■私たちの生活と化学物質
私たちの身の回りには、金属や合成化学物質から作られた様々な製品があり、私たちの生活になくてはならないものになっています。これらの製品やその原材料を作る際にも、使う際にも、さらにはそれらの製品が廃棄物となったものを処理する際にも、様々な化学物質が大気や水、土壌といった環境中へ出ています。
■化学物質に対し不安を感じられる方が多くなっています!
環境省が2000(平成12)年度に全国1,500人の環境モニターを対象に行った「化学物質対策に関する意識調査」によると、身の回りに存在する様々な化学物質のうち、とくに「工場や廃棄物焼却施設などから排出されている化学物質」に対して強い不安を感じている人が多いことがわかりました。
そのほか「自動車排ガスに含まれている化学物質」や「農薬に使用されている化学物質」、「家庭用品に含まれている化学物質」などに不安を抱いている人がいずれも70%を超えていました。
一方、「不安は感じていない」と答えた人は0.9%でした。
また、なぜ不安に感じるのかという質問に対しては、「これらから有害な化学物質が排出されていることが明らかだから」(39.3%)「これらによる影響が報道されているから」(25.2%)「これらからどういう化学物質が排出されているかわからないが、有害な化学物質も含まれているかもしれないから」(23.1%)といった回答があがっていました。
■化学物質は、どこから、どれだけ環境にでているのでしょうか?
これまでも、人の健康や生活環境に被害をもたらすような有害な化学物質の排出については、法律によって規制が行われてきました。
しかし、化学物質の中には、動物実験などで有害な性質がわかったとしても、それが環境中へ排出されたときに人の健康や生態系にどのような影響を及ぼすのか、まだよく分かっていないものが少なくありませんでした。
また、化学物質を取り扱う事業活動を行っていても、保管タンクやパイプの継ぎ目からの漏れ、あるいは塗装中の溶剤の蒸発などについて、化学物質を環境中に排出しているというとらえ方はしてきていません。
そのため、どんな化学物質がどこからどれだけ大気や水域に排出されているのか、ということに答えられるだけの情報は、事業者も行政も持っていない状況にあります。
その情報を把握するための新しい仕組みが作られました。それがPRTR制度です。
■PRTR制度がはじまりました。
PRTRとは、毎年、どんな化学物質が、どこから、どれだけ排出されているか知るためのしくみです。
PollutantReleaseandTransferRegister(環境汚染物質排出・移動登録)の略称で、これまで市民がほとんど目にすることのなかった化学物質の排出に関する情報を国、県が1年ごとにまとめて公表する制度です。日本だけでなく諸外国でも導入が進んでいます。
また、国民は、国による集計結果の公表とは別に、個別事業所のデータを国に開示請求し、入手することができます。
PRTRによって、毎年どんな化学物質が、どの発生源から、どれだけ排出されているかを知ることができるようになります。
■従来の対策とPRTRの相違点と意義
■化学物質の管理を進めるために!
■情報に関心を持つ
●毎年一人でも多くの市民が公表されるPRTR結果に関心を持ち、目を通しましょう。
●関心のある企業のPRTRデータを国に請求し、入手することもできます。
●企業の環境報告書に目を通したり、地域住民説明会に参加し、化学物質に関するさまざまな情報を企業と共有しましょう。
■できることから行動する。
●環境改善に取り組む企業を積極的に評価し、環境に配慮している企業の製品を選ぶ、企業の担当者に応援メッセージや意見を送りましょう。
●環境測定などに参加し、地域の化学物質問題を把握し、企業や行政との話し合いに役立てましょう。
●家庭でも、化学製品は適切な使用方法を守る、定められた方法で廃棄する、必要以上に買わない、使わないといったことを実践しましょう