審査意見書

環境影響評価実施者


都市計画決定権者 兵庫県
 代表者 兵庫県知事 井戸 敏三
 淡路・東浦都市計画緑地1号あわじ石の寝屋緑地に係る環境影響評価準備書に関し、環境影響評価に関する条例(平成9年条例第6号)第20条第1項の規定に基づく審査意見は、下記のとおりである。
 平成14年7月29日
兵庫県知事 井戸 敏三

 標記の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)について、環境の保全と創造の見地から審査を行った。
 計画地は、淡路島北端部の山林に位置し、眺望に優れるとともに、瀬戸内海国立公園に隣接し、今なお淡路島の緑豊かな自然景観を保ち続ける区域である。また、計画地周辺では「淡路公園島構想」に基づき公園整備が進められている。
 本事業は、この地域を都市緑地として位置づけることにより、乱開発を未然に防止し、里山を保全するという意義を有しており、かつ、できる限り改変面積を抑制する計画となっている。
 本準備書では、環境影響評価概要書から準備書へ至る環境影響評価手続きの過程で、第1次審査意見が土地利用計画の見直しに反映されており、その変更経緯がわかりやすく記載されている。
 予測・評価の結果、準備書では、環境影響評価の対象としたすべての項目で環境保全目標を満足しており、本事業の実施が地域の環境の保全に支障を及ぼすことはないとしているが、準備書記載の環境の保全と創造のための措置を着実に実施するため、必要に応じ専門家の意見を聴きながら、実施設計・施工計画・維持管理計画を策定することが望ましい。
 なお、事業の実施に当たっては、次の各環境要素ごとに述べる事項に留意する必要がある。
 1.大気汚染
 本地域の現況の降下ばいじん量が測定されていないため、工事着手前に1年間のバックグラウンド値調査を行い、本事業の寄与分を把握すること。
 2.水質汚濁
 濁水処理については、管理目標値の設定や管理体制の整備など適切な管理を行うとともに、発生する汚泥については適切に処分すること。特に、長谷川流域では上水源として取水がなされていることから特段の配慮を行うこと。
 なお、工事着手後の適切な時期に1回以上河川の環境基準の達成状況を確認すること。
 3.陸生植物・陸生動物・水生生物・生態系
 都市緑地の保全という本事業の目的・意味を踏まえ、竹林の継続的な伐採管理、よりよい植生形成の基盤となる土づくり、農薬不使用を前提とした植栽計画など、環境影響評価から工事、供用に至るまで一貫した着実な実施計画を作成し施工すること。
 計画区域は渡り鳥の重要なルート上にあり、サシバの営巣も確認されていることから、営巣環境の保全はもとより餌場の保全・創出に努めること。なお、ビオトープにより餌場を創出する際には、人の立ち入りを制限する空間について配慮すること。
 また、他の貴重種の生息域についても、現況調査により生息が確認された場所に限らず、生物が移動することを前提に生息部の周辺環境も含めた保全について検討することが望ましい。
 計画地が存在する淡路島北部は水資源に乏しいことから、新たに創出する水辺空間においては当地の気候風土を踏まえた設計や継続的な管理を行うこと。
 なお、公園の運営・管理においては、「参画と協働」の理念に基づき地元住民やNPO等と連携をとることが望ましい。
 4.事後監視調査等
 事後監視調査の結果を適切に工事計画等に反映できる体制を整えるとともに、必要に応じ専門家の意見を聴取し指導を受けること。
 事業影響をより確実に把握するため、影響を受けない地点での調査の実施についても適宜検討することが望ましい。
 工事着手までに現地環境が遷移することが考えられるので、特に繁殖力が旺盛で他を駆逐する可能性のある竹林の伐採管理や、貴重動植物の存在の確認などについては工事着手までの期間においても適宜実施することが望ましい。

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