調査範囲における生態系の循環構造
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拡大図(761w×475h pixel)
○生態系を構成する環境の概要
計画区域及びその周辺地域の生態系は、森林、草地、水域環境に大別されるが、大部分(約99%)は森林環境で構成されており、草地環境は北部の林縁などにわずかに存在するのみである。また、水域環境としては、溜池と小規模な沢(細流)が存在するのみである。
○生態系の構成要素
上位性
陸域環境では、トビ、サシバなどの猛禽類が食物連鎖の頂点に位置していると考えられる。しかし、計画区域の大部分を占めている森林環境は比較的鬱閉しているため、第一次消費者以上の生物も餌とする、雑食性の中型哺乳類であるタヌキ、テンなども食物連鎖の上位種であると考えられる。また、水域環境では、甲殻類や魚類を餌としているカワセミ、コサギ、アオサギなどの鳥類が食物連鎖の頂点に位置している上位種であると考えられる。
典型生
計画区域の生態系の特徴をよく現している典型的な生物種または生物群集・群落は、おもに西日本の丘陵地において人為的影響力が比較的強い地域に成立する木本群落(コナラ−クヌギ群落、アカマツ−コバノミツバツツジ群落(典型下位群落)、スギ−ヒノキ群落)であると考えられる。
特殊性
現段階で確認している生物種の中で、貴重種のカテゴリーとその具体的な要件と生態情報などから特殊な環境を指標する種を選定した結果、エドヒガン、フサナキリスゲ、カヤラン、クモランの4種が抽出される。
○生態系の食物連鎖と循環構造
計画区域とその周辺地域は、水域環境(溜池、細流、湿地、河川)と陸域環境(森林、草地)で構成されている。これら生態系を構成している環境の中には、生態系の構成要素である生産者として、水域環境に存在する付着藻類、生態系の典型性を現すコナラ−クヌギ群落、アカマツ−コバノミツバツツジ群落、スギ−ヒノキ群落及び、セイタカアワダチソウ群落に加えて、特殊性があるフサナキリスゲ、カヤラン、クモランなどが存在し、これらが消費者である動物の生活基盤となっている。
消費者である動物に関しては、直接生産者に依存する第一次消費者から、低次消費者を餌としている高次消費者が食物連鎖を形成しており、水域環境ではカワセミ、コサギ、アオサギなどが、陸域環境ではトビ、サシバなどの猛禽類とタヌキ、テンなどが上位種となっている。
食物連鎖を形成している生産者と消費者の死骸や糞などは、もう一つの生態系の構成要素であるセンチコガネなどの分解者によって無機質になり、再び生産者に利用されると考えられる。