第1部 計画の基本的事項
 
第1節 策定の趣旨
 
 20世紀は、世界各地で人口の増加、社会経済活動の拡大や高度化が進み、「大量生産・大量消費・大量廃棄」という言葉で言い表されるように、人類はその生存基盤である地球環境を消耗することと引き替えに、活動の規模と影響力を飛躍的に拡大し、物質的繁栄を築いてきました。
 しかしながら、このままでは人類社会が存続しえないことは決定的であり、21世紀は、人類社会の持続的発展に向けて、あらゆる主体が、環境の持つ価値を重視し、環境保全に向けたとりくみが内在化された時代を実現することが求められます。
 
 「環境の世紀」といわれる21世紀、私たちを取り巻く状況に様々な動きがみられます。例えば、地球温暖化防止対策の枠組みの構築、ダイオキシンなどの化学物質による健康影響への懸念の広がり、アメニティ高いすぐれた環境への志向など、地球レベルから身近なレベルに至るまで、私たちの日々の生活は、もはや環境への正しい認識と行動なくして営むことができなくなってきています。
 
 今日の環境問題は、通常の事業活動や日常生活に起因するものが多く、現在の社会の枠組みや人々の意識が変わらなければ解決できるものではありません。まず、豊かさに対する私たち一人ひとりの考え方を変え、生活行動や経済活動のあり方そのものを環境の保全と創造のしくみが組み込まれたものに変えていくことが必要です。すなわち、私たち一人ひとりが環境問題を自らの問題として認識し、様々な政策決定に主体的に「参画」していくとともに、優れた環境の保全と創造にともに取り組んでいく「協働」の考え方がますます重要になっています。
 
 また、私たちは先の阪神・淡路大震災を通じ、大自然の摂理に畏敬の念を持ち、自然とともに生きることの大切さを改めて痛感したところです。
 いまこそ、人間の営みは自然の一部であるという認識に立ち、これまでの考え方を見直し、人と自然が豊かに調和し、共生する社会をめざしていかなければなりません。
 
 21世紀初頭の兵庫づくりの指針である「21世紀兵庫長期ビジョン」に示された「環境優先社会」を実現していくためには、めざすべき兵庫の環境ビジョンを共有し、県民・NPO・事業者・行政等のあらゆる行動主体の「参画と協働」によるとりくみが不可欠です。
 「環境優先」の持続可能な地域づくりのモデルを兵庫県から発信していくため、平成8年6月に策定した「兵庫県環境基本計画」を、以上のような環境を巡る近年の動向を踏まえて全面的に見直し、「新兵庫県環境基本計画」(以下、「新環境基本計画」という。)を策定します。
 
第2節 策定の目的
 
 「新環境基本計画」の策定の目的は、次のとおりです。
 
@健全で恵み豊かな環境の保全と、ゆとりと潤いのある美しい環境の創造に関する県の各種施策を、より一層有機的な連携のもとに総合的かつ計画的に推進する。
 
A県民、事業者、行政などの各主体が、目標を共有し、それぞれの役割分担と応分の負担のもとに参画と協働を推進し、自発的かつ積極的に環境の保全と創造に取り組むよう方向づける。
 
第3節 計画の性格
 
 「新環境基本計画」は、県民、事業者、NPO・ボランティア団体・消費者団体・地域団体等環境の保全と創造に関する公益的活動を行う民間団体(以下、「民間団体」という。)、市町等様々な主体の意見を反映させながら作りあげた計画であり、様々な主体の「参画と協働」により推進されるべき計画です。
 
 また、「新環境基本計画」は、「21世紀兵庫長期ビジョン」に示されている「環境優先社会」の具体化を図る基本計画であり、教育、産業、社会基盤整備などの各分野における環境の保全と創造に関するとりくみと整合を図るための基本となる計画です。
 
 「新環境基本計画」の性格は、次のとおりです。
 
@兵庫県における環境の保全と創造に関するとりくみ・施策のめざす方向と長期的な目標を示した基本となる計画
A環境の保全と創造に関する施策を、中長期的な観点から総合的かつ計画的に実施するための県の行政計画
B市町の環境に関わる計画の策定や施策の実施において、尊重されるべき基本指針
C県民の生活や事業者の事業活動、あるいは民間団体の活動に際し、環境の保全と創造に関して尊重されるべき基本指針
 
(計画の位置付け図)
 
第4節 計画の期間
 
 「新環境基本計画」は、2030年頃を展望して策定しています。
 なお、第5部及び第6部に記載しているとりくみ・施策の方向は、原則として、21世紀初頭の概ね10年間(平成23年度まで)に展開していくものを取りあげています。
 また、本計画は、社会経済情勢や環境問題の変化などに適切に対応できるよう、必要に応じて見直しを行います。
 
第5節 計画の構成 
 「新環境基本計画」は、次ページのような構成としています。
 
(計画の構成図)