第2章 兵庫県の環境問題と対策


第4節 自然環境問題と対策

 都市化や開発の進行に対応し、自然環境を保全するために、昭和46年に、基本計画の策定や県独自の自然環境保護地区等の指定制度を内容とする 「自然保護条例」を制定し、総合的な自然環境保全行政へ第一歩を踏み出した。
 国においても、昭和47年に自然環境保全地域等の設定等を内容とする「自然環境保全法」が制定され、これを受けて、昭和49年に「自然環境保全審議会」を設置した。また、国の制度との整合を図るとともに、併せて緑化を推進するために、昭和49年に条例を改正し、名称を「自然環境の保全と緑化の推進に関する条例」とした。そして、昭和50年に条例に基づき、本県の自然環境の保全に関する基本方針を定めた「自然環境保全基本計画」を策定し、これに基づき総合的な施策を展開した。昭和60年に「全県全土公園化の推進に関する条例」(昭和60年条例第12号)を制定し、緑化の推進もこの条例に包含したため、「自然環境の保全と緑化の推進に関する条例」を「自然環境保全条例」に改めた。
 その後、開発から自然環境の保全、自然とのふれあいの増進等がより一層強く求められるようになった。また、希少な野生動物の保護が国際的な課題ともなった。これらを背景に、県では、平成3年に「自然環境保全基本計画」を改訂し、貴重な野生動物等調査事業に着手するとともに、県立自然公園の整備を促進するために、公園計画の策定、改訂に着手し、総合的かつきめ細かな自然環境保全のための施策を展開している。
 一方、リゾートブームからゴルフ場の整備計画が頻出したが、土地利用面での規制強化と併せて、自然環境の保全等の観点から、平成3年に「ゴルフ場の開発に係る環境影響評価の手続きに関する要綱」を制定した。
 また、人間の活動に伴う環境変化の影響で生物多様性が損なわれ、多くの生物種や生態系が存在の危機に直面していることから、国において、平成4年に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」が制定された。本県においても、平成7年に制定した「環境の保全と創造に関する条例」において、絶滅の恐れのある貴重な野生動植物種を保全するため、指定野生動植物種の保存に関する規定を設け、保存を図るべき種と生息地・生育地の指定、指定地域内での捕獲・殺傷・採取・損傷の禁止、土地の改変行為等の制限を規定している。
 さらに、「環境の保全と創造に関する条例」の改正により、土石採取等に係る自然景観を保全するため、平成13年に、「土石採取等を行う者が遵守すべき基準」を定め、ヒートアイランド現象等の都市環境問題を改善するため、平成14年に、屋上緑化等の建築物の緑化を義務づける規定を設けた。
 また、審議会の運営の合理化を図るとともに、複雑かつ多様化する環境問題について総合的に調査審議するため、平成14年に「自然環境保全審議会」を廃止し、「環境審議会」において自然環境の保全に関する重要事項等の調査審議を行うこととした。
 兵庫県における自然公園は、瀬戸内海国立公園の第1次拡張として、昭和25年5月に淡路島の門崎、由良、諭鶴羽山などや赤穂御崎、室津海岸、家島群島などの西播磨地方の海岸が指定を受けたことにはじまる。
 さらに、昭和31年5月には瀬戸内海国立公園の第2次拡張に際して、六甲山一帯及び淡路島の慶野松原などが追加された。
 その後、「国立公園法」は「自然公園法」に改められ国立公園、国定公園及び県立自然公園の自然公園体系が整えられた。
 さらに、昭和38年7月には山陰海岸国定公園(昭和30年6月指定)が国立公園に昇格した。
 また、昭和44年4月には扇ノ山、氷ノ山、日名倉山など鳥取、岡山県境の山岳地帯が氷ノ山後山那岐山国定公園に指定された。
 海中公園は、昭和46年1月豊岡海中公園(御待岬)、竹野海中公園(大浦)、浜坂海中公園(田井松島、海金剛)の4カ所が山陰海岸国立公園内に指定された。
 一方、県立自然公園については、昭和32年4月に多紀連山、猪名川渓谷、清水東条湖(平成12年「清水東条湖立杭」に名称変更)が指定され、昭和33年11月に朝来群山、音水深林(平成11年「音水ちくさ」に名称変更)が、昭和34年7月に但馬山岳、西播丘陵が、昭和36年3月に出石糸井、播磨中部丘陵が、昭和38年5月に雪彦峰山が、昭和40年6月に笠形山千ケ峰がそれぞれ指定されて、県下に11力所の県立自然公園が指定されている。
 兵庫県の自然公園は、但馬、丹波、播磨、阪神、淡路の各地域に適正に配置されており、これらの公園の総面積は166,015ha、県土面積に占める割合は約20%で、平成14年度の年間利用者は約3,198万人を数え、県民の自然とのふれあいの場として重要な役割を果たしている。

 また、平成14年3月に策定された「新・生物多様性国家戦略」を踏まえて自然公園の生物多様性保全機能を強化するため、平成14年4月に自然公園法が改正され(平成15年4月施行)、国及び地方公共団体の責務として「自然公園における生物の多様性の確保」が明示されるとともに、新たに土石等の集積、指定動物の捕獲、湿原などの指定区域内への立入等の規制や公園管理団体との風景地保護協定の締結による自然公園管理等の新たな制度が設けられた。なお、兵庫県立自然公園条例についても平成15年3月に同様の改正を行っている(平成15年10月施行)。
 さらに、外来生物による我が国の生態系、人の生命・身体、農林水産業に係る被害を防止するため、平成16年6月に「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」が制定され、基本方針の策定等が進められている。

雪彦山(雪彦峰山県立自然公園)