兵庫県における平成15年度PRTRデータの概要

 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出把握管理促進法:PRTR法)に基づき「PRTR制度(化学物質排出移動量届出制度)」が導入され、人の健康や動植物に対し有害性のある354種類の化学物質(第1種指定化学物質)について、事業者は毎年度、環境への排出量や廃棄物としての移動量を把握し、届出を行うこととなっています。
 この制度に基づく3回目の届出となる平成15年度データについて、兵庫県における届出排出量・移動量の状況、および、届出対象外(対象業種の届出対象外事業所からの排出量、非対象業種の事業所からの排出量、家庭からの排出量、自動車など移動体からの排出量)排出量の状況をとりまとめました。
 その結果は、以下のとおりでした。


1. 排出・移動量の届出状況
 兵庫県内の届出対象事業者が把握した平成15年度における化学物質の排出量・移動量について、平成16年4月1日〜6月30日の間に、1,861事業所から届出がありました。これは、全国の届出事業所数41,079事業所の4.5%にあたり、都道府県別には全国第5位の届出事業所数となっています。
 兵庫県における業種別及び地域別の届出状況は、次のとおりでした。

 (1) 業種別届出件数
    業種別の届出事業所数は、表1のとおりであり、燃料小売業が761件(40.9%)
   と最も多く、ついで自動車整備業の166件(8.9%)、化学工業の152件(8.2%)など
   となっています。

                 表1 業種別の届出事業所数
業  種 事業所数 割合 業  種 事業所数 割合
金属鉱業 3 0.2% 輸送用機械器具製造業 31 1.7%
食料品製造業 13 0.7% 精密機械器具製造業 5 0.3%
飲料・たばこ・飼料製造業 7 0.4% その他の製造業 31 1.7%
繊維工業 11 0.6% 電気業 3 0.2%
衣服・その他の繊維製品製造業 3 0.2% ガス業 1 0.1%
木材・木製品製造業 10 0.5% 下水道業 104 5.6%
家具・装備品製造業 5 0.3% 鉄道業 4 0.2%
パルプ・紙・紙加工品製造業 21 1.1% 倉庫業 8 0.4%
出版・印刷・同関連産業 14 0.8% 石油卸売業 5 0.3%
化学工業 152 8.2% 自動車卸売業 16 0.9%
石油製品・石炭製品製造業 11 0.6% 燃料小売業 761 40.9%
プラスチック製品製造業 35 1.9% 洗濯業 5 0.3%
ゴム製品製造業 15 0.8% 自動車整備業 166 8.9%
なめし革・同製品・毛皮製造業 9 0.5% 機械修理業 1 0.1%
窯業・土石製品製造業 27 1.5% 商品検査業 1 0.1%
鉄鋼業 30 1.6% 計量証明業 4 0.2%
非鉄金属製造業 41 2.2% 一般廃棄物処理業 59 3.2%
金属製品製造業 91 4.9% 産業廃棄物処分業 18 1.0%
一般機械器具製造業 38 2.0% 高等教育機関 2 0.1%
電気機械器具製造業 93 5.0% 自然科学研究所 7 0.4%
合   計 1,861 100.0%


 (2)地域別届出件数
    届出のあった1,861事業所の地域別事業所数は表2のとおりであり、神戸地域が
  353件(19.0%)と最も多く、ついで中播磨地域の265件(14.5%)、東播磨地域の258件
  (13.9%)などとなっています。
    
   表2 地域別の届出事業所数
地域区分 事業所数 割合
神戸 353 19.0%
阪神南 243 13.1%
阪神北 194 10.4%
東播磨 258 13.9%
北播磨 131 7.0%
中播磨 269 14.5%
西播磨 155 8.3%
但馬 142 7.6%
丹波 75 4.0%
淡路 41 2.2%
合計 1,861 100.0%

2. 集計結果の概要
 (1)届出排出量・移動量の集計結果
   1) 県内事業所の全物質の届出排出量・移動量
      1) 県内事業所の全物質の届出排出量・移動量
        県内1,861事業所から届出のあった化学物質の総排出量は10,924トン、
       総移動量は18,570トンとなっています。排出量と移動量の合計は、29,494トン
       であり、これは全国の5.56%にあたり、都道府県別には愛知県、静岡県に
       次いで全国第3位となっています。
        排出・移動先別にみると、表3のとおり排出量・移動量のうち、廃棄物として
       の事業所外への移動量が全体の62.6%と最も多く、ついで大気への排出量
       が32.8%などとなっています。全国の割合と比べ兵庫県は、廃棄物としての
       事業所外への移動量の占める割合が多くなっています。

   2)届出排出量の多い物質
     届出排出量の上位10物質とその量は図1のとおりであり、合成原料や溶剤
    として用いられるトルエン(4,315トン/年)、キシレン(1,755トン/年)、金属洗浄剤
    として用いられる塩化メチレン(1,182トン/年)などの順となっています。マンガン
    及びその化合物、ふっ化水素及びその水溶性塩、ほう素及びその化合物を除き、
    これら物質のほとんどは、大気への排出となっています。

                図1 排出量上位10物資とその量

 また、対象となる化学物質のうちで最も排出量の多い化学物質であるトルエンの市町別排出マップを図2に示します。阪神南地域、神戸地域、東播磨地域、中播磨地域の市町における排出量が多なっています。
 トルエンは有機溶剤やガソリン成分などとして広く用いられる化学物質であることから、その他の地域のほとんどの市町においても事業所からの排出があることを示しています。


             図2 トルエンの市町別排出量の分布





   3) 業種別の届出排出量
     届出排出量の上位10業種とその量は図3のとおりであり、化学工業の1,955トン、
    ついでゴム製品製造業の1,169トン、一般機械器具製造業の1,166トンなどと
    なっています。
     化学工業、鉄鋼業では、公共用水域への排出や埋立があること、及び、下水道業
    では公共用水域への排出である他は、これらの排出量上位の業種からのほとんど
    は大気への排出となっています。

                図3 排出量上位10業種とその量



   4) 地域別の届出排出量
     地域別の排出量をみると、図4に示すとおり、東播磨地域が3,229トン(29.6%)と
    最も多く、次いで中播磨地域が2,014トン(18.4%)、神戸地域1,670トン(15.3%)の順
    になっています。
     神戸地域、阪神南地域、東播磨地域、中播磨地域、西播磨地域で公共用水域へ
    の排出や埋立がある他は、ほとんどは大気への排出となっています。

                図4 地域別の届出排出量



   5) 排出先別の物質別排出量
     排出先別の届出排出量上位10物質とその量は表4のとおりであり、大気への排出
    物質ではトルエンが44.5%、キシレンが18.1%等、公共用水域の排出ではふっ化
    水素及びその水溶性塩が38.3%、ほう素及びその化合物が28.9%等、埋立処分
    では、マンガン及びその化合物が87.7%等となっている。

    表4 排出先別の物質別(上位10物質+その他)排出量及び構成比


   6) 過年度のデータとの比較
     平成15年度データからは、法施行後2年間の猶予期間が終了し、届出の対象と
    なる事業所の化学物質取扱量がそれまでの年間5トン以上から年間1トン以上に
    引き下げられました。
     このため、表5のとおり届出事業所数は、平成14年度の1,542事業所から1、861
    事業所に20.7%増加しました。しかし、排出量では逆に557トン(4.9%)減少し、
    排出量・移動量の合計では2,633トン(9.8%)の増加となっています。
     なお、全国の状況は、届出事業所数では、平成15年度は41,079事業所で、前年
    度の34,497と比べて約6,600増加、届出排出量では、平成15年度は291千トンで、
    前年度の290千トンと比べほぼ同量、届出移動量では、平成15年度は240千トンで、
    前年度の210千トンと比べて微増となっており、兵庫県もほぼ同じ傾向となっていま
    す。

                 表5 各年度のデータの比較



 (2)届出外排出量の集計結果
   1)兵庫県における届出外排出量
     排出量・移動量の届出の対象とはならない事業所、家庭、移動体など届出
    対象外の発生源からの平成15年度の化学物質の排出量(届出外排出量)を
    国において推計した結果は、10,334トンでした。
     届出対象の事業所からの排出量と届出外排出量の合計は、21,258トンであり、
    届出排出量が全体の51.4%、届出外排出量が全体の48.6%となっています。
     届出外排出量のうち最も排出量が多いのは、移動体(自動車等)からの排出で、
    4,489トンと全体の排出量の21.1%を占めているほか、家庭からの排出が8.8%と
    なっています。
     届出と届出外の合計の排出量は、全国の3.36%を占めており、都道府県別には
    全国第12位となっています。また、全国と比べ兵庫県は、届出排出量と移動体から
    の排出量の割合が多くなっています。

              表6 届出・届出外排出量の区分と排出量

   (ア)  届出対象外の事業所からの排出量
      届出対象外の事業所からの排出量上位10物質は表5に示すとおりであり、
     キシレンが1,105トンと最も多く、ついでトルエン996トン、エチルベンゼン297トン
     などの順となっています。

      表7 届出対象外事業所からの排出量上位10物質とその量

   (イ)  家庭からの排出量
     家庭から排出される化学物質の上位10物質は表6のとおりであり、防虫剤として
    用いられるp-ジクロロベンゼン、合成洗剤などとして用いられる直鎖アルキルベン
    ゼンスルホン酸塩、ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテルの順となっています。

       表8 家庭からの排出量上位10物質とその量


   (ウ)  移動体からの排出量
      自動車など移動体からの排出される化学物質の上位10物質は表7のとおり
     であり、ガソリン成分であるトルエン、キシレン、ベンゼンなどや、ガソリンの
     燃焼により発生するホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの排出が多く
     なっています。

            表9 移動体からの排出量上位10物質とその量



   2)届出排出量と届出外排出量の合計の多い物質
     届出排出量と届出外排出量の合計の排出量の上位10物質とその量については
    図5のとおりとなっています。
     溶剤・合成原料として用いられる他、自動車などの排ガス、接着剤・塗料などに
    含まれる物質である、トルエン(6,816トン)やキシレン(3,788トン)の排出が最も多く、
    ついで金属洗浄に用いられる塩化メチレン(1,271トン)の排出が多くなっています。
     また、トルエン、キシレン、塩化メチレン、マンガンは届出事業所からの排出の割合
    が多く、ホルムアルデヒド、ベンゼンは移動体(自動車)からの排出の割合が多く
    なっています。
     一方、防虫剤等として用いられるp-ジクロロベンゼンや、洗剤などとして用いられる
    直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、ポリ(オキシエチレン)=アルキル
    エーテルは家庭からの排出がほとんどを占めています。


         図5 届出排出量と届出外排出量の合計の上位10物質とその量



3 兵庫県における今後の取り組み
  化学物質は、工場や事業場の操業に伴い発生する他、自動車の使用や日常生活に
 伴う排出など、多様な発生源からさまざまな種類の物質が排出されていることから、
 化学物質による環境リスクを低減するためには、県民・事業者の幅広い参画と協働
 により取り組みを進めることが必要です。
  このことから、兵庫県ではPRTR制度を活用した次のような化学物質対策進める
 こととしています。
  (1) 化学物質管理指針に基く事業者の適正な化学物質管理の促進等のための
    事業者説明会等の開催
  (2) 化学物質に関する県民の理解促進のための県民講座の開催
  (3)ホームページ等を利用した、わかりやすいPRTRデータの提供
  (4)環境モニタリングの実施




ページの先頭に戻る