第1節 県立健康環境科学研究センター
(安全科学部)
第1 「兵庫県ダイオキシン類削減プログラム」に基づく各種対策の削減効果の数値的検証及び新たな施策の提言に関する研究
ダイオキシン類の排出状況や環境濃度の現状を把握し、各種削減対策の効果を確認、評価するとともに、ダイオキシン類と同様な環境リスクが懸念される有害物質を含めた調査検討を行った。
1 地域の汚染実態をより正確に把握するための調査手法の開発
昨年度までに当センターが開発し、公定法化につながることになったローボリウムエアサンプラー法を現地に適用し、引き続き地域の長期平均濃度の把握に努めた。また、これまでに現モニタリングでは測定することになっていない低塩素化ダイオキシン類や毒性係数が示されていないその他の異性体を含めた詳細なダイオキシン類を分析することによって、地域や地点による汚染原因の違いを明らかにする結果を得た。
2 ダイオキシン類濃度予測のためのシミュレーションモデルの構築
数値予測モデルを用いて地域ごとの大気中ダイオキシン濃度を計算し、環境濃度測定値と比較検証した。施設からのダイオキシン発生量は、同一施設であっても状況により数倍から数十倍の濃度の開きがみられ、このような変動がシミュレーション結果に大きな影響を与えることが判明した。
3 新規分析法の開発
大気中臭素化ビフェニルの分析法について、活性炭繊維ろ紙による捕集とろ紙からの抽出法を検討した。その結果、活性炭繊維ろ紙は、捕集剤としては良好であるが、抽出方法にさらに検討が必要である結果を得た。また、PCBの代謝物中間物である水酸化PCBやPOPs類の分析法を検討し、環境大気中の異性体分布と濃度の把握を行った。
4 県下の高濃度検出個所についての詳細調査の実施
これまでのモニタリングにおいて相対的に高い濃度が観測されている大気や河川を対象として詳細調査を実施した。大気高濃度地点については、建築物に使用されているシーラントに含まれるPCBが高濃度の原因であること、河川については、かつて使われていた農薬中の不純物が原因になっている可能性を明らかにした。
第2 生体試料によるダイオキシン類暴露モニタリング
人の母乳や野生生物などの生体内ダイオキシン類の特性を把握するために、濃度や異性体分布の特性を環境試料と比較検討した。
1 「ダイオキシン類に係る生物及び生体試料取扱いマニュアル(案)」の策定
研究に用いる生体試料の安全な取り扱い方法を確立し、ヒト試料の収集に向けた準備を進めた。
2 母乳中脂肪酸組成とダイオキシン類組成の関連性調査
母乳中脂肪酸組成とダイオキシン類の関係を統計解析し、環境中とヒト試料中のダイオキシン類異性体分布、および母乳中PCB類濃度の変動要因について検討し、ヒト生体内で比較的多く見られる異性体、すなわち代謝を受けにくい異性体の存在を確認した。
3 野生生物のモニタリング
野生生物中ダイオキシン類を分析するにあたり、野生生物の捕獲方法の検討を行うと共に、野生生物の検体収集を開始した。
第3 有害化学物質の排出・移動情報(PRTR)と環境モニタリングデータとの整合性の評価及び発生源インベントリー(目録)の整備に関する研究
平成13年度に新たに施行されたPRTR法に基づく有害物質排出状況のデータについて、これらを有効に活用し、地域の環境リスクの低減方策の策定に寄与することを目的に研究を実施した。
1 分析方法の開発
ゴムの劣化防止剤であるN-モノ(ジ)メチルフェニル-N'-モノ(ジ)メチルフェニルパラフェニレンジアミンの分析法の開発と改良、GC/MS法と並ぶ高感度機器分析法であるLC/MS法、LC/MS/MS法の検討、生態系への影響をより直接的に把握することが可能な生化学的分析手法(ELISA法)の検討などを行った。
2 大気中有害物質およびPRTR対象物質のモニタリング
公表された第1回集計結果で、県内において大気排出量の多いトルエン、N,N-ジメチルホルムアミドなど5物質を対象としてモニタリングを行い、集計値とモニタリング結果との整合性はおおむね良好であることを確認した。
3 界面活性剤および環境ホルモン物質の調査
LC/MS法による界面活性剤(陰イオン系LAS)の高感度の微量分析を確立した。これを用いて明石川水系でのLAS濃度の分布を調査し、約20年前の濃度と比較して濃度の大幅な減少を確認し、主に公共下水道の整備によることを明らかにした。
環境ホルモン物質に関して、PCB、ビスフェノールA、ノニルフェノール、フタル酸エステルについて、典型的な都市河川である左門殿川で濃度が高く、底質に含まれる有機物含量と相関が強いことを明らかにした。また、水質データとPRTRデータとは必ずしも整合がとれないことを確認し、データ集計方法に課題があることを示した。
4 河川中農薬の調査
加古川水系をモデルとして、PRTR指定化学物質26種を含む58種の農薬の調査を実施し、検出される農薬の種類は調査地点によって異なり、ゴルフ場密集地域においてゴルフ場使用農薬の検出数が顕著であることを明らかにした。とくに、PRTRの指定化学物質であるイソプロチオランなどの検出頻度が高かったことから、PRTR情報の整備が重要であることも明らかになった。
第4 廃棄物処分場等処理施設に関する信頼性の高い管理指針の策定に関する研究
廃棄物処分場等の浸出水の長期的変動や降雨時、災害時などの突発的状況等における性状や処分場の維持管理状況、処分物質との相関関係の把握、周辺環境への影響の把握をとおして、廃棄物処分場の管理指針運用上の技術課題を抽出することを目的とした。
1 蛍光X線を用いた重金属類の迅速分析
最終処分場に係る浸出水・地下水、廃棄物の溶出試験液等の重金属類分析について、迅速かつ簡便な方法として吸水性樹脂に濃縮させた試料を蛍光X線装置で分析する手法を開発した。この方法は、廃棄物の不法投棄事案や水質汚染事故等の発生における緊急事態対応に有効に活用された。
2 最終処分場に関する精密調査
安定型、管理型処分場の浸出水・周辺地下水、埋立廃棄物及び場内地中ガス等について、重金属類、揮発性有機化合物(VOC)、PCBなどの有害化学物質等の濃度を調査し、埋立廃棄物の影響、降雨の影響、安定化の状況等について考察を行った。
調査協力が得られた5処分場において雨期、乾季、中間期の年3回調査した結果、規制基準等を超過する例は見られず現在適切な管理が行われていることが確認された。同時に、埋立廃棄物の浸透水等への影響、埋立廃棄物安定化に向けた処分場内での有機成分の分解等が確認された事例もあり、処分場管理指針の策定に向けた重要な知見が得られた。
3 県下処分場調査結果に基づく評価の実施
これまで実施した県下処分場の調査結果を集計し、安定型、管理型の各処分場ごとに評価を行い、安定型については26処分場中16処分場、管理型については10処分場中9処分場では有害重金属が検出されず、適正に維持管理がなされていることを確認した。残りについては、規制基準を越えていないものの有害重金属が検出されていることから、今後の監視もしくは再調査が必要であるとの評価を行った。
(水質環境部)
第5 瀬戸内海沿岸の環境浄化能・汚濁蓄積特性の評価及び経済的環境評価に基づく環境保全・創造施策の提言に関する研究
海域の水環境は一定の改善がみられるが、依然として赤潮発生や底層酸素化が観測されており、更に良質な海域環境の創造には適切な水管理が必要である。そのため水管理方策を見出すことを目的として研究を行った。
1 干潟・砂浜・藻場・人工海岸等が生態系・水質保全に果たす役割の解明
沿岸域における干潟・砂浜・藻場等は生物活動が盛んなことに由来する有機物分解能及び窒素・燐除去能に由来する高い水質浄化能から環境保全上重要とされているが、富栄養化海域では夏季の貧酸素化等による環境悪化が引き起こす生物の激減による浄化能の喪失が懸念される。このような事態からの短期間の回復のためには、貧酸素化が発生した後、浮遊幼生の供給元となる生物種の保存場が求められる。そこで、尼崎港内人工干潟付近に設けられた筏に係留した二枚貝(アサリ)の養成器において二枚貝の養成を行った。環境悪化にもなって、人工干潟ではアサリの生残率の激減が認められたが筏係留型養成器では殻の大きさや湿重量が増加し、順調な成長が見られ、夏季にも生残率40%を維持することができた。
2 貧酸素水塊の発生機構とその未然防止対策の検討
尼崎港内に新規に造成した人工干潟において、二枚貝の生存に重要な貧酸素化の発生に伴う底質環境の変化(溶存酸素<DO>と硫化物)をモニタリングし、その結果から貧酸素化と硫化物発生の関係を検討した。造成初年度(2002年度)は、7月以降貧酸素化が見られると、硫化物の発生がみられた。2003年度については、2002年度と同様に7月から貧酸素化とともに硫化物の発生が見られ、2002年度と比較して高濃度が発生した。2003年度はさらに底質の汚染が進行しており、継続的な水質浄化およびモニタリングの必要性が示された。
3 流入河川の流域管理状況が海域の生態系に与える影響の解明
沿岸域の水質の違いを流入河川との関連を明らかにすることを目的とし、尼崎港内に造成された人工干潟において、陸域からの淡水の流入の指標となる塩分量とアサリの競合生物(ホトトギスガイ)量との関係を検討した。ホトトギスガイは、夏季に塩分量が15‰(プロミル)を下回ると、現存量が大きく減少することが知られている。2002年度の夏季は低塩分化が1日しかなかったが、2003年度には5日間あった。このことから、2002年度はホトトギスガイの密集化形成により、アサリの大量死があったが、2003年度は降水量の増加による夏季の海水の低塩分化によるホトトギスガイの密集化形成がなく、アサリの生残率は高く(60%)維持された。河川水の水質が沿岸域生態系に大きな影響を有し、生物を利用した環境浄化にはそのモニタリングが重要であることが示された。
第6 河川水質の改善、水量の確保、水辺空間の保全に向けた面源負荷の削減対策や適切土地利用形態の提言に関する研究
流域の適切な水環境保全のため、河川水質を決定する要因とその負荷量を把握することを目的として、それらからの流出特性を解明するため本研究を実施した。さらに水生生物の棲息状況から見た水質環境の評価も試みた。
1 山林集水域からの汚濁負荷流出機構の解明と評価
有数のNOxによる大気汚染を生じている阪神工業地帯に隣接する六甲山系(標高931m)の山林小集水域および人為的汚染の影響をほとんど受けていない加古川の最上流部にある粟鹿山東斜面にある山林集水域を対象に調査を行い、都市近郊山林集水域における窒素等の流出特性および人為的汚染の影響を受けていない山林域からの栄養塩類等の年間流出量について検討した。都市近郊山林集水域でのT-N年間降下量は13.6kg/ha/yearで、T-Nの年間流出負荷量は20.9kg/ha/yearと計算された。窒素の支出は収入の1.5倍となっており、負荷された以上の窒素量が流域から流出していた。六甲山系山林集水域からの高濃度窒素が流出する機構解明は今後の課題であるが、いずれにしても、六甲山系山林集水域からのこうした窒素流出負荷量は、山林が面源として重要な位置を占めていることを示すものである。一方、人為的汚染の影響をほとんど受けていない山林集水域からの年間流出負荷量は、TOC、T-PおよびT-Nそれぞれについて12.8kg/ha/year、0.22kg/ha/yearおよび5.78kg/ha/yearと見積もられた。これまで行ってきた生野ダム周辺山林域の調査結果と併せて、県下中央部の山林域からの流出負荷量が明らかになった。
2 農地からの汚濁物質流出機構の解明と評価
農地のうち、畑地については水田と異なり降雨時の土壌流出に加えて窒素肥料による地下水やため池の硝酸汚染の原因として認識され研究が行われている。しかし、畑地の一つである樹園地に関する水質化学的研究は少なく、ブドウ畑を対象にした汚濁負荷流出機構と地下水汚染の解明を目的として、2003年7月から調査を開始した。ブドウ畑からの表面排水は、専用の側溝からため池に流入するが、約70㎜の日降水量では表面流出は観測されなかった。地下水の硝酸態窒素は全窒素の88.7%を占め、平均値は環境基準をわずかに上回る濃度であった。一般畑地の暗渠排水から高濃度のNO3-Nが流出する問題について指摘されているが、樹園地においても同様の問題のあることが明らかになった。
3 底生動物群集による水環境評価
揖保川とその支流林田川の水質は1994年に急速に改善した。この水質の改善に伴う底生動物群集の回復を検討した。また、猪名川でも底生動物を採集し、1986年の底生動物群集と比較、検討することによって水環境の現状と経年的な変化を評価、把握した。
第7 不測の環境汚染事故等に備えるための危機管理機能強化に関する研究(安全科学部・大気環境部と共同実施)
水圏生物へのダメージ、廃棄物の不法投棄等、突発的負荷の増加による環境汚染に関する事例を収集し、調査方法、対応策等のデータベースを作成し、事故時の効率的な初動体制に資することを目的とした。
1 廃棄物の不法投棄による環境汚染の評価方法の検討
油汚染廃棄物と有害物質に係る迅速分析法の確立と調査方法のマニュアル化を検討した。不法投棄された油種の同定には赤外分光分析計による測定が迅速分析に有効であった。従来、油分はノルマルヘキサン抽出物質として測定されていたが、不法製造された軽油による地下水汚染調査にはガスクロマトグラフ、イオンクロマトグラフ、電気伝導度計等の機器分析による高感度測定が必要であった。
(大気環境部)
第8 酸性雨・酸性霧の生態系および建築物・文化財への影響に関する研究
酸性雨・霧・雪等の湿性沈着物とガス並びにエアロゾルの乾性沈着を含めた酸性沈着の実態把握を行うとともに、森林生態系への影響を解明する根拠資料を提供する目的で実施した。
1 乾性沈着物の精度の高い測定手法の確立
酸性沈着のうち、湿性沈着について、降水(一部雪を含む)については県下3地点(神戸須磨、豊岡及び柏原)で、霧については六甲山で試料採取を行い、当センターで分析し、継続的にデータを蓄積している。また、降水を採取する際の手法(ウェットオンリー法とバルク法)の比較検討解析を行い、両手法により採取された降水の化学的特徴と相違について明らかにしてきた。この相違点を踏まえ、過去に県下5地点でバルク法により採取・分析した降水のデータの解析を行い、地点ごとの相違や兵庫県下の降水の特徴を明らかにした。一方、六甲山において継続的に採取・分析している霧水について、平成9年度から平成12年度の結果を詳細に解析した。その結果、霧は夏期に濃い霧が発生し、発生頻度が高いことや大気中の(NH4)2SO4(p)およびNH4HSO4(p)が霧の発生に関係していることがわかった。また、霧水中の汚染物質濃度は霧の濃さと関連していることが明らかとなった。
2 湿性沈着量及び乾性沈着量の実態把握
乾性沈着については東アジア酸性雨モニタリングネットワークで採用されている4段ろ紙法により、神戸須磨で大気中ガス及びエアロゾルの採取・分析を行った。SO42-(p)およびSO2(g)は春期および夏期に他の季節よりも高濃度になることがわかった。また、三宅島噴火の影響が見られた平成12年度および13年度は高濃度が観測された。HNO3(g)は光化学反応の影響で夏期に高濃度を示した。非海塩性カルシウムイオンは春季に他の季節よりも高くなり、黄砂の影響を示唆するものであった。
3 樹木衰退に対する酸性霧の影響
樹木の生育障害の可能性として地上部だけでなく、地下部からの影響も考えられることから、樹冠下の土壌について霧水からもたらされる酸性沈着成分と土壌活性度との関係について検討した。六甲山をフィールドとして標高別に林内への酸性沈着量と根圏環境(土壌微生物の活性度=土壌呼吸量)との関係から窒素の閾値について検討した。その結果、樹葉中のMg、クロロフィル濃度は土壌中のN濃度が0.5~0.6mg/gのときに最大となり、それ以上の濃度では低下した。一方、土壌呼吸量は樹葉中のMgおよびクロロフィル濃度が最大となる土壌中のN濃度0.5~0.6mg/gで低下の傾向を示した。これらの結果をもとに、土壌へのN添加実験を行うことで120kg/10aがNの閾値と考えた。
第9 自動車公害の実態把握と汚染特性の解明に関する研究
自動車公害、特にディーゼル排ガスによるPM2.5微粒子の実態把握と生成機構、及び大気汚染と騒音・振動対策の複合効果について検討している。
1 ディーゼル排ガスによるPM2.5微粒子の実態把握と生成機構の解明
自治体研究機関としては初めて熱光学炭素分析計を導入し、粒子中の無機・有機炭素の実測を当センター3階及び幹線道路沿道(芦屋市役所別館屋上)で行った。平成15年10月より実施している芦屋市役所屋上での2週間平均濃度のモニタリング結果では、PM2.5中の無機炭素濃度が当研究センター(須磨)における値の1.5~2倍であることがわかった。現時点までの最高濃度は約7μg/m3であったが、この値は関東での測定結果の最高値に比べると低かった。季節ごとに4回行った2週間にわたる24時間値の調査では、南寄りの風の時に高くなるという風向依存性も認められたほか、自動車走行台数が少なくなるお盆休み・正月には極めて低い値になることが確かめられた。
2 幹線道路沿道の局地的NOx高濃度汚染の原因究明と対策の検討
大気中に放出されたNOxは大気中での化学反応により硝酸ガスなどに酸化され、PM2.5粒子や酸性雨の原因物質となるが、実大気中での測定は困難であった。そのため、デニューダー-差量-オゾン化学発光法を測定原理とする自動測定機を開発してきた。本機の中で使用されている微粒子除去装置は、従来のフィルター法に比べて妨害ガスの影響が無いため、より正確に(定量下限は1ppb)より長期間(1カ月)、硝酸ガスをリアルタイムで連続測定することが可能になった。
3 道路沿道における騒音・振動対策の科学的解明
国道2号の相生市若狭野付近に敷設されている低騒音舗装(排水性舗装)についてその効果を調査した。この道路の欠点は、年月が経つとその空隙にタイヤくず、アスファルトくずなどが埋まり、その機能を低下させることにある。今回、約4年前に測定した同じ地点でその効果について調査した。前回の結果によれば、道路端の地点では約3dBの効果が見られたのに対し今回の測定では効果は0.7dBとなっていた。道路から約50m離れた地点で6dBあった効果が4dBになっており、効果の低下が見られた。
国道43号沿道にASE(アクティブソフトエッジ)という遮音壁が国土交通省により試験的に導入された。ASE遮音壁は、既存の遮音壁の上にASEという遮音機能をもった機材を取り付けたものである。その遮音効果を見るため、ASEの設置前後で測定を行った。設置前後の騒音レベルを測定点近傍でASEの設置されていないところとの相対値で比較した。24時間の騒音レベルを比べると、設置後約0.5~1dB騒音レベルの低下していることが明らかとなった。また、周波数分析の結果によれば、500~1000Hzで若干の効果のあることが分かった。
第10 兵庫県における温室効果ガスの削減対策と県民生活への影響予測に関する研究
兵庫県が関係する温室効果ガスの排出量の現状把握を行い、その削減対策を検討するとともに、温暖化による県民生活への影響および削減対策に伴う県民生活の変化を予測するため以下の調査を行った。
生態系・農林水産(特産品)による吸収源調査として、国が閣議決定したバイオマスニッポンに関連して県庁各部局が二酸化炭素吸収量や県内の森林におけるバイオマス蓄積量を推定しているが、これらのデータを整理し、利用可能な再生可能エネルギー量について検討した。また海岸線構造物等への影響予測評価として、地球温暖化に伴う海面上昇について国内外で実施された研究結果を調べたが、100年で10から90cmの上昇と見積もられ、海岸線付近の詳細な標高情報が必要であるが、海面の標高が国内でも相当異なるため、評価に耐えられる精度の高い予測を行えないことがわかった。
第11 7Beを用いた都市部の光化学オキシダントに占める成層圏オゾンの寄与の評価
成層圏でO3は光化学的に生成される。O3と同様に成層圏で宇宙線により作られる天然放射性核種である7Beを指標元素として成層圏に由来するO3量を評価し、地上でのO3濃度への寄与率を把握することを目的として実施した。
六甲山山頂でO3と7Be濃度を調査した結果有意の相関関係があることがわかった。さらに測定データを夜間と昼間に分けて相関関係を調べた結果夜間の相関係数が昼間のそれよりも高いことがわかった。春季の夜について7Be、O3、NOx濃度について大気安定度との関連について見たところ、7Be、O3については大気安定度の違いによる濃度の差には有意な差はなかったが、NOxについては最も安定度が高い場合は最も安定度が低い場合よりも有意に濃度が高くなった。この結果は人の生活する地上のO3の一部は成層圏由来の7Beと同様に成層圏から落下していることを示唆していると考えられる。また秋季も同様の調査を行った。O3濃度は春季に比べて低く春季ほどには明確な関係は得られなかったが、O3と7Beの濃度に有意の相関が認められた。