(1) 第1次住民意見書の要旨及びそれに対する都市計画決定権者の見解

 「環境影響評価に関する条例」第10条第1項の規定に基づき提出された第1次住民意見書の要旨及び同条例第11条第1項の規定に基づき作成した当該意見書に対する都市計画決定権者の見解を以下に示す。
第1次住民意見書の要旨 都市計画決定権者の見解
 環境の保全と創造の見地からの意見を述べるが、その前に意見書そのものの考え方について、意見を述べる。
 環境アセスメントの位置づけ、県民への投げかけ方について
 環境影響評価法が施行され、アセスメントの方向性が変わった。それは事業推進に当たって、調査、計画、開発行為を行政、県民が共有した情報でもって、よりよい成果を目指すものと捉えられる。それは事業者が調査し、問題点を明らかにして、その対応策、課題を提示し、第3者(県民)に意見を求める姿勢が基本的スタイルとして考えられる。
   
 概要書で「影響がないと考えられる理由」が記載されているが、これはいかがなものか。この段階で影響はないと記載するよりも、現段階での問題点を明らかにして、県としての対応策、考えを県民に問いかけるようにした方が好印象を持たれるのではないか。  概要書作成にあたっては、地域特性及び事業特性を考慮して効率的・重点的な環境影響評価を実施するため、事業概要及び既存文献調査等から影響がないと考えられる項目について、「影響がないと考えられる理由」を記載している。
1 環境の保全について  
 課題は、植生の保存と景観である。
 園路の両サイド及び展望拠点施設には、かなりの量の法面が出現するのではないかと思われ、その予測が重要である。そして、その法面がどのような見られ方をするのかを解析しなければならない。
 特に外景観からの検討が重要である。なぜならば、計画地周辺には切土法面が至る所に出現し、その上に新たな法面が造成され、しかも高速道路からビスタ−が通る位置にあることから、慎重な検討が望まれる。その場合、視点場を遠・中・近の数多いポイントを定め、多角的視点からの考察が重要である。方法としては、CGを使っての景観シュミレーションが有力である。
 内景観についても、ヒュ−マンスケールによるシュミレーションが必要である。特に地形的に掘割の長大な法面が予想される。
 景観については、フォトモンタージュでの検討が記載されているが、スタディ模型での検討が、より良い成果が得られるであろう。
 景観の予測・評価については、「環境影響評価指針」(平成10年 兵庫県)に基づき、本緑地を遠・中・近景で眺望できる地点から、フォトモンタージュを作成し、予測することとしている。また、内景観については、事業計画において配慮することとしているが、園路の両サイド及び展望拠点施設周辺の法面については、少なくするよう計画する予定である。
2 環境の創造について  
 造成により出現した裸地の環境復元及び創造が課題である。近年の緑化技術においては、植樹、植林から育成にシフトしつつある。環境の異なる地に、他地域から植物を植えてもうまく育たないと言う考えが定着しつつあるからだ。したがって、現況の資源活用による計画が望まれる。本事業は、長大な法面が出現することが予想され、それらの自然回復が最大の課題と考えられるが、本報告では見えてこない。
 切土法面の保全策が重要と考えられ、一般的には次の方法がある。
 ・埋土種子の活用
 ・大径木移植
 ・根株植栽
 ・郷土種によりポット植栽
 切土法面の具体的な対策等については、概要書に基づき、事業計画を策定する段階で検討し、準備書で記載する予定であるが、本緑地の目的が自然環境の保全であることなどから、既存木及び郷土種の活用等を行い、環境の保全と創造に適正に配慮する予定である。

3 環境影響要因と環境要素との関連  
 「影響がないと考えるとした理由」石の寝屋史跡について、もし、古墳が存在していたら、発掘調査が必要であり、結果次第ではさわれない場所も出てくる。  現在、石の寝屋古墳は、県教育委員会で位置等の確認調査を行っており、その結果を事業計画に反映する予定である。
4 その他  
自然環境調査として、風向風力と降雨量調査及びそれらを利用した自然エネルギー活用計画が必要ではないか。資源循環社会構築が求められる今日、風力、天水、太陽熱を活用した計画が望まれる。
 現況調査として、計画区域周辺の気象観測所である淡路町地域気象観測所における降水量と淡路町岩屋モニタリングボックスにおける風向・風速の収集・整理を行う予定である。
 また、事業計画においては、ソーラーシステムの導入や雨水の利用等を行うことを検討している。


(2) 第1次審査意見書及びそれに対する都市計画決定権者の見解

 「環境影響評価に関する条例」第12条第1項の規定に基づく第1次審査意見書及び同条例第14条第1項の規定に基づく当該意見書に対する都市計画決定権者の見解を以下に示す。
第1次審査意見書の内容 都市計画決定権者の見解
 標記の環境影響評価概要書(以下「概要書」という。)について、環境の保全と創造の観点から審査を行った。
 標記事業の環境影響評価の実施にあたっては、概要書に記載の調査・予測・評価等の計画に加え、次の点に留意する必要がある。
  
1 全体的事項 1 全体的事項
(1)事業計画について (1)事業計画について
 当該事業は、自然環境の保全を図るとともに人と自然との触れ合い活動の場として環境の保全と創造に寄与すること等をコンセプトに県立都市公園として整備されるものである。
 このことから、当該事業の実施にあたっては、21世紀の「美しい兵庫」を築くうえで自然環境を保全する一つの手法として効果的に機能するよう、調査・予測・評価等を通じて当該事業計画の熟度を高めていくことが望まれる。
 事業の実施にあたっては、調査・予測・評価等を通じて事業計画の熟度を高めることに努める。
(2)環境影響評価準備書の作成について (2)環境影響評価準備書の作成について
 当該事業計画地は自然環境が豊かな地域にあることから、特に現況調査の実施にあたっては動植物等自然環境の把握を適切に行うこと。
 予測の結果、環境に影響を及ぼすおそれがある場合は、環境影響評価指針に示すミティゲーション手法により適切な措置を講ずるとともに、土地利用計画等の見直しを行う場合には、変更に至った経緯を示すことが望ましい。
 動植物等の現況調査については、改変により影響を受ける部分を重点的に調査を行うなど、自然環境の把握を適切に行うこととした。
 予測の結果、環境に影響が及ぶおそれのある動植物等については、環境影響評価指針に示すミティゲーション手法により適切な措置を講ずるとともに、土地利用計画等の見直しについても、変更に至った経緯を示すこととした。
2 個別的事項 2 個別的事項
(1)水質汚濁 (1)水質汚濁
 工事に伴う濁水の予測については、流出防止対策を検討し定量的に行うとしているが、特に淡路町の上水取水口がある長谷川及び展望拠点施設等の流域河川においては適切に実施すること。
 供用後の汚水については、下水道に接続することとしているが、中水化による再利用等水の有効活用に努めるよう検討することが望ましい。
 工事に伴う濁水の予測については、淡路町の上水取水口がある長谷川及び展望拠点施設等の流域河川である片谷川及び藤八川において、流出防止対策を検討し定量的に行うこととした。
 供用後の汚水については、下水道に接続することとしており、最終処理場周辺での散水等に再利用される予定である。なお、雨水については、緑地内の散水等の再利用に努めることとした。
(2)植物 (2)植物
 植物の調査については、調査区域全体を適切な密度で行い、改変により影響を受ける部分を重点的に行ったうえで、調査箇所ごとに出現種の整理を行うこと。
 また、造成法面への樹木の植栽にあたっては、埋土種子の活用、根株植栽等についても検討を行い、既存樹木等を活用するような緑化計画とすることが望ましい。
 植物の調査については、調査区域全体を適切な密度で行い、改変により影響を受ける部分を重点的に行ったうえで、調査箇所ごとに出現種の整理を行うこととした。
 また、造成法面への樹木の植栽にあたっては、埋土種子の活用、根株植栽等についても検討を行い、既存樹木等を可能な限り活用するような緑化計画に努めることとした。
(3)陸生動物 (3)陸生動物
 動物の調査については、調査区域全体を適切な密度で行い、改変により影響を受ける部分を重点的に行ったうえで、調査箇所ごとに出現種の整理を行うこと。
 また、明石海峡は渡り鳥の通過ルートになっていることから、渡り鳥の飛翔ルートと計画地との位置関係について情報を入手することが望ましい。
 動物の調査については、調査区域全体を適切な密度で行い、改変により影響を受ける部分を重点的に行ったうえで、調査箇所ごとに出現種の整理を行うこととした。
 また、渡り鳥の飛翔ルートと計画地との位置関係についての既存文献の入手に努めることとした。
(4)水生生物 (4)水生生物
 水生生物の任意採取調査については、川の形状等によるタイプ分けを意識した採取が必要であり、小河川においては定量採取よりも定性採取が重要である。  水生生物の任意採取調査については、川の構造によりタイプを分け採取を行うとともに、小河川については、定性採取に重点をおいた調査を行うこととした。
(5)生態系 (5)生態系
 生態系の予測・評価については、陸生植物、陸生動物、水生生物等の調査結果をもとに、主な動植物の分布を整理のうえ代表となる指標種を設定し、それらの生息・生育環境の基盤の分布、食物連鎖に着目し適切に実施することが望ましい。
 また、土工事による流域の変化については、生態系全体への影響が懸念されるため、可能な限りこれを避けるような事業計画とすること。
 なお、動植物の調査結果をもとに、ミティゲーション手法に基づいた適切な措置を講じるとともに土地利用計画等事業計画に反映させることが望ましい。
 生態系の予測・評価については、動植物等の調査結果をもとに、植生や利用状況等から自然環境類型区分に分け、各類型ごとに主な動植物の分布を整理のうえ代表となる指標種を設定し、それらの生息・生育環境の基盤の分布、食物連鎖に着目し適切に行うこととした。
 また、土工事による流域の変化については、生態系全体への影響が懸念されるため、避けるような事業計画とした。
 なお、動植物の調査結果をもとに、ミティゲーション手法に基づいた適切な措置を講じるとともに、土地利用計画等事業計画に反映させるよう努めることとした。
(6)景観 (6)景観
 景観の予測については、明石海峡大橋利用者の視点等を考慮し、淡路島の入口部として多面的に景観を検討することが望ましい。このため準備書の作成にあたっては、「淡路島国際公園都市景観デザインガイドライン」(淡路島国際公園都市景観形成推進連絡会 平成9年12月)等を有効に活用すること。
 なお、施設利用者の見る計画区域内の景観については、調整池及び法面等の景観に配慮した事業計画となるよう検討することが望ましい。
 景観の予測については、明石海峡大橋利用者の視点等を考慮し、淡路島の入口部として多面的に景観を検討するとともに、既存文献資料等を有効に活用することとした。



 なお、施設利用者の見る計画区域内の景観については、可能な限り調整池及び法面等の景観に配慮した事業計画となるよう努めることとする。