兵庫県における平成22年度PRTRデータの概要

 

「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出把握管理促進法:PRTR法)」に基づき「PRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)」が導入され、人の健康や動植物に対し有害性のある462種類*の化学物質(第1種指定化学物質)について、事業者は毎年度、環境への排出量や廃棄物としての移動量を把握し、届出を行うこととなっています。

この制度に基づく10回目の届出となる平成22年度の排出量・移動量データについて、兵庫県における届出の状況、排出量・移動量の状況、および、国が推計を行った届出対象外(対象業種の届出対象外事業所からの排出量、非対象業種の事業所からの排出量、家庭からの排出量、自動車など移動体からの排出量)排出量の状況をとりまとめました。

その結果は、以下のとおりです。なお、届出件数、排出量・移動量等の数値は、変更届等により集計後も変わることがあります。

また、端数処理により表の合計が一致しない場合があります。

*平成20年度化管法施行令改正以前の平成21年度把握分(平成22年度届出)までは354種類の化学物質について把握し、届出を行うこととなっていました。


  1 排出・移動量の届出状況
 

兵庫県内の届出対象事業者が把握した平成22年度における化学物質の排出量・移動量について、平成23年4月1日〜6月30日の間に、1,623事業所から届出がありました。これは、全国の届出事業所数36,491事業所の4.45%にあたり、都道府県別には愛知県、北海道、大阪府に次いで全国第4位の届出事業所数となっています。

兵庫県における業種別及び地域別の届出状況は、次のとおりでした。

 

(1)業種別届出件数

業種別の届出事業所数は、表1のとおりであり、燃料小売業が659事業所と最も多く全体の40.60%を占めており、ついで化学工業167事業所、下水道業137事業所などとなっています。
 

表1 業種別の届出事業所数
 


 

(2)地域別届出件数

地域別の届出事業所数は表2のとおりであり、神戸地域が295事業所と最も多く、ついで東播磨地域の235事業所、中播磨地域の207事業所などとなっています。
 

表2 地域別の届出事業所数
 


 

2 集計結果の概要
(1)届出排出量・移動量の集計結果
(ア)県内事業所の全物質の届出排出量・移動量

県内事業所から届出のあった化学物質の総排出量は8,619トン、総移動量は14,908トンとなっています。排出量と移動量の合計は、23,527トンであり、これは全国値380,831トンの6.18%にあたります。

排出・移動先別にみると、表3のとおり排出量・移動量のうち、廃棄物としての事業所外への移動量が全体の63.19%と最も多く、ついで大気への排出量が36.64%などとなっています。全国の割合(52.02%)と比べ兵庫県は、廃棄物としての事業所外への移動量の占める割合が多くなっています。

 

表3 排出・移動先別の排出・移動量排出・移動区分
 


 

(イ)業種別の届出排出量

業種別の届出排出量は表4のとおりであり、化学工業が1,406トンと最も多く全体の16.32%を占めており、ついで一般機械器具製造業の924トン、プラスチック製品製造業の910トンなどとなっています。

 

表4 業種別・排出先別排出量
 


 

(ウ)届出排出量の多い物質

届出排出量の上位10物質とその量は表5のとおりであり、合成原料や溶剤として用いられるトルエンが2,771トンと最も多く、次いで、キシレン1,476トン、金属洗浄剤として用いられるジクロロメタン(別名:塩化メチレン)1,004トンなどの順となっています。

 

表5 排出量上位10物質とその量
 


 

(エ)地域別の届出排出量

地域別の排出量をみると、産業の集積している地域の排出量が多く、表6に示すとおり、東播磨地域が2,247トンと最も多く全体の26.07%を占めており、次いで神戸地域が2,221トン、中播磨地域1,006トンの順になっています。

 

表6 地域別の届出排出量
 


 

(オ)排出先・移動先別の物質別排出・移動量

排出先別の届出排出量上位10物質とその量は表7のとおりであり、大気への排出物質ではトルエンが2,770トンと最も多く大気への排出量の33.76%を占めており、公共用水域への排出ではほう素化合物が157トンと最も多く38.10%を占めています。

 

表7 排出先別の物質別(上位10物質+その他)排出量及び構成比
 

 

また、移動先別の届出移動量上位10物質とその量は表8のとおりであり、廃棄物としての事業所外への移動では、トルエンが2,613トンと最も多く事業所外への移動のうち17.57%を占め、下水道への移動ではほう素化合物が18トンと最も多く44.01%を占めています。

 

表8 移動先別の物質別(上位10物質+その他)移動量及び構成比
 


 

(カ)過年度のデータとの比較

表9-1のとおり、平成22年度の届出事業所数は1,623事業所であり、前年度に比べて4.42%減少しています。化管法施行令改正で平成22年度把握分から、354物質から462物質に届出対象物質が増加し、排出量は8,619トンと前年に比べ18.07%の増加となっています。また、移動量でも14,908トンと前年と比べ26.64%の増加となっています。

 

表9-1 各年度のデータの比較
 


 

なお、化管法施行令改正の前後で継続して届出対象物質として指定された276物質(以下「継続物質」という。)のみで経年変化を比較すると、表9-2のとおりとなります。排出量は7,573トンと前年に比べ7.77%の増加となっています。また、移動量でも11,798トンと前年に比べ12.62%の増加となっています。

 

表9-2 各年度のデータの比較(継続物質のみ)
 

 

全国の状況においては、平成22年度の届出事業所数は36,491事業所で、前年度に比べて4.89%減少しています。排出量は182,732トンと前年に比べ3.89%の増加となっています。また、移動量でも198,100トンと前年と比べ14.39%の増加となっています。

継続物質のみを比較すると、排出量は163,940トンと前年に比べ5.58%の減少となっています。また、移動量は170,376トンと前年と比べ4.38%の増加となっています。


 

(2)届出外排出量の集計結果
(ア)兵庫県における届出外排出量

表10のとおり、排出量・移動量の届出の対象とはならない事業所、家庭、移動体(自動車等)など届出対象外の発生源からの平成22年度の化学物質の排出量(届出外排出量)を国において推計した結果は、8,214トンでした。

届出対象の事業所からの排出量と届出外排出量の合計は、16,833トンであり、届出排出量が全体の51.20%、届出外排出量が全体の48.80%となっています。

届出外排出量のうち最も排出量が多いのは、移動体からの排出で、2,523トンと全体の排出量の14.99%を占めているほか、家庭からの排出が10.01%となっています。

届出と届出外の合計の排出量は、全国の3.04%を占めており、都道府県別には全国第10位となっています。また、全国の状況と比べ、兵庫県は、届出排出量の割合が多くなっています。

 

表10 届出・届出外排出量の区分と排出量
 


 

(イ)届出対象外の事業所からの排出量

対象業種及び非対象業種の事業所からの届出外排出量上位10物質は表11に示すとおりであり、キシレンが924トンと最も多く、ついでトルエン774トン、クロロジフルオロメタン489トンなどの順となっています。

 

表11 届出対象外事業所からの排出量上位10物質とその量
 


 

(ウ)家庭からの排出量

家庭から排出される化学物質の上位10物質は表12のとおりであり、防虫剤として用いられるジクロロベンゼン、合成洗剤などとして用いられるポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩の順となっています。

 

表12 家庭からの排出量上位10物質とその量
 


 

(エ)移動体からの排出量

自動車など移動体からの排出される化学物質の上位10物質は表13のとおりであり、ガソリン成分であるトルエン、キシレン、ベンゼンなどや、ディーゼル車の排ガスに含まれるホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの排出が多くなっています。

 

表13 移動体からの排出量上位10物質とその量
 


 

(オ)届出排出量と届出外排出量の合計の多い物質

届出排出量と届出外排出量の合計の排出量の上位10物質とその量については表14のとおりとなっています。 溶剤・合成原料として用いられる他、自動車などの排ガス、接着剤・塗料などに含まれる物質である、トルエン(4,483トン)やキシレン(3,007トン)、エチルベンゼン(1,191トン)の排出が最も多く、ついで金属洗浄に用いられるジクロロメタン(別名:塩化メチレン)(1,084トン)の排出が多くなっています。また、トルエン、ジクロロメタンは届出事業所からの排出の割合が多く、自動車からの排出が多いベンゼン、ホルムアルデヒドは届出外からの排出の割合が多くなっています。防虫剤等として用いられるジクロロベンゼンは、届出外の排出がほとんどを占めています。

 

表14 届出排出量と届出外排出量の合計の上位10物質とその量