なものを積極的に進めます。

○環境ラベル*28や環境報告書等の情報的手法の活用により環境に関する情報開示を進め、環境を
重視した市場メカニズムの育成に努めます。

 

○動脈産業の施設や技術を活用したリサイクルのしくみを確立し、静脈産業と動脈産業の統合・一体化による「健全な物質循環の輪」を構築します。

○本県の特性を最大限に活用しながら、「環境共生型都市(エコハーモニーシティ)構 想*29」の推進をはじめ、環境・エネルギー関連企業の集積を図ります。また、ゼロエミッション(ごみゼロ)のとりくみや省エネルギーの推進など様々な観点から資源・エネルギーを効率的に利用する事業者が集積した拠点の整備を検討します。

 

□エコビジネス*30(環境産業)の育成

【目 標】
 環境分野における新産業の創出のみならず、コミュニティ・ビジネス*31の育成や環境創造型農林水産業の推進などを通してエコビジネスを育成します

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○地域の環境の保全と創造に資するコミュニティ・ビジネスの起業などに積極的に参画します。

○環境に配慮された農業等により生産された農産物への理解を深め、その購入に努めます。

 

 [事業者]

○これまで培ってきた環境保全・創造に関する技術やノウハウ等を通して、エコビジネスの振興に寄与していきます。

 

 [行政]

○環境行政と産業行政との連携を強め、エコビジネスの実態把握と振興に努めます。

○環境分野における新産業の創出を一層促進していくとともに、既存の県内産業が環境対応を図るための主体的なとりくみを支援していきます。

○低環境負荷型の技術開発を進めるため、エネルギー技術、素材技術、バイオ技術、情報技術、製造技術等の先端的な技術を相互に関連づけた総合的な技術開発・製品開発を支援します。

 

○本県企業が有する高い技術集積等を活かし、ビジネスコンソーシアム(企業連合)の形成等により循環型社会システムへの転換をめざすとりくみを支援する循環型社会先導プロジェクトを推進します。

○エコビジネス・フェアの開催などにより、静脈産業を含むエコビジネスの振興と一般への啓発やイメージアップを進めます。

○コミュニティ・ビジネスやベンチャービジネス*32など、地域住民や地場産業・地域産業による地域の環境の保全と創造に貢献する経済活動の育成を図ります。

 

○有機農法の振興や情報システムの整備等、消費者に安心な農産物を提供する産地直送システムの確立への支援などを通じて、環境創造型農林水産業を推進していきます。

 

○たい肥等による土づくりと化学肥料・化学農薬の使用の低減を一体的に行う「環境に配慮した農業生産方式」の導入を促進するとともに、農業用資材の適正な処理を進め、環境と調和のとれた持続的な農業生産(環境創造型農業)を推進します。

 

□経済的手法の開発と導入

 

【目 標】

 県民、事業者の自発的なとりくみにインセンティブ(誘因)を与える経済的手法の導入をめざします

 

【主なとりくみ・施策】

 [行政]

○環境の保全と創造を進めるためには費用をどのように負担するのが公平であるかを研究し、ごみ処理費用などの算定ルールの公開や汚染者負担原則*33の啓発などを通じて、県民、事業者等に十分理解してもらいます。

○各主体の役割の分担を公平なものにするため、環境利用のコストを価格に織り込むことを求める「汚染者負担原則(PPP)」や、生産した製品などについて生産者自らが、製品などが使用されて廃棄物となった後まで一定の責任を負う「拡大生産者責任(EPR)」の考え方を踏まえ、各主体の責任ある行動を促進します。

○県民、事業者の自発的なとりくみにインセンティブ(誘因)を与える環境税、デポジット制度*34、パーク・アンド・ライド*35などの各種の経済的手法について、他の手法との比較を行いながら、環境保全上の効果、経済に与える影響、技術革新を促進する効果、必要とされる行政コストなどを総合的に考えて、その適切な活用について検討します。

○経済的手法の導入に際しては、これまで支払われてこなかった新たな負担を県民に求める可能性もあることから、県民の理解と協力を得るよう十分配慮します。

○経済的手法を研究する際には、国内外の事例を収集・分析するなど、近隣府県とも共同して実現に向けた検討を進めるとともに、国へも必要な制度改正を働きかけていきます。

○当面の対策として、自動車税のグリーン化*36を導入するとともに、中・長期的な課題として、廃棄物や大気汚染など、県民に身近で地域の実情を踏まえた対応が求められる環境問題については、排出削減に向けたインセンティブ等のための税制の導入可能性についても、検討を進めます。

○特定エリアへのディーゼル車流入抑制のため、課金型ロードプライシング*37の導入について検討を進めます。

○廃棄物の発生抑制や負担の公平化を図る観点から、経済的誘導策についても多角的方向から研究・検討していきます。

 

第3節 ネットワークと協働によるとりくみの推進

 

□自発的とりくみの推進

 

【目 標】

 県民や民間団体、事業者、行政等が責任を自覚し、意思と創意を行動に発揮します

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○日々の生活を通じて、家族や知人などと協力し合い、また自己実現につながる喜びを分かちあいながら、環境にやさしいライフスタイルを確立します。

○環境負荷の少ない製品の使用・購入(グリーン購入)に努めます。

○日常生活から生じる環境負荷について、省エネや水資源の有効利用、公共交通の利用などのちょっとした工夫と努力により、負荷の軽減を図ります。

○行政や民間団体の開催する環境学習や環境保全活動等に積極的に参加し、環境問題への理解を深め、さらに積極的なとりくみを行っていきます。 

○環境家計簿の推進等により自らの環境への負荷を実感し、具体的行動に結びつけていきます。

○家庭や地域で環境問題についての話題を取り上げる等により環境保全行動の輪を広げていきます。

○地域の環境情報やエコマーク*38商品に関する情報など様々な環境情報に関心を持ち、環境負荷の小さな商品の積極的購入など具体的行動に結びつけていきます。

 

 [事業者]

○環境の保全と創造に資する効果的なとりくみを推進するため、環境マネジメント(環境管理)システム*39の導入及び環境会計*40や環境報告書*41などの環境パフォーマンス*42の公表を進めます。

○NPO等を含めた県民や行政のパートナーシップによる枠組みづくりと自主的なとりくみにより、創意工夫を活かした透明性の高い環境保全型事業の展開を図ります。

○地域で行われる環境保全活動に積極的に参画し、リーダーシップを発揮するなど活動の中核となります。

 

 [行政]

○ISO14001の認証を受けるとともに、県民、事業者などへの模範として、環境の保全と創造に関する率先行動を示していきます。また、県職員一人ひとりが環境に配慮したライフスタイルを実践し、県民に啓発していきます。

○環境家計簿*43などを利用した県民一人ひとりが自己診断できる環境保全手法の普及を進めます。

○リサイクル活動への協力等を行う商店・事業所を認定・紹介することなどにより、事業者が環境に配慮した事業活動を行うように促します。

○環境の保全と創造に関する活動への積極的な参加者を増やしていくため、自発的とりくみの意義などについて、学校・家庭・職場などへ広く啓発を進めます。

○すべての主体の環境への関心を高め、自発的な活動を行う動機とするため、多様なメディアを活用した普及啓発や催し等を効果的に展開します。

○環境保全創造活動に資する「ひょうごエコファンド」の創設・活用や、各主体が活動を通して資金を調達できるしくみの整備について検討します。

○公害防止や環境保全施設等の設置に関する中小企業者等に対する融資を引き続き推進します。

 

□相互理解を基盤とした協力・連携活動の推進

 

【目 標】

 すべての活動主体の相互理解を深め、協力・連携できるしくみづくりを進めます

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○県民、事業者、行政のパートナーシップの形成に努めるとともに、責任を持って環境づくりに発言、行動していきます。

○事業者、行政等と協力・連携し、環境保全に積極的に参加します。

 

 [事業者]

○県民、事業者、行政のパートナーシップの形成に努めるとともに、責任を持って環境づくりに発言、行動していきます。

○地域社会での自然保護や環境保全のための様々な活動に積極的に協力、参加していきます。

 

 [行政]

○県民運動の一層の高揚を支援することとし、県民の参画と協働への新たなしくみづくりをめざして、新しい条例制定をはじめ具体的な検討を進めるなど、住民と行政の協働を一体的に推進するしくみづくりを進めます。

○平成3年度から県下の女性団体が中心になって展開されてきた「環境にやさしい買物運動」について、一層多くの県民にこの運動を広げるとともに、他府県や経済界などと連携して広域的な展開を支援します。

○県民運動の推進の一環として、グラウンドワーク活動*44をはじめとする地域における環境改善活動を支援していきます。

○ナショナルトラスト運動*45などを参考にして、地元住民や民間活動団体、行政などが連携して自然環境の保全や自然とのふれあいなどの実践活動を展開します。

○道路や河川等の社会基盤に関して、区間を区切って地域住民が「養子縁組」を行い、養子となった道路等の清掃・美化活動等を行うことにより、快適な生活環境の創造に取り組む兵庫県版アドプト・プログラム(養子縁組を基調とした環境保全創造のとりくみ)*46を推進します。

○県民共同太陽光発電所の建設等を進める「ひょうごグリーンエネルギー基金」など住民参画による手法を進めます。

○民間団体や事業者等のネットワークづくり及びリーダー養成や活動費の助成などにより、環境保全創造活動を行う団体を育成・強化します。

 

□参画と協働を推進する機能の育成

 

【目 標】

 参画と協働を推進するために、学習の機会や場所等を提供するとともに、様々な活動を支援します。

 

【主なとりくみ・施策】

 [(財)ひょうご環境創造協会]

○「ひょうごエコフェスティバル」や「ひょうごエコプラザ」など、環境問題について楽しみながら学べる機会や場所を多く提供することにより、環境に関心のうすい人たちに対する啓発を行います。

○「ひょうごエコプラザ」の活用を図り、情報の収集・分析・発信機能を強化し、交流の促進、活動の促進・支援を積極的に進めます。

○「日常生活での環境負荷の低減」、「生物の多様性」などのテーマについて、民間活動団体や県民等と共同で調査研究を実施し、施策提言などのシンクタンク機能を強化します。

 

 [行政]

○(財)ひょうご環境創造協会を県民、事業者等のあらゆる主体の参画と協働に基づく様々な事業の推進母体と位置づけ、連携して環境適合型社会の形成をめざした各種事業を推進していきます。

○環境ボランティアへの場の提供、行政への意見を施策に反映させる場の設定などを通して、県民、事業者、民間団体、行政を結び付けるコーディネート機能を、(財)ひょうご環境創造協会をはじめ様々な民間団体において強化します。

○地域における参画と協働の推進を図るため、各地域ごとに中核機能の整備を図ります。

 

□環境情報の収集・提供・公開・共有の促進

 

【目 標】

 環境に関する情報を容易に入手し、共有できるシステムを構築します

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○自らが行う環境保全・創造のとりくみについて、積極的な発信に努めます。

 

 [事業者]

○自らが行う環境保全・創造のとりくみについて、積極的な発信に努めます。

○製品等の原材料や製造・流通・消費・廃棄等に関しての情報及び製品等が環境に与える負荷について、出来る限り、消費者に適切な情報を提供します。

 

 [行政]

○「環境情報総合システム」の拡充などにより、情報収集・整理機能を強化し、情報提供機能をより利用しやすくするなどして、環境コミュニケーション*47の構築を進めます。

○環境関連の各種調査・報告等の既存情報の電子化を推進するとともに、情報全般について、県民にとってわかりやすい内容となるよう工夫します。

○自然環境など現在の環境の姿を、情報として収集・整理・保管・活用することについて検討していきます。

○事業活動にかかる環境情報について、事業者による自主公開が促進されるよう、環境条例に基づき事業者への働きかけを強めます。このため、必要に応じて、公開請求の基準などを規定したガイドライン(指針)を作成します。

○広く県民、事業者が、環境に関する情報を共有できるように、県民、事業者、行政が持つ図書資料等の閲覧センターを各県民局単位に設置します。

○自然環境情報の収集・整理を県立人と自然の博物館で関係機関との連携により行い、その情報の提供・公開・共有を進めます。

○これらのとりくみを通じて情報システムの拡充を図り、県民、事業者、行政が環境に関する情報を共有し、互いに自律的に環境への配慮を行いつつ交流・連携するよう図ります。

 

□新環境保全協定の推進

 

【目 標】

 新たな課題(地球温暖化対策、循環型社会の形成)に対応した21世紀型環境保全協定の締結を推進します

 

【主なとりくみ・施策】

 [事業者]

○事業所における環境マネジメント(環境管理)等の自主的とりくみを進め、新たな課題に対応した環境負荷の継続的軽減に努めます。

 

 [行政]
○現行の公害防止(環境保全)協定を抜本的に見直し、県民の参画と協働のもと、県民・事業者・行政の新たな関係を構築します。
○地球温暖化対策や循環型社会の形成などの新たな課題に対応し、環境負荷の継続的軽減、地球環境保全への貢献をめざします。
○IT(情報通信技術)を活用した情報の公開・共有化を推進し、透明性、信頼性の確保に努めます。

 

第4節 優れた環境を公平に享受できるしくみづくり

 

□広域ネットワーク形成の促進

 

【目 標】

 市町や府県域を超えた広域ネットワークの形成を図るとともに、環境圏に着目した連携を進めます。

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○県民個人のとりくみを通じた府県境を越えた交流と連携を一層進めます。

 

 [事業者]

○事業活動などを通した広域的な交流や協力・連携活動を一層推進します。

 

 [行政]

○自治体、経済界、住民などによる府県境を越えた環境に関する広域的な交流と連携を一層促進します。

○瀬戸内海関係26府県市で構成する「瀬戸内海環境保全知事・市長会議」を通じて、生態系の保全・回復と沿岸域における失われた良好な環境の回復・創造のためのとりくみを広域的に進めていきます。

○国の「総合環境学習ゾーン・モデル事業」で指定された京滋・阪神ゾーンにおいて、各環境学習拠点と連携を図りながら、配備された環境学習用機材やコンピュータ情報ネットワークを活用して、環境に関する体験学習の推進を支援します。

○森の倶楽部や棚田のオーナー制度など環境との関わりを通じた地域を越えた交流を促進します。また、大阪湾全域で取り組まれている「なぎさ海道」のネットワークの輪を広げていきます。

○「関西エコスタイル・キャンペーン」など関西広域連携協議会において推奨される各種の環境施策に協力し、効果的に推進していきます。

○関西の産・官・学・市民からなる「地球環境関西フォーラム」において制定された「地球環境関西フォーラム行動憲章」や各種検討の上取りまとめられた研究成果等について、関係機関と連携しながら普及啓発を進めます。

○「京阪神6府県市自動車排出ガス対策協議会」において、窒素酸化物等の排出量の少ない自動車の普及及びディーゼル車対策を進めるなど、関係機関と協力・連携して自動車排出ガス対策を推進します。

○流域や山並み、海岸線のつながりなど、様々な自然環境的な共通性に着目して、「環 境圏」という考え方を浸透させ、国内外の同様の地域などとの交流・連携の促進を 図ります。

○「環境圏」という考え方に立って、環境面で関連性の高い区域に関して、住民の意見を踏まえ、必要に応じて圏域設定を行い、圏域内での環境関連施策の計画的な推進を図ります。

○沿岸域を含め河川下流側地域の上流域での森づくりへの協力など、山や川やまちなどを介した交流と連携を促進します。

○沿岸域の環境保全創造について、地域特性に応じて、様々な主体の参画と協働によるとりくみを進めるとともに、流域にも着目して、流域それぞれの地域相互の連携・協力を進めます。

 

□国際的な協力・支援の積極的展開

 

【目 標】

 本県の技術・ノウハウなどの蓄積を活用して、環境技術をそれぞれの国・地域に対応させて発信し、国際的な協力・支援を積極的に行います

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○市民レベルの草の根の国際交流を進め、民間団体等が培ってきたノウハウ・技術を情報発信していきます。

 

 [事業者]

○海外における植樹・植林等の緑化技術、省エネ対策の技術移転等、国際協力に積極的に参画していきます。

○海外研修員の受け入れなどを通し、国際協力を推進していくとともに、海外における事業活動や貿易に関しては、環境に配慮した活動を進めます。

 

 [行政]

○瀬戸内工業地帯を中心とした公害を克服した経験や技術、さらには阪神・淡路大震災から学んだ「自然との共生」の大切さ、を積極的に国内外に伝えていくため、 ①姉妹友好州省等との環境保全技術交流、②国際環境研究機関等との連携、③参画と協働による国際協力、の三つの柱に沿って国際環境協力を進めていきます。

 

○本県における公害・環境問題の調査分析・学術機能などを活かし、開発途上国における実態調査や解析あるいは環境教育などに貢献していきます。

○熱帯雨林の乱開発や近代工業の発展に伴う公害の発生など、多くの環境問題を抱えている東アジア地域の環境保全に関して、情報提供や人材育成その他について積極的に支援していきます。

○海外技術研修員受入制度による環境分野における研修生の受け入れを積極的に進めます。

 

○本県の姉妹友好州省である中国広東省との環境保全技術交流を引き続き進めるほか、ブラジル・パラナ州や中国海南省などのその他の友好州省等についても、現地でのシンポジウムやワークショップ(意見や技術の交換・紹介を行う研究会)の開催等を通じて、環境保全に関する技術や情報の交流を進めていきます。

○北東アジア地域連合(NEAR)環境分科会委員会における環境協力事業への参加など、国内府県等が共同して行う国際環境協力事業に協力するとともに、その体制作りを進めます。

 

○アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)センターの活動を人的・財政面から支援します。また、本県の地域環境課題の解決に資する地球環境に関する研究成果について、県民、事業者、関係機関等に情報提供していきます。

○産業と環境をメインテーマに研究を行う(財)地球環境戦略研究機関(IGES)関西研究センターの活動を支援し、その研究成果をアジア太平洋地域をはじめとする世界に向けて発信・普及していきます。

○(財)国際エメックスセンター等県内に立地する国際機関との連携を図りつつ、企業の参画を得ながら、国際的な環境研究・協力ネットワークの形成を進めます。

○世界閉鎖性海域環境保全会議(エメックス会議)の開催のほか、閉鎖性海域の環境保全に係る情報の国際ネットワークの構築・拡大、技術研修など、(財)国際エメックスセンターが行う閉鎖性海域の環境保全創造に関する国際的とりくみを支援します。

○国際協力事業団(JICA)による技術職員の派遣及び研修生の受け入れに協力します。

○国際協力事業団(JICA)等の国際機関を通じて本県研究機関の職員を派遣するなどして、本県が有する公害防止・環境保全技術を、開発途上国へ移転していきます。

○海外進出している企業に対し、進出先において適切な環境配慮を行い、積極的に相手国での環境保全に貢献するよう働きかけていきます。

○(財)淡路花博記念事業協会を通じ、「人と自然のコミュニケーション」の理念を世界に発信し、花と緑あふれるまちづくり、緑の地球環境の創造を進めます。

○県民、事業者、民間団体、市町による開発途上国への公害・環境問題での国際貢献を促進するため、(財)ひょうご環境創造協会や(財)兵庫県国際交流協会を通じ、必要な協力・支援を行います。

○国際環境研究機関との共同による国際シンポジウムの開催や海外における植林などの国際環境協力に取り組む民間団体の活動を支援するなど、専門家から県民レベルへと環境の保全と創造に関する国際交流の裾野を広げます。

 

□グリーンエネルギー*48の積極的導入

 

【目 標】

 太陽光発電などのグリーンエネルギーの導入を積極的に推進します

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○住宅に太陽光発電装置や太陽熱温水器等を設置するなど、化石燃料に過度に依存したエネルギー消費を改め、新エネルギーの積極的活用を図ります。

○エネルギー消費効率の高い機器の使用や省エネ行動により、日常生活の省エネを徹底します。

 

 [事業者]

○コージェネレーション・システム*49や廃熱回収システム、氷(水)蓄熱空調*50や未利用エネルギー回収などのヒートポンプシステムの導入によるエネルギーの高効率利用や太陽光発電等による新エネルギーの活用を通して化石燃料使用量の削減を図ります。

○工場や事業所等において、エネルギー管理の徹底や省エネ化を図ります。

 

 [行政]

○「ひょうごグリーンエネルギー推進プログラム」に基づき、県民、事業者、行政による太陽光発電、風力発電等の自然エネルギーの導入促進や、省エネ行動や省エネ機器の利用による省エネルギーを促進するためのとりくみ・施策を推進します。

○エネルギー問題や環境問題への理解を促進するため、自然エネルギーをはじめエネルギーの循環利用を体験できる宿泊型学習施設の設置を検討します。

○市町単位でのグリーンエネルギーの普及促進を図るため、市町の新エネルギー・省エネルギー導入に向けたとりくみを支援します。

○県民、事業者が、グリーンエネルギーの必要性を理解し、省エネ行動が身につけられるよう、グリーンエネルギーメッセの開催や地球温暖化防止活動推進員等によるきめ細かな普及啓発、情報提供を行います。

○県民の有志から資金を集め、太陽光発電等自然エネルギーを利用した県民発電所を建設する「ひょうごグリーンエネルギー基金*51」への支援を行います。

○県自ら太陽光発電等の導入を進めるとともに、各市町、事業者等から構成する「グリーンエネルギー導入促進会議」を通じ、市町の公共施設での導入促進を進めます。

○「グリーンエネルギー導入促進地域会議」をモデル地域で県民局に設置するとともに、県民の参画と協働によって地域ぐるみで広域的に実施する先進的な事業に対して支援し、地域での導入を促進します。

○本県に立地する太陽光発電メーカー等と連携しつつ、化石燃料に過度に依存したエネルギーシステムからの脱却をめざして、環境負荷の少ない新エネルギーの普及を図ります。

○廃食用油を回収・改質し、バイオ燃料(ディーゼル代替燃料)を製造する「淡路菜の花プロジェクト」、農山村地域での循環型社会の形成を図る「森のゼロエミッション*52構想」等のとりくみにより、バイオマス*53エネルギーの有効利用を推進します。

○モデル地域において、県民、事業者、行政等から構成する協議会を設置し、地域での省エネ対策の計画策定を行い、地域ぐるみの省エネルギー対策を推進します。

○「尼崎21世紀の森構想」の推進等、環境に配慮したまちづくりを推進し、グリーンエネルギーの導入を促進します。

 

□環境影響評価制度の適切な運用と新たな展開

 

【目 標】

 県民、事業者、行政、民間団体などの社会的活動(開発工事、施設整備など)を環境の面から評価する制度を整備・拡充します

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○環境影響評価手続きに積極的に関与していきます。

 

 [事業者]

○環境影響評価法や環境影響評価に関する条例の対象とならない事業についても、積極的に環境保全上の配慮を行い、自主的な環境影響評価を行うことによって、事業活動を環境適合型社会の形成に支障がないものとしていきます。

 

 [行政]

○県民、事業者、行政の各主体の参画と協働という趣旨から、環境影響評価制度の運用においては、公正さ及び客観性が確保され、相互の信頼に基づき、情報公開も含め、手続が透明かつ民主的に行われるよう徹底します。

○大規模事業の計画立案段階においては、環境配慮の視点から事業計画の代替案の検討を行うとともに、環境影響評価を通して、環境への影響を軽減・緩和させるための手法(ミティゲーション*54)を活用するよう指導します。

○地域環境の状況や開発整備事業の変化に応じて、対象事業の拡充や制度の見直し等を行います。

○環境影響評価手続の実効性を高めるため、環境情報提供システム等環境影響評価 手続を支援するシステムを整備します。

○環境影響評価に関する図書の縦覧等については、住民がより情報を得やすい方法 を検討するとともに、住民等との参画と協働が進むようなしくみを検討します。

○より早い段階からの合意形成を図るため、個別の事業の上位にある 計画や施策の立案に際し、戦略的環境アセスメント*55を導入することにより、事業を実施しないことをも含め、複数の代替案を選択肢とする制度を充実させる方策を検討します。

 

□とりくみ・施策の展開に資する調査・研究、監視・観測の推進

 

【目 標】

 県立施設での調査研究の充実を図るとともに、多様な機関との研究の連携を推進します

 

【主なとりくみ・施策】

 [行政]

○県立試験研究機関では、直接、研究・技術開発を行うだけではなく、大学や民間の研究所等の研究成果を地域に結びつけていくコーディネート機能や情報提供を中心とした行政サービス機関としての機能の強化を図ります。

○人、環境、生態系等を総合的に取り扱い、県民の安全・安心を科学的な観点から支えていくための研究を進めます。

○農林水産関係試験研究機関において、農林水産業が持つ環境浄化機能など農山漁村を取り巻く環境に関する研究を進めます。

○研究者等による直接の指導、わかりやすい形での成果の普及や最良技術(ベスト・アベイラブル・テクノロジー)導入の促進など、きめ細かな普及を行います。

○多様な主体が連携して環境に関する研究・開発を進める「コンソーシアム(連合、組合)」の形成など、産学官による研究・開発体制の整備を促進します。

○環境の保全と創造に関するとりくみ・施策を適切に実施するため、大気汚染状況の常時監視など環境の状態の監視・観測を推進します。また、環境への負荷の把握を推進します。

○各地で、県民、民間団体等が自発的に行っている各所調査学術研究などについて、支援を検討します。

 

□適切な環境保健対策、公害紛争処理の実施

 

【目 標】

 環境保健対策を引き続き進めるとともに、公害苦情に対する対応を強化します

 

【主なとりくみ・施策】

 [行政]

○健康被害発生時の被害調査や保健指導などを適切に進めます。

○健康被害に関する救済制度の円滑な実施に努めます。 

○環境汚染と健康障害の因果関係等に関する調査研究を推進するとともに、医療関係者や県民への情報提供を進めます。

○公害に関する苦情に対し適切な対応を行うとともに、悪質な違反に対して厳正な対応を進めます。

○公害紛争について、公害審査会で迅速かつ適切な解決を図ります。 

 

第6部 環境保全創造のためのとりくみ・施策

第1章 地域環境への負荷の低減

 

 環境の汚染を未然に防止し、人々の生命・健康や生活環境を守り、さらに持続可能な社会経済の発展を実現するためには、資源を浪費する大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済から脱却し、健全な物質循環により環境への負荷を低減することが必要です。

 このため、資源・エネルギーの循環的、効率的な利用等により、事業活動や日常生活から生じる汚染物質や廃棄物の発生を減少させるとともに、発生した汚染物質や廃棄物を適正に処理するなど、大気環境の保全、水・土壌環境の保全、環境汚染物質対策、資源循環システムの構築を進めます。

 

第1節 大気環境の保全

 

【目 標】
 大気環境及び騒音の「環境基準」について完全達成をめざし、健康でさわやかな空気を確保するとともに、質の高い生活環境を創造します

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○家庭用給湯器などの小規模燃焼機器を購入するときは、低NOX*56型機器を選択します。

○自動車を購入するときは、排出ガスがきれいで燃料消費効率の良い自動車を選択します。

○可能な限り自家用車の使用を控え、バス・電車等の公共交通機関や自転車を利用するなど、環境への負荷の少ない交通手段の選択に努めます。

○自動車の使用に際しては、アイドリング*57ストップ等エコドライブを実践します。

 

○住宅構造への配慮、低騒音型器具の購入などにより生活騒音の防止に努めるとともに、地域のコミュニティ活動の中で、生活騒音等に対する自主的なルールづくりを検討していきます。

 

 [事業者]

○事業活動に伴う大気汚染物質の排出量の把握と施設の維持管理の徹底・強化等による削減に努めます。

○情報通信を利用した在宅勤務、サテライトオフィス*58等の推進により、自動車交通量の削減に協力します。

○貨物自動車、社用車等事業に使用する自動車の運行管理を計画的かつ適切に行い、走行量を抑制します。また、業務に使用する自動車を購入するときは、排出ガスがきれいで燃料消費効率の良い自動車を選択します。

○共同輸配送や物流拠点の整備等により製品等の輸送の効率化に努めるとともに、幹線輸送については鉄道・海運の積極的利用に努めます。

○従業者に対してバス・電車等の公共交通機関や自転車を利用するよう呼びかけます。

○自動車の使用に際しては、アイドリングストップ等エコドライブを実践します。
○自動車の点検整備は日頃からこまめに行い、窒素酸化物などの排出の抑制に努めます。

 

○工場、事業所から騒音、悪臭を出さないよう管理を徹底します。

 

 [行政]

 

○環境濃度の監視を行い、「環境基準」を達成していない場合はその状況と原因について、広く情報を公開します。

○工場・事業所に対する的確な指導・規制を行い、大気汚染物質の排出抑制対策を推進します。

 

○自動車単体から排出される汚染物質の低減対策をより一層推進するとともに、自動車保有量の多い事業者を中心に、自動車排出窒素酸化物や粒子状物質の排出抑制について指導等を行います。

○沿道の土地利用の適正化、街区の再整備による住宅の再配置、住宅等の防音対策などを進めます。また、沿道部をはじめ、市街地全体での大規模な緑化を促進します。

 

○共同輸配送、モーダルシフト*59等の物流対策、公共交通機関の整備及び利用促進、パーク・アンド・ライド*60施設の整備等の人流対策、連続立体交差・交差点改良等による交通渋滞緩和対策、ITS(高度道路交通システム)等の交通流対策を進めるなど、交通需要マネジメント施策(TDM*61)及びマルチモーダル施策*62を推進します。

○県に納品される物品の配送業務等に環境負荷の少ない車の使用を求める「グリーン配送」を推進します。さらに、これを事業者、県民、市町等にも呼びかけていきます。

○都市の自動車交通の集中を避けるため、道路ネットワークや公共交通機関の整備を進めます。

○本県は、国土軸*63上に位置し、域内交通だけでなく通過交通も多いことから、国や周辺自治体等とも連携した総合的な交通対策を実施します。

○交差点や交通集中箇所などの汚染が著しい地区の大気環境を改善するため、交差点改良など道路構造の改善やETC*64の整備の推進や土壌脱硝などによる直接浄化対策などを検討し、局地汚染対策を推進します。

○低公害車*65や低排出ガス車の導入に取り組みます。

○ディーゼル排気微粒子(DEP)については、健康影響との関連が懸念されており、ディーゼル代替の低公害車等の導入やDPF(ディーゼル微粒子除去装置)の装着を促進するなど、ディーゼル車対策を推進します。

○ディーゼル黒煙の街頭検査を強化するとともに、関係機関と連携し、著しく黒煙を排出する車に対する「通報制度」などによりドライバーに自主整備点検を促します。

 

○環境負荷の少ない車両の開発促進とともに、自動車税のグリーン化*66及び助成制度の充実などにより、低公害車や低排出ガス車の普及を促進します。

○天然ガス自動車用の天然ガススタンドなど、低公害車の普及に向けた基盤的施設の整備を促進します。

○光化学オキシダント*67の生成メカニズムの解明、原因物質の窒素酸化物や炭化水素等の発生抑制対策を行うとともに、緊急時の措置等の光化学オキシダント対策を推進します。

 

○主要幹線道路等で自動車騒音の常時監視を実施することにより、沿道の住宅における環境基準の達成状況を把握し、騒音対策を促進します。

○航空機騒音、新幹線騒音については、常時監視又は定点監視を継続し、環境基準の達成状況を把握するとともに、国等関係機関に環境基準達成に向けての各種の対策を要請していきます。

○光害*68が生活環境に及ぼす影響等について検討し対策を進めます。

 

第2節 水・土壌環境の保全

 

【目 標】

 健全な水循環を確保し、質の高い水環境づくりを進め、水環境及び土壌環境の「環境基準」の達成をめざします

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○家庭での節水や台所流しでの三角コーナー用ろ紙袋の使用による調理くず対策等の家庭でできる雑排水対策に努めるとともに、下水道等生活排水処理施設等の整備への理解と協力に努めます。

○廃油の回収、洗剤使用の抑制など家庭でできる生活排水対策に取り組みます。

○空き缶やごみなどを海や川に捨てません。

○住宅の雨水貯水槽、浸透ますの設置などにより、雨水の有効利用や地下水涵養に努めます。

 

 [事業者]

○工場や事業所においては、事業活動に伴う水質に係る有機汚濁負荷や窒素及びりんなど栄養塩類の低減を行い、排水による河川や海域の富栄養化による水質影響等の防止を図ります。

○工場や事業所等において、節水の工夫や雨水利用施設の導入等により、水利用の適正化や水資源の有効活用に努めます。

○工場・事業場については、排出水の特性等について、その実態把握に努めるとともに工程内における汚濁負荷量の削減対策や排水処理施設の設置等に努めます。

○工場・事業場については、有害物質による河川等公共用水域の汚濁を防止するとともに、有害物質を含む水が地下に浸透して地下水の汚濁や土壌汚染を引き起こさないよう、汚水や廃棄物等の管理を適切に行います。

○有害物質を含む原料等を使用するなど有害物質を取り扱ったことがある事業者にあっては、土壌の汚染の有無について自主的な調査の実施に努めます。また、汚染が発見された場合は、人の健康への影響を防止し生活環境への影響を極力低減させるための措置を速やかに行います。

○農業者等にあっては、肥料等による河川や地下水の汚濁の防止を図るため、有機質資材の利用等やさしい施肥・土づくりを推進します。

○漁業者等にあっては、養殖における給餌量の低減や環境負荷の少ない飼餌料の使用等行い、養殖漁場の管理の適正化に努めます。

○畜産業にあっては、家畜排せつ物による水質汚濁の防止を図るため、堆肥化等適切な糞尿処理を行います。
○健全な水循環の推進に向け、雨水浸透ますの設置などにより地下水涵養に努めます。

 

 [行政]

○河川や海域等の公共用水域における「環境基準」の維持・達成を図るため、工場・事業所に対し、的確な排水規制を実施します。さらに、閉鎖性水域である瀬戸内海においては、COD*69及び窒素・りんに係る総量規制を実施します。

○汚濁の主たる原因である生活排水について、「生活排水99%大作戦」に基づき、市町と協力しながら、下水道の整備の一層の促進を図るほか、地域の実情に応じ、農業集落排水施設、合併処理浄化槽等の生活排水処理施設の整備を促進するとともに、高度処理の導入や維持管理の徹底等により水質汚濁負荷の低減を図る。

○肥料の適正な使用を確保するなどの環境創造型農業の実施等により、農地に由来する水質汚濁に係る環境負荷の低減への総合的なとりくみを進めます。

○家畜ふん尿の良質堆きゅう肥化等適正な処理による農地還元、計画的な共同処理施設の設置を推進すること等により、家畜排せつ物に由来する汚濁負荷量の削減を図る。

○養殖漁場の環境改善を図るため、給餌量の低減、汚濁負荷の少ない飼餌料の使用の促進等により、養殖漁場の環境管理の適正化を推進するとともに、漁場内の水質及び底質の改善を図るため、地域の実情に応じて適切な措置を講じます。

○都市地域の非特定汚染源対策を推進するため、合流式下水道の改善等を推進します。

○河川、海域及び湖沼の「環境基準」の類型指定やその見直しを、利水状況の変化等流域の変化に対応して的確に行います。

○河川流域の水環境については、環境保全上健全な水循環が保たれることが必要であり、水源涵養に有効な森林・緑地、農地等の保全、多自然型川づくり、ため池や水路構造への配慮等について、県民の理解を深めつつ、流域の特性に応じて、上下流の協力などにより総合的に取り組んでいきます。

○生活排水による汚濁が著しい水路等については、生態系を利用した水質の直接浄化等の水質浄化事業を推進する。また、自然浄化能力の積極的な活用を図るため、河川及び干潟、沿岸等において自然環境の保全・回復等に努めます。

○海域については、瀬戸内海へ流入するCOD及び窒素・燐などの汚濁負荷の総量削減をはじめ底質改善など総合的な対応により、着実に水質の改善と保全を進めていきます。

○底質汚泥による水質の悪化を防止するため、河川及び海域にたい積している有機汚泥等について、河川計画及び港湾計画との整合を図りつつ除去を推進します。

○沿岸域の水環境については、残された自然環境の保全、悪化した環境や失われた環境の修復・回復、さらに積極的な環境型利用への転換等のとりくみを、河川流域でのとりくみ等と一体として総合的に推進していきます。

○公共用水域の水質汚濁の状況及び汚濁負荷量の削減状況を正確に把握し、有効適切な対策を講ずるため、河川及び海域の水質の監視測定、指定地域内事業場に対する立入検査の実施及び汚濁負荷量の把握等、効果的な監視体制の整備を図ります。

 

○人の健康への悪影響を防止するため、地下水の汚濁について計画的な監視を実施するとともに、効果的な監視体制の整備を図ります。

○地下水の汚濁や土壌の汚染は、それが一旦起こるとその回復には長期の時間や多額の費用が必要となるため、有害物質の管理の強化や有害物質を含む水が地下に浸透しないよう、その未然防止について指導を強化します。

○有害物質を取り扱った工場等の跡地の所有者等に対し、土壌汚染の調査を行うよう指導します。

○地下水の汚濁や土壌の汚染が発見された地区については、原因者や土地所有者等に対し法的措置を含め適切な浄化対策等を指導します。

○土壌汚染を拡散させないため、大規模の土壌の掘削にあたっては土壌調査を行い、汚染が認められる土壌がある場合は、適切な管理が行われるよう指導します。

 

第3節 環境汚染物質対策の推進

 

【目 標】

 有害な環境汚染物質の管理を徹底し、安全・安心な環境を確保します

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○環境への負荷の少ない製品やサービスを選択する「グリーン購入」の考え方に基づいたとりくみを進め、日常生活の中での環境負荷の低減に努めます。

 

 [事業者]

○製品の製造工程等での有害物質の使用量の削減に努め、発生する副生物は工程内で再利用し、製品等となって市場に出る場合には確実に回収されるような循環システムの構築を図ります。

○その性質等により循環利用できない物質については、周辺環境への影響を及ぼさないように適切な処理施設において無害化処理等を徹底します。

○有害物質を使用しない製品づくり、発生させない製造工程の普及を推進するとともに、有害物質を含む製品等の回収に努めます。

 

 [行政]

○有害化学物質の対策として、従来の規制的手段に加えて、情報の公開・共有化による情報政策手段を導入します。

○特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)*70の的確な運用を図り、事業者の化学物質に対する自主管理体制の改善を促進することとし、各地域ごとの排出状況を公表するとともに、化学物質に関する環境情報の公開・共有化を進め、事業者と県民などとの環境リスクコミュニケーション*71の形成を図ります。

○化学物質の生活環境への影響を最小限に止めつつ、これまでに排出され、環境中に蓄積あるいは施設等で保管されている有害物質(PCB等)についても、計画的にその無害化処理等を行っていきます。

○ダイオキシン類や外因性内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)*72等の有害化学物質について、的確な環境モニタリング(監視)により、環境濃度の監視を行います。

○有害化学物質について環境リスク評価の知見を集積し、排出抑制対策を的確に推進していきます。

○化学物質の開発や製品開発などの計画段階からのライフサイクル・アセスメント*73が実施されるよう図ります。

○建材や家具、塗料に用いられるホルムアルデヒド*74やVOC*75等健康に有害な化学物質に関する住宅診断を実施するなど、シックハウス対策に取り組みます。

○有害化学物質に関する事故時等の緊急時の対策として、「兵庫県地域防災計画」に基づき、通報・連絡体制の整備、汚染拡大防止措置に関する情報収集と情報提供、環境モニタリング(監視)体制の整備など総合的なシステム構築をめざします。

 

第4節 資源循環システムの構築

 

【目 標】

  持続可能な循環型社会を実現するため、県民等による5R*76生活を実践するとともに、「つくる」から「つかう」システムの構築などを通して、事業活動のあり方を循環型に変えていきます

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○買い物袋の持参や過剰包装の辞退等、ごみの発生抑制に努めます。

○リターナブル(再生利用できる)容器の利用や、自分が使わなくなった品物を他人に譲る等、容器や商品を繰り返し使うようにします。

○家具や電化製品等が壊れても、修理できる場合は修理して、大事に長く使うようにします。

○家庭ごみの約半分(重量比)を占める生ごみについては、出来るだけ生ごみを出さない調理法に努めるほか、コンポスター等の活用による減量を行います。

○市町等の定める分別基準に従い、分別排出を徹底します。

○スーパーマーケット等での店頭回収、地域や学校における集団回収に積極的な参加・協力していきます。

○再生原料を使用した製品や環境への負荷の少ない商品を選択するグリーン購入に取り組みます。

○建造物の解体にあたっては、分別解体に伴う適切な費用を負担します。

○行政機関に協力して、不法投棄の未然防止や早期発見に努めます。

 

 [事業者]

○リサイクル等により廃棄物の減量化を進めるほか、排出事業者として、その廃棄物の最終処分に至るまでの確認を徹底し、説明責任を果たすよう努めます。

○リサイクルや再使用を前提とした製品など環境への負荷の少ない製品の開発、製造、流通、販売を促進します。

○製品出荷や販売にあたっては、過剰な包装、過剰な梱包を見直し、包装材料の減量化を図るとともに、その再使用、再生利用に努めます。

○事業所内での再生品の利用、分別箱の設置、オフィス町内会方式*77による古紙回収の実施など事業所内の資源回収システムの確立に努めます。

○古紙回収などのリサイクル活動やグリーン購入を積極的に推進します。

○建造物の解体にあたっては、分別解体に努めます。

 

 [行政]

○廃棄物の減量化目標値等を盛り込んだ「兵庫県廃棄物処理計画」を策定し、市町、県民、事業者等と連携して、廃棄物の減量化及び適正処理のための総合的なとりくみを進めます。

○製造者に対して、資源投入量あたりの生産性を高めることや環境負荷を抑えリサイクル設計がなされた製品の開発と普及を図ることなど環境効率の追求を図るよう求めていきます。

○「つくる」ことだけではなく「つかう」という視点も重視して、それぞれのものが持つ本来の機能を発揮させるため新たなシステムの構築等を検討していきます。

○モノからサービスへの転換、すなわち、製造者は製品を売るのではなく機能を売るという業態への転換などを求めていきます。

○事業者の規模も小さく市場も未発達な静脈産業*78の育成を行うとともに、動脈産業*79と静脈産業の統合・一体化(例:家電リサイクル)等を推進します。また、廃棄物処理施設やリサイクル施設等の静脈産業施設の整備促進を図っていきます。

○消費者に対して、大量の物を所有し消費することが豊かであるという考え方を見直し、ごみとなりやすい物はできるだけ買わない、再利用可能な商品を購入するなど、リサイクルに配慮したライフスタイルに改めることを求めていきます。

○消費段階(事業者の消費行動も含む)での再生製品の利用拡大を図るため、環境負荷ができるだけ小さいものを優先して購入するグリーン購入*80運動を拡大していきます。

○家庭からの廃棄物の発生抑制を図るため、県下全体のとりくみとして、ごみ処理手数料の従量料金制を推進します。

○使用済み製品の再利用、再資源化を効率的に推進するために、廃棄物等*81の排出行為に対して負担を課す環境税*82等を検討していきます。

○容器包装リサイクル法の効果を見極めつつ、デポジット制度の導入について検討を進めます。

○製造事業者等に対して、構造や素材の工夫をしなければリサイクル・適正処理が困難となる製品や廃棄されると生活環境に及ぼす影響の大きい製品等について、積極的に拡大生産者責任*83に基づくとりくみを求めていきます。

○販売事業者に対して、過剰包装やレジ袋の自粛、はかり売り等の奨励、詰め替え製品やリサイクル製品の積極的販売等、循環型社会の実現のためのとりくみを求めていきます。

○建設リサイクル法によるとりくみの推進を図るため、特定建設資材廃棄物(コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、木材)については、平成17年度までに最終処分する量をゼロにしていきます。

 

○廃棄物処理法による一般廃棄物*84、産業廃棄物*85という区分は、その排出源に着目してなされていますが、排出源ではなく、使用済み製品等の特性に応じた区分を行い、市町と事業者の処理責任のあり方の見直しを求めていきます。

○市町においては、住民に対するごみの分別方法やリサイクル業者に係る情報の提供に努めます。

○事業者の技術選択の幅が広いリサイクル施設にあっては、厳格な構造基準をあてはめるのではなく、事後的な監視を強化する方向で見直しを求めていきます。

○施設立地に係る法令を総合的に見直し、施設立地手続きの円滑化を図るととともに、他法令による手続きが必要な場合でも、行政側の窓口を一本化する等の手続きの簡素化を検討していきます。

○行政だけではなく地元住民等とも一体となった監視体制を構築し、不法投棄等の早期発見と早期の対策を行うためのシステムの整備を図るとともに、司法当局との連携により速やかに対応するなど、不適正処理に対して厳正に対処していきます。

 

○環境問題に配慮し、住宅のライフサイクルコストを低減するため、ライフステージに応じた可変性を有したスケルトン・インフィル(躯体・住戸分離)方式*86による長期耐用の住宅の普及を図っていきます。

○省エネルギー、リサイクル、環境との共生を重視する環境に配慮したライフスタイルを実現するため、環境共生住宅のための施策を推進します。

 

第2章 自然環境の保全と美しい環境の創造

     (ひょうごの森・川・海再生プラン*87の推進)

 

 古来、人類は自然の中で生き、自然の森や川、そして海から大きな恵みを得てきました。そして、自然はそこに生きる人々の暮らしと一体となり、地域色豊かな暮らしと文化を醸成し、ふるさとを形づくってきました。

 しかしながら、高度経済成長期以降、人々と自然との接点が失われる中で、森では放置林が生まれ、川では流域の風景が一変し、海では藻場や干潟などが急速に失われました。

 そうした反省に立ち、土地の利用に際して自然との共生を図るとともに、過度な利用により荒廃しつつある自然の回復や開発等により失われる自然の復元、都市部における自然性の向上等を進め、豊かで多様な自然環境を、健全な水循環の確保に留意しつつ、県民の共有財産として保全し、また、文化財や歴史的まちなみなどの保全・継承を進め、ゆとりと潤いのある美しい環境を創造していきます。

 

第1節 自然環境の保全

 

□多様な生き物と共生する自然豊かな環境の創造

 

【目 標】

 里山やため池など多様な生き物と共生できる自然豊かな環境を整備します

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○生活に伴う活動によって、自然環境や生態系を傷つけないように努めるとともに、環境創造活動に積極的に参画します。

○人間も生態系の一部であることを認識し、豊かな自然環境を守り、育てていくとともに、豊かな心や健康を育むものとして活用していきます。

○野生の動植物は自然地での生息・生育が基本であり、むやみに野生動植物の生息・生育地に立ち入ったり、捕獲・採集をしません。

○アウトドア(野外)活動でのごみ等の持ち帰りを実践するなど自然に負荷をかけないよう努めます。

 

 [事業者]

○事業活動に伴って、自然環境や生態系を傷つけないように努めるとともに、環境創造活動に積極的に参画します。

 

 [行政]

○「兵庫ビオトープ*88・プラン」や地域版ビオトープ地図・プランにおける野生生物の生息空間の保全等に関する方針に基づいて、その具体化を、市町や自然系民間団体などと協力しながら推進します。また、野生生物の生息空間の保全・回復等の手法の確立に努めます。

○豊かな自然環境の保全を進めるとともに、本県の自然を代表する里山、ため池の保全・整備を行い、都市部では緑地や良好な景観の創造に努めます。

○わずかに残された生物多様性の高い環境を保全し、地域生態系の回廊化をめざし、周辺の生息環境の復元を進めます。

○「兵庫県版レッドデータブック」でA・B・Cランクとして評価される野生生物、植物群落、地形地質などを、ランクに応じてとるべき対策を方向づけるなどして積極的に保全します。また、継続的なモニタリング(監視)を実施し、貴重性の評価を定期的に見直します。

○生態系の変化に応じて、自然環境保全地域などの地域指定や重要な土地の公有化などによる保全対策を行います。

○学校、公園などに昆虫や小動物の生息域となる水辺や樹林などを増やします。また、公園や街路樹の緑を増やし、地域生態系のネットワークをつくります。

○中長期的視点に立って、人と野生動物と森林等自然環境の調和的共存をめざし、生息地管理・個体数管理・被害管理を総合的、計画的、科学的に推進する「ワイルドライフ・マネジメント」を進めます。

○国外あるいは地域外から人為的に持ち込まれた移入種(外来種)については、補食や生息場の占奪などにより在来種を圧迫するなどして生態系を乱すおそれがあり、それに対するとりくみを検討します。

○鳥獣保護区や休猟区の設定などにより、野生鳥獣の保護増殖を図ります。

○渡り鳥や海亀をはじめとする野生生物の生息地の保全に努めます。

○県民、事業者に、野生生物と人間との共存のあり方について理解を深めてもらえるよう、情報提供等を進めます。

○地域の特性に応じ、多様な生物の生息環境に配慮した自然の豊かさを感じる水辺空間づくりをめざします。

○沿岸域における藻場や干潟等は、海洋環境の中でも特に生物多様性に富むことから、残されたものについては今後滅失させないこととするとともに、積極的な回復・創造を行います。

○県民、事業者に働きかけて各主体の参加による自然環境の保全・創造を図ります。

○県内の貴重な自然などを守るために、広く国民、県民に呼びかけ、資金、労働力などの提供を組織していく方法を検討し、その実現をめざします。

 

□人と自然とのふれあいの機会と場の拡充

 

【目 標】

 自然公園などにおける人と自然とのふれあいの機会と場を拡充します

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○自然公園の管理運営について積極的に参画します。

○自然保護活動や自然観察会などに積極的に参加し、自然への理解を深めていきます。

 

 [行政]

○重要な自然とのふれあいの場である自然公園については、公園計画見直しの段階で、区域の拡張や風景・動植物保護の強化並びに公園美化等適正利用を推進する方策を検討します。

○自然公園においては、自然体験や自然学習のための施設整備や動植物の保護増殖等の事業を進めるとともに、地域住民等県民が参画、協働する管理運営体制を適切に整備します。また、状況に応じて利用者数の制限や利用者に保護への配慮を求めるなど、自然の持つ利用容量を見定めつつ利用条件を整えます。

○自然公園等豊かな自然環境を有する地域においては、自然環境を破壊することなく、自然を体験し、自然についての理解を深めるため、エコツーリズム*89を推進することとし、自然ガイドの育成・確保、活動プログラムの充実、活動及び情報拠点等の施設の整備等を進めます。

○自然とのふれあいの確保の観点から、都市と農山漁村の交流の一環として農山漁村地域における滞在型の余暇活動(グリーンツーリズム)等を進めます。

○自然観察会の開催、自然体験活動プログラムの実施、野外教育等を通じ、自然とふれあう機会を提供します。

○水辺の魅力と快適さを活かした水辺空間の整備や都市公園の整備を行い、また、都市部においてはさらに河川緑地の保全や新たな緑の保全と創造を進め、沿岸域においては砂浜や干潟等の保全や回復・創造を行い、人と自然のふれあいの機会と場を拡充します。

 

第2節 美しい環境の創造

 

□優れた環境資産の保全と継承

 

【目 標】

  森林や農地、藻場・干潟、そして文化財や歴史的まちなみといった優れた環境を保全しつつ、次の世代へ継承していきます

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○健全な水循環の確保という視点からも森林や農地、藻場・干潟などの持つ役割を認識し、その保全と育成に協力するとともに、里山や鎮守の森といった身近な緑や歴史的まちなみ、そして景観を大切にしていきます。

○森林の多面的機能の維持・増進に向け、都市住民も含めた幅広い参加と交流のもと、里山林整備をはじめとする森林の保全・整備活動を積極的に推進します。

○文化財や歴史的まちなみなどの保全に理解を深め、郷土に対する誇りと愛着を育てます。

 

 [事業者]

○森林の多面的機能の維持・増進に向け、都市住民も含めた幅広い参加と交流のもと、里山林整備をはじめとする森林の保全・整備活動を積極的に推進します。

 

 [行政]

○国土の保全、水源のかん養、水質の浄化、大気や生物相の保全といった機能を持つ森林、農地等を貴重な地域資源として位置づけ、県民総参加による多面的な機能の維持・保全に向けたとりくみを進めます。

○森林について、多面的機能の高度発揮をめざして、間伐推進をはじめ除伐や枝打ちなど、保育を計画的・積極的に進め、適正な森林管理に努めます。

○適正な森林管理に向け、国際機関の森林管理協議会(FSC)による認証取得や森林維持管理活動を行った県民への認定証交付など、多様な施策を検討します。

○里山林とその周辺の居住域や農地などを一体的な里地環境として捉えて、地域住民の主体的な参加のもと、居住環境整備や地域活性化、観光促進、地域アメニティ*90の向上など多様な目的を持った整備を進めます。

○二酸化炭素の吸収・固定による地球環境保全、多様な生物の生息域、ふるさとと感じる風景、自然にふれあうレクリエーションやリラクゼーションの場など、里山林の持つ新たな意味や役割を掲げて、住民参加による里山環境整備を進めます。

○「兵庫県版レッドデータブック」や「兵庫ビオトープ・プラン」を踏まえながら、「里山林整備事業」、「自然活用型野外CSR事業」のほか、保安林の指定などを進め、多様な生き物とふれあえる里山林の保全・回復を進めます。

○放置されている里山林を環境林、文化林として新たに整備します。

○森林の整備と良質材生産を進めるため、多様な県産木材利用を推進し、公共施設の木造・木質化及び公園・土木工事等での利用を推進します。

 

○本県の風土的特徴であるため池について、個々のため池の特性に対応した整備を進めます。また、全国のモデルとなるよう自然にふれられる快適なため池や気軽に水に親しめるため池等をテーマに、整備・保全、利活用を進めます。

○中山間地域等直接支払制度を積極的に活用して、農地の維持・保全に努めます。また、すでに実施している棚田ボランティア等による保全活動をより発展させた、県民参加活動のとりくみを推進します。

 

○河川流域における水辺空間の連続性と変化に富む特性を重視し、身近に自然や多様な生物生息空間を保全し、創造していきます。

○親水空間の保全と創造を図るため、防災面、コミュニティ面に配慮しつつ、水辺と人との豊かな共生をめざし、親水公園、親水護岸等の事業を計画的に推進します。

○水と緑の空間としての河川と古くからの流域に刻まれた歴史、民俗等を保全するとともに、流域における新たな水文化の創造をめざします。

 

○「安全な海岸づくり」「美しい海岸づくり」「いきいきした海岸づくり」を基本目標に、安全な都市・生活基盤づくりに資する海岸防護のさらなる推進と「白砂青松海岸」に代表される海岸防護と、環境と利用が調和・融合した海岸づくりに努めていきます。

○海岸の持つ多面的機能が県民に理解され、海岸自然環境の維持・保全が適正に評価されるよう、新たなセンター機能等の整備を検討するとともに、水産試験場漁場研修館などでの情報提供や水産教室などの普及活動を展開します。

○藻場・干潟等の造成、海水浄化機能や藻場育成等に配慮した工法の開発と実施、底質改善・海水交換の促進、護岸構造の改善等により、環境を回復・創出します。

○海浜等の利用者に対してごみの持ち帰りの啓発を強化するとともに、地域住民やボランティア等の協力を得て、海浜地の美化対策を一層推進します。

 

○県民が暮らしの中で密接に関わりを持ち慣れ親しんでいる山、川、森、ランドマーク*91となっている建物や構造物、地域の伝統産業、祭りや生活様式等を、現世代から未来への贈り物と位置付け、その保全を図ります。

 

□さわやかな緑の創造の推進

 

【目 標】

 さわやかな緑の創造を通して、ゆとりと潤いのある美しい環境の保全と創造に努めます

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○自らの庭先の緑化や生け垣づくりなどに努め、また通りや地域単位でまとまって緑化を推進します。

○自治会や緑化グループ等による民有地や団地の共有地、道路の沿道等の公共的空間の緑化活動等を進めます。

 

 [事業者]

○工場・事業所は地域社会の一員であり、そこで創出・保全される緑は地域の公共財でもあることから、積極的に緑化に努めます。

 

 [行政]

○「確保を超えて創造へ」の推進コンセプトを基調に、県民、事業者、民間団体、行政等の参画と協働による緑化を推進します。

○自然の回復・復元・創造のためのリクラメーション(荒廃地の再生)等の新たな手法を先導的に導入していきます。また、二酸化炭素の吸収源の確保を図るため、森林等の保全・創出を進めます。

○生態系を担保する緑のパッチ(まとまり)やコリドー(回廊)、都市のヒートアイランド現象*92を和らげるためのくさび状の緑のつながりといった、点から線へ、そして面的広がりへの、緑のネットワークをめざします。

○地域住民と一体となった緑化運動を全県に広げて、県民による県民のための緑化運動を展開するなど、緑豊かな環境こそ文化であるとの認識のもと、県民参加、県民主体により“文化としての緑”を創造していくためのしくみづくりを推進します。

○身近な緑化を進めるとともに、水と緑の潤いある環境づくりのために、河川やため池、水路、海岸や港湾などについて、生態系や景観、親水性などに配慮した水辺空間の整備を必要に応じて県民参加により推進します。

○地域の緑の現状を知るといった活動などを通して、県民の緑化活動への参加を促進する新たなシステムづくりを推進します。

○県民や事業者に対して、自らが管理する庭や工場などの緑を自発的・積極的に増やすよう市町等を通じ働きかけます。

○都市地域においては、やすらぎと潤いにあふれた快適で安全な緑の形成に向け、生垣づくりやベランダの緑化、屋上の緑化、駐車場の緑化などを促進していきます。

○緑化可能地が限られた都市部における総合的な緑化を進めていく観点から、条例に基づく敷地や屋上等の緑化を適切に指導していきます。

○都市地域においては、「植樹植林運動」などのとりくみを広げて、県民参加により空き地に緑を植えるよう働きかけます。

○県民に身近な都市公園などの公園や緑地には、花の咲く木や実の生る木など多様な緑を植えます。

○「淡路花博」の「人と自然のコミュニケーション」というテーマを継承・発展させ、緑豊かな地域環境の保全と創造に取り組んでいきます。

○各地域で展開される「21世紀の兵庫の森づくり記念植樹事業」を継承・発展させ、瀬戸内海の環境保全創造とも連動した「環境の世紀」にふさわしい森づくりを瀬戸内海沿岸の遊休地等を活用して推進します。

 

□健全な水循環の確保

 

【目 標】

 自然の水循環の持つ恩恵を最大限享受できる新しい水循環のしくみを構築します

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○家庭での節水に努めるとともに、住宅の雨水貯水槽、浸透ますの設置などにより、雨水の樹木散水・洗車への有効利用や地下水涵養に努めます。

 

 [事業者]

○節水の工夫や雨水利用施設の導入等により、工場や事業所等での水利用の適正化や水資源の有効活用に努めます。

○敷地内の緑地化、雨水浸透ますの設置などにより地下水涵養に努めます。

 

 [行政]

○環境保全上健全な水循環の目標像について、それぞれの流域の特性を踏まえて、高度経済成長始動時の1960年頃の水循環を参考に設定します。

○目標像の設定にあたっては、住民、事業者、行政等からなる流域協議会を設置し、各主体の意見を積極的に取り入れます。とりくみ・施策の実施に当たっては、流域における各主体の協力により進めます。

○流域については、環境保全上健全な水循環が保たれることが必要であり、水源涵養に有効な森林・緑地、農地等の保全、多自然型川づくり、ため池や水路構造への配慮等について、県民の理解を深めつつ、流域の特性に応じて、上下流の協力などにより総合的に取り組んでいきます。

○流域全体について、各用水の使用の合理化、利水配分の最適化等を進めます。

○森林においては、その水源涵養機能を維持、向上するため、森林の公益的な機能を評価して、その保全、育成や適切な管理を図ります。

○農村・都市郊外部においては、川の流れの保全や回復(流量維持)と、流域の貯留浸透・涵養能力の保全・向上を図ります。このため、水源涵養能力の高い水田、畑の保全等を進めます。

○都市部においては、可能な限り自然の水循環の恩恵を増加させる方向で関連施策の展開を図ります。このため、開発区域と原状保全区域を混在させた都市計画等について幅広な検討、下水の高度処理水等の河川還元、地下水使用の合理化、道路等の透水性の向上等を進めます。

○沿岸域においては、自然海岸、藻場、干潟等の保全とともに、必要に応じ、海浜、藻場、干潟等を造成します。残された自然環境の保全、悪化した環境や失われた環境の修復・回復、さらに積極的な環境型利用への転換等のとりくみを、流域と一体として総合的に推進していきます。

 

□優れた景観の保全と創造

 

【目 標】

 人々が誇りに思う美しい景観をつくります

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○自然風土や歴史・文化の保全・活用の視点から、自分たちのまちの景観の保全に努めます。

 

 [事業者]

○開発事業等にあたっては、造成工事等による緑の改変を極力抑制し、緑地の残存に努めるとともに、やむを得ない改変に際しても緑地回復等により地域景観の保全に努めます。

○建物や屋外広告を建築、設置する場合は、地域特性を考慮しながら周辺の景観に配慮していきます。

 

 [行政]

○地域ごとの自然風土や歴史・文化の保全・活用の視点を含めて、県内各市町が実施する景観の形成等に関する施策の支援などを行います。

○都市部では、地域住民、事業者の理解のもと、建築物の誘導、緑化による潤いある景観づくり、電線類の地中化、屋外広告物や自動販売機などの適正化などを進めます。また、農山漁村部では、自然と一体となった地域景観の特徴や価値(大切さ)について、県民、事業者と一緒に理解を進めます。

○景観形成地区及び風景形成地域を指定し、当該地区又は地域の特性に応じた基準を定めて優れた景観を創造・保全するとともに、これらを景観形成の拠点として、景観づくりの考え方や方法を順次県内全域に拡大していきます。

 

○土取場等について、周辺の風景と調和した緑化・復元を指導していきます。

○沿岸域については、残された砂浜、磯、干潟等の自然地形は今後滅失させないこととして保全します。また、環境が悪化している箇所において、養浜や緑化等による回復・創出を進めます。

○海域における放置艇は、景観の悪化をはじめ公共施設の私物化、ごみの不法投棄等の問題を引き起こしており、放置艇の適正な収容及び周辺環境の改善を図ります。

 

□環境に配慮した地域づくり

 

【目 標】

 自然のシステムにかなった県土利用を図るとともに、環境創造を先導するまちづくり*93を進めます

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○環境創造を先導するまちづくりに積極的に参画するとともに、行政等と協働していきます。

 

 [事業者]

○土地の改変等の開発を行う場合は、対象地域や周辺地域の自然環境や生態系、周辺の景観等に配慮します。

 

 [行政]

○自然と共生する持続可能な県土利用の観点から、水など自然の健全な物質循環の維持、都市的土地利用に当たっての自然環境への配慮、生物の多様性が確保された自然の保全・創出とその連携等を図ることにより、自然のシステムにかなった県土利用を進めていきます。

○ゆとりと潤いのある県土利用の観点から、土地利用の高度化等によるゆとりある都市環境の形成、農山漁村における緑資源の確保、歴史的風土の保全、地域の自然的・社会的条件等を踏まえた個性ある景観の形成などを進めるとともに、県民の余暇志向や自然とのふれあい志向へ適切に対応していきます。

○地域の県民、事業者、行政等あらゆる主体の参画と協働のもと、残された自然環境の保全、悪化した環境の修復や失われた環境の回復、さらには河川流域でのとりくみや21世紀の森づくり等の積極的な環境創造を総合的なとりくみとして行います。

 

○都市計画などを通じて、県民がマイカーに依存する度合いを減らすため、自転車道や公共交通機関の拡充、LRT(高性能化した2次世代型の路面電車システム)の導入、長寿命・断熱・ソーラーの導入などを徹底した環境共生型建築物の建設、さらには職住近接型・買物等利便型などの“人間サイズのまちづくり*94”、“環境にやさしいまちづくり”を進めます。

○“人間サイズのまちづくり”の一環として、地域冷暖房の導入、パーク・アンド・ライド*95施設の整備、公共交通機関の整備、都市緑化等、環境に配慮したモデル的なまちづくりを推進します。

○市街地での水と緑と土と風などを確保し、落葉樹の植栽などにより日照をコントロールするための整備を進めて、ヒートアイランド現象*96の解消をめざします。

 

○道路、河川、公園等の社会資本の整備については、環境への影響について適切な配慮がなされるよう策定した「環境配慮指針」に基づき、資源・エネルギーの有効活用、騒音・振動の低減、歴史的・文化的遺産への配慮、貴重な動植物の保全や生態系への配慮等を行い、ゆとりと潤いのある美しいまちづくりを進めます。

○公共施設をはじめとして、建造物の長寿命化や再生可能建材の使用促進に努めます。また、建設廃棄物のリサイクルを促進するため、建造物について、将来の解体を容易にする工法の開発や解体による建設廃棄物の再資源化施設の設置促進に努めます。

○都市での資源やエネルギーの利用効率を向上させるとともに、都市において、できるだけ化石エネルギーの使用から脱却し、再生可能なクリーンエネルギーの使用を増やします。

○産業間での不要物(使用済製品を含む)・廃エネルギーの再利用システムを整え、資源循環ネットワークづくりやゼロエミッション産業団地づくりなどを進めます。

○都市近郊に環境に配慮した畜産基地を整備し、食品工場からの食料品の残さ等の飼料化などを促進します。

○有機性の廃棄物を肥料・土壌改良材などとして再生利用を促進します。

○作物残さ等の堆肥化による資源の循環と土づくり等をめざす滞在型市民農園などの整備を推進します。

○新しい考え方であるサスティナブル・タウン(ビレッジ)*97について研究し、本県における実現可能性を検討します。

 

第3章 地球環境問題への対応

 

 地球温暖化、酸性雨、オゾン層の破壊等の地球環境問題は、近年、国際的なとりくみが進みつつあるものの、ますます深刻の度合いを増しており、将来世代の生存に対する影響も懸念されています。

 これらの問題は、事業活動だけでなく、県民一人ひとりの行動が深く関わっており、地球レベル考えるとともに地域レベルで行動することが重要です。

 このため、参画と協働により、資源・エネルギーの循環的・効率的な利用やグリーンエネルギーの導入を図り、地域における地球環境保全へのとりくみを進めます。

 また、本県の環境の保全と創造に関する豊富な経験と優れた技術の蓄積を生かし、積極的に国際協力や国際交流を行うことにより、地球環境の保全に貢献していきます。

 

第1節 地球温暖化防止対策の促進

【目 標】

 2010年度の温室効果ガス総排出量を1990年度に比べ6%削減します

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○エネルギー消費効率の高い機器を使用することにより、電力消費量を削減します。

○家電製品の使用時間の制限や冷暖房の設定温度の適正化等を通して日常生活における省エネを徹底します。

○ごみの減量化やリサイクルの徹底に努めます。

○家具等は木質系のものを利用し、長く使うとともに、住宅建材にはできるだけ木材を利用します。

○環境家計簿をつけ、家庭からの温室効果ガスの排出量を把握することにより、とりくみの効果を再確認し、日常生活での排出削減に努めます。

○国や県・市町が実施する地球温暖化防止のための施策に積極的に協力します。

○住宅の建築にあたっては、断熱構造や通気性、採光等に配慮します。また、太陽光発電等の新エネルギーの活用に努めます。

○温暖化防止モデル地域の設定を進め、家庭などでの省エネ診断を行い、地域ぐるみで省エネルギーを進めます。

 

 [事業者]

○創意工夫をこらし、事業内容に照らして適切で効果的・効率的な排出抑制対策を、経団連の業種別自主行動計画を踏まえ、計画的に進めます。

○工場などにおいて、エネルギー管理の徹底や省エネ化を通して、製造工程等におけるエネルギー使用の合理化を図ります。

○パソコン、コピー機や照明器具などについて、エネルギー消費効率の高い機器を使用することにより、電力消費量を削減します。

○焼却施設等における燃焼改善等により一酸化二窒素の排出抑制に努めます。

○国や県・市町が実施する地球温暖化防止のための施策に積極的に協力します。

○工場や事業所等の建設にあたっては、断熱構造や通気性、採光等に配慮するとともに、新エネルギーの活用に努めます。

○温室効果ガスの削減に有効な技術対策の導入を進めます。

○製品の温室効果ガスに関するライフサイクル・アセスメント情報を公表します。

 

 [行政]

○京都議定書*98の趣旨を踏まえ、地球温暖化防止に関して地域からのとりくみを先行的に進めるため、「新兵庫県地球温暖化防止推進計画」に基づき、県民、事業者、行政の自主的な活動をステップアップ方式により誘導していきます。

○民間事業者等が主体となって行うCDM(クリーン開発メカニズム)事業を支援するため、事業化の可能性やあり方について検討します。

○県民、事業者、行政の温暖化防止のとりくみを推進するため、県民、事業者、行政で構成する「兵庫県地球温暖化対策推進本部」を設置するとともに、「兵庫県地球温暖化防止活動推進センター」を核とし、「地球温暖化防止活動推進員」や「同推進協力員」と連携した、きめ細かな普及啓発、情報提供や各種助成等の支援を行います。

○パートナーシップによる地球温暖化防止活動を推進するため、住民団体、事業者団体、環境NGO等の活動団体との連携を進めるほか、アイドリング・ストップ運動等の県民運動を推進します。

○一般廃棄物や産業廃棄物の減量化及びリサイクルの推進により廃棄物からの温室効果ガス排出抑制対策を推進します。

○二酸化炭素吸収源として有効な森林等の緑について、緑地保全地区等保存地域の拡大、地域に応じた植林を含む森林整備の促進、公園緑地の整備や都市緑化の推進及び県民運動の支援、21世紀の森づくり構想の推進等により、県民や事業者と連携してその保全・創造に積極的に取り組みます。

○建築物の木造化、木質化、県産木材の有効利用を促進するほか、木製品の長期的利用を進めるため、暮らしの中に木材を取り入れる運動を展開するとともに、「ひょうごウッディビジネスパーク構想*99」の具体化を図り、木材資源の有効活用を推進します。

○その他の温室効果ガス対策として、メタンについては、廃棄物処理適正化、畜産技術の高度化及びほ場管理の改善等、一酸化二窒素については、焼却施設等の適正管理及び施肥管理等農業技術の高度化等、代替フロン等については、フロン回収・破壊法等による冷媒フロン回収処理の推進等による削減を進めます。

○県自らも地球温暖化対策実行計画を策定し、事業者の一員として温室効果ガスの排出削減に取り組みます。

 

第2節 オゾン層保護対策の推進

 

【目 標】

 フロン回収を促進するなどオゾン層保護対策を進めます

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]
○フロンなどオゾン層破壊物質を用いた機器を廃棄する時は適切にフロンを回収・処理するとともに、オゾン層破壊物質を使わない製品を使うよう努めます。

 

 [事業者]

○フロンなどオゾン層破壊物質を用いた機器を廃棄する時は適切にフロンを回収・処理するとともに、オゾン層破壊物質を使わない機器や技術を使うよう努めます。

 

 [行政]

○フロン回収破壊法及び環境条例に基づき関係事業者へ立入検査を行う等により、フロンの大気中への排出防止を徹底します。

○オゾン層破壊物質の大気中への排出量を低減するため、普及・啓発、情報収集、フロン使用機器の廃棄等の過程での回収及び的確な処理を、関係事業者、県民、行政の協力・連携のもとに進めます。

○フロン等のオゾン層破壊物質を使用しない機器や技術の採用を促進するため、代替物質や代替技術の調査・研究及びその普及や、代替施設、回収施設の設置に対する融資を進めます。

○フロンなどオゾン層破壊物質を用いた機器を廃棄する時は適切にフロンを回収・処理するとともに、オゾン層破壊物質を使わない機器や技術を使うよう努めます。

○断熱材フロン回収・処理の全国的な定着を促すため、断熱材フロン回収・処理のための法制度の確立等を国や他都道府県に働きかけます。

 

第3節 酸性雨、酸性霧対策や熱帯雨林の保全等の地球環境問題へのとりくみ

 

【目 標】

 原因物質の削減などにより酸性雨、酸性霧対策を進めるとともに、熱帯雨林の保全などの地球環境問題へのとりくみを進めます

 

【主なとりくみ・施策】

 [県民]

○国外から輸入される木材資源等の有効な使用や紙製品の節約と再生利用を図るとともに、暮らしの中に木材を積極的に取り入れるなど、循環資源である県内産木材を一層活用します。

 

 [事業者]

○国外から輸入される木材資源等の有効な使用や紙製品の節約と再生利用を図るとともに、事業活動、オフィス活動の中に木材製品を積極的に取り入れるなど、循環資源である県内産木材を一層活用します。

○酸性雨の原因物質である硫黄酸化物、窒素酸化物等の排出削減を推進します。

 

 [行政]

○自動測定装置による酸性雨等の監視や森林等植物生態系への影響等に関する調査・研究を進め、酸性雨による被害の未然防止に努めます。

○「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」との連携や中国広東省との環境技術交流等により、本県が蓄積したモニタリングや対策技術の東アジア諸国への技術移転を進めます。

○民間事業者等が主体となって植林等のCDM(クリーン開発メカニズム)*100を行う場合に技術面等から支援を行います。

 

第7部 計画の実効ある推進

 

第1節 環境に関するとりくみ・施策の総合的推進

 

 推進体制を整え、とりくみ・施策等の総合調整や計画の進捗状況の公表・評価などの確実なフォローアップを実施することにより、「新環境基本計画」の実効ある推進を図ります。

県民、事業者、民間団体等のみなさんと一緒に計画を推進します

○環境審議会において得られる助言や提言、県民からの意見を、とりくみ・施策の展開に反映させるなどして、計画の効果的な推進を図ります。

○計画の確実な推進に向けて、県民をはじめ各種推進組織のネットワーク化を進めます。

 

環境の保全と創造に関する県施策を総合的かつ戦略的に進めます

○環境適合型社会の実現のためには、施策の内容・実施方法そのものを抜本的に環境に適合したものに変革する必要があり、本計画の推進にあたっては、分野別計画とともに、教育、産業、社会基盤整備などの県政の各分野において展開される環境の保全と創造に関する施策について、総合的見地から統合・調整に努めます。

○施策及び計画の企画立案に当たってSEA(戦略的環境アセスメント*101)を行い、施策の実施妥当性の検討に際して、環境の面からの評価を行うことを検討していきます。

○環境の保全と創造に関しては、未解明な問題も多く含まれており、必要に応じ社会的実験を行うなど、実践経験を通じて新たなノウハウを開発し、社会的なコンセンサスを形成しつつ、施策を進めます。

 

 【環境適合型社会形成推進会議】

○「環境適合型社会形成推進会議」により、環境の保全と創造に関する施策の総合的かつ戦略的な推進を図ります。

○各県民局においても総合的に調整・連携できるように体制を整えます。

 【環境創生5%システム】

○公共工事の工事費のうち5%以上を環境創生措置*102に充てることにより、工事における環境に配慮したとりくみを計画的に推進します。

○実施状況については、実施部局で算出、評価を行い、各部局の取組状況を毎年2回とりまとめ、「環境適合型社会形成推進会議」へ報告します。

 

計画のフォローアップを確実に行います

○県民にわかりやすい形での情報提供に努めるとともに、客観的指標を踏まえた計画の進行管理を行います。また、総合的な説明指標である「ひょうご環境指標」の研究開発を進めます。

○県民、民間団体、事業者、県・市町等行政が一体となって、計画の評価・点検を行っていきます。

○計画のフォローアップを積極的に行うこととし、環境の状況、施策の実施状況、環境指標による計画の進捗状況等を「兵庫県環境白書」に定期的に発表します。

○計画の進捗状況について評価するとともに、計画の見直しを行うシステムを検討します。

 

〈計画の推進体制図〉

 

第2節 環境の保全と創造に関する各主体の役割

 

 環境の保全と創造に取り組んでいくためには、すべての活動主体が自らの役割を明らかにし、他の主体の役割と併せて、その関係等を認識しておくことが必要です。

 実際の事業展開においては、こうした役割の自覚のもと、各主体が責任をもって行動することが期待されます。

 

主体間の関わりのイメージ図

 

1 県民の役割

(1)個人としての役割

○人々の日常生活そのものに起因する環境問題が増加していることから、県民一人ひとりがその中心的な役割を果たすべきことを認識し、自覚と責任をもって取り組みます。

○よりよい環境の保全と創造は地域住民としての努めであることを自覚し、家庭・学校・職場・訪問地など、あらゆる場所・機会において環境をより良いものにしていく行動をとります。

○地域環境に関心を持ち、子どもたちを含めた地域の人々と連携して、その保全や創造に関するとりくみに進んで参加・協力します。

(3)国民としての役割

○地球環境問題などに関心を持つとともに、国際協力や民間団体の活動について、労力的・精神的・財政的な協力を行います。

 

2 民間団体の役割

○環境の保全と創造に関する公益的活動の主体として重要な役割を担い、自発的、積極的に取り組みます。

○県民、事業者、行政のとりくみを効率的・効果的に進めるための連携・協力に係るコーディネートを行います。

○県民の環境に関する自発的・積極的な意識を、行動につないでいきます。

○専門的な知識や技術を活かし、県民、事業者、行政の環境に関するとりくみを支援し、必要な協力・連携を行い、県民、事業者、行政のパートナーシップの形成に努めます。さらに国際的視野でのとりくみを進めます。

○環境の保全と創造に関して、責任をもって発言し、社会に影響を与えていく団体であるとの自覚をもって行動するとともに、その分野の人材を育成します。

 

3 事業者の役割

○自らの事業活動が環境の保全と創造に関して大きな影響を与えることを自覚し、この「新環境基本計画」の推進に関して、中心的な役割を果たすべきことを認識し、自覚と責任をもって取り組みます。

○事業活動に伴う公害の防止をはじめ、省エネルギー・省資源、廃棄物の減量・リサイクル及び適正処理などに進んで取り組みます。

○製品・サービスの提供に関する情報の提供などを通して行政、県民との環境コミュニケーションの確立を図り、循環型社会をともに形成していくパートナーとして協働します。

○事業所・事業者は、地域の構成員であるとの自覚を持ち、地域をはじめ国内外の環境の保全と創造に向けたとりくみに進んで参加するとともに、支援します。

 

4 兵庫県の役割

○この「新環境基本計画」で掲げる目標の実現に向けて、環境に関する施策を総合的、計画的に推進していくとともに、行政施策を環境に適合したものに変革していきます。

○県民、事業者などの環境に関するとりくみを支援・促進するため、社会的経済的しくみづくりや社会資本の整備を行います。

○県民、事業者などへの啓発や情報提供に加え、新たなとりくみ方法の提示など先導的役割を果たします。

○施策の策定段階から、県民、事業者の参画と協働のもとに作業を進めることとし、県民、事業者、行政のパートナーシップを形成します。

○県民、事業者から情報の提供を受け、施策の策定や評価に有効に活用するとともに、広く、またきめ細かく情報を提供します。

○環境の保全と創造に係る市町や団体等の活動や施策に関して、必要な支援を行うとともに、県民局単位や河川流域単位などの広域的視点からの総合調整を行います。

○県内における大規模事業者・消費者として、また地方公共団体としての責務から、県民や事業者などの模範となるよう、環境負荷の少ない事業の推進や製品の購入に率先して取り組みます。

 

5 市町の役割

○住民に最も身近な行政機関として、地域の実情に合わせた形で、この「新環境基本計画」に掲げる目標の実現に向けて、環境に関する施策を計画的に推進します。
の拡充に積極的に取り組みます。

○地域整備や開発行為については、環境に配慮した事業の展開を行います。

○住民、事業者などの環境に関するとりくみを支援し、必要な協力・連携を行います。

○地域における大規模事業者・消費者として、また地方公共団体の責務から、住民や事業者などの模範となるよう、環境負荷の少ない事業の推進や製品の購入を図り、環境に配慮した行動に率先して取り組みます。

 

第3節 分野別・地域別行動計画の策定・推進、行政活動のグリーン化の推進等

 

「ひょうご循環社会ビジョン」などの分野別計画を推進します 

○「新環境基本計画」の実効性を高め、効果的な推進を図るために、課題や分野に応じて、事業や施策を具体的に記した計画や指針をステップアップ方式で策定し、推進していきます。

 

地域別行動計画を策定・推進します

○各地域において、行政のみならず県民や事業者、民間団体などが、本計画の内容を踏まえつつ、それぞれの地域特性を考慮に入れながら、各地域ごとの行動計画をとりまとめます。

○この行動計画に基づき、県民・事業者・民間団体・行政等の参画と協働により、それぞれの地域の環境の保全と創造に、各主体が自ら取り組んでいきます。

 

阪神・淡路大震災からの復興にあたって環境への配慮を進めていきます

○平成12年11月に策定した「阪神・淡路震災復興計画後期5か年推進プログラム」に基づき、地球的視野に立った国際的な課題解決へのとりくみや21世紀につながる森づくりなどを進めるとともに、住民一人ひとりが日常の生活の中で、人と自然が共生する環境創造に取り組むためのしくみづくりを進めます。

○環境への負荷の少ないまちづくりを進めるため、自然エネルギーなどのグリーンエネルギーの開発利用・導入や資源リサイクルなどを推進します。併せて、自然と共生したゆとりあるまちづくりをめざし、住民が主体となった環境の回復・創造へのとりくみを一層推進するなど環境に配慮した循環型システムづくりを進めていきます。

 

行政活動のグリーン化を推進します

○県は、経済活動の主体として大きな位置を占めており、自らが経済活動に際して環境配慮を行うことによる環境への負荷の低減効果は大きく、また、事業者、県民の自主的・積極的な行動を求めるためにも、自ら率先したとりくみを行う必要があることから、「新環境率先行動計画(ステップ2)」を計画的に推進します。

○平成12年10月にISO14001の認証を取得した本庁舎において、環境マネジメント(環境管理)システムを推進し、環境に配慮したとりくみを進めていきます。

 

先導的事業を重点的に実施し、その成果を広く活用します

○21世紀を先導する環境の保全・回復・創造に係る事業を、リーディング事業という見地から選定し、その推進を通して、課題も含めた成果を踏まえ、先導的な目標達成手法を確立することにより、環境施策全体の効果的な展開を図ります。