第3 循環型社会システムの構築
<コラム>「5R」は資源循環型社会形成のキーワード
1 資源循環利用の促進
持続可能な循環型社会を目指して、廃棄物の発生抑制、再使用、再資源化及び適正処分に係る各種施策を推進するとともに、推進体制を整備し、県民・事業者の意識啓発を図ることにより、廃棄物の減量化・リサイクルを進め、資源の循環利用の促進を図る。
(1)ひょうご循環社会ビジョンの推進
21世紀を迎え、目指すべき循環型社会の姿を明らかにするとともに、地方からの積極的な情報発信を図るため、単なる既存事業や既存施策の枠組みにとらわれることなく、長期的な視点に立った、今後の廃棄物・リサイクル対策のあり方として、平成13年5月に「ひょうご循環社会ビジョン」を策定した。
本ビジョンでは、目指すべき社会とその実現を図るための基本的方策として、以下のことを掲げている。
ア 目指すべき社会:持続可能な循環型社会
イ 具体的な姿:
①自然生態系との共生が図られている社会
②市民の自律による安全で快適な社会
③環境と経済が調和し環境ビジネスが発展する社会
ウ 基本的方策
①廃棄物となるものの発生抑制を第一に、次いで廃棄物の再使用、
再資源化を行い、最終的に適正処分を行うという原則に基づいた
「物質循環の促進」を図ること
②事業活動や消費活動における「環境負荷の低減」を図るとともに、
それらに起因する「リスクの管理」を行うこと
③社会のすべての構成員による合意と実践により持続可能な循環型
社会を達成するために、「社会のあらゆる主体の参画と協働」を実現
すること
④持続可能な循環型社会の実現の障害となっている法制度や経済
ルールの見直しによる「新たな仕組みづくり」を推進すること
エ 重点戦略
①すべての社会活動における物質循環フローを把握する
②広域リサイクル拠点の整備を促進する
③広域的かつ公共関与による適正処理を推進する
④県民と行政の情報交流、事業者情報の自主的公開を進める
⑤ごみ処理の従量料金制の推進を図る
(2)廃棄物処理計画の策定
平成12年6月の廃棄物処理法の改正により、都道府県の区域内における一般廃棄物と産業廃棄物を併せた、廃棄物の減量その他その適正処理に関する計画を定めなければならないことになり、県では、「ひょうご循環社会ビジョン」の趣旨や国が定めた基本方針を踏まえて、平成13年度に「兵庫県廃棄物処理計画」を策定した。
同計画に定める基本方針及び計画の目標は次のとおりである。
ア 基本方針
(ア) 5Rの推進
・健全な物質循環を促進するためのシステムづくり
・個別品目毎のリサイクルの促進
・事業者の自主的な取組の推進
(イ) 適正処理の確保
・廃棄物の適正処理の確保
・公共関与による適正処理の推進
・不適正処理の未然防止と不法行為に対する厳正な対処
・PCB廃棄物の適正処理
イ 減量化の目標
計画の目標年次である平成22年度に、一般廃棄物及び産業廃棄物の最終処分量を平成9年度からほぼ半減させるという主目標に加え、排出量を抑制し、再生利用量を増加する目標を定めている。具体的な目標値は第3-1-46表、第3-1-47表のとおりである。
第3-1-46表 一般廃棄物の減量化の目標値

第3-1-47表 産業廃棄物の減量化の目標値 (単位千t/年)

(3)ひょうごエコタウン構想の推進
健全な物質循環を促進し、持続可能な循環型社会を構築していくためには、使用済み製品等の資源をリサイクルするための受け皿施設の確保が不可欠である。
このため、県の提唱により、平成12年10月に「広域リサイクル拠点整備協議会」(事務局:(財)兵庫県環境クリエイトセンター)を設置し、産学官が一体となってリサイクル拠点の事業化検討を進め、複数の事業計画が具体化してきた。(44社が9研究会に参加)
県では、これらの検討成果をもとに、既存の産業基盤等を活用した広域的な資源循環体制の構築を目指す「ひょうごエコタウン構想」を策定し、平成15年4月25日付けで、環境省及び経済産業省から「地域におけるゼロ・エミッション構想推進のためのエコタウンプラン」として承認を受けたところである。(近畿では初、全国では18番目のプラン承認)
この構想は、県内全域を対象地域とし、他地域にはない独創性・先駆性を有しており、その概要は第3-1-66図のとおりである。
今後は、この構想を推進していくため、平成15年12月5日に「ひょうごエコタウン推進会議」(事務局:(財)兵庫県環境クリエイトセンター)を設立し、リサイクルの事業化支援や産学官の協力・連携による調査研究等を行うなど、循環型社会の形成に向けた取組を推進するとともに、エコタウン事業の推進を図り、環境と調和したまちづくりを創造していく。
第3-1-66図 ひょうごエコタウン構想・概念図


(4) 物質循環プログラムの作成
「ひょうご循環社会ビジョン」の目標である持続可能な循環型社会を形成するためには、その政策効果を測定し、目標とすべき指標が必要となる。この指標の策定に向けて、生産から流通、消費、再生等に至る物の流れを定量的に把握するため、平成14年度に行った物質循環フローの基礎調査を基に物質循環プログラムを作成する。
(5) 先導的容器回収システムの支援
空き缶の散乱を防止するとともに、貴重な資源の確実な改修を図るためには、使用済み容器の回収に一定の経済的インセンティブを与えるデポジット制度が有効である。
このため、平成14年度に実施した兵庫型デポジットパイロット事業の結果を踏まえ、先導的かつ主体的な取り組みを進める事業者の活動を支援するため、県と連携しながら取り組みを推進する市町に対して技術的・財政的支援を行う。
(6)減量化・資源化の推進
「環境の保全と創造に関する条例」(平成7年兵庫県条例第28号)に基づき、県民・事業者・行政の参画と協働による廃棄物の減量化・資源化に取り組んでいる。
ア 再生資源利用促進基準の適用(生産)
一定規模以上の製造業者等(大手製造業、電気業等(約80社))における再生資源の利用等を促進するため、「再生資源利用促進基準」を定めている。
イ 再生資源利用促進製品の指定(消費)
一定規模以上の事業所等における再生紙等の再生製品の利用を促進するため、「再生資源利用促進製品」として、印刷用紙等の紙製品を指定している。
ウ 回収促進製品及び回収促進区域の指定(回収)
飲料容器の回収と再資源化を促進するため、「回収促進製品」として自動販売機で販売される飲料容器を指定するとともに、「回収促進区域」を指定し、自動販売機設置業者に回収量等の帳簿記載を義務づけている。
(7)容器包装リサイクルの推進
容器包装リサイクル法は、市町が分別収集した容器包装廃棄物を、事業者の負担により再商品化し、住民、行政、事業者の三者の取組により容器包装廃棄物の効率的なリサイクルを行おうとするものである。市町・事務組合の策定する「分別収集計画」及び県の策定する「兵庫県分別収集促進計画」に基づき、それぞれの市町において取組が進められており、平成14年度は、平成15年度から19年度を計画期間とする第3期計画を策定したところである。
分別収集品目は、平成9年度にスチール缶、アルミ缶、ガラスびん(無色、茶色、その他)、紙パック及びペットボトルの7品目を対象にスタートし、平成12年度からは、段ボール、紙パック及び段ボール以外の紙製容器包装とペットボトル以外のプラスチック製容器包装の3品目が加わり、計10品目を対象としている。
平成13年度実績では、スチール缶、アルミ缶について全市町が分別収集に取り組んでおり、他の品目についても順次取組の充実が図られている。平成15年度からの第3期計画においては、さらに取組を拡大することとし、平成19年度には、無色及び茶色ガラスびんについて全市町が、ペットボトルについて87市町が取り組むこととしている。
(8)家電リサイクルの推進
平成13年4月から家電リサイクル法により、家電小売店や家電メーカー等に対し廃家電(エアコン、テレビ、冷蔵庫及び洗濯機の4品目)の回収と再商品化が義務づけられた。この法律の趣旨を踏まえ、県では、消費者の理解と協力を得ることが最も重要であるという認識に立って、兵庫県電機商業組合、家電メーカー、県下各市町及び(財)兵庫県環境クリエイトセンターと協議して、県独自の廃家電の回収・運搬システムを構築し、平成13年4月から運用を開始した。
このシステムは、運営主体を兵庫県電機商業組合とし、廃家電の引き取りル-トの販売店への一元化等により、効率化を図っている。
また、廃家電の不法投棄等があった場合には、市町、県警等との連携のもとに適切に対処することとしている。
(9)建設リサイクルの促進
建設廃棄物は、産業廃棄物全体の排出量の約2割、最終処分量の約4割を占め、さらに不法投棄の約6割を占めている。今後も建築解体廃棄物の増加が予想される一方、最終処分場の新設は困難であることから、最終処分量を削減し、使用されていた資材の再資源化に積極的に取り組むことが急務となっている。
これらの対策のため、「建設工事に係る再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)が制定され、一定規模以上の建築物やその他工作物の解体工事、新築工事等については、コンクリート、アスファルト、木材等についてこれらを現場で分別し、再資源化することが義務づけられた。(平成14年5月30日施行)
本県においては、工事の届出及び分別解体に係る事務を県土整備部が、再資源化等に係る事務を健康生活部が受け持ち、普及啓発に努めることとしており、健康生活部としては、再資源化等の実施のための助言・勧告を行うとともに、建築部局との合同パトロールも定期的に実施している。
また、平成14年4月に「建設リサイクルに関する兵庫県の実施指針」を定め、再資源化等に関する目標を設定し、関係者の役割等を示している。
(10)食品廃棄物対策
農林水産業・農山漁村及び食品製造業等から排出される食品廃棄物、水産残さ等有機性資源(バイオマス)の一元的かつ総合的な利活用を図るため、平成13年度に策定した「ひょうご食のゼロエミッション推進基本計画」に基づき、地域ぐるみのリサイクルや、食品関連事業者、処理業者及び農林漁業者等の連携によるリサイクルを推進しており、各家庭でのコンポスト化や、一部企業で先導的に肥・飼料化、エネルギー化の取組が始まっている。
2 減量化・再資源化の意識啓発
減量化・再資源化の推進については、県民一人ひとりが廃棄物の発生者責任を自覚し、そのライフスタイルを、拒絶(Refuse)、発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、修理(Repair)、再資源化(Recycle)を実践する「5R生活」に変革するよう意識啓発に努める。
(1)推進体制の整備
生産・流通・消費・回収・処理の各段階における廃棄物の減量化・資源化に取り組むため、平成3年度に学識経験者、行政及び関係事業者団体の代表で構成される「廃棄物発生量削減対策委員会」を設置していたが、平成13年度に発展・改組し、「循環型社会推進委員会」を設置している。
また、全国組織である「ごみゼロパートナーシップ会議」(平成4年設置。平成14年に改称)のもと、生産、流通、消費、再生の各界代表と関係行政機関からなる「兵庫県5R生活推進会議」、県下6ブロックに「地域別5R生活推進会議」を設置し、ごみの発生抑制、減量化・再生利用等、5R生活の実践を推進している。
第3-1-67図 5R生活推進体系

(2)意識啓発事業の実施
ア スリム・リサイクル宣言の店の指定
兵庫県5R生活推進会議では、空き容器の回収、簡易包装の実施などごみの減量化や再資源化に取り組む県下の店舗等を「ごみ減量化・再資源化推進宣言の店(通称:スリム・リサイクル宣言の店)」として指定している。
平成7年4月から募集を開始し、平成15年3月末現在1,921店舗を指定している。
イ マイ・バッグ・キャンペーンの展開
ごみゼロパートナーシップ会議の提唱により、消費者の意識啓発を図るため、平成7年度から兵庫県5R生活推進会議の事業として「マイ・バッグ・キャンペーン(買い物袋持参運動)」(重点実施期間:毎年10月)を展開している。
ウ ごみをへらすアイデアの募集
平成4年度から、県下の小学校4年生に対し「ごみをへらすアイデア」を募集し、優秀作品を表彰することにより、ごみの減量化、資源化の意識啓発を行っている。
平成15年度は、2,260件の応募があり、審査の結果、入賞35作品(入選17、佳作18)を決定し、5R生活推進県民大会において表彰した。
エ 5R生活推進県民大会の開催
廃棄物の減量化、リサイクルの推進の普及啓発を目的として、平成6年度から「ごみ減量化推進県民大会」を開催しており、平成14年度からは、「5R生活推進県民大会」として5R生活の実践を推進している。
平成15年度は、11月5日に神戸市内において、ごみをへらすアイデア優秀提案やスリム・リサイクル宣言の店優良店舗の減量化への取組の事例発表、講演会を実施した。
3 環境美化対策の推進
ごみの散乱を防止し、快適で美しいまちづくりを推進するためには、県民自らが環境美化に配慮した積極的な行動に取り組むことが必要なことから、地域別5R生活推進会議での情報交換などを通じて、市町と一体となって美化意識の啓発及び高揚に努めている。
(1)環境美化区域の指定
環境条例に基づき、公園、道路、海水浴場等公共の場所等で、特に必要があると認められる区域を昭和56年度から環境美化区域(平成14年7月末現在、22市57町で154カ所)として指定し、ポイ捨ての禁止やごみ容器の設置を義務づける等ごみの散乱防止を推進している。
(2)環境美化推進事業の実施
環境月間(6月)、環境衛生週間(9月24日~10月1日)を中心に、県、市町では、不法投棄多発箇所のパトロールや啓発活動を実施している。
また、市町においては、平成14年7月現在、14市24町において独自の環境美化条例(ポイ捨て禁止条例等)を制定し、地域ぐるみで環境美化対策に取り組んでいる。
(3)クリーンキャンペーンの推進
平成8年度から市町等との連携のもと推進協議会を設置し、県下全域で環境美化統一キャンペーン「クリーンアップひょうごキャンペーン」を展開している。キャンペーン期間はごみゼロの日(5月30日)から7月末であり、各種団体の機関誌等を活用した啓発や資材の提供により、美化活動の実施や美化意識の高揚を図っている。
なお、平成14年度は、全県で46万人以上が清掃及び啓発活動等に参加し、回収したごみの量は1,899tであった。