● 現況調査の結果
(1)
現況調査の方法等
調査項目 | 調査期間及び頻度 |
調査区域 |
調査方法 |
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植 生 | 平成12年4月,7月,8月,10月 平成13年9月 |
計画区域及びその周辺約100mの範囲 (現況調査の範囲はここをクリック!) |
植物社会学的方法 (Braun-Blanquet:1964年)に準拠して行った。 |
毎木調査 | 平成13年8月 | 代表的な植物群落であるアカマツ群落1地点、ハンノキ−ドクダミ群落1地点、ウバメガシ−コシダ群集1地点、アカマツ−モチツツジ群集1地点、コナラ−アベマキ群集2地点、モウソウチク−マダケ群落1地点、計7地点で行った | |
土壌断面 | 平成13年4月 | 「国有林林野土壌調査方法書」(林野庁、1955年)に準じて行い、調査区域の代表的な植物群落であるウバメガシ−コシダ群集1地点、アカマツ−モチツツジ群集1地点及びコナラ−アベマキ群集1地点、計3地点において行った。 | |
植物相 | 平成12年4月,5月,7月,8月,10月,11月 平成13年8月,9月 |
調査区域を踏査し、シダ植物以上の高等植物を対象として出現した種を目視観察によって記録した。 | |
貴重な 植物 |
− | 植生及び植物相の調査の結果、希少性などによる貴重な植物の判断基準に基づき、貴重な植物群落及び植物種を抽出した。 |
(2) 調査結果
調査項目 | 調査結果 |
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植 生 | 調査区域では、3群集、31群落2下位単位を抽出した。 (現存植生図はここをクリック!) 調査区域の植生は、丘陵地にはウバメガシ−コシダ群集、アカマツ−モチツツジ群集、コナラ−アベマキ群集及びモウソウチク−マダケ群落が広がっている。アカマツ林では松枯れしているところも多く、アカマツの優占度が低い林分が増加してきていると考えられる。また、モウソウチク−マダケ群落の調査区域に占める面積は、コナラ−アベマキ群集、アカマツ−モチツツジ群集に次いで大きい。一方、狭い谷部や斜面下部には田畑が存在しており、水田では、田起こし前にスズメノテッポウ−タネツケバナ群落が、耕作地周辺の管理草地にはススキ群落やチガヤ群落が成立しているとともに、休耕田ではケネザサ−ネザサ群落、クズ群落などの成立がみられる。その他、灌漑用のため池の岸辺の湿地にはテキリスゲ群落やキシュウスズメノヒエ群落等が成立し、一部の小規模なため池の岸辺などにはサイコクヌカボ群落が成立している。 |
毎木調査 | 調査の結果、各群落の胸高断面積合計では、ハンノキ−ドクダミ群落が最も大きく約53m2/haとなっており、次いでコナラ−アベマキ群集(サネカズラ下位単位)及びモウソウチク−マダケ群落の約44m2/ha、ウバメガシ−コシダ群集及び コナラ−アベマキ群集(典型下位単位)の約37m2/ha、アカマツ−モチツツジ群集の約32m2/ha、アカマツ群落の約1m2/haの順となっている。 |
土壌断面 | 計画区域内の主要な群落下における土壌は、その大部分が褐色森林土であった。土性は石礫土〜埴質壌土であり、尾根部や急傾斜地では微砂質壌土で乾燥する傾向がみられた。全般的に腐植層は薄く、やや乾燥している未熟土壌が大部分であった。 |
植物相 | 森林を形成する種及び森林内を中心に生育する種が多くみられるほか、耕作地の畦にはスズサイコが、休耕田、人工法面等には草地環境に生育する種等もみられる。調査区域の入り組んだ狭い谷には、休耕田が多くみられ、全面的にササ類が繁茂しているところが多い。また、小規模ではあるが、谷頭には湿性地となっている場所もあり、サイコクヌカボやハンゲショウなどの湿性地に生育する種もみられる。 |
貴重な植物 | 貴重な植物としては、アカマツ群落、サイコクヌカボ群落の2植物群落、サイコクヌカボ、ハンゲショウ、スズサイコの3種が確認されている。 |
● 環境保全目標
貴重な陸生植物の生育する環境を可能な限り保全するとともに、その他の植物相に著しい影響を及ぼさないこと。 |
● 環境に及ぼす影響の予測及び評価
(1) 予測の方法等
予測項目 | 予測の対象時期 | 予測地域 | 予測方法 |
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植生の消滅の有無及び改変の程度 | (工事) 樹林の伐採及び造成工事中 (存在及び供用) 公園施設の供用開始後 |
計画区域及びその周辺約100mの範囲 | 修景緑地の整備や保全緑地の維持管理に関する整備方針を策定したうえ、樹林の伐採や造成工事に伴う植生及び生物多様性への影響については、事業計画に基づき土地改変される植生面積を図上求積することなどにより、定性的に行った。 また、貴重な植物群落及び植物種の生育環境に及ぼす影響については、事業計画に基づき環境保全措置を検討し、定性的に行った。 |
貴重な植物群落及び植物種の消滅の有無及び改変の程度 | |||
直接的な植生の改変が周辺の植生及び生物多様性に及ぼす影響 |
(2) 予測結果
緑地整備方針:良好な緑地の保全と創出、生物多様性を育む水辺の生物生息空間の創出を図る。 |
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・周辺の自然環境との調和や連続性に留意し、修景緑地の整備は現存植生に配慮したものとするとともに、保全緑地と一体的な植生再生に努める。 ・計画区域内において、水辺の生物生息空間の創出に努める。 ・保全緑地については、植生区分毎に目標林を想定し、良好な植生の現況維持、高林の育成など、より良好な植生へ誘導するための持続的な維持管理を行うとともに、モウソウチク−マダケ群落については、より多様な生物の生息空間として期待されるウバメガシ−コシダ群集やコナラ−アベマキ群集への林相変換を図る。 (初期段階で整備する保全緑地の範囲及び創出する水辺の生物生息空間位置図はここをクリック!) |
予測項目 | 予測結果 | ||
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植生の消滅の有無及び改変の程度 | 樹林の伐採及び造成工事による改変区域は、約8ha(約10%)程度であり、保全緑地を可能な限り確保した計画としている。また、修景緑地の早期緑化を図り、緑の一時的な減少を極力避けるとともに、濁水処理施設を導入するなどの対策を講じることとしていることから、植生への影響は小さいものと予測される。 | ||
貴重な植物群落及び植物種の消滅の有無及び改変の程度 | 貴重な植物群落及び植物種への影響については、いずれも土地改変に伴う直接的影響は回避されているとともに、人の立入や濁水の流出に伴う間接的な影響は小さいものと予測される。 | ||
直接的な植生の改変が周辺の植生及び生物多様性に及ぼす影響 | 樹林の伐採等に伴う日照の変化等の間接的影響については、現存植生に配慮した植生回復のための措置などを講じることから、周辺植生に及ぼす影響は小さいものと予測される。改変区域外に計画区域及びその周辺の大部分の植物種が確認されていることなどから、生物多様性に及ぼす影響は小さいものと予測される。 |
(3) 評価結果
評価項目 | 評価結果 | ||
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植生の消滅の有無及び改変の程度 | 予測結果から環境保全目標を満足するものと考えられる。 | ||
貴重な植物群落及び植物種の消滅の有無及び改変の程度 | 本事業の実施に伴い、影響が及ぶおそれのあるアカマツ群落、サイコクヌカボ群落、サイコクヌカボ、ハンゲショウの2群落2種の貴重な植物については、いずれも土地改変に伴う直接的影響は回避されているとともに、以下のとおり低減措置を講じる。 アカマツ群落及びハンゲショウの一部の成立地及び生育地に対する人為的な影響については、柵及び看板の設置により歩行路を明示する保全措置を講じる。 サイコクヌカボ群落(サイコクヌカボ)の成立地及び生育地に対する濁水の影響については、濁水処理施設の導入などの濁水流出防止対策を講じることにより、濁水の影響を可能な限り小さく抑える計画としている。 これらのことから、貴重な植物への影響は可能な限り最小化されているものと考えられる。 以上のことから、環境保全目標を満足するものと考えられる。 |
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直接的な植生の改変が周辺の植生及び生物多様性に及ぼす影響 | 予測結果から環境保全目標を満足するものと考えられる。 |