「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出把握管理促進法:PRTR法)」に基づき「PRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)」が導入されています。事業者は毎年度、人の健康や動植物に対し有害性のある462種類*の化学物質(第1種指定化学物質)について、大気等の環境への排出量や廃棄物としての移動量を把握し、届出を行うこととなっています。
この制度に基づく17回目の届出となる平成29年度の排出量・移動量データについて、兵庫県の届出の状況、排出量・移動量の状況及び国が推計を行った届出対象外(対象業種の届出対象外事業所からの排出量、非対象業種の事業所からの排出量、家庭からの排出量、自動車など移動体からの排出量)排出量の状況をとりまとめました。
なお、届出件数、排出量・移動量等の数値は、変更届等により集計後も変わることがあります。
また、端数処理により表の合計が一致しない場合があります。
*平成20年度化管法施行令改正以前の平成21年度把握分(平成22年度届出)までは、届出対象物質は354種類の化学物質です。
1 排出・移動量の届出状況
兵庫県内の届出対象事業者が把握した平成29年度における化学物質の排出量・移動量は、平成30年4月1日~6月30日の間に、1,498事業所(平成28年度に比べ18事業所減少)から260物質の届出がありました。これは、全国の届出事業所数34,253事業所の4.37%にあたり、都道府県別には愛知県、北海道に次いで全国第3番目の届出事業所数となっています。
また、届出のあった260物質は、届出対象種類(462種類)の56.3%にあたり、全国第1位となっています。
兵庫県における業種別及び地域別の届出状況は、次のとおりでした。
(1)業種別届出件数
業種別の届出事業所数は、表1のとおり、燃料小売業が566事業所と最も多く全体の37.8%を占めており、ついで化学工業167事業所(全届出事業所の11.1%)、下水道業134事業所(同8.9%)などとなっています。
表1 業種別の届出事業所数
(2)地域別届出件数
地域別の届出事業所数は表2のとおり、神戸地域が274事業所と最も多く、ついで東播磨地域の221事業所、中播磨地域の196事業所などとなっています。
表2 地域別の届出事業所数
2 集計結果の概要
(1)届出排出量・移動量の集計結果
(ア)届出物質の排出量・移動量
全物質(462種類)のうち届出のあった260物質の排出量・移動量及び構成比は表3のとおりです。県内事業所から届出のあった化学物質の総排出量は6,443トン、総移動量は11,578トンとなっています。排出量と移動量の合計は、18,021トンであり、これは全国値387,101トンの4.7%にあたります。
また、排出・移動先別にみると、廃棄物としての事業所外への移動量が全体の64.1%と最も多く、次いで大気への排出量が33.7%などとなっており、全国の割合と同様の構成比となっています。
表3 排出・移動先別の排出・移動量排出・移動区分
(イ)業種別の届出排出量
業種別の届出排出量は表4のとおりです。化学工業が1,077トンと最も多く、全体の16.7%を占めており、次いでプラスチック製品製造業の947トン、金属製品製造業の814トンなどとなっています。
表4 業種別・排出先別排出量
(ウ)届出排出量の多い物質
届出排出量の上位10物質とその量は表5のとおりです。トルエン(合成原料や溶剤などに使用)が1,917トンと最も多く、次いで、キシレン(合成原料や溶剤などに使用)1,037トン、ジクロロメタン(別名:塩化メチレン)(金属洗浄などに使用)825トンなどの順となっています。また、クロロメタンが全国排出の39.2%を占めています。
表5 排出量上位10物質とその量
(エ)地域別の届出排出量
地域別の排出量は表6に示すとおり、東播磨地域が1,663トンと最も多く全体の25.8%を占めており、次いで神戸地域が1,263トン、中播磨地域925トンの順になっています。 産業が集積している地域の排出量が多くなっています。
表6 地域別の届出排出量
(オ)排出先・移動先別の物質別排出量・移動量
排出先別の届出排出量上位10物質とその量は表7のとおりです。大気への排出物質ではトルエンが1,917トンと最も多く、大気への排出量の31.5%を占めており、公共用水域への排出では、ふっ化水素及びその水溶塩が139トンと最も多く38.4%を占めています。
表7 排出先別の物質別(上位10物質+その他)排出量及び構成比
また、移動先別の届出移動量上位10物質とその量は表8のとおりです。廃棄物としての事業所外への移動では、トルエンが2,680トンと最も多く、事業所外への移動のうち23.2%を占め、下水道への移動では、ほう素化合物が14トンと最も多く52.0%を占めています。
表8 移動先別の物質別(上位10物質+その他)移動量及び構成比
(カ)過年度のデータとの比較
表9-1のとおり、平成29年度の届出事業所数は1,498事業所であり、前年度に比べて1.2%減少しています。排出量は6,443トンで前年度に比べて1.1%減少しています。また、移動量は11,578トンと前年度に比べて6.4%減少しています。
化学物質排出把握管理促進法施行令改正(以下「施行令改正」という。)により届出対象物質が354物質から462物質に増加したため、平成22年度には排出量、移動量が増加しています。
表9-1 各年度のデータの比較
施行令改正の前後で継続して届出対象物質として指定された276物質(以下「継続物質」という。)のみの経年変化は、表9-2のとおりです。排出量は5,696トンと前年度に比べ0.4%の減少となっています。また、移動量は10,508トンと前年度に比べ7.7%の減少となっています。
表9-2 各年度のデータの比較(継続物質のみ)
全国の状況においては、平成29年度の届出事業所数は34,253事業所で、前年度に比べて1.2%減少しています。排出量は152千トンと前年度に比べ0.2%の増加となっています。また、移動量では235千トンと前年度に比べ4.4%の増加となっています。
継続物質のみを比較すると、排出量は136千トンと前年度に比べ0.04%の減少となっています。また、移動量は211千トンと前年度と比べ3.7%の増加となっています。
(2)届出外排出量の集計結果
(ア)届出外排出量
排出量・移動量の届出の対象とはならない事業所、家庭、移動体(自動車等)など届出対象外の発生源からの平成29年度の化学物質の排出量(届出外排出量)を国において推計した結果は、6,656トンでした(表10)。
届出対象の事業所からの排出量と届出外排出量の合計は、13,099トンであり、届出排出量が全体の49.2%、届出外排出量が全体の50.8%となっています。
届出外排出量のうち最も排出量が多いのは、移動体からの排出で、2,141トンと全体の排出量の16.3%を占めているほか、家庭からの排出が9.6%となっています。
届出と届出外の合計の排出量は、全国(391千トン)の3.4%を占めており、都道府県別には全国第12位となっています。また、全国の状況と比べ、兵庫県は、届出排出量の割合が多くなっています。
表10 届出・届出外排出量の区分と排出量
(イ)届出対象外の事業所からの排出量
対象業種及び非対象業種の事業所からの届出外排出量上位10物質は表11に示すとおりであり、キシレンが743トンと最も多く、ついでトルエン649トン、エチルベンゼン352トンなどの順となっています。
表11 届出対象外事業所からの排出量上位10物質とその量
(ウ)家庭からの排出量
家庭から排出される化学物質の上位10物質は表12のとおりです。ポリ(オキシエチレン) =アルキルエーテル、ジクロロベンゼン、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩の順となっています。
表12 家庭からの排出量上位10物質とその量
(エ)移動体からの排出量
自動車など移動体からの排出される化学物質の上位10物質は表13のとおりであり、ガソリン成分であるトルエン、キシレン、ベンゼンなどや、ディーゼル車の排ガスに含まれるホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの排出が多くなっています。
表13 移動体からの排出量上位10物質とその量
(オ)届出排出量と届出外排出量の合計の多い物質
届出排出量と届出外排出量の合計排出量の上位10物質とその量については表14のとおりです。溶剤・合成原料として用いられる他、自動車などの排ガス、接着剤・塗料などに含まれる物質である、トルエン(3,365トン)やキシレン(2,251トン)の排出が多く、次いでエチルベンゼン(1,051トン)の排出が多くなっています。また、トルエン、ジクロロメタン等は届出事業所からの排出の割合が多く、ポリ(オキシエチレン) =アルキルエーテル等は届出外からの排出の割合が多くなっています。
表14 届出排出量と届出外排出量の合計の上位10物質とその量