● 現況調査の結果
(1) 現況調査の方法等

調査項目 調査期間及び頻度 調査地域 調査方法
生態系を構成する要素間の関連  動植物調査の範囲と同様に計画区域及びその周辺約100mの範囲  地形・地質、陸生植物、陸生動物、水生生物等の調査結果を整理し、既存の知見等を参考に、要素間の関連図や生態系の指標となる構成要素の抽出を行った。
特殊な環境に生息するキアシハナダカバチモドキの生息状況調査 平成13年7月、8月に各1回  計画区域及びその周辺約 100mの範囲にある尾根部の裸地  調査区域内にある裸地を踏査し、任意観察により確認を行い、個体数を把握するとともに、巣穴の確認に努めた。また、本種が確認された巣穴において、狩りを行っている雌の行動観察を行った。

(2) 調査結果

調査項目 調査結果
生態系を構成する要素間の関連 上位性:食物連鎖の上位に位置するもの  調査区域では、哺乳類のニホンイノシシ、タヌキやテン及びハチクマ、サシバ等の猛禽類が食物連鎖の上位に位置していると考えられる。
 ニホンイノシシは、雑食性であり、調査区域全域を生息範囲として利用していると考えられる。タヌキは、計画区域周辺では小型の動物や土壌動物及び果実等を食していると考えられ、生息痕跡も比較的多く確認されている。また、テンは、果実等のほか、ノネズミ類やカエル類等を食していると考えられ、生息痕跡である糞からは果実の種も確認されている。
 なお、猛禽類については、現地調査で1年を通じて多くの種が確認されており、そのうち、サシバが計画区域内で営巣しているのが確認されている。サシバの行動圏は、計画区域の概ね全域にわたっており、主にトカゲ類やバッタ類を雛に給餌していたのを確認している。
典型性:生態系を代表したり、その特徴をよく現すもの  計画区域の生物相は、大部分が山林であることから、山林を中心に里山的な環境を反映したものとなっている。
 計画区域及びその周辺の山林は、古くは薪炭林として利用、管理されてきたと考えられるが、現在は放置され一部では自然植生に近いウバメガシ−コシダ群集へと遷移しつつある。森林を形成する植物種や森林内を中心に生育する植物種が多いが、田畑の畦、放棄田畑等の草地環境を中心に生育する植物種も多い。
 動物では、里山的な環境を代表するものとして、陸域ではテンやコウベモグラ及びニホンアカガエルが、水域ではカワムツやクロヨシノボリが挙げられる。
 これらが典型性を指標する種に該当するものと考えられる。
特殊性:特殊な環境等を指標するもの  計画区域の尾根部は乾燥し、痩せた土壌にアカマツ群落が成立しているほか、土壌が受蝕された後は裸地となっている。その裸地には砂地に営巣するキアシハナダカバチモドキが少数ながら生息していた。また、狭隘な谷筋には浅い池が存在し、そこにはイモリやコオイムシのほか、湿性地に生育するサイコクヌカボ群落が確認されている。これらがその生息環境の特殊性から、特殊性を指標する種に該当するものと考えられる。
特殊な環境に生息するキアシハナダカバチモドキの生息状況調査  調査区域には裸地が12か所分布しており、そのうち1か所ではキアシハナダカバチモドキの雌4個体、雄1個体が確認され、営巣(狩り)が確認された。
 キアシハナダカバチモドキはバッタ類を狩る「狩りバチ」であり、調査でも狩られた餌のほとんどがツチイナゴの幼虫であったことから、その生息環境を考えると、ススキやクズなどが生育する草地が狩り場であると考えられる。


● 環境保全目標

 生物の多様性及び既存生態系への影響を可能な限り最小化すること。


● 環境に及ぼす影響の予測及び評価
(1) 予測の方法等

予測項目 予測の対象時期 予測地域 予測方法
計画区域及びその周辺の既存生態系への影響 (工事)
樹林の伐採及び造成工事中

(存在及び供用)
公園施設の供用開始後
動植物調査の範囲と同様に計画区域及びその周辺  動植物の予測結果をもとに、計画区域及びその周辺における生態系の指標となる構成要素に対する影響の有無及びその影響の程度について、環境保全措置を検討し定性的に予測した。
新たに出現する生態系の構造


(2) 予測結果

予測項目 予測結果
計画区域及びその周辺の既存生態系への影響  上位性の種については、水辺環境を調整池等において創出することにより、餌資源の確保に努めることなどから影響は小さいものと予測される。なお、営巣が確認されたサシバについては、工事期間中は継続的な生息確認調査を行い、その結果を踏まえたうえ、繁殖期には工事を休止するなど影響の低減に努める。里山の典型性を有する種については、可能な限り保全緑地を確保したことなどから、これらに及ぼす影響は小さいものと予測される。特殊性のある場所を指標するアカマツ群落やキアシハナダカバチモドキについては、人為的影響をできる限り小さく抑える環境保全措置を講じる。また、ため池に生息するイモリ、コオイムシ、サイコクヌカボ群落の生育地は土地改変による直接的な影響から回避した。
新たに出現する生態系の構造  動植物の現地調査結果では、確認種の大部分が改変区域外でも確認されていることから、本事業の実施に伴う種構成の変化は小さいものであると考えられる。また、修景緑地の整備やモウソウチク−マダケ群落の林相変換にあたっては、樹液がでるコナラ等を多用するなどの植生再生に努める。これにより動物相の多様性が高まることが期待できる。これらのことから、影響は小さいものと予測される。


(3) 評価結果

評価項目 評価結果
計画区域及びその周辺の既存生態系への影響  予測結果から環境保全目標を満足するものと考えられる。
新たに出現する生態系の構造