用語解説集

(50音順)

遺伝的劣化 遺伝子レベルの多様性が徐々に悪くなること。
回廊 生息地が分断されないよう、森林などの生息環境が繋がり(連続性)を持った状態。
 「コリドー」とも言われる。
学習放獣 人家周辺に出没するクマに対して、「人の近くに行くと怖い思いをする」という条件付けを与えたうえで放獣を行うこと。クマ自身の学習効果をねらって実施することから 学習放獣という呼び方をされるようになった。
環境収容力  一定の自然環境の中にどれだけの生物が生息できるかを意味する。「環境収容力が高い」場合は、そこにより多くの生物が生息できる豊かな自然環境であることをいう。
近交弱勢 遺伝子が近いもの同士が交配し、劣性遺伝を繰り返すことによって、形質の弱い個体が増加していくこと。行き過ぎると自ら絶滅の一途を辿っていく。
クマ剥ぎ 造林木の幹をクマが傷付けたり皮を剥いだりする現象。その行動理由は解明されていないが、クマ剥ぎを受けた造林木は黒く染みが入るなどして木材としての商品価値が落ちる。
堅果類 堅い木の実のなる樹木。ドングリ類を指す。
誤捕獲 捕獲目的の鳥獣以外の鳥獣が捕獲されること。ワナ猟で起こることが多い。その場合、放獣することが原則であるが、クマなどの大型動物は実際行うことが難しい。
傷病捕獲 怪我をした鳥獣を捕獲し、治療した後再放獣することを目的とした捕獲。県知事の許 可を得た職員が行うことが多い。「傷病鳥獣の保護捕獲」を略して記載した。
森林生態系 森林をとりまく生物のつながり。生物同士が密接な関係を保ちつつ共存している、そ の循環を指す。
森林・野生動物管理官制度(仮称) 地域に密着した被害管理、個体数管理、生息地管理の総合的かつ計画的なマネジメン トを実践する専門技術者を育成するという県の構想。
森林・野生動物研究センター(仮称) 野生動物が人間に害を及ぼす原因の究明や問題解決に向けて、「生息地管理」「個体 数管理」「被害管理」を総合的、科学的、計画的に進めるワイルドライフ・マネジメン トを推進する研究施設を設置するという県の構想。
棲み分け 別々の種が、干渉し合うことなく空間的に別の場所で生息すること。この場合は、空 間的のみならず、時間的、生態的(生活上)に人とクマとが別々に生息(生活)するこ とを指している。
地域個体群 ある鳥獣種の地域的な集まり。獣類では大きな河川や市街地、道路等で分断されるこ とが多く、分断が長く続くとその地域特異の遺伝的形質を持つようになる。
鳥獣保護員 狩猟取締や鳥獣保護区などの監視、傷病状態の鳥獣の救護などを行う県の非常勤嘱託 職員。銃器を扱える猟師が多い。
鳥獣保護事業計画 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づき県が策定しなければならない5年間の計画。鳥 獣保護区の設定や、鳥獣捕獲許可の基準、特定鳥獣保護管理計画の策定予定等が定めら れる。
電波発信機 放獣したクマの位置を確認するため、放逐時に小型の電波発信機(首輪ベルト型)を装着しておく。受信はTVアンテナ型のもので、人間側が行う。電波は弱いパルスなので、近い距離(10km程度)でないと反応しないことがある。
特定鳥獣保護管理計画 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づき知事が定める計画で、著しく増加もしくは減少 している特定の鳥獣種を定めて、生息数管理、生息環境管理、被害管理について科学的 ・計画的に検証しながら進めていく計画制度。平成11年の法改正時から創設された。
ヘア・トラップ法 調査地点に有刺鉄線や粘着テープ等で囲いを作り、そこを通過する獣から体毛を採取 し、その頻度から生息数を推定する方法。毛根からはDNAを採取できるため、個体識 別にも活用できる。まだ日本では試験的にしか行われていないが、クマにとって非常に ストレスの高い「捕獲」をすることなく、クマの生態を調査することのできる方法。 
マイクロチップ ペット動物などで多く用いられるもので、個体を識別するために皮膚に埋め込む電磁 チップ。読み取り機によって判別できる。
モニタリング monitor-ing(監視を続けていく)の意で、計画の目標が達成されているかを、調査 (生息数であれば、その動向)によって確認すること。モニタリングの結果を計画に再 度反映させることで、徐々に精度の高いものにしていく。
有害鳥獣駆除 農林業被害や人身被害を防止することを目的とした捕獲。クマの場合は県知事の許可 を得た捕獲班により実施されることが多い。
レッドリスト 生息数が減少し、その存続が危ぶまれている種をリスト化したもの。環境省が定める 「全国レベルで貴重な種」と、都道府県で定める「地域レベルで貴重な種」と、異なる2つの指定の仕方がある(下表のとおり)。
  なお、環境省のレッドリストには、下表以外に「絶滅のおそれのある地域個体群」の区分があるが、これは生息域が孤立し、地域レベルで見た場合絶滅に瀕しているかその危険が増大していると判断されるものが該当し、本県に生息するツキノワグマのうち、「東中国地域個体群」が掲載されている。

ワナ(ククリワナ、箱ワナ、囲いワナ) 獣類を捕獲するための装置。「ククリワナ」はワイヤーで輪を作り、足を括って捕ら えるもの。「箱ワナ」は箱形のオリで、獣が中に入れば扉が閉まり捕らえるもの。「囲 いワナ」は箱ワナの天井部分が空いているもの。