1 光化学スモッグ広報等の発令回数
 平成11年度の光化学スモッグ広報等の通報・発令回数は、予報5回、注意報7回であり、昨年度(予報4回、注意報4回)に比べて増加した。
 また、本年度は、昭和52年以来23年ぶりに光化学スモッグによると思われる被害が発生した。(表1及び表2)
 
2 平成11年度の光化学スモッグ発現状況と気象
 
(1) 期間を通じての特徴
 本年度の光化学スモッグの特徴は、12年ぶりに5月に発令があり、早い時期からのオキシダント濃度の上昇が見られたが、例年最盛期である7月下旬から8月中の発令が一度もなかった。
 また、オキシダント濃度が急激に変化する傾向が見られたとともに、日没以降の時間帯においてもオキシダント濃度が下降せず、発令が長時間継続する傾向が見られた。
 気象状況は、太平洋高気圧の中心が北偏し、西日本への張り出しが弱く、台風がフィリピン東海上で発生、北上して九州西側を通過するケースが多かった。
 このため、盛夏期の8月になっても、西日本は本格的な夏型気圧配置にならず、蒸し暑い日が例年に比べて少なく、曇りや雨の日が多かった。
 
(2) 月別の経過
 
5月
 上旬は移動性高気圧に覆われて晴れの日が多かった。
 中旬も引き続き高気圧に覆われ、晴れて気温も高くなり、一部の地域でオキシダント濃度の上昇が見られたが、発令には至らなかった。
 下旬の前半は低気圧の影響で雨の日が多かったが、後半は移動性高気圧に覆われて晴れの日が続き、特に31日は昼前から南風が入り気温が上昇したため、内陸部においてオキシダント濃度が高くなり、本年最初の注意報を発令するに至った。
 
6月
 上旬は前線の活動が活発となり、近畿地方は3日に梅雨入りしたが、前線が急速に南下したため、晴れの日が多かった。
 中旬は高気圧に覆われる日が多く、晴れて気温が高い日が続いたため、オキシダント濃度のやや高い日が見られたが、発令には至らなかった。
 下旬は梅雨前線の活動が活発となり、雨の日が多く、特に29〜30日は大雨となった。
 
7月
 上旬の8日から9日は、高気圧に覆われ晴れて風が弱く、日射量も多く、気温が30℃を超え、真夏日となった。
 このため、各地でオキシダント濃度が上昇し、広報等を発令するに至った。
 中旬は、南海上の熱帯性低気圧や前線の影響で曇りや雨の日が多かったが、12日には阪神間の一部の地域で気温が高くなり、風も弱かったため、オキシダント濃度が上昇し、広報等を発令した。
 下旬の22日に近畿地方は梅雨明けとなったが、太平洋高気圧の張り出しが弱く九州西の海上を台風や熱帯性低気圧が北上したため、気温が低かった。
 このため、オキシダント濃度もそれほど上昇しなかった。
 
8月
 上旬は九州西海上を台風や熱帯性低気圧が北上した日が多く、天気がぐずつき、気温も低めで、オキシダント濃度も低かった。
 中旬も南海上や日本海を通過した熱帯性低気圧の影響で雨の日が多く、気温も平年より低く、日照時間も少なかったため、オキシダント濃度も低かった。
 下旬は前線を伴った低気圧が日本海を東進するケースが多く、曇って強風が吹いたため、大気汚染物質が拡散され、オキシダント濃度は低かった。
 
9月
 上旬は低気圧が日本海を東進するケースが多く、曇りや雨の日が続き、オキシダント濃度は上昇しなかった。
 中旬は南岸を前線、日本海側を熱帯性低気圧が通過し、近畿地方は雨の日が多く一部の地域を除き全体的にオキシダント濃度は低かった。
 下旬の前半は日本海を通過した台風や前線の影響で雨の日が多く、後半の28日から30日にかけては移動性高気圧に覆われ、晴れて気温が上昇し真夏日となり風も弱かったため、オキシダント濃度が上昇し、28〜30日の3日間は広報等を発令した。
 
10月
 上旬の前半は移動性高気圧に覆われ晴れの日が多く、気温も上昇したため、一部の地域でオキシダント濃度が上昇したが、発令には至らなかった。
 上旬の後半は前線の影響で雨の日が多く、オキシダント濃度は上昇しなかった。
 中旬は西日本付近に前線が停滞し、曇りや雨の日が多かった。
 下旬の前半は移動性高気圧に覆われ晴れの日が続いたが、オキシダント濃度は総体的に低かった。
 下旬の後半は前線が西日本を次々と通過し、雨の日が多く、オキシダント濃度は上昇しなかった。
 
3 光化学スモッグによる被害の発生状況
 
(1) 被害発生日時:平成11年7月8日(木)16時30分〜17時
 
(2) 被害発生場所:神戸市西区学園東町  神戸市立太山寺中学校
 
(3) 被害の状況 :クラブ活動中の中学生209人がせきやのどの痛みを訴えた。
         うち1人は医者にかかった。全員、翌日には回復した
 
(4) 当日の光化学スモッグ広報等発令状況
  尼崎市:14時45分予報、15時45分注意報発令、16時45分解除
  芦屋市:14時45分注意報発令、16時45分解除
  神戸市東部:13時45分注意報発令、19時45分解除
  神戸市西部:13時45分予報、15時45分注意報発令、18時45分解除
  稲美町:14時45分予報、15時45分注意報発令、19時45分解除
 
(5) 備考
 被害発生当日は、神戸市西部において、光化学スモッグ注意報が発令されていた が、垂水地域には、広報等の発令はされていなかった。
 被害の発生した太山寺中学校は、須磨区(神戸市西部)から2キロメートル程度の距離に位置しているため、局地的な高濃度が発生したものと考えられる。
(6) 被害の発生状況と当日の気象状況及びオキシダント濃度
 近畿地方はオホーツク海高気圧に覆われて前日から晴れの天気が続き、8日も朝から晴れて、風速3メートル以下の弱風状態が夕方まで続いた。
 午前中吹いていた東風が昼過ぎから南風に変わり、暖気が入り始め、気温が次第に高くなり、最高気温も神戸海洋気象台の観測で31.1℃(16時23分)とそれまでで1番高い値となった。
 従って、日射量も多くなり、県内の一部の測定局を除き、13時頃からオキシダント濃度が急激に上昇し、高濃度状態が日の入り時刻の19時まで続いた。