第6部 環境保全創造のためのとりくみ・施策
 
第1章 地域環境への負荷の低減
 
 環境の汚染を未然に防止し、人々の生命・健康や生活環境を守り、さらに持続可能な社会経済の発展を実現するためには、資源を浪費する大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済から脱却し、健全な物質循環により環境への負荷を低減することが必要です。
 このため、資源・エネルギーの循環的、効率的な利用等により、事業活動や日常生活から生じる汚染物質や廃棄物の発生を減少させるとともに、発生した汚染物質や廃棄物を適正に処理するなど、大気環境の保全、水・土壌環境の保全、環境汚染物質対策、資源循環システムの構築を進めます。
 
第1節 大気環境の保全
 
目 標】
 大気環境及び騒音の「環境基準」について完全達成をめざし、健康でさわやかな空気を確保するとともに、質の高い生活環境を創造します
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○家庭用給湯器などの小規模燃焼機器を購入するときは、低NO*56型機器を選択します。
○自動車を購入するときは、排出ガスがきれいで燃料消費効率の良い自動車を選択します。
○可能な限り自家用車の使用を控え、バス・電車等の公共交通機関や自転車を利用するなど、環境への負荷の少ない交通手段の選択に努めます。
○自動車の使用に際しては、アイドリング*57ストップ等エコドライブを実践します。
 
○住宅構造への配慮、低騒音型器具の購入などにより生活騒音の防止に努めるとともに、地域のコミュニティ活動の中で、生活騒音等に対する自主的なルールづくりを検討していきます。
 
 [事業者]
○事業活動に伴う大気汚染物質の排出量の把握と施設の維持管理の徹底・強化等による削減に努めます。
○情報通信を利用した在宅勤務、サテライトオフィス*58等の推進により、自動車交通量の削減に協力します。
○貨物自動車、社用車等事業に使用する自動車の運行管理を計画的かつ適切に行い、走行量を抑制します。また、業務に使用する自動車を購入するときは、排出ガスがきれいで燃料消費効率の良い自動車を選択します。
○共同輸配送や物流拠点の整備等により製品等の輸送の効率化に努めるとともに、幹線輸送については鉄道・海運の積極的利用に努めます。
○従業者に対してバス・電車等の公共交通機関や自転車を利用するよう呼びかけます。
○自動車の使用に際しては、アイドリングストップ等エコドライブを実践します。
○自動車の点検整備は日頃からこまめに行い、窒素酸化物などの排出の抑制に努めます。
 
○工場、事業所から騒音、悪臭を出さないよう管理を徹底します。
 
 [行政]
○環境濃度の監視を行い、「環境基準」を達成していない場合はその状況と原因について、広く情報を公開します。
○工場・事業所に対する的確な指導・規制を行い、大気汚染物質の排出抑制対策を推進します。
 
○自動車単体から排出される汚染物質の低減対策をより一層推進するとともに、自動車保有量の多い事業者を中心に、自動車排出窒素酸化物や粒子状物質の排出抑制について指導等を行います。
○沿道の土地利用の適正化、街区の再整備による住宅の再配置、住宅等の防音対策などを進めます。また、沿道部をはじめ、市街地全体での大規模な緑化を促進します。
 
○共同輸配送、モーダルシフト*59等の物流対策、公共交通機関の整備及び利用促進、パーク・アンド・ライド*60施設の整備等の人流対策、連続立体交差・交差点改良等による交通渋滞緩和対策、ITS(高度道路交通システム)等の交通流対策を進めるなど、交通需要マネジメント施策(TDM*61)及びマルチモーダル施策*62を推進します。
○県に納品される物品の配送業務等に環境負荷の少ない車の使用を求める「グリーン配送」を推進します。さらに、これを事業者、県民、市町等にも呼びかけていきます。
○都市の自動車交通の集中を避けるため、道路ネットワークや公共交通機関の整備を進めます。
○本県は、国土軸*63上に位置し、域内交通だけでなく通過交通も多いことから、国や周辺自治体等とも連携した総合的な交通対策を実施します。
○交差点や交通集中箇所などの汚染が著しい地区の大気環境を改善するため、交差点改良など道路構造の改善やETC*64の整備の推進や土壌脱硝などによる直接浄化対策などを検討し、局地汚染対策を推進します。
○低公害車*65や低排出ガス車の導入に取り組みます。
○ディーゼル排気微粒子(DEP)については、健康影響との関連が懸念されており、ディーゼル代替の低公害車等の導入やDPF(ディーゼル微粒子除去装置)の装着を促進するなど、ディーゼル車対策を推進します。
○ディーゼル黒煙の街頭検査を強化するとともに、関係機関と連携し、著しく黒煙を排出する車に対する「通報制度」などによりドライバーに自主整備点検を促します。
 
○環境負荷の少ない車両の開発促進とともに、自動車税のグリーン化*66及び助成制度の充実などにより、低公害車や低排出ガス車の普及を促進します。
○天然ガス自動車用の天然ガススタンドなど、低公害車の普及に向けた基盤的施設の整備を促進します。
○光化学オキシダント*67の生成メカニズムの解明、原因物質の窒素酸化物や炭化水素等の発生抑制対策を行うとともに、緊急時の措置等の光化学オキシダント対策を推進します。
 
○主要幹線道路等で自動車騒音の常時監視を実施することにより、沿道の住宅における環境基準の達成状況を把握し、騒音対策を促進します。
○航空機騒音、新幹線騒音については、常時監視又は定点監視を継続し、環境基準の達成状況を把握するとともに、国等関係機関に環境基準達成に向けての各種の対策を要請していきます。
○光害*68が生活環境に及ぼす影響等について検討し対策を進めます。
 
第2節 水・土壌環境の保全
 
【目 標】
  健全な水循環を確保し、質の高い水環境づくりを進め、水環境及び土壌環境の「環境基準」の達成をめざします
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○家庭での節水や台所流しでの三角コーナー用ろ紙袋の使用による調理くず対策等の家庭でできる雑排水対策に努めるとともに、下水道等生活排水処理施設等の整備への理解と協力に努めます。
○廃油の回収、洗剤使用の抑制など家庭でできる生活排水対策に取り組みます。
○空き缶やごみなどを海や川に捨てません。
○住宅の雨水貯水槽、浸透ますの設置などにより、雨水の有効利用や地下水涵養に努めます。
 
 [事業者]
○工場や事業所においては、事業活動に伴う水質に係る有機汚濁負荷や窒素及びりんなど栄養塩類の低減を行い、排水による河川や海域の富栄養化による水質影響等の防止を図ります。
○工場や事業所等において、節水の工夫や雨水利用施設の導入等により、水利用の適正化や水資源の有効活用に努めます。
○工場・事業場については、排出水の特性等について、その実態把握に努めるとともに工程内における汚濁負荷量の削減対策や排水処理施設の設置等に努めます。
○工場・事業場については、有害物質による河川等公共用水域の汚濁を防止するとともに、有害物質を含む水が地下に浸透して地下水の汚濁や土壌汚染を引き起こさないよう、汚水や廃棄物等の管理を適切に行います。
○有害物質を含む原料等を使用するなど有害物質を取り扱ったことがある事業者にあっては、土壌の汚染の有無について自主的な調査の実施に努めます。また、汚染が発見された場合は、人の健康への影響を防止し生活環境への影響を極力低減させるための措置を速やかに行います。
○農業者等にあっては、肥料等による河川や地下水の汚濁の防止を図るため、有機質資材の利用等やさしい施肥・土づくりを推進します。
○漁業者等にあっては、養殖における給餌量の低減や環境負荷の少ない飼餌料の使用等行い、養殖漁場の管理の適正化に努めます。
○畜産業にあっては、家畜排せつ物による水質汚濁の防止を図るため、堆肥化等適切な糞尿処理を行います。
○健全な水循環の推進に向け、雨水浸透ますの設置などにより地下水涵養に努めます。
 
 [行政]
○河川や海域等の公共用水域における「環境基準」の維持・達成を図るため、工場・事業所に対し、的確な排水規制を実施します。さらに、閉鎖性水域である瀬戸内海においては、COD*69及び窒素・りんに係る総量規制を実施します。
○汚濁の主たる原因である生活排水について、「生活排水99%大作戦」に基づき、市町と協力しながら、下水道の整備の一層の促進を図るほか、地域の実情に応じ、農業集落排水施設、合併処理浄化槽等の生活排水処理施設の整備を促進するとともに、高度処理の導入や維持管理の徹底等により水質汚濁負荷の低減を図る。
○肥料の適正な使用を確保するなどの環境創造型農業の実施等により、農地に由来する水質汚濁に係る環境負荷の低減への総合的なとりくみを進めます。
家畜ふん尿の良質堆きゅう肥化等適正な処理による農地還元、計画的な共同処理施設の設置を推進すること等により、家畜排せつ物に由来する汚濁負荷量の削減を図る。
○養殖漁場の環境改善を図るため、給餌量の低減、汚濁負荷の少ない飼餌料の使用の促進等により、養殖漁場の環境管理の適正化を推進するとともに、漁場内の水質及び底質の改善を図るため、地域の実情に応じて適切な措置を講じます。
○都市地域の非特定汚染源対策を推進するため、合流式下水道の改善等を推進します。
○河川、海域及び湖沼の「環境基準」の類型指定やその見直しを、利水状況の変化等流域の変化に対応して的確に行います。
○河川流域の水環境については、環境保全上健全な水循環が保たれることが必要であり、水源涵養に有効な森林・緑地、農地等の保全、多自然型川づくり、ため池や水路構造への配慮等について、県民の理解を深めつつ、流域の特性に応じて、上下流の協力などにより総合的に取り組んでいきます。
○生活排水による汚濁が著しい水路等については、生態系を利用した水質の直接浄化等の水質浄化事業を推進する。また、自然浄化能力の積極的な活用を図るため、河川及び干潟、沿岸等において自然環境の保全・回復等に努めます。
○海域については、瀬戸内海へ流入するCOD及び窒素・燐などの汚濁負荷の総量削減をはじめ底質改善など総合的な対応により、着実に水質の改善と保全を進めていきます。
底質汚泥による水質の悪化を防止するため、河川及び海域にたい積している有機汚泥等について、河川計画及び港湾計画との整合を図りつつ除去を推進します。
○沿岸域の水環境については、残された自然環境の保全、悪化した環境や失われた環境の修復・回復、さらに積極的な環境型利用への転換等のとりくみを、河川流域でのとりくみ等と一体として総合的に推進していきます。
公共用水域の水質汚濁の状況及び汚濁負荷量の削減状況を正確に把握し、有効適切な対策を講ずるため、河川及び海域の水質の監視測定、指定地域内事業場に対する立入検査の実施及び汚濁負荷量の把握等、効果的な監視体制の整備を図ります。
 
○人の健康への悪影響を防止するため、地下水の汚濁について計画的な監視を実施するとともに、効果的な監視体制の整備を図ります。
○地下水の汚濁や土壌の汚染は、それが一旦起こるとその回復には長期の時間や多額の費用が必要となるため、有害物質の管理の強化や有害物質を含む水が地下に浸透しないよう、その未然防止について指導を強化します。
○有害物質を取り扱った工場等の跡地の所有者等に対し、土壌汚染の調査を行うよう指導します。
○地下水の汚濁や土壌の汚染が発見された地区については、原因者や土地所有者等に対し法的措置を含め適切な浄化対策等を指導します。
○土壌汚染を拡散させないため、大規模の土壌の掘削にあたっては土壌調査を行い、汚染が認められる土壌がある場合は、適切な管理が行われるよう指導します。
 
第3節 環境汚染物質対策の推進
 
【目 標】
 有害な環境汚染物質の管理を徹底し、安全・安心な環境を確保します
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○環境への負荷の少ない製品やサービスを選択する「グリーン購入」の考え方に基づいたとりくみを進め、日常生活の中での環境負荷の低減に努めます。
 
 [事業者]
○製品の製造工程等での有害物質の使用量の削減に努め、発生する副生物は工程内で再利用し、製品等となって市場に出る場合には確実に回収されるような循環システムの構築を図ります。
○その性質等により循環利用できない物質については、周辺環境への影響を及ぼさないように適切な処理施設において無害化処理等を徹底します。
○有害物質を使用しない製品づくり、発生させない製造工程の普及を推進するとともに、有害物質を含む製品等の回収に努めます。
 
 [行政]
○有害化学物質の対策として、従来の規制的手段に加えて、情報の公開・共有化による情報政策手段を導入します。
○特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)*70の的確な運用を図り、事業者の化学物質に対する自主管理体制の改善を促進することとし、各地域ごとの排出状況を公表するとともに、化学物質に関する環境情報の公開・共有化を進め、事業者と県民などとの環境リスクコミュニケーション*71の形成を図ります。
○化学物質の生活環境への影響を最小限に止めつつ、これまでに排出され、環境中に蓄積あるいは施設等で保管されている有害物質(PCB等)についても、計画的にその無害化処理等を行っていきます。
○ダイオキシン類や外因性内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)*72等の有害化学物質について、的確な環境モニタリング(監視)により、環境濃度の監視を行います。
○有害化学物質について環境リスク評価の知見を集積し、排出抑制対策を的確に推進していきます。
○化学物質の開発や製品開発などの計画段階からのライフサイクル・アセスメント*73が実施されるよう図ります。
○建材や家具、塗料に用いられるホルムアルデヒド*74やVOC*75等健康に有害な化学物質に関する住宅診断を実施するなど、シックハウス対策に取り組みます。
○有害化学物質に関する事故時等の緊急時の対策として、「兵庫県地域防災計画」に基づき、通報・連絡体制の整備、汚染拡大防止措置に関する情報収集と情報提供、環境モニタリング(監視)体制の整備など総合的なシステム構築をめざします。
 
第4節 資源循環システムの構築
 
目 標】
  持続可能な循環型社会を実現するため、県民等による5R*76生活を実践するとともに、「つくる」から「つかう」システムの構築などを通して、事業活動のあり方を循環型に変えていきます
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○買い物袋の持参や過剰包装の辞退等、ごみの発生抑制に努めます。
○リターナブル(再生利用できる)容器の利用や、自分が使わなくなった品物を他人に譲る等、容器や商品を繰り返し使うようにします。
○家具や電化製品等が壊れても、修理できる場合は修理して、大事に長く使うようにします。
○家庭ごみの約半分(重量比)を占める生ごみについては、出来るだけ生ごみを出さない調理法に努めるほか、コンポスター等の活用による減量を行います。
○市町等の定める分別基準に従い、分別排出を徹底します。
○スーパーマーケット等での店頭回収、地域や学校における集団回収に積極的な参加・協力していきます。
○再生原料を使用した製品や環境への負荷の少ない商品を選択するグリーン購入に取り組みます。
○建造物の解体にあたっては、分別解体に伴う適切な費用を負担します。
○行政機関に協力して、不法投棄の未然防止や早期発見に努めます。
 
 [事業者]
○リサイクル等により廃棄物の減量化を進めるほか、排出事業者として、その廃棄物の最終処分に至るまでの確認を徹底し、説明責任を果たすよう努めます。
○リサイクルや再使用を前提とした製品など環境への負荷の少ない製品の開発、製造、流通、販売を促進します。
○製品出荷や販売にあたっては、過剰な包装、過剰な梱包を見直し、包装材料の減量化を図るとともに、その再使用、再生利用に努めます。
○事業所内での再生品の利用、分別箱の設置、オフィス町内会方式*77による古紙回収の実施など事業所内の資源回収システムの確立に努めます。
○古紙回収などのリサイクル活動やグリーン購入を積極的に推進します。
○建造物の解体にあたっては、分別解体に努めます。
 
 [行政]
○廃棄物の減量化目標値等を盛り込んだ「兵庫県廃棄物処理計画」を策定し、市町、県民、事業者等と連携して、廃棄物の減量化及び適正処理のための総合的なとりくみを進めます。
○製造者に対して、資源投入量あたりの生産性を高めることや環境負荷を抑えリサイクル設計がなされた製品の開発と普及を図ることなど環境効率の追求を図るよう求めていきます。
○「つくる」ことだけではなく「つかう」という視点も重視して、それぞれのものが持つ本来の機能を発揮させるため新たなシステムの構築等を検討していきます。
○モノからサービスへの転換、すなわち、製造者は製品を売るのではなく機能を売るという業態への転換などを求めていきます。
○事業者の規模も小さく市場も未発達な静脈産業*78の育成を行うとともに、動脈産業*79と静脈産業の統合・一体化(例:家電リサイクル)等を推進します。また、廃棄物処理施設やリサイクル施設等の静脈産業施設の整備促進を図っていきます。
○消費者に対して、大量の物を所有し消費することが豊かであるという考え方を見直し、ごみとなりやすい物はできるだけ買わない、再利用可能な商品を購入するなど、リサイクルに配慮したライフスタイルに改めることを求めていきます。
○消費段階(事業者の消費行動も含む)での再生製品の利用拡大を図るため、環境負荷ができるだけ小さいものを優先して購入するグリーン購入*80運動を拡大していきます。
○家庭からの廃棄物の発生抑制を図るため、県下全体のとりくみとして、ごみ処理手数料の従量料金制を推進します。
○使用済み製品の再利用、再資源化を効率的に推進するために、廃棄物等*81の排出行為に対して負担を課す環境税*82等を検討していきます。
○容器包装リサイクル法の効果を見極めつつ、デポジット制度の導入について検討を進めます。
○製造事業者等に対して、構造や素材の工夫をしなければリサイクル・適正処理が困難となる製品や廃棄されると生活環境に及ぼす影響の大きい製品等について、積極的に拡大生産者責任*83に基づくとりくみを求めていきます。
○販売事業者に対して、過剰包装やレジ袋の自粛、はかり売り等の奨励、詰め替え製品やリサイクル製品の積極的販売等、循環型社会の実現のためのとりくみを求めていきます。
○建設リサイクル法によるとりくみの推進を図るため、特定建設資材廃棄物(コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、木材)については、平成17年度までに最終処分する量をゼロにしていきます。
 
○廃棄物処理法による一般廃棄物*84、産業廃棄物*85という区分は、その排出源に着目してなされていますが、排出源ではなく、使用済み製品等の特性に応じた区分を行い、市町と事業者の処理責任のあり方の見直しを求めていきます。
○市町においては、住民に対するごみの分別方法やリサイクル業者に係る情報の提供に努めます。
○事業者の技術選択の幅が広いリサイクル施設にあっては、厳格な構造基準をあてはめるのではなく、事後的な監視を強化する方向で見直しを求めていきます。
○施設立地に係る法令を総合的に見直し、施設立地手続きの円滑化を図るととともに、他法令による手続きが必要な場合でも、行政側の窓口を一本化する等の手続きの簡素化を検討していきます。
○行政だけではなく地元住民等とも一体となった監視体制を構築し、不法投棄等の早期発見と早期の対策を行うためのシステムの整備を図るとともに、司法当局との連携により速やかに対応するなど、不適正処理に対して厳正に対処していきます。
 
○環境問題に配慮し、住宅のライフサイクルコストを低減するため、ライフステージに応じた可変性を有したスケルトン・インフィル(躯体・住戸分離)方式*86による長期耐用の住宅の普及を図っていきます。
○省エネルギー、リサイクル、環境との共生を重視する環境に配慮したライフスタイルを実現するため、環境共生住宅のための施策を推進します。
 
第2章 自然環境の保全と美しい環境の創造
     (ひょうごの森・川・海再生プラン*87の推進)
 
 古来、人類は自然の中で生き、自然の森や川、そして海から大きな恵みを得てきました。そして、自然はそこに生きる人々の暮らしと一体となり、地域色豊かな暮らしと文化を醸成し、ふるさとを形づくってきました。
 しかしながら、高度経済成長期以降、人々と自然との接点が失われる中で、森では放置林が生まれ、川では流域の風景が一変し、海では藻場や干潟などが急速に失われました。
 そうした反省に立ち、土地の利用に際して自然との共生を図るとともに、過度な利用により荒廃しつつある自然の回復や開発等により失われる自然の復元、都市部における自然性の向上等を進め、豊かで多様な自然環境を、健全な水循環の確保に留意しつつ、県民の共有財産として保全し、また、文化財や歴史的まちなみなどの保全・継承を進め、ゆとりと潤いのある美しい環境を創造していきます。
 
第1節 自然環境の保全
 
□多様な生き物と共生する自然豊かな環境の創造
 
【目 標】
 里山やため池など多様な生き物と共生できる自然豊かな環境を整備します
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○生活に伴う活動によって、自然環境や生態系を傷つけないように努めるとともに、環境創造活動に積極的に参画します。
○人間も生態系の一部であることを認識し、豊かな自然環境を守り、育てていくとともに、豊かな心や健康を育むものとして活用していきます。
○野生の動植物は自然地での生息・生育が基本であり、むやみに野生動植物の生息・生育地に立ち入ったり、捕獲・採集をしません。
○アウトドア(野外)活動でのごみ等の持ち帰りを実践するなど自然に負荷をかけないよう努めます。
 
 [事業者]
○事業活動に伴って、自然環境や生態系を傷つけないように努めるとともに、環境創造活動に積極的に参画します。
 
 [行政]
○「兵庫ビオトープ*88・プラン」や地域版ビオトープ地図・プランにおける野生生物の生息空間の保全等に関する方針に基づいて、その具体化を、市町や自然系民間団体などと協力しながら推進します。また、野生生物の生息空間の保全・回復等の手法の確立に努めます。
○豊かな自然環境の保全を進めるとともに、本県の自然を代表する里山、ため池の保全・整備を行い、都市部では緑地や良好な景観の創造に努めます。
○わずかに残された生物多様性の高い環境を保全し、地域生態系の回廊化をめざし、周辺の生息環境の復元を進めます。
○「兵庫県版レッドデータブック」でA・B・Cランクとして評価される野生生物、植物群落、地形地質などを、ランクに応じてとるべき対策を方向づけるなどして積極的に保全します。また、継続的なモニタリング(監視)を実施し、貴重性の評価を定期的に見直します。
○生態系の変化に応じて、自然環境保全地域などの地域指定や重要な土地の公有化などによる保全対策を行います。
○学校、公園などに昆虫や小動物の生息域となる水辺や樹林などを増やします。また、公園や街路樹の緑を増やし、地域生態系のネットワークをつくります。
○中長期的視点に立って、人と野生動物と森林等自然環境の調和的共存をめざし、生息地管理・個体数管理・被害管理を総合的、計画的、科学的に推進する「ワイルドライフ・マネジメント」を進めます。
○国外あるいは地域外から人為的に持ち込まれた移入種(外来種)については、補食や生息場の占奪などにより在来種を圧迫するなどして生態系を乱すおそれがあり、それに対するとりくみを検討します。
○鳥獣保護区や休猟区の設定などにより、野生鳥獣の保護増殖を図ります。
○渡り鳥や海亀をはじめとする野生生物の生息地の保全に努めます。
○県民、事業者に、野生生物と人間との共存のあり方について理解を深めてもらえるよう、情報提供等を進めます。
○地域の特性に応じ、多様な生物の生息環境に配慮した自然の豊かさを感じる水辺空間づくりをめざします。
○沿岸域における藻場や干潟等は、海洋環境の中でも特に生物多様性に富むことから、残されたものについては今後滅失させないこととするとともに、積極的な回復・創造を行います。
○県民、事業者に働きかけて各主体の参加による自然環境の保全・創造を図ります。
○県内の貴重な自然などを守るために、広く国民、県民に呼びかけ、資金、労働力などの提供
を組織していく方法を検討し、その実現をめざします。
 
□人と自然とのふれあいの機会と場の拡充
 
【目 標】
 自然公園などにおける人と自然とのふれあいの機会と場を拡充します
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○自然公園の管理運営について積極的に参画します。
○自然保護活動や自然観察会などに積極的に参加し、自然への理解を深めていきます。
 
 [行政]
○重要な自然とのふれあいの場である自然公園については、公園計画見直しの段階で、区域の拡張や風景・動植物保護の強化並びに公園美化等適正利用を推進する方策を検討します。
○自然公園においては、自然体験や自然学習のための施設整備や動植物の保護増殖等の事業を進めるとともに、地域住民等県民が参画、協働する管理運営体制を適切に整備します。また、状況に応じて利用者数の制限や利用者に保護への配慮を求めるなど、自然の持つ利用容量を見定めつつ利用条件を整えます。
○自然公園等豊かな自然環境を有する地域においては、自然環境を破壊することなく、自然を体験し、自然についての理解を深めるため、エコツーリズム*89を推進することとし、自然ガイドの育成・確保、活動プログラムの充実、活動及び情報拠点等の施設の整備等を進めます。
○自然とのふれあいの確保の観点から、都市と農山漁村の交流の一環として農山漁村地域における滞在型の余暇活動(グリーンツーリズム)等を進めます。
○自然観察会の開催、自然体験活動プログラムの実施、野外教育等を通じ、自然とふれあう機会を提供します。
○水辺の魅力と快適さを活かした水辺空間の整備や都市公園の整備を行い、また、都市部においてはさらに河川緑地の保全や新たな緑の保全と創造を進め、沿岸域においては砂浜や干潟等の保全や回復・創造を行い、人と自然のふれあいの機会と場を拡充します。
 
第2節 美しい環境の創造
 
□優れた環境資産の保全と継承
 
【目 標】
  森林や農地、藻場・干潟、そして文化財や歴史的まちなみといった優れた環境を保全しつつ、次の世代へ継承していきます
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○健全な水循環の確保という視点からも森林や農地、藻場・干潟などの持つ役割を認識し、その保全と育成に協力するとともに、里山や鎮守の森といった身近な緑や歴史的まちなみ、そして景観を大切にしていきます。
○森林の多面的機能の維持・増進に向け、都市住民も含めた幅広い参加と交流のもと、里山林整備をはじめとする森林の保全・整備活動を積極的に推進します。
○文化財や歴史的まちなみなどの保全に理解を深め、郷土に対する誇りと愛着を育てます。
 
 [事業者]
○森林の多面的機能の維持・増進に向け、都市住民も含めた幅広い参加と交流のもと、里山林整備をはじめとする森林の保全・整備活動を積極的に推進します。  
 
 [行政]
○国土の保全、水源のかん養、水質の浄化、大気や生物相の保全といった機能を持つ森林、農地等を貴重な地域資源として位置づけ、県民総参加による多面的な機能の維持・保全に向けたとりくみを進めます。
○森林について、多面的機能の高度発揮をめざして、間伐推進をはじめ除伐や枝打ちなど、保育を計画的・積極的に進め、適正な森林管理に努めます。
○適正な森林管理に向け、国際機関の森林管理協議会(FSC)による認証取得や森林維持管理活動を行った県民への認定証交付など、多様な施策を検討します。
○里山林とその周辺の居住域や農地などを一体的な里地環境として捉えて、地域住民の主体的な参加のもと、居住環境整備や地域活性化、観光促進、地域アメニティ*90の向上など多様な目的を持った整備を進めます。
○二酸化炭素の吸収・固定による地球環境保全、多様な生物の生息域、ふるさとと感じる風景、自然にふれあうレクリエーションやリラクゼーションの場など、里山林の持つ新たな意味や役割を掲げて、住民参加による里山環境整備を進めます。
○「兵庫県版レッドデータブック」や「兵庫ビオトープ・プラン」を踏まえながら、「里山林整備事業」、「自然活用型野外CSR事業」のほか、保安林の指定などを進め、多様な生き物とふれあえる里山林の保全・回復を進めます。
○放置されている里山林を環境林、文化林として新たに整備します。
○森林の整備と良質材生産を進めるため、多様な県産木材利用を推進し、公共施設の木造・木質化及び公園・土木工事等での利用を推進します。
 
○本県の風土的特徴であるため池について、個々のため池の特性に対応した整備を進めます。また、全国のモデルとなるよう自然にふれられる快適なため池や気軽に水に親しめるため池等をテーマに、整備・保全、利活用を進めます。
○中山間地域等直接支払制度を積極的に活用して、農地の維持・保全に努めます。また、すでに実施している棚田ボランティア等による保全活動をより発展させた、県民参加活動のとりくみを推進します。
 
○河川流域における水辺空間の連続性と変化に富む特性を重視し、身近に自然や多様な生物生息空間を保全し、創造していきます。
○親水空間の保全と創造を図るため、防災面、コミュニティ面に配慮しつつ、水辺と人との豊かな共生をめざし、親水公園、親水護岸等の事業を計画的に推進します。
○水と緑の空間としての河川と古くからの流域に刻まれた歴史、民俗等を保全するとともに、流域における新たな水文化の創造をめざします。
 
○「安全な海岸づくり」「美しい海岸づくり」「いきいきした海岸づくり」を基本目標に、安全な都市・生活基盤づくりに資する海岸防護のさらなる推進と「白砂青松海岸」に代表される海岸防護と、環境と利用が調和・融合した海岸づくりに努めていきます。
○海岸の持つ多面的機能が県民に理解され、海岸自然環境の維持・保全が適正に評価されるよう、新たなセンター機能等の整備を検討するとともに、水産試験場漁場研修館などでの情報提供や水産教室などの普及活動を展開します。
○藻場・干潟等の造成、海水浄化機能や藻場育成等に配慮した工法の開発と実施、底質改善・海水交換の促進、護岸構造の改善等により、環境を回復・創出します。
○海浜等の利用者に対してごみの持ち帰りの啓発を強化するとともに、地域住民やボランティア等の協力を得て、海浜地の美化対策を一層推進します。
 
○県民が暮らしの中で密接に関わりを持ち慣れ親しんでいる山、川、森、ランドマーク*91となっている建物や構造物、地域の伝統産業、祭りや生活様式等を、現世代から未来への贈り物と位置付け、その保全を図ります。
 
□さわやかな緑の創造の推進
 
【目 標】
 さわやかな緑の創造を通して、ゆとりと潤いのある美しい環境の保全と創造に努めます
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○自らの庭先の緑化や生け垣づくりなどに努め、また通りや地域単位でまとまって緑化を推進します。
○自治会や緑化グループ等による民有地や団地の共有地、道路の沿道等の公共的空間の緑化活動等を進めます。
 
 [事業者]
○工場・事業所は地域社会の一員であり、そこで創出・保全される緑は地域の公共財でもあることから、積極的に緑化に努めます。
 
 [行政]
○「確保を超えて創造へ」の推進コンセプトを基調に、県民、事業者、民間団体、行政等の参画と協働による緑化を推進します。
○自然の回復・復元・創造のためのリクラメーション(荒廃地の再生)等の新たな手法を先導的に導入していきます。また、二酸化炭素の吸収源の確保を図るため、森林等の保全・創出を進めます。
○生態系を担保する緑のパッチ(まとまり)やコリドー(回廊)、都市のヒートアイランド現象*92を和らげるためのくさび状の緑のつながりといった、点から線へ、そして面的広がりへの、緑のネットワークをめざします。
○地域住民と一体となった緑化運動を全県に広げて、県民による県民のための緑化運動を展開するなど、緑豊かな環境こそ文化であるとの認識のもと、県民参加、県民主体により“文化としての緑”を創造していくためのしくみづくりを推進します。
○身近な緑化を進めるとともに、水と緑の潤いある環境づくりのために、河川やため池、水路、海岸や港湾などについて、生態系や景観、親水性などに配慮した水辺空間の整備を必要に応じて県民参加により推進します。
○地域の緑の現状を知るといった活動などを通して、県民の緑化活動への参加を促進する新たなシステムづくりを推進します。
○県民や事業者に対して、自らが管理する庭や工場などの緑を自発的・積極的に増やすよう市町等を通じ働きかけます。
○都市地域においては、やすらぎと潤いにあふれた快適で安全な緑の形成に向け、生垣づくりやベランダの緑化、屋上の緑化、駐車場の緑化などを促進していきます。
○緑化可能地が限られた都市部における総合的な緑化を進めていく観点から、条例に基づく敷地や屋上等の緑化を適切に指導していきます。
○都市地域においては、「植樹植林運動」などのとりくみを広げて、県民参加により空き地に緑を植えるよう働きかけます。
○県民に身近な都市公園などの公園や緑地には、花の咲く木や実の生る木など多様な緑を植えます。
○「淡路花博」の「人と自然のコミュニケーション」というテーマを継承・発展させ、緑豊かな地域環境の保全と創造に取り組んでいきます。
○各地域で展開される「21世紀の兵庫の森づくり記念植樹事業」を継承・発展させ、瀬戸内海の環境保全創造とも連動した「環境の世紀」にふさわしい森づくりを瀬戸内海沿岸の遊休地等を活用して推進します。
 
□健全な水循環の確保
 
【目 標】
 自然の水循環の持つ恩恵を最大限享受できる新しい水循環のしくみを構築します
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○家庭での節水に努めるとともに、住宅の雨水貯水槽、浸透ますの設置などにより、雨水の樹木散水・洗車への有効利用や地下水涵養に努めます。
 
 [事業者]
○節水の工夫や雨水利用施設の導入等により、工場や事業所等での水利用の適正化や水資源の有効活用に努めます。
○敷地内の緑地化、雨水浸透ますの設置などにより地下水涵養に努めます。
 
 [行政]
○環境保全上健全な水循環の目標像について、それぞれの流域の特性を踏まえて、高度経済成長始動時の1960年頃の水循環を参考に設定します。
○目標像の設定にあたっては、住民、事業者、行政等からなる流域協議会を設置し、各主体の意見を積極的に取り入れます。とりくみ・施策の実施に当たっては、流域における各主体の協力により進めます。
○流域については、環境保全上健全な水循環が保たれることが必要であり、水源涵養に有効な森林・緑地、農地等の保全、多自然型川づくり、ため池や水路構造への配慮等について、県民の理解を深めつつ、流域の特性に応じて、上下流の協力などにより総合的に取り組んでいきます。
○流域全体について、各用水の使用の合理化、利水配分の最適化等を進めます。
○森林においては、その水源涵養機能を維持、向上するため、森林の公益的な機能を評価して、その保全、育成や適切な管理を図ります。
○農村・都市郊外部においては、川の流れの保全や回復(流量維持)と、流域の貯留浸透・涵養能力の保全・向上を図ります。このため、水源涵養能力の高い水田、畑の保全等を進めます。
○都市部においては、可能な限り自然の水循環の恩恵を増加させる方向で関連施策の展開を図ります。このため、開発区域と原状保全区域を混在させた都市計画等について幅広な検討、下水の高度処理水等の河川還元、地下水使用の合理化、道路等の透水性の向上等を進めます。
○沿岸域においては、自然海岸、藻場、干潟等の保全とともに、必要に応じ、海浜、藻場、干潟等を造成します。残された自然環境の保全、悪化した環境や失われた環境の修復・回復、さらに積極的な環境型利用への転換等のとりくみを、流域と一体として総合的に推進していきます。
 
□優れた景観の保全と創造
 
【目 標】
  人々が誇りに思う美しい景観をつくります
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○自然風土や歴史・文化の保全・活用の視点から、自分たちのまちの景観の保全に努めます。
 
 [事業者]
○開発事業等にあたっては、造成工事等による緑の改変を極力抑制し、緑地の残存に努めるとともに、やむを得ない改変に際しても緑地回復等により地域景観の保全に努めます。
○建物や屋外広告を建築、設置する場合は、地域特性を考慮しながら周辺の景観に配慮していきます。
 
 [行政]
○地域ごとの自然風土や歴史・文化の保全・活用の視点を含めて、県内各市町が実施する景観の形成等に関する施策の支援などを行います。
○都市部では、地域住民、事業者の理解のもと、建築物の誘導、緑化による潤いある景観づくり、電線類の地中化、屋外広告物や自動販売機などの適正化などを進めます。また、農山漁村部では、自然と一体となった地域景観の特徴や価値(大切さ)について、県民、事業者と一緒に理解を進めます。
○景観形成地区及び風景形成地域を指定し、当該地区又は地域の特性に応じた基準を定めて優れた景観を創造・保全するとともに、これらを景観形成の拠点として、景観づくりの考え方や方法を順次県内全域に拡大していきます。
 
○土取場等について、周辺の風景と調和した緑化・復元を指導していきます。
○沿岸域については、残された砂浜、磯、干潟等の自然地形は今後滅失させないこととして保全します。また、環境が悪化している箇所において、養浜や緑化等による回復・創出を進めます。
○海域における放置艇は、景観の悪化をはじめ公共施設の私物化、ごみの不法投棄等の問題を引き起こしており、放置艇の適正な収容及び周辺環境の改善を図ります。
 
□環境に配慮した地域づくり
 
【目 標】
  自然のシステムにかなった県土利用を図るとともに、環境創造を先導するまちづく*93を進めます
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○環境創造を先導するまちづくりに積極的に参画するとともに、行政等と協働していきます。
 
 [事業者]
○土地の改変等の開発を行う場合は、対象地域や周辺地域の自然環境や生態系、周辺の景観等に配慮します。
 
 [行政]
○自然と共生する持続可能な県土利用の観点から、水など自然の健全な物質循環の維持、都市的土地利用に当たっての自然環境への配慮、生物の多様性が確保された自然の保全・創出とその連携等を図ることにより、自然のシステムにかなった県土利用を進めていきます。
○ゆとりと潤いのある県土利用の観点から、土地利用の高度化等によるゆとりある都市環境の形成、農山漁村における緑資源の確保、歴史的風土の保全、地域の自然的・社会的条件等を踏まえた個性ある景観の形成などを進めるとともに、県民の余暇志向や自然とのふれあい志向へ適切に対応していきます。
○地域の県民、事業者、行政等あらゆる主体の参画と協働のもと、残された自然環境の保全、悪化した環境の修復や失われた環境の回復、さらには河川流域でのとりくみや21世紀の森づくり等の積極的な環境創造を総合的なとりくみとして行います。
 
○都市計画などを通じて、県民がマイカーに依存する度合いを減らすため、自転車道や公共交通機関の拡充、LRT(高性能化した2次世代型の路面電車システム)の導入、長寿命・断熱・ソーラーの導入などを徹底した環境共生型建築物の建設、さらには職住近接型・買物等利便型などの“人間サイズのまちづくり*94”、“環境にやさしいまちづくり”を進めます。
○“人間サイズのまちづくり”の一環として、地域冷暖房の導入、パーク・アンド・ライド*95施設の整備、公共交通機関の整備、都市緑化等、環境に配慮したモデル的なまちづくりを推進します。
○市街地での水と緑と土と風などを確保し、落葉樹の植栽などにより日照をコントロールするための整備を進めて、ヒートアイランド現象*96の解消をめざします。
 
○道路、河川、公園等の社会資本の整備については、環境への影響について適切な配慮がなされるよう策定した「環境配慮指針」に基づき、資源・エネルギーの有効活用、騒音・振動の低減、歴史的・文化的遺産への配慮、貴重な動植物の保全や生態系への配慮等を行い、ゆとりと潤いのある美しいまちづくりを進めます。
○公共施設をはじめとして、建造物の長寿命化や再生可能建材の使用促進に努めます。また、建設廃棄物のリサイクルを促進するため、建造物について、将来の解体を容易にする工法の開発や解体による建設廃棄物の再資源化施設の設置促進に努めます。
○都市での資源やエネルギーの利用効率を向上させるとともに、都市において、できるだけ化石エネルギーの使用から脱却し、再生可能なクリーンエネルギーの使用を増やします。
○産業間での不要物(使用済製品を含む)・廃エネルギーの再利用システムを整え、資源循環ネットワークづくりやゼロエミッション産業団地づくりなどを進めます。
○都市近郊に環境に配慮した畜産基地を整備し、食品工場からの食料品の残さ等の飼料化などを促進します。
○有機性の廃棄物を肥料・土壌改良材などとして再生利用を促進します。
○作物残さ等の堆肥化による資源の循環と土づくり等をめざす滞在型市民農園などの整備を推進します。
○新しい考え方であるサスティナブル・タウン(ビレッジ)*97について研究し、本県における実現可能性を検討します。
 
第3章 地球環境問題への対応
 
 地球温暖化、酸性雨、オゾン層の破壊等の地球環境問題は、近年、国際的なとりくみが進みつつあるものの、ますます深刻の度合いを増しており、将来世代の生存に対する影響も懸念されています。
 これらの問題は、事業活動だけでなく、県民一人ひとりの行動が深く関わっており、地球レベル考えるとともに地域レベルで行動することが重要です。
 このため、参画と協働により、資源・エネルギーの循環的・効率的な利用やグリーンエネルギーの導入を図り、地域における地球環境保全へのとりくみを進めます。
 また、本県の環境の保全と創造に関する豊富な経験と優れた技術の蓄積を生かし、積極的に国際協力や国際交流を行うことにより、地球環境の保全に貢献していきます。
 
第1節 地球温暖化防止対策の促進
 
【目 標】
 2010年度の温室効果ガス総排出量を1990年度に比べ6%削減します
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○エネルギー消費効率の高い機器を使用することにより、電力消費量を削減します。
○家電製品の使用時間の制限や冷暖房の設定温度の適正化等を通して日常生活における省エネを徹底します。
○ごみの減量化やリサイクルの徹底に努めます。
○家具等は木質系のものを利用し、長く使うとともに、住宅建材にはできるだけ木材を利用します。
○環境家計簿をつけ、家庭からの温室効果ガスの排出量を把握することにより、とりくみの効果を再確認し、日常生活での排出削減に努めます。
○国や県・市町が実施する地球温暖化防止のための施策に積極的に協力します。
○住宅の建築にあたっては、断熱構造や通気性、採光等に配慮します。また、太陽光発電等の新エネルギーの活用に努めます。
○温暖化防止モデル地域の設定を進め、家庭などでの省エネ診断を行い、地域ぐるみで省エネルギーを進めます。
 
 [事業者]
○創意工夫をこらし、事業内容に照らして適切で効果的・効率的な排出抑制対策を、経団連の業種別自主行動計画を踏まえ、計画的に進めます。
○工場などにおいて、エネルギー管理の徹底や省エネ化を通して、製造工程等におけるエネルギー使用の合理化を図ります。
○パソコン、コピー機や照明器具などについて、エネルギー消費効率の高い機器を使用することにより、電力消費量を削減します。
○焼却施設等における燃焼改善等により一酸化二窒素の排出抑制に努めます。
○国や県・市町が実施する地球温暖化防止のための施策に積極的に協力します。
○工場や事業所等の建設にあたっては、断熱構造や通気性、採光等に配慮するとともに、新エネルギーの活用に努めます。
○温室効果ガスの削減に有効な技術対策の導入を進めます。
○製品の温室効果ガスに関するライフサイクル・アセスメント情報を公表します。
 
 [行政]
○京都議定書*98の趣旨を踏まえ、地球温暖化防止に関して地域からのとりくみを先行的に進めるため、「新兵庫県地球温暖化防止推進計画」に基づき、県民、事業者、行政の自主的な活動をステップアップ方式により誘導していきます。
○民間事業者等が主体となって行うCDM(クリーン開発メカニズム)事業を支援するため、事業化の可能性やあり方について検討します。
○県民、事業者、行政の温暖化防止のとりくみを推進するため、県民、事業者、行政で構成する「兵庫県地球温暖化対策推進本部」を設置するとともに、「兵庫県地球温暖化防止活動推進センター」を核とし、「地球温暖化防止活動推進員」や「同推進協力員」と連携した、きめ細かな普及啓発、情報提供や各種助成等の支援を行います。
○パートナーシップによる地球温暖化防止活動を推進するため、住民団体、事業者団体、環境NGO等の活動団体との連携を進めるほか、アイドリング・ストップ運動等の県民運動を推進します。
○一般廃棄物や産業廃棄物の減量化及びリサイクルの推進により廃棄物からの温室効果ガス排出抑制対策を推進します。
○二酸化炭素吸収源として有効な森林等の緑について、緑地保全地区等保存地域の拡大、地域に応じた植林を含む森林整備の促進、公園緑地の整備や都市緑化の推進及び県民運動の支援、21世紀の森づくり構想の推進等により、県民や事業者と連携してその保全・創造に積極的に取り組みます。
○建築物の木造化、木質化、県産木材の有効利用を促進するほか、木製品の長期的利用を進めるため、暮らしの中に木材を取り入れる運動を展開するとともに、「ひょうごウッディビジネスパーク構想*99」の具体化を図り、木材資源の有効活用を推進します。
○その他の温室効果ガス対策として、メタンについては、廃棄物処理適正化、畜産技術の高度化及びほ場管理の改善等、一酸化二窒素については、焼却施設等の適正管理及び施肥管理等農業技術の高度化等、代替フロン等については、フロン回収・破壊法等による冷媒フロン回収処理の推進等による削減を進めます。
○県自らも地球温暖化対策実行計画を策定し、事業者の一員として温室効果ガスの排出削減に取り組みます。
 
第2節 オゾン層保護対策の推進
 
【目 標】
  フロン回収を促進するなどオゾン層保護対策を進めます
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○フロンなどオゾン層破壊物質を用いた機器を廃棄する時は適切にフロンを回収・処理するとともに、オゾン層破壊物質を使わない製品を使うよう努めます。
 
 [事業者]
○フロンなどオゾン層破壊物質を用いた機器を廃棄する時は適切にフロンを回収・処理するとともに、オゾン層破壊物質を使わない機器や技術を使うよう努めます。
 
 [行政]
○フロン回収破壊法及び環境条例に基づき関係事業者へ立入検査を行う等により、フロンの大気中への排出防止を徹底します。
○オゾン層破壊物質の大気中への排出量を低減するため、普及・啓発、情報収集、フロン使用機器の廃棄等の過程での回収及び的確な処理を、関係事業者、県民、行政の協力・連携のもとに進めます。
○フロン等のオゾン層破壊物質を使用しない機器や技術の採用を促進するため、代替物質や代替技術の調査・研究及びその普及や、代替施設、回収施設の設置に対する融資を進めます。
○フロンなどオゾン層破壊物質を用いた機器を廃棄する時は適切にフロンを回収・処理するとともに、オゾン層破壊物質を使わない機器や技術を使うよう努めます。
○断熱材フロン回収・処理の全国的な定着を促すため、断熱材フロン回収・処理のための法制度の確立等を国や他都道府県に働きかけます。
 
第3節 酸性雨、酸性霧対策や熱帯雨林の保全等の地球環境問題へのとりくみ
 
【目 標】
 原因物質の削減などにより酸性雨、酸性霧対策を進めるとともに、熱帯雨林の保全などの地球環境問題へのとりくみを進めます
 
【主なとりくみ・施策】
 [県民]
○国外から輸入される木材資源等の有効な使用や紙製品の節約と再生利用を図るとともに、暮らしの中に木材を積極的に取り入れるなど、循環資源である県内産木材を一層活用します。
 
 [事業者]
○国外から輸入される木材資源等の有効な使用や紙製品の節約と再生利用を図るとともに、事業活動、オフィス活動の中に木材製品を積極的に取り入れるなど、循環資源である県内産木材を一層活用します。
○酸性雨の原因物質である硫黄酸化物、窒素酸化物等の排出削減を推進します。
 
 [行政]
○自動測定装置による酸性雨等の監視や森林等植物生態系への影響等に関する調査・研究を進め、酸性雨による被害の未然防止に努めます。
○「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」との連携や中国広東省との環境技術交流等により、本県が蓄積したモニタリングや対策技術の東アジア諸国への技術移転を進めます。
○民間事業者等が主体となって植林等のCDM(クリーン開発メカニズム)*100を行う場合に技術面等から支援を行います。